レビュー
Re:デスクトップで始めるオーディオ生活:後編。机とスピーカーが触れない“オーディオ机”作ってみた
2026年1月23日 08:00
メインのシステムとは別に、気軽に聴けるスピーカーとして20cm同軸フルレンジユニットを搭載した約50年前に作られたブックシェルフ機、アルテックのDIGを手に入れた筆者。置き場所がないことからデスクトップスピーカーとして使うに至り、そのため専用机まで作ってしまった顛末をご紹介します。
音楽を聴きながらPC作業ができる「オーディオ専用机」をつくることになりました
アルテックDIGを手に入れたものの、困った問題が起きました。それは置き場所がないこと。というのも筆者は12畳のワンルーム住まいにも関わらず、部屋にはJBLのパラゴンとオーディオラックが占拠しているから。気づけば25年以上パラゴンと川の字で寝るという生活をしています。さらにDIGも一緒に寝るなんて、とてもできそうにありません。
そこで1970年代に活躍されたオーディオ評論家で、パラゴンの上にアルテック604(銀箱)を置かれていた岩崎千明さんに倣い、パラゴンの上にDIG置いてみました。ですが置いた途端、パラゴンが御機嫌を損ねてしまい……。
そういえば「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず。スピーカーの上にスピーカーを置かず」と福沢諭吉さんも仰っていました(?)。つまりDIGを別の場所に移さざるを得なくなりました。
音もよいことから毎日DIGを使いたい。そしてLINNのMAJIK DSM/4とつなげてツーピースコンポーネントを組みたい。何か良い案はないかと思いついたのが「毎日仕事で向かっているPC机の上に置こう」というもの。
375×275×640mm(幅×奥行き×高さ)のスピーカーを机の上に置いて、原稿を書く時のBGMに使おうと考えたのです。MAJIK DSM/4はUSB入力が用意されているのでPCの音声、つまり動画も再生できます。なんたる名案! まさに現代日本にピッタリのオーディオの姿が見えてきたではありませんか。
ほぼ時を同じくして、AV Watchの編集長さんと知り合うことに。このDIGでデスクトップオーディオ案をお伝えしたところ「それは面白いですね」と記事化が決定。それが本稿になるわけです。とはいえ原稿が面白くない、寝ても覚めても原稿が来ないなどで「今回で終わりです」と言われたらションボリなのですが……。
というものの、拙宅の机はモニターとキーボードで埋め尽くされています。また机がL字型で、そのままDIGを置くことはできません。そこで「オーディオ専用机」を作るという運びになりました。スピーカーを買って机を作ることになるとは……。人生、何が起きるかわかったものではありません。
机とスピーカーが直接触れると、色々と問題が出てきそう
筆者は、PCモニターの横にスピーカーを置いた場合、2つ問題があるように感じました。
ひとつはスピーカーの高さ。大抵は低い位置に設置して、斜め上に向かって仰角をつけますが、この場合音は下から聴こえてきます。これでは綺麗なステレオイメージが表出できないと考えます。理想はツイーターの位置を耳の位置までに上げたいのです。
次にスピーカーの振動が机に伝わること。これは音の濁りなどに繋がるのは想像に難しくありません。インシュレーターを使ったところで、根本的な解決にはなりません。スピーカーは専用スタンドの上に置き、机と接触しない方が望ましいと考えます。
当初はスピーカーの前に机を設置すれば解決すると思い実験してみました。すると今度はモニターがフロントバッフルよりも前にやってきて、音像が乱れることが判明。もちろんスピーカーの間にモノは置かない方が望ましいのですが、フロントバッフルよりも奥にモニターを配置すれば、その影響は低減できるようす。
そこで机の天板を凸型にし、出っ張った部分にモニターを設置。その両脇にスピーカースタンドを介してDIGを設置すれば、理想のデスクトップオーディオシステムが完成するのでは、と思いついたのです! これが天才的アイデアなのか、机上の空論に終わるのか。この時は当然わかりませんでした。
スピーカーセッティングの理想は正三角形らしいです
ということで設計を開始。以下はDIG用として話を進めていきますが、多少モディファイすれば、他のスピーカーでも応用できます。
偉い人によると、スピ―カーをセッティングする際、よく言われるのが正三角形の頂点にスピーカーとリスニングポイントを設けた方が望ましいのだそう。ですがリビングなどでセッティングする際、壁や家具などの影響で正三角形セッティングをすることは難しいのが実情ではないでしょうか。ですが、机そのものを作ることから容易に実現できそう。ということで正三角形セッティングを基本に設計を開始しました。
DIGをパラゴンの上に載せ、スピーカー間を1mにして実験。奥行きも綺麗に表現する精緻なステレオイメージが拡がります。早速方眼紙に1/10の縮尺で正三角形を描いてみました。CADで描ければカッコいいのですが、CADソフトを持っていないですし、こういう事は手を動かして考えた方のが楽しいもの。
さっそく1辺1mの正三角形で机を作ろうとすると、これが幅1.8メートル、奥行き1.2メートルという、とんでもなく大きな机になることが判明。そんな机が置ける場所、我が家にはありません……。
現実的サイズを求めるべく、左右スピーカーの間隔を狭めながら、試聴を繰り返し「ステレオイメージが得られる場所」を捜しもとめていきました。検討の結果、1辺85cm以下ではモノーラルに聴こえてくることがわかり、このあたりが現実ラインであると見えてきました。
再び図面を引いてみます。すると今度は24インチのワイド型ディスプレイが横置きで設置できないことが判明したのです。これはDIGの横幅が37cmもあることが原因で、例えば幅24cmのB&W「805 D4」なら、ツイーター間隔が85cmでも24インチディスプレイが設置できそうです。もちろん、それより小さなスピーカーなら問題ないでしょう。
ディスプレイが置けないと、このPC対応オーディオ机を作る意味がありません。ですが筆者は普段、ディスプレイを縦置きで使っています。「え? 何故?」と思われることでしょう。これがWebを閲覧する、Wordで横書きをする際にとても便利なのです。そもそもスマートフォンも縦長画面ですし。筆者的に横長画面が必要になるのは、写真関係と動画のフルスクリーン再生の時ぐらい。27インチのワイドディスプレイなら縦長配置でも設置できそうですので、そのまま設計を進めることにしました。
ある程度、方向性が見えてきた段階で、実際に設置予定場所を検討すべく、ダイソーで工作用紙を購入し原寸大の図面を制作。これはDIGを迎え入れた際、想定外の大きさにたじろいだから。机を作って「大きくて入らない」は洒落になりません。こうしてデスクトップオーディオ専用机の設計を詰めていきました。
約10万円のオーディオ机が完成しました。
こうして設計図が完成。制作にとりかかります。とはいえ机を作るのは大変そうなので、机のオーダーメイドに応じる会社に依頼することにしました。
オーダーしたのは、iDeskブランドで知られる松本デザイン機構。同社は初音ミクで知られるクリプトン・フューチャー・メディアや、鬼滅の刃の製作スタジオであるufotableにも机を納品した実績があるそうで、1998年のサービス開始以来、1万卓を超えるオーダーメイド机を出荷されているのだとか。
ちなみに筆者が今まで使っていた机も同社に依頼したもので、何年も使っていますが不具合も何もありませんでした。
Web経由で手書きの設計図を送り、何度かメールで打ち合わせ。デスク本体8万5,000円(税抜)に運送費5500円(税抜)。これに消費税9,050円が加わり9万9,550円。銀行に振り込んで待つこと約1か月。机が納品されました。大きなテトリスのピースみたいな荷物に、期待と不安が入り混じります。
組み立ては、アルミフレーム材とジョイントをボルトで止め、天板を取り付けるだけと簡単。大きさ的に1人で作業するのは大変なので、家族の手を借りたいところ。ですが筆者は未婚で彼女ナシ。独りで頑張るしかありません。
せっかく作るオーディオ机ですから、より使いやすく、カッコよくしたい。そこで、ケーブルタイを使い、USBケーブルなどをフレームにまとめてみました。これにより、足元がケーブルでグチャグチャ……という事態が避けられます。
もうひとつは、天板裏側にOAタップをネジで固定するというもの。これもまた足元が電源ケーブルでグチャグチャに……が避けられます。特にOAタップの取り付けは、机を設置した後に取り付けようとすると、かなり大変な作業になりますので、作る時に施工されることをオススメします。
並行してスピーカースタンドです。色々探したところ、AmazonでBQKOZFINというメーカーのスピーカースタンドを発見。選んだ理由は、ペアで1万円もしなかったことと、高さが10cmきざみでラインナップされていることの2点。
筆者は座った時の耳の高さから80cmモデルをチョイスしました。支柱が木材なので「長いなぁ」と思った時は切って短くできるのも◎。高さやセッティングが決まったら金属製スタンドに変更したいと思います。
モニターの固定は、Amazonでエルゴトロンの「LX」というモデルをチョイス。モニターアームとしては高額な部類に入るのですが、縦長設置する際に関節強度が足りないと前傾してきますので、ここは良いモノを選ばれることを強くオススメします。実際に使ってみるとモニターが下がったり前傾することはないものの、横長にしようとすると、スピーカーを少し動かさなければならないことが発覚。他によいアームはないかと、今も探していたりします。
「壺中の天」とは、まさにこのこと!マジ最高です
こうして出来上がったデスクトップオーディオシステム。組み上げて椅子に座った時の圧迫感は凄く、「コレ大丈夫か?」と不安になりましたが、LINN MAJIK DSM/4とつなげて音を出してみると「おぉちゃんとステレオイメージが出ている」と納得。
ただセッティングはかなりシビアで、僅かな左右スピーカーのズレはもちろんのこと、体を少し動かしただけでも音像がピシッと中央に来ない様子。これでは堅苦しくて、リラックスして聴けないことと、中高域が少し強く感じたこと。そして見た目がシックリ来ないの3点から、スピーカーを真正面に向けて使うことにしました。そしてスピーカーの間を少し広げたりもして。正三角形セッティングを少し崩した方が、納まりがよいようです。
85cm程度という極端に短い視聴距離は、通常の音楽鑑賞よりも没入感のある世界が提示されます。中国には「後漢時代の費長房(ひちょうぼう)が、薬売り老人の壺の中に入ったところ、立派な建物と美酒佳肴(びしゅかこう)が並ぶ仙境で、俗世を忘れて楽しんだ」という故事から、「壺中の天(こちゅうのてん)」という言葉があるそうですが、超近接距離でのコンパクトシステムの音はまさにそれ。ヘッドフォンで動画鑑賞をするのも良いですが、やっぱりスピーカーから音を出した方が楽しめます!
大きな音量を出しても、振動が机に伝わりません。またキーボードをガンガン叩いても、スピーカーは動きません。これが音の透明度、そして左右チャンネルのセパレーション向上に寄与しているように思います。さらにDIGのような大型ブックシェルフ機の場合、スピーカーの位置を床方向に下げたいと思った時に、スタンドを短くすれば机天面よりも下げることができます。凸型の天板形状、本当に大正解です!
音楽はもちろんのこと、YouTubeやAmazon Prime Videoなどの動画との相性も抜群。つい息抜きに動画をみてしまうと最後。何時間も観ていたりして……。おかげで仕事がちっとも捗らず、編集長から「いつ机は出来上がるんですか?」とプレッシャーが……。
ともあれ、コンパクトなオーディオ機器と、オーディオ机を使ったデスクトップオーディオシステムは大成功! 机上の空論にならず、ホントに良かったです。
日本にピッタリのオーディオスタイル「デスクトップオーディオ」に挑戦してみませんか?
もちろん、このシステムはスタートラインに立ったばかり。スピーカースタンドはもう少し下げると共に、よりシッカリとしたものに変えてみたいですし、簡単に縦横が可変できるモニターアームを探したいところ。
さらに、他のスピーカーではどのように鳴るのだろう? 一般的な2ウェイスピーカー、例えばハーベスのコンパクト機「HL-P3ESR XD2」やB&Wの「707 S3」などは、85cmの近接試聴で音がまとまるのか? といった新たな疑問がウズウズ。このあたりは、機会があればお伝えしたいと思います。機会があれば……ですが。
机の上にブックシェルフ型スピーカーを置くなんて……と、眉をひそめる方もいらっしゃることでしょう(置いてませんが)。ですが、オーディオは基本的に自由だと思っています。いっぽうで野放図に何やってもいい、ということを言うつもりもありません。正三角形セッティング、電源極性を揃える、などのオーディオの基本を押さえれば、スピーカーは愉しく歌うようになると思います。
コンパクトなデスクトップオーディオシステムは、精緻で見える音像や小音量でも楽しめるなど、大型コンポーネントオーディオにはない魅力に溢れています。音楽と親密になれるデスクトップオーディオシステム。少し奥行きのある机が置けるスペースがございましたら、是非挑戦して頂きたいと思います。日本にピッタリのオーディオスタイルであると、筆者は確信しています。





































