ミニレビュー
“タブレットでDolby Atmos”を新LAVIE Tab Eで体験
Atmosの臨場感をより身近に。サービス対応が課題
(2015/7/21 10:15)
映画館を中心に採用が進み、新世代のサラウンド技術として注目が集まる「Dolby Atmos」。従来の5.1ch/7.1chような“チャンネル”ではなく、サウンドを個々のオーディオオブジェクトとして扱い、さらなる広がりや、高さ方向の表現を向上するものとして注目を集めている。対応のAVアンプやBDビデオも増えてきており、「家庭でDolby Atmos」も現実的なものになってきた。
一方、より手軽な方向としてDolbyが提案しているのが、タブレットなどのスマートデバイスにおけるAtmos対応だ。海外においては、すでにAtmos対応の映像配信が始まっているとのことだが、日本においてはまだスタートしておらず環境整備はまだこれからだ。
そんな中、NECパーソナルコンピュータのDolby Atmos対応Androidタブレット「LAVIE Tab Eシリーズ」が、7月23日に発売される。8型液晶の「TE508/BAW」が直販価格22,800円、10.1型IPS液晶の「TE510/BAL」が33,800円とリーズナブルなエントリーモデルだが、国内メーカー初のDolby Atmos対応タブレットとなる。LAVIE Tab Eで、「タブレットで「Dolby Atmos」を試してみた。
Dolby Atmosらしい臨場感をタブレットでも
“試してみた”といっても、日本国内でタブレットでDolby Atmosコンテンツを楽しむ手段はほぼ用意されてない。Atmosを体験できるのは、LAVIE Tab Eの場合、DolbyアイコンのDolby Atmos設定アプリのデモ映像のみだ。今回は、さらに6種類のDolby Atmosデモコンテンツを用意した。
Dolby Atmosの設定は、[Dolby]アプリから行なう。8型ではON/OFFが切換えられるが、10型はヘッドフォン出力時にはOFFには出来ず、スピーカー出力時に3つのスピーカーを使うOutdoorモードと、2つのスピーカーのIndoorモードのみとなる。
なお、タブレットの場合、Dolby Atmosコンテンツを楽しめるのは、ヘッドフォン出力のみで、スピーカー出力時には適用されない。ただし、スピーカー出力時でも、AVアンプなどで搭載されている「ドルビーサラウンド」のように、ハイト(高さ)も含めた広がりのあるサラウンド音声再生を行なってくれるとのことだ。
コンテンツは[ギャラリー]から[動画プレーヤー]で再生。アプリごとにAtmosのON/OFF設定などはできず、DolbyアプリでAtmosの設定を用いる。Atmosの設定は、[映画]、[音楽]、[ゲーム]、[ボイス]が選択できるほか、イコライザー設定も可能。また、サラウンド効果を高める[サラウンドバーチャライザー]、人の声を聞きやすくする[ダイアローグエンハンサー]、音量を制限する[ボリュームレベラー]などが選択できる。
今回は主に[映画]で、試聴用ヘッドフォンにはソニー「MDR-1A」を利用した。
まず、「Audiosphere」というヘッドフォンの移動感のデモコンテンツを試してみたが、ヘッドフォンでも奥行きが感じられ、左右や背後への移動感もたっぷり。低音の重圧な響きがかなり強力で、Dolby Atmosらしい臨場感をすぐに得られる。
続いて、Dolby Atmos対応の映画館で使われているデモコンテンツ「Amaze」。鳥が飛び回る移動感や雷鳴とそれが空気を揺るがす様子など、ヘッドフォンの空間表現とは思えない音場感が味わえ、低音の響きも強力だ。
8型のTE508/BAWで、AtmosをOFFにしてみると、やや音場が狭くなるほか、低音はやや控えめになった。ただし、その差は思っていたほどではなく、Audioshereでは明らかな違いを感じたが、Amazeでは低音の違い以外判別できないことも……。この辺りはコンテンツやヘッドフォンにも依るのかもしれない。
映画コンテンツとして、「トランスフォーマー/ロストエイジ」を見てみると、やはりAtmosの効果は絶大。車の上を通過する船のローターの移動感や、上空から降ってくるバスの移動感。さらに、散らばる破片が広がっていく様子など、一つ一つの音が明瞭に分離して知覚できる。さらに低音もぐっと重く迫力満点になり、文句なしにAtmosで体験したいコンテンツといえる。
タブレットにAtmosの意義。コンテンツの拡充に期待
ここまではAtmos用にマスタリングしたコンテンツを試したが、LAVIE Tab Eをその他の用途で使ってみても、YouTubeなどの音声にも広がり感を感じ、低域もかなり強く感じられた。Dolbyによれば、Atmosの設定はシステムレベルで有効になるため、非Atmosコンテンツでもサラウンド化などが行なわれているという。「Dolby Atmos対応タブレット」は、Atmosのサラウンドが再生できるだけでなく、サウンド全体においてDolbyによるチューニングが行なわれたもの、といえる。
AtmosをONにして不自然さを感じたシーンもなかったので、基本的にONで良さそうだ(10型ではそもそもOFFにできない)。個人的には、聞きづらさを感じるネット動画に対して、ダイアローグエンハンサーを適用すると効果的と感じた。
LAVIE E Tab Eにおいて、タブレットで楽しむ映画や音楽体験が確実にリッチになることは体験でき、「タブレットにAtmos」の意義は充分に感じられた。
だが、現状の最大の課題は、(BDビデオと映画以外)日本でDolby Atmosでマスタリングしたコンテンツを入手する方法が存在しないということ。
Dolbyによれば、「世界中のスタジオ、OTTサービスプロバイダー、ゲーム/音楽クリエイターなどに採用を働きかけている。これまでに世界中で275作品以上の映画作品がドルビーアトモスで公開されており、それらがモバイル端末で楽しめる日まで、今しばらくお待ちください」とのこと。
Netflixの参入や、HuluやdTVの人気、放送局による見逃し配信の強化など、インターネット経由での映像配信が盛り上がりを見せる今だけに、“音”がそうしたサービスにおける差別化ポイントになるのも面白そうだ。LAVIE Tab Eのようなハードウェアとともに、サービス側の対応にも期待したい。