キヤノン、同社初の業務用CF記録フルHDビデオカメラ

-4:2:2の50Mbps記録に対応。レンズ/CMOSも一新


XF305

6月下旬発売

標準価格:「XF305」84万円
     「XF300」73万5,000円

XF305

 キヤノンは、同社の業務用ビデオカメラで初めてファイルベース記録形式(MPEG-2 フルHD 4:2:2)を採用した、フルHD業務用ビデオカメラ2機種を、6月下旬に発売する。HD/SD-SDI出力などを搭載した上位モデル「XF305」は84万円、SDI出力などを省いた下位モデルの「XF300」は73万5,000円。「Vision X」をキーワードに展開する。

 XF305とXF300の違いは、XF305のみにHD-SDI(Serial Digital Interface)出力、GENLOCK端子、タイムコード入出力端子を搭載していること。XF300で、それらの機能が省かれている以外の仕様は共通で、両機種ともファンタム電源対応のXLR端子を2チャンネル装備している。

 なお、2008年12月に発売された「XH G1S/A1S」などの業務用HDVカメラの販売は継続される。

XF305

XF300

 XF305/300の最大の特徴は、新たにファイルベース記録形式を採用したこと。ファイルフォーマットは、国際標準コンテナフォーマットのMXF(Material eXchange Format)で、同一MXFファイル内に映像と音声を格納するOP1aを採用している。コーデックはMPEG-2 Long GOPを使用しており、録画モードは、50Mbps(CBR/4:2:2/422P@HL)、35Mbps(VBR/4:2:0/MP@HL)、25Mbps(CBR/4:2:0/MP@H14)の3種類から選択できる。

 解像度とフレームレートは、50Mbpsと35Mbpsでは1,920×1,080ドット(60i/30P/24P)、1,280×720ドット(60P/30P/24P)、25Mbpモードは1,440×1,080(60i/30P/24P)から選べる。音声は全モード、リニアPCM(16bit/48kHz)2ch。

 記録メディアはCFで、2スロットを装備。ファイルシステムはFAT32を使用する。スロットをまたいだ、リレー記録に対応し、メディアが切り替わった場合でも、シーンは欠落しない。また、ホットスワップに対応しているので、1枚に録画しながら、もう一方のスロットをCF交換したり、フォーマットなども可能。メディア間のコピーもできる。使用可能なCFは、UDMA対応のType I。内蔵メモリに常に約3秒分の映像をストック記録し続け、約3秒前の映像からCFカードに録画を始めるプレRECモードも備えている。

 

 レンズと撮像素子も一新。撮像素子は、1/3型有効画素数約207万画素(総画素約237万画素)の「キヤノン フルHD CMOS」の3板式。フルHD映像と同じ有効画素数で、画素ずらしや画素数変換を行なわずに処理される。CMOS特有の動く被写体が歪んで写るローリングシャッター歪みについては、シャッター走査速度を従来の2倍(フレームレート60i時)に高速化し、低減している。

 レンズは、新開発の光学式手ブレ補正機能を備えた光学18倍ズームの「キヤノン HDビデオLレンズ」。F値はF1.6~2.8。焦点距離は35mm判換算で、29.3~527.4mm。フィルターサイズは82mm径となっている。Hi-UDレンズ(高屈折異常分散ガラス)で色収差の抑制と小型化、UAレンズ(超高屈折非球面)で小型軽量化、UDレンズ(異常分散ガラス)でテレ側色収差を抑制している。なお、蛍石レンズは使用していない。

 中心解像度1,000TV本、周辺解像度800TV本。NDガラスフィルタは1/4、1/16、1/64の3種類を内蔵。絞り羽根には金属を使用しており、同社では「太陽からの焼き付き防止を図り、長時間のドキュメンタリ撮影などに威力を発揮する」としている。

 民生機で搭載している顔認識「フェィスキャッチテクノロジー」も装備。ただし、民生機と異なり、AFのみ連動し、AEは連動しない。また、手ぶれ補正ISも新構成となり、防振性能が向上したほか、ダイナミックISに対応し、軽量化も実現している。

 ズームリングとフォーカスリングは電子式だが、マニュアル操作時に絶対角度で動作する機構を採用している。その他の操作系も一新。キヤノンの業務用機は、スチルカメラの流れを汲んだ、Tv、Avモードなどを切り替える大きなモードダイヤルが特徴となっていたが、XF305/300ではモードダイヤルを撤廃。アイリスのオート/マニュアル切り替えスイッチ、シャッターのON/OFF/SELECTとなり、業務用ビデオカメラで一般的な操作系となった。

液晶モニターは左右どちらにでも回せ、前後方向にも回転する
 液晶モニターは4.0型約123万ドットで、左右どちらにでも回せ、前後方向にも回転する。アンダースキャン表示に相当する100%視野角となっている。ビューファインダーも、0.52型約155.5万ドットのカラー液晶で、視野角は100%。

 ピントの状態を波形で表示するEdgeモニター機能を新たに搭載。画面内に3箇所設定された注目エリア内のピント量が別色で、ピントが合うほど波形が大きくなるため、ピントの山を捉え、前ピン、後ピンの状況も把握できる。また、波形モニター機能や、ベクトルスコープ機能も搭載した。さらに、HDMI出力映像にゼブラパターンの表示を重畳することが可能になった。

 映像エンジンは「DIGIC DV III」。ガンマカーブやカラーマトリクスなどを、項目ごとに細かく設定できるカスタムピクチャー機能が刷新され、26項目にグレードアップ。カスタムピクチャー機能の設定内容は、カードへの保存や読み出しが可能。なお、「XH G1S/A1S」などとの互換性はない。

 撮影時のフレームレートを変更することで、オーバークランクなどの可変速撮影にも対応。24Pでの再生を基準として、スローモーションは1/2.5倍速(720p記録時)から、ファーストモーションは5倍速(720p)まで対応。また、インターバル記録機能やクレイアニメーション制作に適したフレーム記録機能も備えている。

 なお、ファイルの再生、バックアップ保存、メタデータの編集ができるブラウザソフトとして、「Canon XF Utility」が付属する。対応OSは、Windows 7/Vista(32bit/64 bit版)、Windows XP(32bit版のみ)、Mac OS X。また、Final Cut Proと、Avid Media Composer用のプラグインが同梱されるほか、Premiere Proや、EDIUS Proでもネィティブ対応する予定となっている。

付属品

0.8倍のワイドアタッチメント「WA-H32」(光学ズーム4.3倍まで可能)も、78,750円で発売される
 連続撮影時間は、付属の「BP-955」使用時でXF305の場合は約4時間(液晶モニター)/約4時間5分(ビューファインダー)、XF305の場合は約4時間25分(液晶モニター)/約4時間40分(ビューファインダー)。

 外形寸法はXF305/300共通で、約180×396×236mm(幅×奥行×高さ、レンズフードを含み、グリップベルト、アイカップは含まない)、重量は(グリップベルトを含み、レンズフード、アイカップは含まない)はXF305が約2,670g、XF300が約2,630g。撮影時総質量(レンズフード、グリップベルト、バッテリーパックBP-955、CFカード1枚、SDカード1枚をそれぞれ含み、アイカップは含まない)はXF305が2,980g、XF300が約2,940gとなっている。

 付属品は、ワイヤレスコントローラー「WL-D6000」、コンパクトアダプター「CA-930」、バッテリーパック「BP-955」、ショルダーストラップ、D端子コンポーネントケーブル「DC-930」、アイカップ。また、0.8倍のワイドアタッチメント「WA-H32」(光学ズーム4.3倍まで可能)も、78,750円で発売される。



(2010年 4月 8日)

[AV Watch編集部 古川 敦]