ミニレビュー

ドラマ録画に福音? シャープの新提案「ドラ丸」を試す

4週間分ドラマをいっき録り。シンプルでわかりやすい

 アナログ放送からデジタル放送への移行期だった2000年代前半、AV Watchの記事で最も人気が高かった製品カテゴリが「レコーダ」。ビデオからDVD/HDDへのメディアシフトのタイミングでもあり、東芝RDシリーズのマニアックな提案、いろいろな事業部から続々発売されるソニーのレコーダ、ボブ・サップをCMに起用し、VHSからの積極移行を促したパナソニックDIGA(当時は松下電器)、急成長するテレビとのHDMI連携で一気にシェアを獲得したシャープなど、各メーカーの特徴も鮮明で、さらにBD対HD DVDの“次世代戦争”なども続き「デジタル家電商戦の目玉」となっていた。

 だが2015年現在、レコーダ市場にはかつてのような勢いはなく、市場も縮小傾向。全録やトリプルチューナなどの柔軟な録画機能、外出先からのリモート試聴、NAS機能など、かつてとは比べ物にならないほど機能も使い勝手も向上しているはずなのだが……。

 YouTubeなどのネット配信の隆盛もあるが、最近のほとんどのテレビは、USB HDDを繋ぐだけで録画できる。視聴時間をずらす「タイムシフト」のための、安価かつ簡単なソリューションがすでにあり、それで満足している人が多いのかもしれない。

 そうした中、久しぶりに「これはイイ」と思った機能が2月に発売されたシャープのブルーレイAQUOSに搭載された「ドラ丸」。地上デジタル放送の新作ドラマを自動的に“4週間分”録画するという機能だ。新番組の自動録画や、おすすめ番組を自動録画するレコーダはかなり昔からあるのだが、あえて「ドラマ」の見逃し防止に特化した機能というのが面白い。4月にスタートしたドラマを中心に「ドラ丸」を試してみた。

レコーダでのドラマ録画にまつわる不満

 連続ドラマの取り逃しを防ぐ「ドラ丸」は、2月に発売したシャープの新ブルーレイAQUOSのダブル/トリプルチューナモデルに搭載されている。今回はトリプルチューナで3TB HDDの最上位モデル「BD-T3700」でテストした。6月現在の実売価格は9万円弱。

 個人的にドラ丸がイイと思ったのが、ドラマを“4週間自動で録画”するという点。「4週間」というのがポイントだ。筆者が普段使っている製品を含め、最近のレコーダには新作ドラマを自動録画する機能があるのだが、自動録画するのは最初の1週のみだ。

 例えば自動録画した番組を10日後に再生して、「このドラマ面白い」と思った時には、2週目の放送が終了している。「続きがわからないまま、しようがなく3話を見る」、そんな人も多いのではないだろうか? 筆者も毎期ごとにそうした経験をしている。

 ドラマのスタート時期は新番組が集中するし、その時に忙しかったりすると、まったく番組を消化できないこともある。例えば、1月上旬に米国で開催されるCESを取材するため10日ほど海外出張する。すると、帰国時にはすでに2週目の放送が終わっており、その際に溜まった録画番組にはとても追いつけない。リモートで録画予約や視聴ができるとはいえ、出張の忙しいさなかに、細かな作業をやる余裕はない。帰国して1週目を見て「面白い」と思っても、次の放送回は3話、4話目なんてことも……。4週間録画してくれるドラ丸であれば、こうした問題は回避できるはずで、ドラマ録画を行なう多くの人にとって便利な機能になるはずだ。

AQUOSブルーレイ「BD-T3700」

初期設定だけで「ドラマ丸録り」

 ドラ丸を使うためには初期設定が必要。BD-T3700のようなトリプルチューナモデルでは、同時にドラ丸録画が行なえるのは2番組まで。ただし、3番組が重なった場合でも、通常予約で3番組を録画予約すれば同時間帯の3番組の録画も行なえる。

 なお、「ドラ丸」機能の利用には設定が必要だ。[ホーム]画面の[ドラ丸]のアイコンを選択すると[ドラ丸リスト]が表示される。ここでリモコンの□ボタンを押せば、ドラ丸設定が行なえる。

ホーム画面。受信中番組の左側に[ドラ丸]のアイコン

 設定では、ドラ丸の[入]、[切]と、録画対象の[ドラマ]、[アニメ]、対象チャンネル、録画時間帯、録画画質が選択できる。ドラマとアニメは併用できないため、ドラマで、全ての地デジチャンネル、録画時間帯は午後7:00~午前3:00、録画画質5倍で使ってみた。録画時間帯やチャンネル、録画画質などは、好みで変更すればよい。

ドラ丸設定
ドラ丸の録画時間帯を選択

 設定はこれだけで、あとは、ホーム画面の[ドラ丸]を選んで、ドラ丸リストを表示するだけで、実際に録画された番組がサムネイル付きでまとめて表示される。4話(28日分)までは自動的に録画され、その後は5話放送時に1話を消去して上書きされていく。

ドラ丸リスト

 ドラ丸リストで録画予約の[確定]操作を行なえば、5話以降も消去せずに録画が実行される。その場合、放送終了時には全話/エピソードをドラマごとにまとめられれ、そのままBDにダビングも可能となる。なお、4週間まったく視聴しなかったドラマはすべて自動消去され、ドラ丸リストからも削除される。

録画した番組はドラマごとにサムネイル付きでまとめられる
予約を確定すると、4話以降の番組も録画する
3つのドラマが重複した場合は、通常録画に切り替えるよう推奨

 実際に3月末からしばらく使ってみたところ、当該時間帯のドラマはほぼ問題なく録画できた。ただし、木曜日10時は「戦う! 書店ガール」(日テレ)、「マザー・ゲーム」(TBS)、「美女と男子」(NHK)の3番組が重なっており、「書店ガール」はドラ丸録画できないとの警告が表示された。この場合、リモコンの緑ボタンで重複する3番組を全て通常予約扱いにすれば、全3番組の同時録画が可能になる。

 放って置いても録画してくれるのがドラ丸の魅力だけに、ちょっと面倒ではあるが、トリプルチューナモデルであれば、全ドラマ録画は難しくない。ただ、3番組重なった際に、録画時間の変更や延長などがあると録画に対応できない場合もある。その点注意が必要なのは、通常のトリプルチューナレコーダと同様だ。

 [ドラ丸リスト]を見てみると、サムネイル付きでドラマが一覧表示される。今クールにどんなドラマをやっているか、ひと目で分かるのがとても良い。通常の録画リストだと、バラエティやスポーツなどが混じってしまうが、純粋にドラマだけだと、かなり選びやすく感じる。このあたりもドラ丸のメリットと言える。

番組終了後に[ドラ丸の録画リストに戻る]で続きの番組リストを呼び出せる

 実際に別のレコーダで取り逃していた「マザー・ゲーム」の2話以降や、2話放送後に見始めた「64」などを最初に遡ってドラ丸で見たりなど、「録り逃し」と「見逃し」を防げるのは明らか。全録レコーダで長時間録画を行なっても、長くて2週間程度。4週間分録画できているという安心感は、ドラ丸ならではだ。

 また、ドラ丸リストから番組を選んで視聴し、見終わってから再生停止すると、左下に[ドラ丸の録画リストに戻る]との表示が出る。この際に[决定]ボタンを押すと、ドラ丸で再生中の番組(「64」の再生後であれば「64」の番組リスト)に戻れ、続きのエピソードをすぐに再生できる。こうした細かな配慮が随所に見られる点も使いやすさの向上に寄与している。

シンプルで便利な「ドラ丸」

リモコン

 ドラマを見る人に便利かつ使いやすい機能がうまくまとめられている「ドラ丸」。操作性もシンプルで使いやすいが、あえて注文をつけると、リモコンに専用ボタンを付けて、ドラ丸リストをワンボタンで呼び出せるようにしてほしい。現状、[ホーム]ボタンでホーム画面を呼び出して、ドラ丸アイコンを選ぶという流れだが、せっかくのドラ丸機能なので、より簡単にアクセスしたい。

 また、現時点では地デジのドラマのみがドラ丸の対象となっている。個人的にはこれでも満足だが、BSなどへの応用も期待したいところだ。

 機能としてはシンプルながらとても便利な「ドラ丸」。類似した機能については、シャープ以外のレコーダメーカーにも積極的に追従して欲しいと感じる。例えば全録レコーダであれば、ドラマもアニメもほぼ全て録画しているはずなので、それらをドラ丸のようにジャンルや用途毎に見やすく表示するUIを作ってくれれば、見たい番組へのアクセスはさらに良くなりそうだ。

 もっとも、レコーダの競合は他社製品だけではないのかもしれない。別のレコーダで1話だけ新録画されていたドラマ「恋愛時代」が面白かったので、続きを見ようとしたところ2話はすでに放送終了。もちろん「ドラ丸」で録画出来ているので、それを見ればいいのだが、最近はテレビ局も「見逃し配信」に積極的。実際、「日テレ無料(TADA) by 日テレオンデマンド」で3話放送前に2話の見逃し配信が行なわれていたので、iPadでも視聴できた。要するにレコーダの補完機能として、放送局やネットサービスによる「見逃し配信」が結構実用的になってきているのだ。

 各放送局が強化している見逃し配信だが、特にドラマはその傾向が強く、かなり多くの番組で前回放送が視聴できる。さらに6月5日現在「恋愛時代」の場合Huluでも1~9話までの配信が行なわれている。

 見逃し配信や映像配信サービスの普及により、これまで「レコーダ」だけが提供できていた価値が、ほかの機器/サービスでも実現可能となってきているのは間違いない。こうしたサービスの対応もふくめて、レコーダにどういう価値を加え、どういうユーザーに訴求していくのかが、これからのメーカーの腕の見せどころなのかもしれない。

 とはいえ、テレビの操作の延長線上で、ドラマをぎゅっとまとめて見れるという「ドラ丸」の提案は、利用者にとてもわかり易いものだ。こうしたニーズをきっちり掴んだ製品づくりを続けて欲しい。

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臼田勤哉