レビュー

もはや“異次元のノイズレス” AK究極DAP「A&ultima SP3000」を聴く

Astell&Kernの次世代フラッグシップポータブルオーディオプレーヤー「A&ultima SP3000」

お店などで新製品を試聴する際、「お! 俺の持ってる前モデルより低音が良くなっている」とか「隣のライバル機よりコッチのが良いな」など、“別の機種と比較する”人は多いだろう。私もそうだ。しかし、数年に一度、音が出た瞬間に比較とか吹き飛んで「なんだこれは!」と驚くしかない製品に遭遇する。Astell&Kernの次世代フラッグシップポータブルオーディオプレーヤー「A&ultima SP3000」がまさにそれだ。

10月15日から発売されており、価格は659,980円。価格の時点で「なんだこれは」と驚きそうだが、買う、買わないはひとまず置いておいて、DAPに興味がある人はもちろんのこと、さらに言えば「音の良いTWS(完全ワイヤレスイヤフォン)が欲しい」と思っている人にも、一度お店やイベントで聴いてみて欲しい。

10年以上、DAPという市場を牽引してきたAstell&Kernブランドの集大成とも言えるサウンドになっており、「最近は便利なので完全ワイヤレスばかり使っている」という人も、きっと「有線のポータブルオーディオってこんなにスゴイのか」と驚くはずだ。

手にした時点でスゴイ

普段なら、音質面の注目ポイントから話をはじめるが、SP3000は筐体からスタートしたい。というのも、コイツは箱から出して手にした瞬間に「うっわ!」と声が出るほど“高そう”なのだ。いや、実際に高価ではあるのだが、“高級感”が凄まじい。

「A&ultima SP3000」のケースを開いたところ。果実を割るように、ケースが左右に分かれてSP3000が現れる。演出も楽しめる梱包だ

素材はステンレススチール。これまでもAKのDAPで筐体に使われてきた素材だが、 SP3000はただのステンレススチールではない。スイスの高級時計ブランドにも採用され、DAPとしては世界初採用という「904L」というスチールを使っている。この素材は耐久性と耐食性に優れ、“美しさを失わない”という特性を備えているが、一般的なステンレスよりも硬く、加工が困難で、作るのに手間と時間がかかるそうだ。

仕上げはBlack/Silverの2色。写真のモデルはSilverだ

その904Lに、2種類のコーティングを施し、筐体として完成させている。実際に手にすると、2つの事に驚く。1つは前述のように硬度の高さで、ガッチリ感が半端ではない。もう1つは、表面のコーティングの素晴らしさ。素材としては金属の塊なのだが、表面コーティングは非常に滑らかなので手にしっとりと馴染む感じがある。“金属感”と“馴染みの良さ”という正反対の要素が両立されている。確かにこれは高級腕時計っぽい。いや、そんな高級腕時計持ってないけど。ともかく筆者が今まで触れてきたDAPの中で最高の“持ち心地”だ。

外形寸法は139.4×82.4×18.3mm(縦×横×厚さ)、重量は約493g。手にするとズシリと重く、表面はしっとりと手に馴染む

シンプルだがデザイン性が高く幾何学的な形状は、これまでのAK DAPと同じ方向性だが、表面の仕上げがしっとりしているので、手にしながら外観を眺めると少し優しい印象も受ける。これまでのデザインコンセプトである「光と影」に加え、SP3000では「光に包まれる」をコンセプトとしているそうだ。

背面の幾何学模様は、光の当たり方で見え方が変化する

イヤフォン出力は3.5mm 3極アンバランス(光デジタル出力兼用)、2.5mm 4極バランス、4.4mm 5極バランス(GND接続あり)。ライン出力機能も備えている。PCとの接続はUSB-Cで、内蔵ストレージは256GB、1TBまでのカードが使えるmicroSDスロットも備えている。PCと接続した際は、ファイル転送だけでなく、USB-DACとしても使用できる。

イヤフォン出力部分
PCとの接続はUSB-C

左側面に操作ボタン、右側面にこれまた触り心地満点、高級時計の竜頭のようなボリュームツマミを搭載。このボリュームは押し込むと電源ボタンも兼ねているほか、LEDも備えており、ステータスインジケーターとしても機能する。ディスプレイは5.46型と大きく、解像度もフルHDで高精細だ。

竜頭のようなボリュームツマミはステータスインジケーターとしても機能する

ついにDAPでバランス出力とアンバランス出力を完全に分離

外観だけでお腹いっぱいになりそうなクオリティだが、中身も凄まじい。今までのDAPだと「最新の高級DACチップを搭載している」とか「そのDACチップを2個、4個搭載している」みたいな部分が“売り文句”だったのだが、SP3000はそうしたパーツのグレードや個数以前に、そもそもの構造が違う。

DACチップとしては、旭化成エレクトロニクスの最新・最上位DAC「AK4499EX」を4基搭載しているのだが、注目ポイントはここだけではない。AK4499EXとセットで、デジタル信号処理用のチップである「AK4191EQ」を2基搭載している。

ご存じの通り、一般的なDACチップは、その内部処理において、入力された音楽のデジタルデータを、デジタルフィルターに通し、⊿Σモジュレーターを経由し、D/A変換してアナログ音声として出力する……という工程を内包している。

この工程に注目すると、DACチップの中で“デジタル信号とアナログ信号が共存している状態がある”事がわかる。旭化成エレクトロニクス、この状態があると、シリコンウエハーを通してアナログ信号に影響を及ぼす事がわかっているという。では、DACチップの中で、デジタルとアナログが相互に影響を与えないように工夫する必要があるが、一部を壁で囲うような工夫をしても、なかなか良い結果にならないそうだ。

そこで登場するのがDACの「AK4499EX」とデジタル信号処理用チップ「AK4191EQ」の組み合わせだ。前述の工程から、その前半にあたる「入力されたデジタル信号にデジタルフィルターと⊿Σモジュレーターを通す」という部分をAK4191EQが担当。

その後にあるAK4499EXは、マルチビットデータのインターフェイスとDAコンバーターだけが内蔵するという構成になっている。つまり、1つのDACチップの中でデジタルとアナログを分離するのではなく、2つのチップを用意してチップのレベルで分離。“デジタル信号処理”と“デジタル音声のアナログ変換だけ”という役割分担をした……というわけだ。

右の図に注目。上のAK4499が一般的なDACの処理工程、下段がデジタル信号処理用チップ「AK4191EQ」とDAC「AK4499EX」を組み合わせたもの。デジタル信号処理と、D/A変換を別のLSIに分けているのがわかる。この下段がSP3000だ

なお、旭化成エレクトロニクスによれば、LSI間の伝送はI2Sではなく、デルタシグマの出力を伝送するという徹底具合。135dBのスペックを達成するために、デルタシグマのマルチビット信号を7本で伝送、そこにクロックも加え、合計8本の線がデバイス間を繋ぐカタチになっているそうだ。

この、デジタル信号処理とアナログ信号処理の完全分離構造は、ポータブルオーディオとしては世界初だという。AKではこの構造を「HEXAオーディオ回路構造」と名付けている。

このため、DACチップの「AK4499EX」は本当に中にDACチップくらいしか入っていない。方式としてはスイッチドレジスタの電流出力になっており、これも採用したオーディオメーカーが、自分達の音に仕上げやすいポイントの1つだ。また、スペックとしては2chのDACとしては世界最高の135dBを実現している。その名の通り、以前の最上位DAC「4499」を超える4499“EX”というわけだ。

この時点でSP3000のスペック的な豪華さに満腹になりそうになるが、もう1つ、凄いことがある。それがアンバランスとバランス出力について。

SP3000のヘッドフォン出力端子は、昨今のDAPトレンドを踏まえ、3.5mmアンバランス(光出力兼用)と、2.5mmバランス、4.4mmバランス出力を備えている。ここまでは普通なのだが、凄いのは“そこに至る経路”だ。

これまでのDAPでは、アンバランス出力側とバランス出力側の両方に、同じ内蔵DACチップを使っている。つまり、DACから出力されたアナログ信号を、アンバランス出力側、もしくはバランス出力側に分割して出力し、アンプ部と伝送する。そのため、アンバランス/バランスを切り替えるスイッチを内蔵する必要がある。

しかし、スイッチを使用するので、当然ではあるが、そのスイッチの性能が音質にとって重要になる。なぜかというと、DACから送られてきた信号を受信できる範囲に限界があるためだ。そこで、多くのDAPでは、“まず信号サイズを小さくし、アンプに信号を送り返す際に、元の信号サイズに戻す”という作業をしていた。

SP3000は、この限界にもメスを入れた。図を見ると一目瞭然だが、デジタル信号処理のAK4191EQ×2基から、1基ずつをアンバランス用、バランス用に分けて使用。その後のDACチップはAK4499EX×4基あるため、その内の2つをアンバランス用、バランス用に使っている。つまり、デジタル信号の入力から、信号処理、DACでのアナログ変換、そしてオペアンプで増幅してイヤフォンへ……という工程のすべてで、アンバランスとバランスが完全に分離しているのだ。AKではこれを「デュアルオーディオ回路」と名付けている。

上の図がデュアルDAC搭載DAPの構成図。スイッチを使ってバランスとアンバランスを切り替えているのがわかる。下段がSP3000。デジタル信号処理移行は、DACの段階からバランスとアンバランスが完全に分かれている

先程のHEXAオーディオ回路も「DAPでここまでやるか」という凄さだったが、このデュアルオーディオ回路も同様だ。さらに言えば、デュアルオーディオ回路は、HEXAオーディオ回路が存在したからこそ、実現できた回路と言えるだろう。

音質面だけでなく、出力もパワフル。アウトプットレベルはアンバランスが3.3Vrms、バランスが6.3Vrms(無負荷)。これならば、駆動しにくいヘッドフォンでも難なくドライブできるだろう。

これが本当のバランス接続サウンドか

Astell&KernとCampfire Audioがコラボしたイヤフォン「PATHFINDER」

さっそく音を聴いてみよう。イヤフォンとして、Astell&KernとCampfire Audioがコラボした「PATHFINDER」(パスファインダー/実売約299,980円)を用意。4.4mmのバランスケーブルを使い、バランス接続で聴いてみる。

PATHFINDERは、高域にカスタム仕様のデュアルBAドライバー+T.A.E.C.、中域にKnowles製デュアルチャンバー・デュアルダイアフラムのBA、中低域用に10mm径デュアル・カスタム・ダイナミックドライバーというハイブリッド仕様。感度は94dB@1KHz(13.49mVrms)、インピーダンスは6.2Ω@1KHz。SP3000のバランス接続だと、フルボリューム値150のところ、30~35あたりで十分な音量となる。

「手嶌葵/明日への手紙」のハイレゾファイルを再生すると、冒頭の数秒で“格の違い”を見せつけられる。ピアノの音だけが響くシンプルなスタートなのだが、非常に静かな空間に、スッとピアノの音が立ち上がり、その響きが鏡のような湖に石を投げたように広がり、それが本当にどこまでも広がっていく様子が見える。この圧倒的なSN比の良さ、空間の広がりに、呆気にとられる。

手嶌葵のボーカルも、まるでホログラム映像が見える気がするほど情報量が多く、歌っている途中に「スッ」と吸い込むブレスの音が見えるのは朝飯前で、一瞬口を閉じて、また開く時に、上唇と下唇がくっついて離れる「んぱ」というようなかすかな音まで聴こえる。なんかもう聴こえすぎて怖くなってくる。

途中からピアノの左手やシンセサイザーの低音も入ってくる。何度も聴いているのに、「この曲の低音って、こんな構造だったんだ」と、まるで初めて聴いたかのように新鮮味がある。それだけ、低い音の分解能が高いのだ。

お馴染み「イーグルス/ホテルカリフォルニア」の冒頭を再生。アコースティックベースの低音が「グォーン」と地鳴りのように響く。この重さ、深さは圧巻で、とてもDAPで聴いている音と思えない。据え置きの高級DAC+ヘッドフォンアンプで再生しているような、芯と重量感のある低域だ。

ホテルカリフォルニア冒頭のベースは、分解能の低いDAPで再生すると「ブォオーン」という柔らかく膨張する低音のカタマリにしか聴こえないのだが、SP3000ではベースの弦が震える硬くて細かな音が芯に存在し、その振動によってベースの筐体で生み出された豊かな響きがその周囲にたっぷりとまとわりつく様子がシッカリ見える。これはスゴイとしか言いようがない。

これだけ空間描写能力と情報量が多いので、クラシックのオーケストラや、ストリングスを多様した重厚な映画のサントラなどでは、その実力が遺憾なく発揮される。「機動戦士ガンダムUC」サントラから、オーケストラによる「MOBILE SUIT」を再生すると、ポータブルオーディオでは聴いたことがないほどスケールの大きな音場に、細かな音像が乱舞。それが一気に自分の方に押し寄せてくるような快感の波にさらされる。

ここでふと、「アンバランスで聴いてみたらどうなんだろう」と気になり、PATHFINDERのケーブルを3.5mmにつけ替えて衝撃を受けた。いや、アンバランスの音が決して悪いというわけではない。だが、バランスと比べてしまうと、音楽の立体感が少なくなり、低域の解像度と迫力も少し減衰する。正直言って、この差はかなり大きい。

今までのDAPでも、“アンバランスとバランスの違い”の聴き比べはしてきた。総じてバランスの方が音が良い結果で、モデルによって差はあるものの、いずれも立体感や低域の分解能の向上などに効果を実感してきた。しかし、SP3000は、バランス接続時の音が異次元の良さなので、結果的にアンバランスとバランスの差がこれまでで一番鮮烈に感じられる。これはもうバランス接続でしか聴けない。というか、SP3000で初めて、“ポータブルオーディオにおけるバランスの音”を聴いたような気すらしてくる。これが、デュアルオーディオ回路とHEXAオーディオ回路の効果なのだろう。

フォステクスの「T40RP mk3n」

アンプの駆動力も圧巻。手持ちの中でも鳴らしにくいヘッドフォンである、フォステクスの「T40RP mk3n」(インピーダンス50Ω/感度91dB/mW)とアンバランス接続すると、フルボリューム値150のところ、120あたりで十分な音量が得られる。外出先でイヤフォン、帰宅後にヘッドフォンアンプとして使う場合にも十分な性能だ。

A&ultima SP2000T

SP3000が登場するまで、AKのハイエンドだった「A&ultima SP2000T」とも比べてみよう。私はメインDAPとしてSP2000Tを愛用しており、そのサウンドをかなり気に入っている。通常の「OP-AMP(オペアンプ)」のサウンドは情報量が多く、現代的な音なのだが、ホッとする「TUBE-AMP(真空管アンプ)」モード、さらにオペアンプの音と真空管の音を好きな配分で混ぜられる「HYBRID-AMP(ハイブリッドアンプ)」モードまで搭載する、遊び心もあるDAPだ。

ぶっちゃけ「音を好みに合わせて調整できるSP2000Tの方が好きだ」という結論になれば、どんなに楽だったろうという話なのだが、SP3000とSP2000Tを聴き比べてしまうと、好みがどうこうを超えて、SN比の良さ、低域の迫力、全体の解像度といった、基本的なレベルのハイクオリティっぷりで打ちのめされてしまう。いや、SP2000TもDAPとしては間違いなく最高レベルの良さなのだが、SP3000はハッキリ言って相手が悪い。「これは反則」という気分だ。

カスタマイズ可能なサウンド、サクサク動作、新UI

先程、SP2000Tを「音を好みに合わせて調整できる」と書いたが、実はSP3000にもカスタマイズ機能がある。イコライザーを搭載しており、これを活用できるほか、AKMのサンプルレートコンバーター「AK4137EQ」を活用したデジタルオーディオリマスター(DAR)機能を備えている。

デジタルオーディオリマスター機能。細かい設定ができるほか、上からプルダウンするクイックメニューで手軽にON/OFFも切り替えられる

簡単に言えば、アップサンプリング再生機能の一種。再生している音楽のサンプリングレートをリアルタイムにアップサンプリングしてくれる。最大PCM 384KHz/DSD 12.2MHzまでで、PCMかDSDのどちらかを選ぶ事ができる。真空管の風味を混ぜる……とは方向性が違うのだが、PCMにするとより高解像度な方向へ、DSDを選ぶと、元がPCMの曲であっても、アナログっぽい滑らかさが出てくる。オススメはDSDだ。女性ボーカルやジャズなどで、暖かさが欲しい時は積極的に使うと良いだろう。

もう1つ面白い機能が「クロスフィード」だ。スピーカーと違って、左右のチャンネルがキッパリ分離しているイヤフォン/ヘッドフォン再生では、右チャンネルの音が左耳に、逆に左チャンネルの音が右耳に入る事がない。

クロスフィードは、この特徴を緩和すべく、片方のチャンネルのオリジナル信号の一部をミックスし、その信号を時間差で反対側のチャンネルに送り込むもの。要するに“スピーカー再生のようなクロストークを意図的に作り出す機能”と考えれば良い。

「クロスフィード」機能

この機能をONにすると、目の前にスピーカーが出現したかのように……とまではいかないが、ボワッと頭内に音が響く感じがスキッと整理され、音像が中央にクッキリと固まる。聴き疲れしなくなる音になるとも言える。ただ、音の広がり自体はタイトになるので、好みや、音楽を長時間聴くかどうかで使い分けてもいいだろう。シェルフカットオフ、シェルフゲイン、ミキサーレベルなどを細かく設定する事も可能だ。

細かな設定もできる

音以外の部分にも言及しておこう。これまでのAK DAPと同様に、音楽ストリーミングサービスアプリなどをインストールできる「Open APP Service」機能も備えており、実際にAmazon Music HDを聴く事もできた。

「Open APP Service」機能も備えている
Amazon Music HDアプリを使っているところ

その際に感じたのは、こうしたストリーミングアプリを操作している時も、動作がサクサクという事。SP3000にはオクタコアCPUの「Snapdragon 6125」が搭載されているためで、今までのAK DAPでは、ちょっとレスポンスが遅かったアプリも、ストレス無く動作する。これはある意味で、音質の進化よりも、日常使いで恩恵が大きいだろう。

また、メニュー周りも進化。アルバムジャケットがCDケースに入れられたようなデザインで表示されたり、黒と赤を基調としたシックな色味になったり、左側から出てくるメニューに並ぶ項目が刷新され「サービス」などにアクセスしやすくなっている。音楽配信も多様するので、個人的に嬉しいのはメイン画面の左下のアイコンから、Open APP Serviceにいつでもすぐアクセスできるようになった事だ。

左がSP3000、右がSP2000Tのメニュー。デザインや色味が変わり、アルバムジャケットがCDケースに入れられたようなデザインになっている

AK DAPの集大成サウンド

従来のハイエンドDAP、SP2000Tを使い始めた時に「真空管サウンドも聴けてこれは面白いDAPだ」と思うと同時に、「DAP進化の頭打ち」も少し感じていた。しかし、SP3000の登場は、そんな予想を気持ちよく粉砕。「まだまだ進化するぜ」という気概を見せてくれた印象だ。

質感・高級感バツグンの筐体と、洗練されたメニューまわり、サクサク動作と、音質以外の部分も非常に完成度が高い。まさに「10年以上に渡るAK DAPの集大成」をカタチにしたような製品であり、同時に「これから先のDAP」を垣間見せてくれる存在だ。

特に不満点は無いが、強いて要望を挙げるならば、音楽配信サービスアプリとの連携をさらに進化させて欲しい。自分で転送したハイレゾファイルと、音楽配信からストリーミング/ダウンロード再生する楽曲を、1つの再生アプリでシームレスに扱うような機能も欲しいところだ。

いずれにせよ、現時点の“究極DAP”の1つを体現したモデルだ。冒頭に戻るが、そういった意味で、長年ポータブルオーディオを楽しんでいる人はもちろん、完全ワイヤレスからイヤフォンに興味を持った人にも、一度聴いてみて欲しい。ワクワクする“ポータブルオーディオの可能性”を体験できるはずだ。

フランス製ゴートスキンレザーの本革ケースも付属する。ケースに入れたままでも、端子やボタンにアクセスできる

(協力:アユート)

山崎健太郎