レビュー

もはや“生活必需品”。ながら聴きの理想形、メガネ型「Huawei Eyewear」

「Huawei Eyewear」

骨伝導タイプや耳掛け式、耳たぶを挟むタイプなど、各メーカーからさまざまな方式の製品が登場している“ながら聴き”のジャンル。筆者もいくつかの製品を使ってきたが、2023年に入ってからは、とある製品だけを使うようになった。それがファーウェイが販売しているメガネ型の「Huawei Eyewear」。11月24日に発売となる新モデル「Huawei Eyewear 2」を先行して借りることができたので、新モデルのレビューを交えつつ、筆者が“ながら聴きはメガネ型”にたどり着いた理由を紹介したい。

耳をふさがないタイプのイヤフォンは、Web会議の普及やテレワーク導入に伴う生活環境の変化などにより人気を集めており、Shokzの骨伝導タイプや、JBL、Ankerなどが展開している耳掛けタイプ、ambieの耳たぶに挟むタイプ、ソニーLinkbudsのような穴あきタイプと、各メーカーから、さまざまなモデルが登場している。

Ankerが発売していた「Soundcore Frames」のPCメガネタイプ「Soundcore Frames Cafe」

ファーウェイが発売しているメガネ型のEyewearシリーズも、そういったながら聴き製品の一種で、メガネのツル部分にスピーカーを内蔵したもの。同じような製品はAnkerが「Soundcore Frames」、ボーズが「Bose Frames」として展開していたが、現在はどちらも販売終了となっている。

ラジオや雑談配信。“音声コンテンツ”に最適なEyewear

筆者のEyewearは2022年発売の初代モデルで、ツルの中央部分に25×8×3mmのダイナミック型セミオープンユニットを搭載している。バッテリー持続時間は音楽連続再生で最大約6時間。Bluetooth 5.2準拠で、コーデックはSBCとAACをサポート、マルチポイント接続にも対応するなど、ながら聴きモデルとしては十分なスペックとなっている。

ツルの部分はタッチパッドになっており、楽曲の再生/停止や音量調整が可能。メガネの掛け外しに合わせて楽曲を再生/停止する装着検知も利用できる。

筆者はそんな初代Eyewearを2022年夏頃に入手したのだが、そもそもメガネやコンタクトを着けない裸眼であることや、後述するが音楽鑑賞用としてはそこまで音質が良くないことなどから、当初はあまり使わなかった。ただ2023年に入って、外出時に聴くコンテンツの好みが変わったことから使用回数が増加。今では外出時に必ず持ち歩くアイテムとなっている。

Eyewearの音質は、セミオープン型ドライバーという構造もあり、低域は抜けがちで、量感は少し物足りない。また「地球儀/米津玄師」に含まれている“軋み音”のような細かい音の描写も、あまり繊細ではない。

ただサウンド自体はクリアで解像感もあり、中高域、特にボーカルなど人の声がはっきり聴こえるので、音楽をしっかり聴き込むのではなく、BGMのように流しておく、文字どおり“ながら聴き”するにはピッタリなチューニングに仕上げられている。

そして人の声が聴き取りやすいという特長にマッチするのが、ラジオやポッドキャスト、雑談配信といった音声コンテンツ。筆者は2023年に入ってから、外出中は音楽よりもradikoやYouTubeの雑談配信をメインに聴く機会が増えてきたため、人の声がはっきりと聴き取りやすいEyewearを使う回数が増え始めた。

「Huawei Eyewear」を掛けたところ

現在の利用スタイルとしては、近所のコンビニやスーパーに行く程度ならEyewearのみ、通勤等で電車などに乗る場合は屋外を歩いているときはEyewear、屋内や電車内ではAirPods Pro(第2世代)を使う“二刀流”。

後者についてはAirPods Proだけで良いのではとも思うのだが、カナル型イヤフォンは長時間着けていると耳の中が蒸れてきて不快感を感じがち。特に今年の夏のような酷暑では、耳にすぐ熱がこもって外でイヤフォンを着けていられないと感じてしまうことが多かった。そんな状況でもEyewearなら耳穴が蒸れる不快感を感じずにコンテンツを楽しめるので手放せなくなってしまった。

ちなみにEyewearシリーズは、メガネチェーンのOWNDAYSとコラボレーションしており、OWNDAYSに持ち込むことでレンズを交換できるのも特徴のひとつ。度入りレンズはもちろん、UVカットレンズやカラーレンズ、調光レンズなどを入れて伊達メガネやサングラスにして使うこともできる。筆者も屋外利用が主なのでUVカット機能がある「UV・PCダブルカットレンズ」に交換している。

そんな愛用品の初代Eyewearだが、大きな不満点がある。それはバッテリーの持ち時間と充電方法。音楽再生時の連続時間は最大約6時間で、筆者の使用ペースだと2日に1回程度の充電で問題ないのだが、よりヘビーに使っていくにはやや物足りない。

充電にはY字の専用アダプターを使う

また充電には付属の専用アダプターが必要なのだが、これが曲者。アダプターはY字になっていて、二股に分かれた先端にマグネット式の充電端子が着いており、この充電端子をEyewearのツルの両側先端に装着。Y時のまとまる側を、別途用意したUSB-Cケーブルに接続して充電する仕組みとなっている。

充電端子をツルに装着したところ。マグネットで吸着されるが、磁力がかなり弱い

しかし、この充電端子の磁力が極めて弱く、机に置いたときの衝撃や、ひどいときは接続したUSB-Cケーブルの張力に負けて、充電端子がツルの先端から外れてしまうほど。両方の端子がツルに接続されていないと充電されない仕組みなので、充電には細心の注意が必要となる。

この磁力の弱さが影響して、例えば移動中にモバイルバッテリーを使ってカバンの中で充電しておくといった運用もしづらい。なにより、いちいち専用ケーブルを持ち歩くというのも厄介だ。なので、外出時にバッテリー切れを起こさないよう、頻繁に充電しているのだが、その充電自体がそもそも気を使う……という“悪循環”に。これが解消されないかなぁと思っていた。

不満点が解決された新モデル。ただ新たな悩みも

新モデルの「Huawei Eyewear 2」(チタニウムシルバー)

新モデルのEyewear 2では、デザインを一新。バッテリー容量が約30%上昇し、最大11時間の音楽再生が可能になった。スピーカーも新たな同一指向型デュアル振動板を採用し、音圧を約30%強化。振動板の振幅幅も大きくなったことで、低音域の迫力が増しているという。

このEyewear 2はファーウェイが展開する2種類に加え、OWNDAYSモデルとしてメガネのシェイプやフレーム色が異なる全8バリエーションが用意されている。ファーウェイモデルは11月24日発売で、店頭予想価格はブラックが37,800円前後、チタニウムシルバーが47,800円前後。OWNDAYSモデルは11月3日に発売済みで、価格は37,800円。今回はファーウェイから発売されるチタニウムシルバーを借りている。

Eyewear 2を装着して、まず感じたのは軽量さ。スペックシート上で見るとEyewear 2のチタニウムシルバーはファッショングラス部分を含めて約39.2g、所有しているEyewearのボストン型フルリムは約37.6gと、新モデルのほうが1.6g重いのだが、丸みを帯びた形状のテンプルや、フルリム、ハーフリムの仕様違いによる重量バランスの差などから、掛けたときの印象としてはEyewear 2のほうが軽く感じられた。

「Huawei Eyewear 2」(チタニウムシルバー)を装着したところ

音質面では、初代モデルでは感じにくかった低域の小気味よさが味わえるものの、重低音推しの他社製開放型イヤフォンなどと比べるとかなり抑えめで、少し物足りない。そのほか中高域のクリアさや、人の声の押し出しの強さなどは初代モデルと変わらない印象だった。

一方で、音圧については大幅に進化。ペアリングしたiPhoneの音量を最大にすると、初代Eyewearではかなり音がうるさいがメガネを掛けていられないほどではなかったのに対し、Eyewear 2では音で耳が痛くなり、メガネを掛けてはいられないほどの爆音になる。初代モデルで音量不足に悩んでいた人にとっては嬉しい改善だろう。

ただ、iPhoneの音量ゲージで80%を超えたあたりから、Eyewear 2では音の奥行き感がなくなったような音に音質が変化する印象があった。

そして筆者が個人的にもっとも感動したのが充電アダプター。Y字形状の専用マグネットアダプターをツルの先端に装着するという充電方法自体は変わっていないものの、マグネットの磁力が強力になっており、机に置いた衝撃程度ではまったく外れなくなっていた。

「Huawei Eyewear 2」は充電ケーブルも進化した
ツルの先端に充電端子を装着する仕組みは変わらないが、磁力が強力になり外れにくくなった

これだけ強力であれば、外出中もカフェで休憩中に気兼ねなく充電できそうだ。バッテリー駆動時間が最大11時間まで強化されているので、連続使用もしやすくなっている。

上が「Huawei Eyewear 2」。下の初代「「Huawei Eyewear」よりもツルが細くなった

上述したとおり、初代モデルで不満だったバッテリー・充電周りが大きく改善された。新モデルへの買い替えを真剣に検討していたが、残念ながら今回は購入を見送ることにした。というのもテンプル形状が丸くなった影響か、フィット感が緩くなり、下を向くだけでメガネがズレ落ちそうになることが複数回あったため。鼻あての位置調整なども試してみたが、どうしてもしっくり来るフィット感にできなかった。

Huaweiモデルには付属しないが、OWNDAYSモデルにはヒンジの長さを調整できる予備ヒンジが付属し、OWNDAYS店舗にて無料で交換対応してもらえる。OWNDAYS店舗では鼻あての微調整などもしてもらえるので、Eyewear 2のフィット感が気になる人は、OWNDAYS店舗で相談・試着して購入することをおすすめする。

付属ケースも変更。「Huawei Eyewear 2」では折りたたむと平たくなるハードケースが付属する
初代「Huawei Eyewear」付属のケース。フェルト地のソフトケースでコンパクトに持ち運べるが、耐衝撃性はそこまで高くない

最後に、Eyewearシリーズの音漏れ・最大音量の比較、マイク性能のテストを動画で紹介する。マイクテストについては、参考としてファーウェイの完全ワイヤレスイヤフォン「HUAWEI FreeBuds Pro 3」と、アップルの「AirPods Pro(第2世代)」とも比較したので、参考になれば幸いだ。

「Huawei Eyewear」シリーズ 音漏れ・最大音量テスト
「Huawei Eyewear」シリーズ マイク性能テスト

マルチポイント接続の仕様にひとクセあり

ちなみに、初代モデルとEyewear 2が対応しているマルチポイント接続について、少しつまづく場面があった。筆者は配信ライブなどをリビングで観る場合はEyewear+iPadの組み合わせで使うことがあるため、iPhoneとiPadの合計2台をペアリングさせている。しかし、この2台が起動していると、なぜかiPad優先的に接続されてしまうのだ。

例えば玄関を出てからEyewearのツルをダブルタップして音楽再生を始めようとすると、手元にあるiPhoneではなく、2階の自室にあるiPadで観ていたYouTubeの続きや、iPadのミュージックアプリで聴いていた音楽が必ず流れ始めるのだ。

他メーカーの製品であれば、例えばアプリからマルチポイント接続でどちらを優先するかを選択できるものもあるが、Eyewearの管理に使うアプリ「Huawei AI Life」にはそういった項目はない。これまでは面倒だったが、外出する前にiPadのBluetoothをいちいちオフにしてから出かけるようにしていた。

ただ、この挙動については、いろいろと試しているうちに“最後にペアリングした端末へ優先的に接続する”らしいことが判明。試しに一度iPhoneとのペアリングを解除し、再ペアリングしたところ、iPadが真横にある状態でも、Eyewearのツルをダブルタップして再生を始めると、iPhoneのミュージックアプリが起動することを確認できた。

ひと通り確認してみたが、マルチポイント接続の挙動について、公式サイトやサポートページには記述が見当たらなかった。マルチポイント接続のニーズは高まっているので、こういった説明は公式に用意して欲しいところ。また可能ならアプリ側で優先デバイスを指定できるような仕組みも整えて欲しいところだ。

メガネ型の魅力は“装着のしやすさ・快適さ”

最後に、ながら聴き製品をいろいろと使ってきた筆者が、最終的にメガネ型にたどり着いた理由を紹介しよう。それは装着のしやすさ・快適さ。骨伝導タイプはどうしても頭部への締め付けがキツく、長時間装着すると頭が痛くなってしまうことがあった。また持ち歩く際のフットプリントという点でも、畳めるメガネ型に比べると、どうしても大きくなりがち。

それに対し、Eyewearは骨伝導式ではないため、Shokzのような頭部への締め付け感はない。筆者が使っているEyewearはボストン型フルリムタイプで重さ約37.6gとメガネとしてはやや重いため、当初は長時間の装着にはストレスを感じることがあったが、慣れてしまえば特に負担を感じることはなくなった。またメガネ型は折り畳めばジャケットの胸ポケットにもしまえるサイズ感になる。

Linkbudsやambieのような完全ワイヤレスタイプは、骨伝導タイプのように装着時のストレスはないものの、完全ワイヤレスという仕様上、どうしてもケースから取り出す・しまうといった手順が必要。しかもこの取り出す・しまう作業はイヤフォンを落としやすいポイントでもあるので、気を使う時間でもある。

持ち歩く場合も充電・紛失防止用に充電ケースは必ず持ち歩く必要があるし、ノイズキャンセリング付きイヤフォンと併用するとなればケースをふたつ持ち歩くことになる。充電ケース自体は手のひらに収まるコンパクトサイズとはいえ、2個持ち歩くとなれば、サコッシュバッグのような小さいカバンを圧迫するには十分な大きさになる。

メガネなので、折りたためばジャケットの内ポケットにもサッと収納できる

これに対し、Eyewearはメガネなので、ツルを広げて耳に掛けるだけで装着できる。慣れてしまえば片手で歩きながらでもサッと装着でき、完全ワイヤレスほど落としてしまう心配も少ない。メガネとして掛けっぱなしにするのであれば外出時にケースを持ち歩く必要もなく、荷物をコンパクトにできる。

かなり細かな使い勝手の差ではあるが、ちょっとコンビニに行くときや、自宅から2~3駅隣の映画館でレイトショーを観て帰ってくるだけといった場面で、とりあえず手に持って家を出て、歩きながら装着できるEyewearの快適さは、慣れてしまうとほかのながら聴き製品には戻れないほどの強みになるはずだ。

「HUAWEI FreeBuds Pro 3」

また今回は10月17日に発売されたファーウェイの平面振動板採用完全ワイヤレス「HUAWEI FreeBuds Pro 3」についても借りることができた。こちらはデュアルドライバーによる高音質とインテリジェント・ダイナミックANC(アクティブノイズキャンセリング)が特徴のフラッグシップモデル。特に“ながら聴き”用ではないカナル型なので、音質も各帯域がバランスよく鳴り、どんなジャンルの音楽も気持ちよく聴かせてくれる。

ノイズキャンセリングについては、AirPods Pro(第2世代)と比べると抑えめだが、電車の走行ノイズも耳障りな高音成分などはしっかりカットされて、音楽を楽しむことができた。

酒井隆文