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シャープ、'14年第1四半期は“順調”。情報家電黒字化
お茶プレッソ11万台。新規事業「1割バッター目指す」
(2014/8/1 20:00)
シャープは、2014年度第1四半期(2014年4月~6月)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比1.9%増の6,197億円、営業利益は55.0%増の46億円、経常損失は127億円の赤字から54億円の赤字に縮小。当期純損失は179億円の赤字から、17億円の赤字に縮小した。
第1四半期は“順調”。デジタル情報家電黒字化
シャープの高橋興三社長は、「第1四半期は順調に推移しており、経常利益と最終利益は、いずれも前年同期から大幅に改善している。中期経営計画についても計画通りに進捗している。9月に到来する社債1,000億円の償還も、確実なものとなった。しかし、手を緩めることなく、中期経営計画を必達し、再生と成長の実現に邁進していく」と総括した。
また、「エネルギーソリューションは、国内太陽電池の販売減少や海外デベロッパーのプロジェクト案件の減少で大幅な減収となったが、デジタル情報家電、ビジネスソリューション、液晶で、このマイナスをカバーした」と語った。
部門別業績は、プロダクトビジネスの売上高が前年同期比1.0%減の3,991億円、営業利益は29.6%減の137億円。
そのうち、デジタル情報家電の売上高が6.1%増の1,686億円、営業利益が前年度の13億円の赤字から、26億円の黒字に転換した。
液晶テレビの販売金額は6.7%増の857億円、販売台数は11.0%増の173万台となった。通期の販売台数見込みは820万台。
「液晶テレビは、国内で販売金額が前年を下回ったものの、中国を中心に海外で伸張。台数、金額ともに前年同期を上回った。4Kモデルおよびクアトロンプロを軸とした大型化、高精細化戦略を推進。新興国を中心とした重点市場において、地域特性にあわせた特長商品を展開するとともに、欧州における構造改革の推進も同時に行なっていく」とした。
また、携帯電話の販売金額は前年同期比1.2%減の496億円、販売台数は5.7%減の123万台。「携帯電話は海外メーカーとの競争激化により、台数、金額ともに前年同期を割り込んでいるが、通信事業全体のなかではタブレットの販売増が貢献し、増収になっている。今後は、高精細、省電力を生かすことができるIGZO対応製品の拡大に取り組む」とした。
プロダクトビジネスのうち、健康・環境の売上高は前年同期比0.3%減の821億円、営業利益が50.7%減の31億円。
「白物家電は、消費税駆け込み需要の反動はほとんどなかったといえる。3月は、大型冷蔵庫が3倍、エアコンも3倍、洗濯機も好調な売れ行きをみせたが、4月にはその反動も懸念されたが、流通在庫が減少したため、これを埋めるための出荷が相次いだ。さらに、昨年7月は猛暑のためにエアコンが品薄となり、販売ができずに低迷したが、今年はその反動で、7月に入っても、エアコンの販売が前年実績を上回っている」などとしたが、「円安による輸入製品の採算悪化などにより収益が低下している。伸張しているアジアに向けた販売など、ASEANを中心とした地産地消の推進、営業体制の強化・拡充、新たな需要を喚起するカテゴリーの商品の創出に取り組む」とした。お茶プレッソが当初計画の1万2,000台を上回り、約10倍となる11万台の販売に達したことなども示した。
エネルギーソリューションの売上高は18.1%減の690億円、営業利益は97.3%減の1億円。ビジネスソリューションの売上高は2.1%増の792億円、営業利益は1.8%増の77億円となった。
液晶は中小型で利益。テレビ向けは昨対でマイナス
一方、デバイスビジネス部門の売上高は前年同期比4.2%増の2,659億円、営業利益は前年同期の93億円の赤字から、13億円の赤字に縮小。そのうち、液晶の売上高は前年同期比6.8%増の2,069億円、営業利益は95億円の赤字から21億円の黒字に転換。電子デバイスの売上高は3.8%減の589億円、営業利益は1億円の黒字から、35億円の赤字に転落した。
「前年同期には大型液晶の生産稼働調整や、中小型液晶の受注がずれ込むといった影響があったが、重点ユーザーを中心にしたスマートフォン向け中小型液晶の出荷が伸張している。利益率の高い中小型液晶の売り上げ構成比が増加しており、金額では65%にまで増えている。一方で、テレビ向けの大型液晶は前年実績を割り込んでいる」(シャープ・高橋社長)としたほか、「亀山第2工場の中小型液晶比率は、2013年度第4四半期は28%であったものが、2014年度第1四半期は35%にまで高まっている。これを今年中には50%以上にまで引き上げていくことになる。液晶パネルはテレビ向けは利益が出ていない。すべての利益が中小型液晶によるものである」(シャープ 代表取締役兼副社長執行役員の大西徹夫氏)とした。
とくに中国のスマホメーカー向けの出荷が増えており、「4~6月でも中国企業向けの出荷数は4倍になっている。下期はさらに増えることになるだろう。フルHDパネルなどの引き合いが予想を大きく上回るものになっている」とし、「いま持っている設備のままで、中小型液晶の比率は50%にまで持っていける。それ以上増やすには追加の投資が必要になる。しかし、これも一部の機器やプロセスの変更で済むため、数10億円の投資規模で済む。少ない投資で済むということは、短期間で変更が完了するということでもある」などとした。
さらに、大型液晶パネルについては、「60型以上のパネルは、ほとんどが堺工場で生産している。32型は全世界でパネルが逼迫しているが、これは外からも仕入れていくことになる」などと述べた。
先頃発表したフリーフォームディスプレイについては、「車載がメインとなり、足が長いビジネスになる。2014年度初めからスタートしているものであり、そこから3年を経過した2017年度あたりが、ビジネスにつながるタイミングとしては最短になるだろう。このディスプレイをスマホに展開しないのかという声もあるが、スマホはもともと四角いものであり、すべてのアプリが四角い画面向けに作られている。いきなり変な形のスマホを投入しても受け入れられない。アプリを自由に変えることができるシステムがあれば可能性があるかもしれない」などと述べた。
一方、2014年度の通期業績見通しは、期初見通しから変更はなく、売上高は前年度比2.5%増の3兆円、営業利益は前年度比7.9%減の1,000億円、経常利益は前年度比6.2%減の500億円、当期純利益は前年度比159.5%増の300億円とした。
だが、部門別業績見通しでは、売上高では電子デバイスにおいて、200億円減の4,300億円へと下方修正。修正分は全体の調整額のなかで吸収する。また、営業利益では、エネルギーソリューションにおいて、50億円の赤字見通しから、30億円の黒字に修正。電子デバイスでは、150億円から70億円に縮小する見通しだ。
「エネルギーソリューションの営業利益を上方修正したのは、太陽光パネルのビジネスだけでなく、ソリューションとしてのビジネスに足がかりができたことが大きい。一方で、欧州ビジネスについては、事業構造改革を着実に推進し、収益改善に取り組む」とした。また、「太陽電池パネルだけではビジネスにはならないが、太陽電池パネルの製造を持っておくことは大切である」などとした。
新事業領域への取り組みについては、2013年5月に発足した新規事業推進本部と、2014年4月に発足した市場開拓本部を中心にして新たな技術開発と、市場投入に取り組んでいることを示しながらも、「だが、新たな技術というのは、10個のうち、1個成功すればいいという程度。イチローでも4割は難しい。我々は、まずは1割バッターを目指そうとしている」と語った。