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2020年に8Kスーパーハイビジョン本格放送開始へ

伝送路はCS/CATV/IPTVに。予定を大幅前倒し

 総務省は28日、「放送サービスの高度化に関する検討会」の第2回会合を開催。解像度8K/7,680×4,320ドットのスーパーハイビジョン放送を、2020年に導入することを目標とすることで概ね合意した。

 同検討会は、「4K・8K(スーパーハイビジョン/SHV)」、「スマートテレビ」、「ケーブル・プラットフォーム」の3分野について、各ワーキンググループ(WG)を設け、ロードマップの策定やルールの具体化などを検討するもの。SHVは、'12年8月にITU-R勧告として承認。テレビの国際規格になっており、7,680×4,320ドットの画素数や、フレームレート120フレーム/秒などに対応する。

 4K・8K放送のロードマップについては、検討会のスーパーハイビジョンWGから報告。放送開始時期については、2014年のブラジル リオのサッカーワールドカップを目処に4K放送の環境を整備。4Kに関心を持つ視聴者が体験できるような環境を構築する。ついで2016年のリオ・オリンピックでは8Kを体験できる環境を整備、さらに2020年のオリンピック(開催地未定:東京が招致活動中)には、「4K/8K双方の視聴が可能なテレビの普及を図る」としている。

ロードマップ
時期イベント対応
2014年リオ W杯4Kを体験できる環境整備
2016年リオ 五輪8Kを体験できる環境整備
2020年五輪(開催地未定)4K/8K双方に対応したテレビの普及

 4Kについてはすでに映画分野を中心に機器やコンテンツの市場が活発化しているが、日本の放送関連事業の国際競争力強化を目指して、「可能な限り早期」の4K/8K放送を目指すとことを基本方針とする。

 SHVの中核となる映像圧縮技術「HEVC」については国際標準化が1月に完了。韓国ではすでに地上波を活用した4K放送の実証実験が行なわれており、欧州でも2014年の計画が立ち上がりつつある。こうした世界の動きに先駆けて、日本国内での導入を目指す。そのため、ロードマップを早期に策定し、順次実現に向けた取り組みを進める。

 一方で、地上デジタル放送(2K)の導入を終えたばかりで、新方式の導入は視聴者の混乱を招く可能性が高い。そのため、「地デジ対応などですでに機器を購入した人に対して、負担を強いることは避ける必要がある」という点を強調。4Kや8Kのスーパーハイビジョン伝送路としては地上波でなく、東経124/128度のCSデジタルやCATV、IPTVを前提に検討を進め、「高精細、高機能サービスを求めるニーズに積極的に対応する」。また、東経110度CSの左旋や、新たな空き周波数確保などで既存の視聴者に影響を与えない範囲でサービス導入できる場合は、そうした環境での導入も検討する。

 ただし、4K、8K放送の実現のためには、映像符号化、フレーム周波数、音声符号化、音声チャンネル数、所要ビットレート、変調方式、帯域幅、回線稼働率、多重化方式、データ放送、CAS、フレームフォーマット、クロマフォーマット、ビット長、色域などの技術要項決定も必須となる。これらの課題解決のためにも、即時各課題に取り組む必要があるとした。

 また、普及拡大のためには、CSやBSを含めて全体において、2K、4K、8Kの移行がスムーズできるあり方なども重要課題と位置づける。

 これまで、NHKがスーパーハイビジョンは2020年に実証実験という目標を掲げていたものの、今回提案されたロードマップはそれらを大幅に前倒しするものとなっている。そのため、早期のSHV立ちあげのためには、官民関係者の協力体制や推進体制など、「オールジャパン」の推進体制が必要としている。

 具体的には、放送主体として、放送事業者と受信機メーカーなどの関係事業者が参加した組織を新たに設立。「一つのチャンネル運営に必要な技術、設備、コンテンツ確保を図って行くことが望ましい」と提案。また、配慮すべき点としては、「コンテンツ充実への取り組み」、「移行過程におけるコンテンツ選択肢確保」、「衛星、CATV、IPTVなど各伝送路間の技術仕様の共通化」などを挙げている。

 スマートテレビについては、「放送連携」を他国の方式に無い強みとして展開。開発者にオープンで、なおかつ安心、安全を確保しながら進める方針を確認した。

前倒しでの実現は奇跡?

 検討会には、柴山昌彦 総務副大臣も出席。「政権移行後、初の検討会の開催だが、デジタル技術のスピードが早く、国際競争も激しい。スピード感持った議論が必要。安倍総理の成長戦略の中でも放送サービスの高度化を位置づけている。4K/8K、スマートテレビに官民力をあわせて取り組むことが必要」と語った。

 また、機器メーカー、地上/衛星放送事業者、CATV事業者などの各委員からは、今回の報告について概ね前向きなコメントがなされ、課題解決に取り組む姿勢が示された。2020年のSHV放送については「非常にアグレッシブ。SHVの画質の素晴らしさだけでなく、ビジネススキームがちゃんと成立するか。これからの課題」(WOWOW)といった声や、「視聴者の本当にニーズに応えなければいけない。スケジュールが大幅に前倒しされ、『奇跡を起こそう』というぐらいの話だが、やらなければいけない」(日本テレビ)といった意見も上がった。

 座長の東京大学大学院 情報学環長 須藤修教授は、「今後なにを重点的に進めるかは、今回まとめた。これを“成長戦略”とするためには、ビジネスモデルにもっていかなければならず、誰がいつ、どう行動するか。どうコラボレーションするか、明確化する必要がある。市場創出に向けた行動が可能になるよう検討を進めてほしい。『奇跡』という意見もでたが、やり遂げなければならない。必要な作業はできるものから着手してほしい」とまとめた。

 同検討会の第3回は4月下旬の開催を予定しており、そこで最終取りまとめを行ない、親会となるICT成長戦略会議に5月に報告する。

(臼田勤哉)