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自動運転時代の車内エンタメ、Android Auto/CarPlay対応機器が東京モーターショーに

 第44回東京モーターショーが10月30日~11月8日まで東京ビッグサイトにおいて開催される。一般公開の30日に先駆けて、報道関係者向けにブースが公開され、記者発表会などが行なわれた。展示の中から、AV関連や通信連携技術などを中心にレポートする。

ヘッドアップディスプレイなどを用いたパイオニアの体験型展示
会場の東京ビッグサイト

 東京モーターショーの開催時間は30日が12時30分~20時、それ以外の月曜~土曜が10時~20時、日曜が18時まで。入場料は1,600円(前売1,400円)、高校生500円(前売400円)、中学生以下は無料。月曜日から土曜日の午後4時以降に入場可能なアフター4入場券(700円)も用意する。

 会場には、自動運転や燃料電池など今後の技術を見据えた各社のコンセプトカーなどが数多く展示された。各自動車メーカーの最新車種などの詳細は、僚誌Car Watchでレポートしている

自動運転時代に向けた、安全と車内エンタメの様々な提案

 パイオニアは、体験型のコンセプト展示「In-Vehicle Context Awareness(インビークル・コンテキスト・アウェアネス)」を設置。開発中の走行空間センサー「3D-LiDAR」や「AR HUD(ヘッドアップディスプレイ)ユニット」などを連携させたもので、シミュレータ画面を使って運転しているような感覚で最新技術を体験できる今回のような展示は同社初となる。

パイオニアの「In-Vehicle Context Awareness」

 今回の「In-Vehicle Context Awareness」は、今後の到来が予想される自動運転社会に向け、状況ごとにドライバーが必要とする情報を、先読みして提供するというもの。自動運転を実現するためのキーデバイスとされる走行空間センサーの「3D-LiDAR」などを活用している。また、同社が'12年から展開している、AR(拡張現実)情報をフロントガラスの前方に映し出す「AR HUDユニット」を発展させることで、運転に集中しながら必要な情報を確認しやすくしている。

 今回用意された体験デモでは、前方の映像を見てアクセルやブレーキ、ハンドル操作を実際に行ないながら情報を確認可能。シートに座ると、まずはルームミラー部の車内カメラで個人を認証し、ドライバーや助手席の友人などを判別し、いつも走るルートや目的地などを推定して案内する。また、ドライブの前に天気やニュースなどの知りたい情報を前方のディスプレイで確認できる。

AR HUDに様々な情報を表示する
コントロールボタン搭載ステアリング、タブレットのようなディスプレイが連動
カメラの顔認証で、ユーザーに合わせた走行ルートなどを提案

 走り出すと、その友人とよく聴く音楽などを自動で再生。今回のデモではリストバンド型の生体センサーを装着しており、緊張や眠気、疲労などを検知。例えば心拍の変化で眠気を感知すると、覚醒効果のあるアロマを噴出したり、目を覚ますような曲を自動で再生するといったことを行なう。

 また、推定していたルートの先でゲリラ豪雨が発生すると、冠水の危険があることからルートを変更。前方のAR HUDでは、車線変更や右左折などを誘導する矢印が表示される。ヘッドレストの左右には立体音響に対応したスピーカーを内蔵。ドライバーから見えにくい場所から歩行者が来たときに、歩行者が持っているスマホなどのWi-Fi通信と連動し、歩行者のいる方向が分かるようにスピーカーからの音とHUD映像でドライバーへ確実に知らせる。

 HUDの表示にはRGBレーザー光源モジュールを使用しており、日中の明るい場所でも視認性を高めている点などが特徴。今後は車載だけでなく、スマートグラスのような小型デバイスへの搭載も検討しているという。

 今回提案されている技術は、今後自動車メーカーと協力して実現を目指すもので、'16年~'17年に掛けて、利用可能な技術から順に採用される見込み。

リストバンド型の生体センサーと連動
ヘッドレスト部のスピーカー
RGBレーザー光源によるHUD表示の例
レーザー光源モジュールなども参考展示

 トヨタは、ハンドルから手を離さずに音声だけで音楽や情報などのサービスを利用できる「Ha:moエージェント」をデモ。HUDで目的地までの距離やルート案内などを表示するほか、画面の右端にニュースや、音楽再生、駐車場検索などの機能を表示できる。

トヨタの「Ha:moエージェント」

 1人乗りの「パーソナルモビリティ」などの狭いコックピットでも視点を前から動かさずに情報を確認できる点などが特徴で、現在のナビなどに搭載されている音声認識と違う点として、認識機能をボタンなどで立ち上げなくても常に音声を認識。「ニュース」や「音楽」、「トイレを探して」などと発話すると、ニュースの読み上げや音楽再生など、適した機能がすぐに利用できる。

 「Ha:moエージェント」の機能は、現在実証実験しているHa:moのパーソナルモビリティでの採用を見込んでいるが、今後はそれ以外の一般車への搭載も想定して開発を続けていくという。

手をハンドルから離さず音声で操作
実証実験に使われるHa:moのパーソナルモビリティ
Ha:moエージェントのサービスやシステム構成など

 日産は、“ドライバーの意思に応じて空間全体がトランスフォームする”という自動運転対応の「Nissan IDS Concept」を紹介。大きなディスプレイで映像表示をしながら自動運転する「パイロットドライブモード」と、ドライバーが運転を楽しみたいときに、ステアリングが現れてディスプレイが隠れる「マニュアルドライブモード」を選択可能。モードに応じて、4つあるシートの向きも変化し、自動運転中は車内でコミュニケーションがとりやすいように全員が向き合うような配置になる。

日産の「Nissan IDS Concept」(パイロットドライブモード時)
自動運転中のイメージ
マニュアルドライブモード時はステアリングが現れる

スマホのアプリや通信機能と連携するAndroid Auto/CarPlay

 三菱自動車は、「MMC LABO」というコーナーで、GoogleのAndroid Autoや、アップルのCarPlayに対応した「スマートフォン連携ディスプレイオーディオ」を展示している。

三菱自動車の「スマートフォン連携ディスプレイオーディオ」展示

 既報の通り、定額制音楽配信サービスの「AWA」が、Googleの車載向けプラットフォームの「Android Auto」に10月27日より対応。これに合わせた参考展示として、三菱自動車のブースでAWA音楽再生などの機能も体験可能となっている。

 三菱が“カーナビ”ではなく“ディスプレイオーディオ”と呼んでいる通り、タブレットのようにも見えるフラットなディスプレイを備えた端末で、タッチや音声操作により、ナビを中心とする様々なアプリが利用可能。

 Android Autoは既に欧州向けパジェロに採用されており(日本でのサービス提供時期は未定)、画面下側に「ルート案内」、「通話」、「音楽」、「その他アプリ」の4つのアイコンを用意。Google Mapsを使ったナビや、通話、音楽再生などを、スマホのデータ通信で利用できる。ステアリングなどに備えたボタンを長押しすると、音声認識で機能を呼び出せる。

 AWAのアプリがAndroid Autoに対応したことで、展示されたシステムでAWAの音楽配信を体験可能。スマホアプリで作ったプレイリストなどをそのまま車の音楽再生にも利用できる。音楽アプリは、SpotifyやTuneInなどがAndroid Autoに対応している。

 今後は、カーナビのGPSと連動させて、場所やシーンなどに最適なプレイリストをリコメンドするといった機能も予定されている。その他にも、車両の情報や、走行中/停止中といった車の動作状態に合わせた機能なども実装可能だという。

AWAの再生画面
Android Auto対応端末でのGoogle Mapsを使ったナビ表示
HDMI入力などにも対応する

 CarPlayのデモ機は、iPhoneなどのiOS端末をそのまま活かしたようなUIが特徴。アイコンを大きくすることで押しやすくなっているが、Android Auto用端末のように車載用のトップメニューを設けるのではなく、iPhoneユーザーが使い慣れた操作で利用できるようにしている。

 アプリはアップルが認証したSpotifyなどが利用可能。Siriを使った音声操作が可能で、友人のiPhoneとメッセージのやり取りなどが行なえる。

CarPlayの展示

 パイオニアは、'14年に国内で初めてCarPlayに対応したAVメインユニットの「SPH-DA700」を展示。ルート案内や電話、メッセージなどの機能を、運転に集中したまま行なえる点などを紹介している。また、北米向け製品として、Android Autoに対応した「AVIC-8100NEX」を展示。新たなプラットフォームにいち早く対応している点をアピールしている。

パイオニアのCarPlay/Android Autoに関する参考展示

(中林暁)