レビュー

7990円の「ウルトラノイキャン」はどのくらい強力!? Anker「Soundcore P40i」を聴く

試用した「Soundcore P40i」(オフホワイト)

Ankerの完全ワイヤレスイヤフォンと言えば強力な「ウルトラノイズキャンセリング」機能がお馴染みだが、そのウルトラノイキャンを7,990円という手頃な価格で体験できる注目イヤフォン「Soundcore P40i」が4月9日に発売された。

人気モデルになっているので「NCの実力はどのくらいか?」「音質はどうなの?」と気になっている人もいるだろう。実際に使ったレビューをお届けする。結論から先に言うと、上位機種と比べると物足りない部分もあるものの、7,990円という価格を踏まえると、バランスの取れた高コスパに仕上がっている。

Soundcore P40iは、全世界で120万台以上を販売したという「Soundcore Life P3」の後継機。手の届きやすい価格はそのままに機能性をさらに高め、ノイズキャンセリング性能とバッテリー持続時間を強化したという。

ノイズキャンセル(NC)はAnker独自技術の「ウルトラノイズキャンセリング 2.0」を搭載。外部環境に合わせてアクティブノイズキャンセリングの強度が自動で調整されるため、通勤の電車の中やデスクでの仕事時など、さまざまな場面で最適なノイズキャンセル強度で使用できる。

「ウルトラノイズキャンセリング 3.0」を搭載した「Soundcore Liberty 4 NC」
今回の「Soundcore P40i」と同じ「ウルトラノイズキャンセリング 2.0」の「Soundcore Liberty 4」

ちなみに、2024年5月時点でAnkerの“ウルトラノイキャン”最上位は、NC特化モデル「Soundcore Liberty 4 NC」に搭載されている「ウルトラノイズキャンセリング 3.0」。このP40iに搭載されている“ウルトラノイキャン 2.0”は、ハイレゾやヘルスモニタリングなどにも対応した“全部入り”モデル「Soundcore Liberty 4」にも搭載されている。

Anker独自のBassUpテクノロジーと11mm径ダイナミックドライバーにより、深みのある低音と迫力のサウンドを実現したという。Bluetooth 5.3準拠で、コーデックはSBCとAACをサポートする。

再生可能時間は、イヤフォン単体で12時間、充電ケース併用で最大60時間(標準モード時)と、SoundcoreブランドのNC付き完全ワイヤレスとしては最長となっている。

充電ケースは丸みを帯びたコンパクトサイズ。またブランド初の機能として、ケースのつまみを引っ張り出すとスマホスタンドとしても活用できるようになっている。カラーバリエーションはオフホワイト、ブラック、ネイビー、パープルで、今回はオフホワイトモデルを借りている。

上位機・競合機と比べるとNCは“もう一歩”

「Soundcore P40i」の充電ケース。借りているのはオフホワイトだが、見た目の印象はクリーム色に近い

ケースは梨地のようなサラサラとした手触りの良い仕上げ。フタはNCに特化した上位モデル「Soundcore Liberty 4 NC」で採用されているボタン開閉式ではなく、手動開閉式だが、切り欠き部に指がかかりやすく、スムーズに開閉できる。

「Soundcore Liberty 4」(左)や「Soundcore Liberty 4 NC」(右)と比べても「Soundcore P40i」(中央)のスティック部は短い
左から「Soundcore Liberty 4」、「Soundcore P40i」、「Soundcore Liberty 4 NC」の充電ケース

イヤフォンはスティック型。スティック部分の長さは前モデル「Life P3」から14%縮小されている。Soundcore Liberty 4 NCやSoundcore Liberty 4と比べると一番短いため、装着時にも耳元で主張しにくい。

「Soundcore P40i」のイヤフォン。操作エリアが判別しやすいよう、ロゴ部分に突起がある

イヤフォンはタッチ操作に対応しており、スティック部分が短くなると操作性が落ちそうだが、タッチセンサーが仕込まれているエリアが識別できるよう、Soundcoreのロゴ部分にドット(突起)があり、指先で操作エリアを識別可能。実際に使ってみても、特に操作しにくさを感じることもなかった。

地下鉄でも使ってみた

今回は静かな室内だけでなく、通勤や外出時の電車や地下鉄でも使ってみた。NC性能については“ウルトラノイキャン 3.0”搭載の「Soundcore Liberty 4 NC」や、NC性能に定評があるApple「AirPods Pro(第2世代)」などと比べると、一段階抑えめな印象で、電車などでは周囲の話し声や高音寄りのノイズはキャンセルされるものの、「ゴオーッ」という低い走行ノイズは耳に届いてくる。

その低い走行ノイズは、音楽を流してしまえばほとんど気にならなくなるが、Liberty 4 NCやAirPods Proなどと比べると、音量を1ステップだけ上げたくなるような印象だった。

どんな音楽も楽しめる現代的ドンシャリサウンド

肝心の音質については、ズンズンッと迫力ある低音と少し尖った印象のある高音が組み合わさった、いわゆる“ドンシャリ”なサウンド。ただ中高域はクリアでしっかりと解像感がある“現代的なドンシャリ”といった印象で、ジャンルを問わずどんな楽曲でも楽しめる仕上がり。

「YOASOBI/アイドル」は、少し低音が膨らみ気味で、もう少しタイトさが欲しくなるものの、その分迫力は十分。ikuraのボーカルもサ行などに少しザラつきを感じる場面もあるものの、耳に痛いほどではない絶妙なバランス感で楽しめる。

そしてこのドンシャリサウンドは「Creepy Nuts/Bling‐Bang‐Bang‐Born」のような楽曲とは特に相性抜群。歌い出しからベースが「ボンッ! ボンッ!」と迫力十分に響きつつ、R-指定のボーカル/ラップもクリアに聴き取れるので、気持ちよく音楽に身を委ねられる。

アプリ「soundcore」ではイコライザー機能などが利用できる
カスタムEQも設定可能

音質については、アプリ「soundcore」のイコライザー機能を使えば微調整が可能。「アコースティック」や「ベースブースター」といったプリセットに加え、より細かな調整ができるカスタムEQ、自身の聴覚と好みに合わせたサウンドプロファイルを作成できる「HearID」が利用できる。

サウンドエフェクトのデフォルト欄にある「詳細」をタップすると、よりさまざまなプリセットEQを選択できる

個人的にはCreepy Nutsを聴く場合はプリセットの「デフォルト」、YOASOBIを聴く場合はプリセットの詳細から選択できる「フラット」がちょうどいいバランスに感じられた。

意外と便利なケースのスマホスタンド化

ケース内側の「PHONE STAND」と書かれたツメを引っ張り上げることで、スマホスタンド化できる

試用していて意外に便利だったのがケースのスマホスタンド機能。筆者はiPhone 13 ProにMagSafe対応のスマホリングを装着しており、外出時にカフェなどで動画を観る際、スマホリングをスタンド代わりにしていたのだが、経年劣化でリングが緩くなっており、動画視聴中にスマホが倒れてしまうことが多かった。

バンパーを装着したiPhone 13 Proも安定して設置できる

ケースのスマホスタンド機能を使えば、そういった悩みからも解放され、快適に動画を楽しめる。スマホとイヤフォン、充電ケースはセットで持ち歩いていることが多いだけに、持ち物を増やさずに快適さをアップできるのも嬉しいポイント。

ケースのフタが開く角度は固定のため、画面の角度調整ができないところは難点と言えるが、YouTubeで30~40分程度のゲーム実況動画を観る分には特に問題はなかった。

NC・音質・使い勝手をうまくまとめた高コスパ機

P40iはNC性能など、上位機種や競合機種と比べると、もう一踏ん張りして欲しい部分もあるものの、どんな楽曲でもパワフルに慣らしてくれるサウンドや、ケースのスマホスタンド機能など、7,990円という価格を考えてもNC・音質・使い勝手がうまくバランスされている1台だった。

初めての完全ワイヤレスイヤフォンや、ちょっとしたプレゼントだけでなく、メインで使っている完全ワイヤレスイヤフォンの故障や紛失などに備えた予備機として持っておいても損はしないだろう。

酒井隆文