レビュー

「これで良いじゃん」再び。Anker“最強ノイキャン”「Soundcore Liberty 4 NC」は最強か

Anker史上最強のノイズキャンセリング性能を謳う「Soundcore Liberty 4 NC」

Ankerは、ブランド史上最強を謳うノイズキャンセリング性能を備えた完全ワイヤレスイヤフォン(TWS)「Soundcore Liberty 4 NC」を7月26日に発売した。価格は12,990円。実機を使ってみると、ノイズキャンセリングだけでなく、サウンド面もパワーアップしており、コストパフォーマンスにさらに磨きがかかったモデルに仕上がっていた。

「Soundcore Liberty 4 NC」のケース。前面には“3-in-1多機能ボタン”を搭載

外出や移動が多くなった“ポストコロナ”におけるノイズキャンセリングの需要の高まりを受けて開発したというTWS。幅広い周波数帯の音を感知する高感度センサーとノイズを正確に打ち消すという11mm径ドライバー、遮音性を高めたチャンバーを採用することで、構造面でのノイズキャンセリング性能が強化された。

ソフトウェア面でも、装着時にリアルタイムで周囲の騒音レベルと個人の耳の形を自動で測定する「ウルトラノイズキャンセリング 3.0」を初搭載することで、“Anker史上最強”というノイズキャンセリングを実現している。

Ankerからは同じようなモデル名で“Anker史上最高傑作”を謳うTWS「SoundcoreLiberty 4」が発売されていおり、こちらもノイズキャンセリング機能を搭載しているが、こちらは「ウルトラノイズキャンセリング 2.0」。つまりSoundcore Liberty 4 NCはノイキャンが「3.0」へとさらに進化した。どのくらい進化したかは後ほど体験してみよう。

音質面ではLDACコーデックに対応。使い勝手の面ではイヤフォン単体で10時間、充電ケース込みで最大50時間のバッテリー持続時間を実現。スマホやPCなど2台の端末に同時接続できるマルチポイント機能や、通話相手にクリアな音声を届けるノイズリダクション機能も搭載している。

“Anker史上最高傑作”を謳う「Soundcore Liberty 4」

これに対し、前述のSoundcoreLiberty 4は、ヘッドトラッキングを組み合わせた3Dオーディオ機能やヘルスモニタリング機能も備えた“全部入りモデル”という位置づけだ。

ノイキャン性能はAirPods Pro(第2世代)に迫る

ケースのフタは跳ね上げ式

Soundcore Liberty 4 NCのケースは手触りの良いマット調の梨地のような仕上げ。Soundcore Liberty 4の開閉はスライド式だったが、Soundcore Liberty 4 NCではフタ上に跳ね上げて開く形になった。本体前面のボタンを押すとフタが自動で開くので、片手でも開けることが可能。ボタンを使わずにフタを開けることもできる。

「Soundcore Liberty 4」(左)と「Soundcore Liberty 4 NC」(右)を並べたところ

ちなみに、この前面ボタンは“3-in1多機能ボタン”となっており、ケースを開ける以外にも、Bluetoothのペアリング、イヤフォンの接続リセットにも使用する。

「Soundcore Liberty 4 NC」のイヤフォン

イヤフォンはSoundcore Liberty 4と同じようなステムデザイン。Soundcore Liberty 4と比べると、ステムが少し長くなっている。Soundcore Liberty 4 NCとSoundcore Liberty 4では、付属イヤーピースも違うのだが、装着感に大きな違いはなく、しっかりフィットするサイズのものを選べば、簡単に落ちてしまったり、長時間使っていて痛みなど不快感を感じることはなかった。

「Soundcore Liberty 4」(左)と「Soundcore Liberty 4 NC」(右)を並べたところ。NCのほうが少しステムが長い

さっそくブランド史上最強というノイズキャンセリング性能をチェックしてみた。今回はSoundcore Liberty 4 NCに加え、Soundcore Liberty 4、そしてノイズキャンセリング性能に定評のあるアップルの「AirPods Pro(第2世代)」と比較してみた。

左から「Soundcore Liberty 4」、「Soundcore Liberty 4 NC」「AirPods Pro(第2世代)」のケース

まずは室内でテスト。Soundcore Liberty 4をレビューした際は、空気清浄機が動いているだけの比較的静かな環境でテストしたが、今回は35度を超えるような最高気温が連続する状況だったので、同じ部屋でも空気清浄機に加えて、エアコンと扇風機(ダイソン製で騒音が大きめ)が稼働していて、騒音環境が少し異なる状況でテストしている。

Soundcore Liberty 4では空気清浄機とエアコンのノイズは消えるものの、扇風機の「ゴーッ」というノイズのうち、低音成分はうまくノイズキャンセリングされるが、「コーッ」という高い音のノイズが、かなりはっきりと耳に届いてくる。音楽を聴いていても、ボリュームを1~2ステップほど上げたくなるようなイメージだった。

Soundcore Liberty 4 NCに切り替えると、ノイズの高音成分もかなりマスクされ、ノイズ音量自体もかなり小さくなる。音楽をかけていない状態だと、扇風機の動作音が少し耳に届くが、気が散るような音量ではない。詳しくは後述するが、Soundcore Liberty 4よりも低音が強いサウンドになっていることもあり、音楽をかけてしまえば、いつもと変わらない音量でもノイズが気になることはなかった。

ただノイズキャンセリング独特の、耳が詰まるような感覚はSoundcore Liberty 4 NCのほうが強く感じられた。

屋外や電車内でもテストしてみたが、この傾向は変わらず。やはりSoundcore Liberty 4は、音楽がノイズに負けがちでボリュームを上げたくなり、特に騒音の大きい地下鉄ではかなりノイズが気になってくる。

これに対して、Soundcore Liberty 4 NCでは地上を走る電車内であれば普段と変わらない音量でまったくストレスを感じることなかった。さすがに地下鉄では少し騒音が気になる場面もあったが、ボリュームを1ステップ上げるだけで、気になりづらくなった。

ちなみに同じ室内と電車内の環境で、AirPods Pro(第2世代)を使ってみると、特に室内ではノイズの高音成分もほとんど聞こえなくなり、扇風機から出る風が「サーッ」と音を立てていることが分かる程度。耳が詰まったような感覚もほとんどなかった。

電車内では地下鉄でも、音楽をかけてしまえば走行ノイズはほぼ気にならず、ノイズキャンセリング性能の強力さを痛感する。NC効果としてはAirPods Pro(第2世代)の方が一枚上手だが、Soundcore Liberty 4 NCもそれに肉薄している。

さらに低音“マシマシ”。楽曲の得手不得手が増えた印象も

iPhoneとペアリングしてApple Musicを聴いてみた

サウンド面ではSoundcore Liberty 4が2基のダイナミックドライバーを搭載しているのに対し、Soundcore Liberty 4 NCは11mm径ダイナミックドライバー1基というシンプルな構造だが、低音の迫力はSoundcore Liberty 4 NCが圧倒的で、同じ楽曲を聴いていてもSoundcore Liberty 4 NCのほうが「ズゴンッ」とより芯に響くような低音を味わえる。

例えば「YOASOBI/アイドル」では冒頭のラップパート、続くAメロでも低音がより沈み込むので、より楽曲が持つ力強さを感じられる。

またSoundcore Liberty 4ではアイドルソングなど、主に女性ボーカルで高音域がトゲトゲしく、耳に刺さる感覚があったが、Soundcore Liberty 4 NCでは、そのトゲトゲしさが少し大人しくなり、丸みを帯びた印象。それでも「YOASOBI/アイドル」のikuraのボーカルなど、まだ楽曲やアーティストによっては、時おり高音が耳に痛く感じることもあった。ただアプリのイコライザーで微調整すれば、ほとんど気にならないレベルに調整できる。

ただ低域が強力になりつつ、高音域が少し大人しくなったことで、全体的な音のバランスが変わっており、楽曲による得手不得手が増えたような印象もある。例えば7月期の新アニメ「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」のエンディングテーマ「Reol/切っ先」では、低域が強すぎて、肝心のボーカルが埋もれて聴こえづらい印象だった。

このあたりはイコライザーや自分好みのサウンドプロファイルを作成できる「HearID」などを活用してチューニングしたい。

使い勝手の面で気になったのは、イヤフォンの操作性。Soundcore Liberty 4 NCはタッチセンサー式でイヤフォンをタップすることで再生/停止などを操作できるのだが、Soundcore Liberty 4やAirPods Pro(第2世代)のようにステム部分を摘む操作に慣れていると、正しくタッチ操作できているか、タッチの衝撃でイヤフォンが耳から外れないかが心配になる上、操作する際のタッチノイズが煩わしい。Soundcore Liberty 4よりも長いステムになっているのだから、操作方法は統一してほしかった。

ワイヤレス充電器「Anker 737 MagGo Charger」。MagSafe対応iPhoneとApple Watch、AirPods ProなどQi対応デバイスをまとめて充電できる

また、かなりニッチな不満点だが、同じくAnkerが発売している3-in-1ワイヤレス充電器「Anker 737 MagGo Charger」でワイヤレス充電できなかったのも個人的には残念に感じたポイント。三角形をした充電器で、その底辺部分にワイヤレス充電機能が備わっており、Qi対応のデバイスを充電できる。

三角形の底辺部分がQi対応のワイヤレス充電パッド。「Soundcore Liberty 4」と「AirPods Pro(第2世代)」は隙間に入るので充電できる
「Soundcore Liberty 4 NC」がケースが引っかかってしまい、充電エリアに置けなかった

公式サイトではAirPods Pro(第2世代)やSoundcore Liberty 4などが対応モデルとして記載されており、実際に充電もできたのだが、Soundcore Liberty 4 NCはケースが干渉してしまって充電スペースに置くことができなかった。同じAnker製品であり、充電器自体も今年5月末に発売されたばかりのモデルだけに、こういった製品同士の連携も考慮してくれれば……と思わずにはいられなかった。

2度目の「これで良いじゃん」。ノイキャン強化で日常使いしやすく

昨年末にSoundcore Liberty 4をレビューした際は、「ノイズキャンセリングの性能が気になるが、音質や価格のバランスが良く『これで良いじゃん』と唸った」とまとめたが、その気になっていたノイズキャンセリング性能が大きく強化されたことで、またも「これで良いじゃん」という声が漏れてしまった。

特に筆者は、外出時に使うTWSには、音質よりも「ノイズキャンセリングによるストレスフリーやコンテンツへの没入感」を重視したいタイプなので、Soundcore Liberty 4のANCは日常的に使いづらく、結局AirPods Pro(第2世代)ばかりを使う生活に戻っていた。

しかし、Soundcore Liberty 4 NCのノイズキャンセリング性能が、AirPods Pro(第2世代)ほどではないものの、充分日常使用に耐えるレベルになったことで、今まで以上に外出時に使いやすくなった。

また全体的にフラットな音質のAirPods Pro(第2世代)と、得手不得手はあるものの“低音マシマシ”なSoundcore Liberty 4 NCの組み合わせは、サウンドの方向性が大きく違うので、例えば「テンションを上げたい通勤時はSoundcore Liberty 4 NCでアップナンバーを聴く」「リラックスしたい帰宅時はAirPods Pro(第2世代)でサントラをゆったりと聴く」といった使い分けもしやすい。

もちろん、こういった2台持ちだけでなく「コスパに優れて、ノイズキャンセリングが強力なイヤフォンが欲しい」「通勤・通学時の電車のノイズが大きすぎてコンテンツに集中できない」という人にも、Soundcore Liberty 4 NCはぴったりなモデルと言えるだろう。

酒井隆文