ニュース

デジタルアンプ強化、Atmos/DTS:X対応のパイオニアAVアンプ「SC-LX89/79/59」

 パイオニアは、Dolby Atmos/DTS:X対応AVアンプの新モデル3機種を10月中旬に発売する。価格は、ハイエンドモデル「SC-LX89」が395,000円、「SC-LX79」が295,000円、「SC-LX59」が210,000円。

最上段左から「SC-LX59」、「SC-LX89」

 各機種とも、新たにHDCP 2.2やHDRに対応。無線LANも内蔵し、ワイヤレスダイレクト接続やBluetooth受信に対応するなど、機能強化されている。また、LX89のみ、USB DAC機能を搭載している。

 いずれのモデルも、新サラウンドフォーマットのDolby Atmos、DTS:Xに対応。DTS:Xについては、後日アップデートでの対応となる。

 最大出力はLX89が360W×9ch(4Ω)、LX79が340W×9ch(4Ω)、LX59が310W×9ch(4Ω)。

最上位モデル「SC-LX89」

 独自の自動音場補正技術「MCACC Pro」も搭載。周波数と音圧レベルに加え、時間軸の要素を加えた音場補正が可能。低域の再現力を向上させる「デュアル サブウーファーEQ補正」、全帯域の位相を揃える「フルバンドフェイズコントロール」、マルチチャンネルコンテンツのソースに由来する低音のズレを全自動でリアルタイムに補正する「オートフェイズコントロールプラス」も利用可能。

 3機種とも、AtmosとDTS:Xの再生時に、この「MCACC Pro」を掛けあわせて使用する事が可能。「距離、レベル、音色に加え、全スピーカーの全体域にわたる位相を制御し、極めて精密なスピーカードライブを行なう事ができるので、オブジェクトを用いたリアルな空間表現も忠実に再現できる」という。

「SC-LX79」

 アンプ部には、最新の「ダイレクト エナジーHDアンプ」を採用。微小信号からの優れた追従性や高速応答性など、クラスDアンプの特徴をさらに活かすため、より高品位な新型カスタム電解コンデンサを搭載。「力強さとしなやかな表現力を一段と高めた」という。

最新の「ダイレクト エナジーHDアンプ」を採用

 上位モデルのLX89/79では、クラスDアンプに入る前の部分において、小信号をPWM変換するオペアンプ、Direct Power FETを動作させるICを、セパレート構成で採用。それぞれのデバイスをより高品位なものにでき、音質の向上が図れるという。

小信号をPWM変換するオペアンプ、Direct Power FETを動作させるICをあえてセパレート構成で採用

 さらに小信号部と大電力部が空間的に離れる事で、お互いの信号処理への干渉も排除。新規開発のルビコンチップフィルムコンデンサも搭載している。

 最上位のLX89はさらに、シールドDC/DCコイルをデジタル回路部に搭載。中高域だけでなく、低域でのより繊細な表現が可能になったという。デジタル回路には3機種とも、低ESRカスタムコンデンサも新たに導入し、信号精度を高めた。

 LX89のみの特徴として、アナログ電源部に漏洩磁束を低減する専用チューンを施した電源トランスを採用。時速ノイズを大幅に低減し、映像音声共に、信号に与える影響を低減。デジタル/アナログ電源を独立させた「アドバンスドインディペンデント・パワーサプライ設計」と合わせ、クリアな信号伝送に寄与しているという。

新型のカスタム電解コンデンサ
左がシールドDC/DCコイル、右が低ESRカスタムコンデンサ

 ダイレクト エナジーHDアンプは高効率でヒートシンクが小型であり、回路全体がコンパクトなのも特徴。それを活かし、筐体内でパワー部とプリ部を独立させた、セパレート構造を採用。

 パワー部は箱のなかに入っており、銅板でシールド。シャーシと箱の間には絶縁体のインシュレータも配置している。なお、パイオニアではパワーアンプのケースは「お弁当箱と呼ばれている(笑)」という。

 インシュレータは、試聴を繰り返しで作りこんだという新形状の「定在波制御インシュレータ」。内部構造の平行面を無くし、空洞共振を原理的に発生させない事で、音の定位や音数、音階がより明確になり、チャンネル間の繋がりや俊敏な音へのレスポンスも向上したとする。

「SC-LX59」

ESSのDACを搭載。柔軟な出力アサインも特徴

 DACには、ESSの「SABRE32 Ultra Audio DAC ES9016S」を2基搭載。オーディオ専用のカスタムコンデンサや、ルビコンと共同開発した薄膜高分子積層コンデンサ「PML MUコンデンサ」なども搭載し、抑圧感を抑えた開放的なサウンドを実現したという。

 さらに、情報量に満ちたエネルギッシュさも実現するため、JRCと共同開発したオペアンプ「NJM9585」も採用している。

 出力は、アサインの自由度が高い11.2chプリアウトに対応。Atmos、DTS:Xの7.1.4デコードが可能で、別途2ch分のパワーアンプを組み合わせる事で、柔軟なシステムが構築可能。7.2.4ch(フロントプリアウト接続)、7.2.4ch(サラウンドバックプリアウト接続)、7.2.2ch(フロントバイアンプ+トップミドルプリアウト接続)、9.2.2ch(フロントワイド&ハイト&トップミドル接続)が構築できる。

ドルビーイネーブルドスピーカーも最適な設定で利用できる

 ドルビーイネーブルドスピーカーも利用可能。通常、イネーブルドスピーカーを使う場合、指向性のあまりない低域はサブウーファに一括で振り分けられるが、180Hz付近の指向性の感じられる音までサブウーファから出力されてしまう。そこで、低域を低音と重低音に分けて管理、180Hz付近の音域をイネーブルドスピーカーと相関関係にある、真下のスピーカーに割り当てる事で、精確なイメージの再現ができるという。さらに、MCACC Proでは天井での音の反射を考慮した距離測定機能を採用している。

ハイレゾ再生機能も豊富

 DLNA 1.5に準拠したネットワークプレーヤー機能や、USBメモリなどに保存した音楽ファイルの再生機能を用意。192kHz/24bitまでのWAV/FLAC/AIFF/Apple Losslessや、5.6MHzまでのDSDファイル再生に対応。DSDはダイレクト再生が可能。FLAC/WAVのマルチチャンネルファイル(96kHz/24bit 5.1ch)も再生できる。

 音声信号を32bitまで拡張処理する「Hi-bit 32 Audio Processing」も搭載。Apple Lossless、AIFF、FLAC、WAVにも適用できる。

 また、LX89ではUSB DAC機能も搭載。192kHz/32bitまでのPCMデータと、DSDの再生も可能。PC側のクロックと同期しないアシンクロナス伝送にも対応、ジッタを排除した再生を可能にしている。

 5GHzにも対応した無線LAN IEEE 802.11a/b/g/nも本体に搭載。ワイヤレスダイレクト接続もできる。Bluetooth受信にも対応、AirPlayもサポートしてる。

 スマートフォン/タブレット向けに、アプリ「iControlAV5」も用意。音場設定や各種操作、ネットワーク音楽再生機能での楽曲選択などがアプリから行なえ、カラフルなCG画像で動作状態が確認できる。

 ネットワークの設定や「iControlAV5」のインストールまで、わかりやすいウィザード形式で紹介する「Start-up Navi」アプリも用意。配線接続やAVアンプの基本機能、リモコンの操作ボタンの位置なども教えてくれる「ビルトインAVナビゲーター」も用意している。

4K/60p/4:4:4の伝送が可能

 HDMI端子は8入力(フロント×1、MHL兼用リア×1含む)、3出力を装備。4K/60p/4:4:4の伝送が可能なHDMI 2.0対応のHDMI端子を備え、4K映像のパススルーや、SD/HD映像の4Kアップスケーリング出力も可能。4K映像やHD映像のノイズを軽減する「トリプルHDノイズリダクション」機能も備えている。HDCP 2.2にも対応する。

 同社のBDプレーヤーとHDMI接続した場合には、圧縮音楽を高音質化する「オートサウンドレトリバー」機能と、圧縮動画のノイズを低減する「ストリームスムーサー」が利用可能。独自のPQLS技術に対応したBDプレーヤーと接続した場合は、ジッターレスでの伝送も可能となる。

 LX89のHDMI以外の入力は、AV×2、7.1ch×1、コンポーネント×2、光デジタル×2、同軸デジタル×2。出力はAV×1、11.2ch×1、コンポーネント×1、光デジタル×1。消費電力は370W、外形寸法は435×441×185mm(幅×奥行き×高さ)、重量は18kg。

「SC-LX89」

 LX79は、AV×2、コンポーネント×2、光デジタル×2、同軸デジタル×2。出力は、AV×1、11.2ch×1、光デジタル×1。消費電力は370W、外形寸法は435×441×185mm(幅×奥行き×高さ)、重量は17.6kg。

「SC-LX79」

 LX59は、AV×2、コンポーネント×1、光デジタル×2、同軸デジタル×2。出力は、AV×1、11.2ch×1、光デジタル×1。消費電力は330W、外形寸法は435×441×185mm(幅×奥行き×高さ)、重量は15.4kg。

「SC-LX59」

AV事業を統合したオンキヨーとパイオニア、今後の製品作りの体制は?

シアター&オーディオ事業本部 マーケティング部の佐藤誠氏

 今年の3月にAV事業を統合したオンキヨーとパイオニア。両ブランドの今後の製品について、シアター&オーディオ事業本部 マーケティング部の佐藤誠氏は、「パイオニアとオンキヨーの製品が似通ってしまっては意味がない。それぞれのブランドのファンの皆様に、満足していただける製品を出していこうと考えている」と説明。

 その上で、マルチチャンネル再生であってもステレオ再生と同様に、隣り合う2つのスピーカー間、その全てにおいて等しくステレオフォニックを実現する事で、クリエイターの意図した音の世界を忠実に再現できるというパイオニアの音響哲学「マルチチャンネル・ステレオフォニック・フィロソフィー」を紹介。

 さらに、「新しい会社になってもそれは維持している。パイオニアの特徴は “こう”、オンキヨーの特徴は“こう”だと、社内の中でキッチリと確立し、シェアし、それぞれのファンに満足していただける商品を手がけられる、その仕組み作りを続けているところ。その取組が、パイオニアとオンキヨーの各ブランドの今後にもつながっていく。新しいパイオニアブランド、その最高級シリーズであるLXの音を楽しんでいただきたい」と語った。

(山崎健太郎)