ミニレビュー

水月雨、約5.5万円の平面駆動ヘッドフォン「楽園」に衝撃。ヘッドフォンアンプも購入

水月雨の「楽園-PARA-」とGoldenWave「SERENADE」

2023年のポータブルオーディオは、ここ数年と同じく完全ワイヤレスイヤフォンが主流となっていたが、一方で“オープンイヤー型”と呼ばれるイヤフォンの新しい潮流も注目を高めていた。耳穴を塞がないタイプのイヤフォンで、ながら聴きができるタイプ。骨伝導イヤフォンと似たような使い方の製品となるが、“耳を塞がないので周りの音が聞こえる”という共通点がある一方で、

  • 普通のイヤフォンと同じドライバーが振動して音を出すタイプなので音質、特に低域の量感で有利
  • 体にしっかり固定する必要がある骨伝導とは異なり、装着が楽&完全ワイヤレスイヤフォンにし易い

というメリットがある。また、意外と音漏れが気になる骨伝導タイプに対して、オープンイヤー型は形状を工夫したり逆相の音で打ち消したりと、対策を施している製品もいくつか登場している。ながら聴き用イヤフォンの本命になりつつある、といえるだろう。

ブランドとしては、JBLの活躍が素晴らしかった。専用ケースにタッチパネルを採用し、スマートフォンだけでなくパソコンやゲーム機などで使用する際にも様々な機能を使ったり調整したりすることが可能なJBL「Tour Pro 2」は、とても画期的な製品。実際、筆者としてもDAPと接続しての取材時に大いに重宝した。

JBL「Tour Pro 2」

もう1つ、新しい潮流のオープンイヤー型でもJBL「SOUNDGEAR SENSE」が人気を集めている。こちら、低域の量感がしっかりと確保されていて音楽を“普通”に楽しめること、逆相の音を発生させて音漏れを低減していること、イヤーフック部分が4段階で調整可能など、音と使い勝手の両面で出来の良い製品となっている。

JBL「SOUNDGEAR SENSE」

さらに、ホームAVのジャンルでもサウンドバーを矢継ぎ早に登場させたり、クラシックスタイルのWi-Fiスピーカー「Authentics」シリーズをリリースしたりと、興味をひかれる製品が幾つもあった。老舗ブランドが元気なのは嬉しいかぎり。2024年の新展開にも期待したい。

「楽園-PARA-」に衝撃を受ける

「楽園-PARA-」

昨年の9月に中国取材へ行く機会があり、その際に開発最終段階の水月雨(MoonDrop)「楽園-PARA-」を試聴。100mmユニットの振動板全体をメタルプレーティングすることで全体が均一に駆動するという画期的な仕組みと、それが生み出す極上のサウンドに衝撃を受けてしまった。

100mm径の大型振動板
独自のFDTフルドライブ技術により、振動板全体の振動面が磁界中に置かれ、有効駆動回路に均一に分布することで、従来の平面磁界型ヘッドフォンよりも優秀で、静電型ヘッドフォンに匹敵する低い分割振動をもたらすという。

最大の特長は、歪み感のなさだろう。クリアで抜けのよい、それでいて鋭すぎずザラつかず、ダイレクトなのに聴き心地の良いサウンドを聴かせてくれるのだ。おかげで、ヴォーカルは男性も女性も聴き心地よく印象的、宇多田ヒカルもAimerも、米津玄師も感情たっぷりの歌声を楽しませてくれた。特に八木海莉「Ripe Aster」は普段よりも感動的な楽曲に生まれ変わってくれるので是非聴いて欲しい。

セパレーションのよさ、音場の広さも素晴らしい。音数の多い楽曲でも各パートがしっかり分離、全ての演奏があまさず伝わってくるし、定位感もしっかりしている。

この音で5万円前後というプライスタグは驚きでしかない。これは絶対にゲットしようとを決意したが、日本国内販売もスタートから好調だったため、昨年末になってようやく手に入れた。

年末はとりあえずエージングを行ない、年明けからリファレンスヘッドフォンの1台として活躍をスタートしている。

「楽園-PARA-」導入を機に、ヘッドフォンアンプも入れ替えようと考えた。ヘッドフォンの試聴にはHIFIMAN「EF400」やiFi audio「NEO iDSD」を利用していたが、以前から平面磁界駆動型ヘッドフォンを十全に鳴らしてくれるヘッドフォンアンプが欲しいと考えていた。

もちろん、平面磁界駆動型ヘッドフォンを得意とするHIFIMANの「EF400」は高い実力を持っていたし、DACもアンプも得意なやiFi audioの「NEO iDSD」も決して悪くない製品。あくまでももう一歩先に進みたいというわがままだ。

以前からずっとSPL「Phonitor x」は気になっているものの予算オーバー(というか諸々の出費により貯金が貯まらず)、iFi Audioの新製品「iCAN Phantom」も“欲しい製品”の上位に爆上がりしてきたが、60万円越えの価格が大きな壁となって立ちはだかっている。

GoldenWave「SERENADE」

そんなときに見つけたのが、GoldenWave「SERENADE」だ。

こちら、新たにHIFIMAN傘下となったGoldenWave社のDAC/ストリーミング機能内蔵のヘッドフォンアンプで、DACがHIFIMAN独自のR2Rタイプ「ヒマラヤPRO」搭載であること、順アナログヘッドフォンアンプである上位モデル「PRELUDE」には劣るもののヘッドフォンアンプとしてはなかなか良質だったことから、こちらを(ヘッドフォンアンプとデスクトップオーディオ用の)メイン機にしようと導入、さっそく活用し始めている。

正直、ほぼ新品に近い状態(数時間鳴らしただけ)から良質なサウンドを聴かせてくれるのでありがたい。HIFIMAN系列のブランドなので、平面磁界駆動型ヘッドフォンとの相性も良かったりする。純然たるヘッドフォンアンプというよりもやや小柄なホームオーディオ向けセンターユニットという印象のほうが強いが、いまのデスクトップ環境(別の機会にご紹介できればと思う)には向いている製品だったりもするので、いろいろと使いこなしていきたいと思う。

ライン出力も備えている

ちなみに、これは慣れの問題なのかもしれないが、ネットワーク機能に関しては先に導入した「WiiM Pro」のほうがアプリも含めて圧倒的に扱い易く感じる。しばらくは、「WiiM Pro」を「SERENADE」にデジタル接続して利用する、というもったいないことになりそうだ。

野村ケンジ

ヘッドフォンからホームシアター、カーオーディオまで、幅広いジャンルをフォローするAVライター。オーディオ専門誌からモノ誌、Web情報サイトまで、様々なメディアで執筆を行なうほか、レインボータウンFMの月イチ番組「みケらじ!」にレギュラー出演、YouTube「ノムケンLabチャンネル」を運営するなど、様々なメディアで活躍している。最も得意とするのはヘッドホン&イヤホン系で、年間300モデル以上の製品を10年以上にわたって試聴し続け、常に100製品以上を個人所有している。一方で、仕事場には100インチスクリーンと4Kプロジェクタによる6畳間「ミニマムシアター」を構築し、ステレオ用のプロフェッショナル向けTADとマルチチャンネル用、2系統のスピーカーを無理矢理同居させている。