ミニレビュー
重低音と没入感が最高!! 15年来の相棒ソニー「MDR-XB700」が手放せない
2024年4月12日 08:00
ソニーの「MDR-XB700」というヘッドフォンをご存じだろうか。2008年に発売された迫力のある重低音を売りにしているEXTRA BASSシリーズの初代モデルである。
当時中学生だった筆者はそのカッコイイ見た目に一目ぼれして購入。かれこれ15年以上も使い続けているお気に入りのヘッドフォンだ。最初は見た目で買ったこのヘッドフォンだったが、段々と使っていくうちにその”重低音”とゴツい見た目に反する“着け心地の良さ”にハマり、手放せない存在となった。
実は以前、ヘッドアーム部分のネジがバカになって壊れてしまったことがある。最終的にどうにか修理し、直すことができたものの、原因がわかるまで暫くこのヘッドフォンが使えない期間があり、それが非常に耐え難かった。
結局耐えきれず2台目の購入を考え、探し始めたもののこのときすでに生産終了品。やっとのことで見つけた未使用未開封品は、プレミアがついてなんと7万円(定価は12,390円)となっていたが、それでも躊躇せずお迎えした。今では2台体制となり、何かあってもメンテをしながらもう片方が使える。
それほど筆者を虜にした「MDR-XB700」の魅力を語っていこう。
重低音から生まれる“没入感”が最高
XB700の魅力はなんと言っても“没入感”。重厚な低音に加えて、ノイズキャンセル機能がなくともそのイヤーパッドによる遮音性に優れており、ゲームやアニメ、映画等、作品の世界観にどっぷりと浸れる。
筆者はその作品の世界に入り込んで雰囲気を堪能したいタイプなので、作品に集中できるこの”没入感”は重要なポイントだ。
最新のヘッドフォンには空間オーディオなど、広がりや定位を高める機能が搭載されている。XB700にそのような機能は無いが、実は、最近のゲームで使っても明瞭な定位感が味わえる、空間描写に優れたヘッドフォンでもある。
「スプラトゥーン」等のTPS(三人称視点でのシューティングゲーム)をプレイした際は、音で敵のいる方向が把握できるし、「モンスターハンターワールド:アイスボーン」でモンスターに追われている時なんかは、背後にリアルな圧を感じる。
ホラーゲームの臨場感も半端ではない。筆者はホラー系が得意ではないため、個人的な感想として「良かった」とは言えないが……。もう心臓がバクバクである。この感覚は、ホラー好きにこそ味わって欲しい。
そのほかにも、筆者は「原神」をよくプレイしているのだが、とくに世界観とそれに合った幻想的な曲が好みで、XB700で聴くことで、よりストーリーに引き込まれる。このゲーム内のフィールドにはモデルとなった国があり、そのBGMはそれぞれの国の伝統の楽器を用いて演奏されている。公式のオフラインコンサートも開催されたりと力を入れていて、音楽にもかなりこだわりを感じる。
特に好みなのが、日本がモデルとなった「稲妻」のBGMだ。ズンと重く響く和太鼓の音が曲全体を通して、重々しくも静けさの中に繊細さと鋭さを併せ持っており、かなり”日本みの強い”和テイストなファンタジーが味わえる。
迫力ある音だけではなく、逆にゆったりと落ち着いた曲との相性もいい。
夜中に一人でまったりプレイするスローライフゲームのLo-Fiな曲ともマッチしている。ゆったりと響く低音も心地良く、一人でゆったりとした世界観に浸りながらプレイするのも乙なもので、何とも言えない充実感がある。音楽を流して作業する時もとても集中できるので重宝している。
筆者はYouTubeの配信もよく視聴する。落ち着いた声が好きで、“声の良い”と感じた配信者やVTuberをよく登録して視聴しているのだが、落ち着いた低い声がとくにXB700と相性抜群で、配信内のBGMも相まって実際その空間に居るかのような臨場感が味わえるのだ。
そして、ASMR配信がかなりいい!
布が擦れる音や環境音、耳に息があたる音は風というか圧というか、「これもう実際あたってね?」と思ってしまうくらいにリアルだ。
すぐそばに人が居るような、あまりにリアルな音すぎて「えっ?、別空間に跳んだ???」と感覚がバグってしまう。この音の出所が明確にわかるところが「”定位感がいい”ってやつかぁ~」としみじみ思う。ASMRはいいぞ。
改めて考えてみるとこのヘッドフォン、結構色んな所で強みを活かせているのかもしれない。ASMRはいいぞ。
無骨な見た目とストレスフリーな使用感の“ギャップ”が魅力
さて、ここまでは「音」について紹介してきたが、もう一つ重要なのが「つけ心地」だ。
このXB700は、デカくてゴツい。そのイヤーパッドの見た目から”タイヤ”と呼ぶ人もいたくらいだ。そんなデカくてゴツくてカッコイイところが、気に入ってるところでもある。
だが、その見た目とは裏腹に、意外と軽い。約295gと実際に着けてみると全然気にならない重さだ。頭全体で程よく重さが分散しているので、首が痛くなるということもない。
側圧も強くなく、イヤーパッドの部分はだいぶ厚みがあり、耳がすっぽりと収まる。ふわっと包み込むような着け心地なのだが、安定感があり、ズレることもない。スライダー部分の調整できる幅も広いため、頭が大きい人であっても快適に使えるだろう。
筆者は普段からメガネを掛けているのだが、ヘッドフォンでありがちな、長時間着けていると耳やこめかみの部分が痛くなるということもない。個人的に長時間快適に使えるというのはかなり重要だ。メガネの人にとっても、これはとてつもないアドバンテージだと思う。
ヘッドフォンを着けた時にイヤーカップ内で耳が擦れることがあって不快に感じることがあるのだが、このヘッドフォンは耳元の空間に余裕があってその心配がないことが個人的に嬉しいポイントだ。
故障への恐怖。復活してほしいこのデザイン
XB700に限った話ではないが、“タイヤ”のような分厚いイヤーパッドやヘッドバンドは、長年使っていると段々と剥げてくる。イヤーパッドは予備の物をストックして備えているので交換すれば良いが、そのほかの部分については、修理業者にメンテナンスを依頼する必要があるだろう。
そこで心配になってくるのが、生産終了となってからもしばらく経ってしまったXB700は、そういった修理サービスなどでいつまで対応してもらえるかということ。ネジはバカになってしまったものの、致命的な故障はまだ無いが、この先が心配だ。
XB700は筆者がヘッドフォンに求めるものが揃っている。古いモデルではあるが、これを以上に自分にバシッと合ったヘッドフォンに出会えていない。
以前に、他のヘッドフォンをいくつか試したこともあるのだが、音はとても好みだが、メガネを掛けていると痛くて長時間は着けていられなかったり、その逆だったり、なかなか「満点っ!!」と言えるものを見つけられなかった。
やっぱコレだよ、もう体に馴染んでんだもん。と、ここに戻ってきてしまうのだ。長年愛着を持って使い続けてきた故に、筆者のヘッドフォンの基準がこれになってしまっている。
というか、15年で逆にこのヘッドフォンに合わせて体が成長してしまっている。XB700の復刻版か、同じデザインコンセプトのモデルを出してほしい、というのがソニーへ向けての筆者の切実な願いだ。