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クリプトン、HQM STOREで24/192の新録「四季」を配信

今後は「ハイレゾを手軽に楽しめる」ハード開発も

ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8-1~4をパソコンで再生しているところ

 クリプトンは、展開しているハイレゾ音楽配信サイト「HQM STORE」において、最新録音盤の「ヴィヴァルディ:四季」を、7月26日より24bit/192kHzで独占配信開始する。アルバム単位での販売となり、価格は3,500円。

 26日に、クリプトンはHQM事業の説明会を開催。新たな配信コンテンツや、今後の事業方針などについて説明が行なわれた。

新録「ヴィヴァルディ:四季」の24bit/192kHz配信

 26日より配信される「ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集『四季』作品8-1~4」は、'12年10月にイタリア・ウンベルティーデの聖クローチェ美術館にて録音されたもの。24bit/192kHz収録のBlu-ray Discオーディオとして、2月よりカメラータ・トウキョウから発売中の作品(CMBD-80004/3,500円)の配信バージョンとなる。カメラータのHQM STORE配信作品において、アナログ音源からデジタル化したファイルではなく、新録での24bit/192kHz作品の配信は初となる。ファイルはFLAC形式/ステレオ。

 配信される新録の「四季」は、イ・ムジチ合奏団の1970年代のリーダーを務めたピーナ・カルミレッリの愛弟子であるパオロ・フランチェスキーニが独奏バイオリンを担当。師であるカルミレッリ愛用のバイオリンの名器を使用している。弦楽合奏は、フランチェスキーニが率いるイタリアのペルージャ音楽院の教授らで構成する「イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ」。オルガンとチェンバロを一体化させた楽器・クラヴィオルガンも使用。これを演奏するクラウディオ・ブリツィが中心となり、「これまで数多く発売された『四季』の録音とは一線を画した、創意あふれる音楽性豊かな演奏」としている。鳥のさえずりや雷鳴、猟銃の銃声、鐘の音などを模した様々な音も演奏に加えられている。

録音が行なわれたイタリア・ウンベルティーデの聖クローチェ美術館。左の写真は、クラヴィオルガンを演奏しているところ
カメラータ・トウキョウの中野浩明社長

 カメラータ・トウキョウの中野浩明社長も来場し、HQMで24bit/192kHzの新録音源を配信開始するに至った背景として「ハイレゾファイルを再生できる機材が揃ってきたので、その良さを体験していただける時期になってきたのでは」と説明している。なお、配信楽曲の音質については、「(既発売の)BDオーディオ版と同等の高音質音源」だという。

 カメラータ・トウキョウは、ここ最近はBDオーディオでのタイトルリリースが中心となっていたが、HQM配信についてもコンスタントに続けるとしており、中野社長は「月1は確約する」とした。新録についても、現在ウィーンでレコーディングを行なっており、直近1~2年に録った音源などを順次配信する予定。録音後、編集などで早くても2カ月を要するが、既に録りためたものについても同時進行で準備を進めており、こうした中から、CDでも発売された作品を中心に、比較的新しい作品をHQM配信でもリリースしていくという。

「HQM GREENシリーズ」も作品追加

写真はVirtuosi del canto「ロッシーニ:弦楽のためのソナタ全集」のCD版

 HQM STOREで、CD音質(16bit/44.1kHz)から24bitの176.4kHz、または88.2kHzに高音質化したファイルを配信する「HQM GREENシリーズ」の新作も発表。

 26日より、日本の新進弦楽四重奏団「Virtuosi del canto」(ヴィルトゥオージ デル カント)による、ロッシーニ「弦楽のためのソナタ全集」を24bit/176.4kHz、24bit/88.2kHzのFLACで配信する。

 Virtuosi del cantoは、辻井淳(バイオリン)、森園ゆり(バイオリン)、宇田川元子(チェロ)、森園康一(コントラバス)の4名による、ビオラを除いた異色の弦楽四重奏団として2008年より活動を開始。「4名が大まかに奏法を統一し、楽器のコンディションも揃え、演奏時の合図をできる限り行なわない」という、ユニークな発想に基づき演奏を行なっている。

Virtuosi del cantoも来場。左から森園康一氏、辻井淳氏、宇田川元子氏

 「弦楽のためのソナタ全集」の録音は2011年9月に滋賀県のガリバーホールで行ない、CDは既に発売されている。HQMでの配信楽曲は、CDマスター音源を、クリプトンの高音質化技術「HQM GREEN」システムによって24bitの88.2kHz/176.4kHzにハイレゾ化したもの。収録時間はCDと同じ79分25秒。

 26日の説明会に、Virtuosi del cantoのメンバーもゲストとして来場。辻井淳氏は、活動のコンセプトとして「“CDを1回聴いたら終わり”ではなく、継続して気軽に聴いてもらいたい。内容が濃すぎると毎日は聴いてもらえなくなる。演奏家自身が、客観的に繰り返し聴けることを目指してきた」と説明。そのために、前述した「奏法のおおまかな統一」や、「楽器のコンディションを揃える」といったことに取り組んでいるという。楽器は同じ職人が管理し、松ヤニも同一のものを使用している。

“ピュアオーディオに近い”スピーカー開発も

クリプトンの濱田正久代表取締役

 HQM STOREでの高音質配信は'09年からスタートし、約4年が経過。現在の楽曲数は282タイトルとなっている。クリプトンの濱田正久代表取締役は、開始当初を振り返り「我々が始めた頃は高音質配信は、珍しかったが、現在は、高音質音楽は当たり前の世界が来て、作り手の音をそのまま届けるのは夢ではなくなったと感じている」と述べた。

 また、「開始当初はハードウェアの再生環境がまだ整っていなかったので、スピーカーのKX-1000やKS-1、KS-3などを開発した。もう一つ足りなかったのは、CDライクな簡単な再生環境。パッケージメディアで高音質を再現するため、行きついたのがBlu-ray Discオーディオ。我々とカメラータさん、キューテックさん、メモリーテックさんの4社でアソシエーションを立ち上げ、パッケージメディアで高音質音楽を簡単に聴ける世界を作り上げてきた。現在、ユニバーサルさんも今年5~6月頃からフランスやドイツで(高音質BDを)リリースしていて、世界的にもBDパッケージメディアの波が来て、環境が整ってきたのでは。ここでもう一度配信に戻って、我々としては新作をリリースしていこうと考えている」として、今回の「ヴィヴァルディ:四季」などを紹介した。

 さらに、「我々はハード屋でもあるので、HQM GREENのような原音探求の技術開発にも力を入れていく。ただ高音質というだけでなく、音楽的に優れた配信サイトを目指す。これまで、スピーカーはKX-3まで作ってきたが、今後、さらに優れた高音質音楽が簡単に聴けるような、ピュアオーディオに近いハードウェアを開発して、みなさんにお届けしたい」とスピーカーなどの開発にも意欲を見せた。

レコード協会による、CD/配信市場の推移
「ヴィヴァルディ:四季」のBD(左)とCD(右)
会場でCDとハイレゾ配信の試聴も行なった

(中林暁)