ミニレビュー

「タッチでジョグダイヤル」が快適!iPad版 Final Cut Proを体験

Final Cut Pro for iPad。価格は月額700円もしくは年額7,000円のサブスク

アップルは5月24日から、動画編集アプリ「Final Cut Pro for iPad」と音楽制作アプリ「Logic Pro for iPad」を配信する。月額700円もしくは年額7,000円。

ビデオ編集や音楽制作というと、PC/Macでやるのが通常。そこでiPadを使う理由はなんなのか、気になる人もいそうだ。

ひと足さきに試させていただいたが、ことFinal Cut Proについて言えば「タッチでの編集作業」自体の面白さ・楽しさがポイントだと感じた。

どんなところが面白いのか、少しお伝えしてみたい。

利用開始時にはサブスクである旨の説明が。最初の1カ月は無料で使える

ジョグダイヤルで快適編集

iPadの特徴はやはり「タッチ」だ。

ただ、タッチで操作することは常に快適、という話ではない。多くのクリエイター向けツールがPCで使われているのは、「キーボードショートカット」という快適な機能が存在するからだ。

じゃあ、iPad版のFinal Cut Proはどう快適で楽しいツールになっているのか?

いろんな見方はあると思うが、筆者が「いいなあ」と思ったのが「ジョグダイヤル」だ。

タッチを活かしたジョグダイヤル。もちろん隠して操作することも可能

iPad版ではタッチパネル上にUIが表示され、再生コントロール用のコントローラーとして使える。タッチしてクルクルすれば、動画をフレーム単位で編集できる。

使った経験がある人はお分かりだと思うが、ジョグダイヤルでの編集はとても楽しい。

ちょっと指先で弾くだけで早送り・早戻しがビュンビュン行なえるし、一方でゆっくり動かすと、1フレーム単位で見比べて編集点を探せる。どんな「ビュンビュン感」なのかは動画でみていただければと思う。

以下の動画は、ジョグダイヤルの操作を撮影したものだ。マルチカム撮影の編集も、タッチ+ジョグで簡単に行なえる。もちろんこの動画の編集もFinal Cut Pro for iPadで行なったもの。撮影中のマルチカム編集に数分、この動画自体の編集にも10分ほどしかかかっていない。

ジョグダイヤルの「ビュンビュン感」を動画にしてみた
マルチカム編集時には、音を手がかりに動画の同期を自動的にとり、切り替えだけで編集が完了する

効率の良さも重要だが「使って楽しい」も重要

特に快適なのが、Magic Keyboardとセットで使った時だ。画面がいい感じに傾けられて、必要であればキーボード・ショートカットを併用して効率的に編集できる。右手でショートカットを使い、左手ではタッチ+ジョグダイヤル……という感じで編集できる。

もちろん、iPad版のFinal Cut Proはかなり高度な編集アプリだ。タッチでのシンプルな操作だけがウリではない。

しかし、ツールは機能だけで生まれるわけではない。やはり「使っているのが楽しい」ツールであることが望ましい。iPad版の動画編集ツールは、PC向けのものをタッチしたレプリカであることが多いのだが、Final Cut ProのiPad版は、Mac版のレプリカでありつつ、ジョグダイヤルやApple Pencil対応などの付加価値をつけて「楽しい・面白い」ツールになっている。

タブレットが広がるには、やっぱりクリエイティブなツールが必要だ。では、良いタブレット用のツールとはなにか? それは、効率の良さはもちろんだが、「タッチで使うことが楽しい」という部分も必要なのではないか。

アップルがiPad版で工夫したのは、そういうところなのだろうと思うのだ。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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