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クリプトン、チューリップのベストをハイレゾ配信。「心の旅」や「青春の影」を収録

チューリップ・ガーデン

 クリプトンは20日、展開しているハイレゾ音楽配信サイト「HQM STORE」において、「オリジナルスタジオマスターテープ・ハイレゾ音源シリーズ」の第2弾として、チューリップのベストアルバム「チューリップ・ガーデン」を192kHz/24bitで配信開始した。各12曲収録の2タイトルに分けられており、価格は1タイトル3,500円。単曲販売は行なわない。

 「オリジナルスタジオマスターテープ・ハイレゾ音源シリーズ」は、現存するアナログテープのスタジオマスターを192kHz/24bitでデジタルリマスタリングし、HQM STOREにおいて192kHz/24bitのFLAC形式で配信するシリーズ。2014年4月の第1弾では、森山良子やカメラータ・トウキョウの作品などを配信している。

オリジナルの6mmマスターテープ

 第2弾では、1972年結成のバンド・チューリップが、1977年にリリースした初のベストアルバム「チューリップ・ガーデン」を2タイトルに分けて配信する。「チューリップ・ガーデン」は、デビュー曲「魔法の黄色い靴」から、12枚目のシングル「ブルー・スカイ」までのAB面を交互に並べた24曲収録のベスト・アルバム。マスターテープは、音楽出版社のシンコーミュージック・エンタテイメントが保有しているもの。今回の配信では、「チューリップ・ガーデン 1」として、「魔法の黄色い靴」から「一本の傘」までの12曲を収録。「チューリップ・ガーデン 2」には、「ぼくがつくった愛のうた(いとしのEmily)」から「恋人への手紙」までの12曲を収録している。

 オリジナルマスターテープからハイレゾ音源へのデジタルリマスタリングには、JVCマスタリングセンターが協力し、クリプトンの電源ケーブル「PC-HR1000」や、電源ボックス「PB-HR1000」、オーディオボード「AB-HR5」などの機材を用いている。

ハイレゾ音源は「当時のスタジオの音がする」

 メディアを対象に開かれた試聴会おいて、チューリップのプロデュースを担当していたフールオンザヒル新田和長社長が、当時の思い出などを語った。新田氏は1969年に東芝音楽工業(後の東芝EMI、現EMIミュージック・ジャパン)に入社し、オフコースやトワ・エ・モワなどを担当。チューリップとはデビュー前から関わりがあったという。

フールオンザヒル代表取締役社長の新田和長氏
新田氏が携わった作品の一部

 新田氏によれば、当時のチューリップは音作りに対しとても実験的なグループで、従来の方法とは異なった録音の仕方をいくつも試していたという。デビュー曲の「魔法の黄色い靴」のレコーディングでは、「あの曲は両サイドからアコースティックギターが鳴るが、ブリティッシュロックっぽいテイストにしたくて、フェイザーをかけて位相を変えることになった。ところが当時、フェイザー機材がまだ日本に入ってきていなかったので、録音した音をスタジオ内に置いたスピーカーで再生し、エンジニアと私が2人でそれぞれマイクを持って、マイクを振るように交互に左右のスピーカーに向けて録音をした」と、録音の苦労話を語った。

レコードを手にして当時の思い出を語る新田氏

 「そうやって録れたものを聴くと、やってると言えばやってるし、いまいちだなと思えばいまいちだし、というような出来で、それが悔しくて、3枚目の『心の旅』ではアコースティックギターの音に電気的な処理をして、再挑戦している」と、新しいサウンドを作るために模索をしていた当時を振り返った。ちなみに、苦労して録音したそれらの音はマスターテープに残っており、今回のハイレゾ音源でも聴くことができるとのこと。

 試聴会では、収録曲の中から、「青春の影」と「心の旅」の2曲が再生された。いずれも、それぞれの楽器の輪郭が明確で、バンドサウンドとボーカル、コーラスが絡みあい、臨場感のある仕上がりとなっていた。新田氏は今回ハイレゾ化された音について、「当時のスタジオで実際に聴いていた音がする。トラックダウン済みのマスターテープを、ノイマンのカッティングマシーンの顕微鏡で覗きながら、ラッカー盤(レコードの原盤)に溝を刻んでいた時の興奮を思い出した」と述べた。

(一條徹)