CEATEC JAPAN 2009【日立編】

「よそ見」で省エネするTV、超小型レーザープロジェクタ


会期:10月6日~10月10日

会場:幕張メッセ

入場料:大人1,000円/学生500円
    (事前登録で無料/最終日は無料)


 日立は、LED液晶テレビなど、テレビ向けの次世代技術が中心の展示。製品への搭載時期は未定の技術も多いが、新しい視聴スタイルの提案など、興味深い内容となっている。

 テレビの次世代技術として、LEDバックライト液晶や、超解像技術をブース中央に特設した映像コーナーで展示。従来製品と比較できるようになっている。なお、製品への搭載時期はいずれも未定。

LEDバックライト搭載テレビのデモ。従来の液晶テレビ(左)と比較

 LEDバックライト搭載液晶テレビは、42型フルHD/120Hzパネルを搭載。LEDのエリア駆動により暗部の表現力を向上したほか、バックライトの平均消費電力をエリア駆動無しの場合に比べ半減したという。

 超解像技術は、SD映像の高画質化に加え、フルHD映像も鮮明に表示可能。フルHD映像とSD映像が画面内に混在している場合にも、領域ごとに最適な信号処理が適用できることを特徴としている。また、SD映像をアップコンバートした際の圧縮ノイズ発生も抑え、精細感を高めている。

 同社では、超解像技術をテレビへの搭載のほか、ネット動画への適用も提案している。なお、今回の展示ではリアルタイム処理ではなく加工済みの映像ファイルを再生していたが、実際に採用される場合は、まずテレビへの搭載を想定している。

 また、超解像を用いた動画符号化技術も紹介。一般的なAVCエンコードの約3倍/MPEG-2の約10倍で記録できる「超高圧縮映像符号化技術」として参考展示している。エンコード側で画像サイズを縮小し、フレームの一部を間引き、デコード側で間引いた分を補完して、拡大時に超解像処理を加えるという技術で、放送局のアーカイブなどでの利用も想定している。

超解像技術。テレビ向け(左)と、ネット動画向け(右)超高圧縮映像符号化技術。超解像技術を活用している

 今後のテレビ製品に向けたユニークな展示としては、視聴中に「よそ見」をすると画面を暗くして消費電力を抑えるという独自技術を紹介。テレビ画面上に備えたカメラと顔認識技術を利用し、テレビ以外の方向を向いている時に省エネモードが適用される。液晶テレビの場合はバックライトを暗くし、プラズマの場合は黒い画面を表示させる。消画は徐々に、出画は即座に行なうことで、視聴を妨げることなく消費電力を抑えるという。

 同社の調べでは、テレビ視聴時間のうち平均35%はよそ見をしていたというデータを紹介。個人差もあるが、ニュースなどでは比較的集中して視聴していたものの、ドラマなどでは“ながら見”されることもあり、よそ見の時間が長かったとしている。

 また、「人感センサー」を使った技術との違いとして、トイレなど短いすき間の時間にも省エネモードがすぐ適用され、トータルで2割ほどの省電力化が図れるという。省エネON/OFFの基準となる顔認識は、15人程度でも対応可能で、よそ見をしてから画面を暗くするまでの時間など細かな調整にも対応できる見込み。デモでは省エネON/OFFはパソコンで制御していたが、プロセッサレベルではテレビに搭載されるものと大きな差はないという。

「よそ見」による省電力化デモ。写真はテレビを見ている状態テレビから眼が離れたと判断されると、徐々に画面が暗くなる省電力モード時の電流表示

 そのほかの省エネ技術としては、熱陰極管(HCFL)をバックライトに採用し、「1インチ1W」を実現した32型テレビも参考展示。ソニーがBRAVIAに使っているもの(外径約4mm)より太い15.5mm管を採用しているが、HCFL管の高出力化と、インバータの高効率化により、2本のHCFL管で均一な照射を可能にしたことが特徴。日立ライティングや日立メディアエレクトロニクス、日立アドバンストデジタルの協力で実現した。42型などさらに大きなモデルについても1インチ1Wを目指して開発を進めるという。

HCFL管を使った1インチ1Wの液晶テレビ試作機LEDバックライトの液晶テレビ試作機で、低消費電力化をアピールしている現行の液晶/プラズマテレビに搭載されている「インテリジェント・オート高画質」での省エネ化デモも

 UI関連では、CESなどでも展示していた、人の手のジェスチャーでテレビを操作するという体験コーナーを設置。リモコンを使わず、直感的な操作で情報にアクセスできる。今回のデモではNHKエンタープライズのコンテンツを使用。表示されている映像を手のジェスチャーで回転させたり拡大させたりといった操作が可能なほか、中をのぞくように両手を開くことで詳細なコンテンツが見られるという仕組みになっていた。

 また、画面に手書きできる、超短焦点プロジェクタ内蔵の「ホワイトボード型ディスプレイ」や、プラズマディスプレイに手書きした内容と、手元の紙に書いた内容が、ディスプレイ上で共有できるという「デジタルペン活用プラズマテレビ」なども参考出展している。

ハンドジェスチャーでのテレビ操作体験コーナーホワイトボード型ディスプレイデジタルペン活用プラズマテレビ

 プロジェクタでは、RGBレーザーを搭載した超小型のマイクロプロジェクタ試作機を出展。光学系を必要とせず、レーザーによる省電力化、フォーカスフリーを実現したもので、製品化の時期は未定。バッテリ内蔵のモデルと、バッテリを省いてさらに小型化しているものを用意し、凹凸のある壁面でも投写できることなどをアピールしていた。試作機では、最大でA3サイズ程度の投写が可能となっている。

 また、16台のプロジェクタを使って様々な方向から投写し、平面ディスプレイ上で真上や斜めのどの方向から見ても立体的に見える技術「フルパララックス立体ディスプレイ」の展示も行なわれている。現在は「VGAに満たない解像度」としているが、プロジェクタの台数を増やすことで立体映像の飛び出し量を減らさずに、解像度の向上を図れるという。


RGBレーザー搭載のマイクロプロジェクタ。左がバッテリ搭載型、右はバッテリを省いた超小型モデルバッテリ搭載でも手のひらサイズを実現している16台のプロジェクタを用いた「フルパララックス立体ディスプレイ」

DLNA対応のiVDR-Sアダプタを利用した配信デモ

 iVDR関連では、パソコンでiVDR-Sに録画したデジタル放送番組をDLNA/DTCP-IPで配信できるアダプタを参考展示。製品はアイ・オー・データから今期中に発売される見込みで、価格は「既存のPC用アダプタが1万円以上のため、数千円程度を目指す」(日立の説明員)としている。

 展示では、アイ・オーの地デジチューナでパソコンに録画し、ネットワーク内のDLNAクライアント対応テレビで再生していた。また、アイ・オーのmAgicTV Digitalと連携して、パソコンで録画したコンテンツをiVDR-Sにダビングすることも可能。DLNAサーバー/プレーヤーソフトにはデジオンのDiXiM DIGITAL TVの拡張版を使用。iVDR-Sの著作権保護技術「SAFIA」により、同ソフトとアダプタ間の認証を実現している。


アダプタは、カセットテープのケースのような形状アイ・オーの地デジチューナと、デジオンのDiXiM DIGITAL TVを使用している


(2009年 10月 6日)

[AV Watch編集部 中林暁]