【レビュー】TVとは違う新時代放送になるか!?「NOTTV」を体験

-ワンセグを越える高画質。番組と機能には不満も


NOTTVのロゴマーク。「O」の部分がキャラクターになっている

 4月のサービス開始に合わせ、都内でよく見かけた黒くてモジャモジャした、怪獣のようなマスコットキャラクター。CMでも頻繁に流れていたので目にした人も多いだろう。“日本初のスマホ向け放送局”として大々的にスタートした「NOTTV」(ノッティーヴィー)のプロモーションだ。今回、その対応端末を使い、実際に放送を体験したのでレポートする。

 その前に、「NOTTV」の概要を簡単におさらいしよう。地上デジタル放送への移行で、従来アナログテレビを放送していたV-High(VHF帯のハイバンド)が空いた。そこで、新しい携帯端末向けのマルチメディア放送「モバキャス」がスタート。その「モバキャス」の放送局の1つが「NOTTV」である。

 つまり「NOTTV」は放送局の名前であり、地上波で言えば「フジテレビ」とか「TBS」と同じもの。放送サービスとしては「モバキャス」が新しく始まったサービス名で、「NOTTV」は参加放送局の1つなのだが、現在放送しているのが「NOTTV」だけなので、“新放送サービス=NOTTV”のような認識が広まっている。ちなみにNOTTVを運営するmmbiには、NTTドコモやフジテレビ、日本テレビ、TBS、テレビ東京、ニッポン放送などのTV放送局・ラジオ局も株主として参加している。


受信しているところ

 「NOTTV」の基本として理解しておきたいのは、これが“放送サービス”である事だ。「BeeTV」や「Hulu」のような、通信経由の映像配信サービスが多数登場しているので、その一種のようにとられがちだが大きく違う。どちらかというと「ワンセグ」に近いだろう。そのため、携帯の電波が入りにくい場所や、通信回線が混雑しているような場所でも、放送の電波さえ入れば映像が見られる。逆に言えば、携帯の電波がよく入っていても、地下街などで放送の電波が届かなければまったく映らないわけだ。

 このあたりの特徴はワンセグと同じだが、ワンセグとの大きな違いは、画質や音質のクオリティが高い事。さらに、端末に蓄積される番組を放送するなど、新しいサービスを実施している点だ。これらは後ほど見ていこう。




■NOTTVの基本

左がスマホの「AQUOS PHONE SH-06D」、右がタブレットの「MEDIAS TAB N-06D」

 サービスに対応している機器は、4月現在2機種。いずれもドコモから発売されているもので、スマホの「AQUOS PHONE SH-06D」と、タブレットの「MEDIAS TAB N-06D」だ。これらの機器には「NOTTV」視聴用アプリがプリインストールされている。

 ただし、月額420円の有料サービスとなっているため、視聴には契約が必要だ。契約はドコモショップなどでできるほか、アプリ上からも可能。初期設定終了後に、ドコモケータイ払いか、クレジットカード払いのどちらかを選択し、登録が完了すると視聴できるようになる。なお、初回申し込みから30日間のサービス利用料は無料だ。

 この契約で基本的な番組は視聴できるが、将来的にはスペシャルな番組・コンテンツを追加で楽しむための「プレミアム料金」も、今後提供する予定だという。このプレミアム料金は、マンスリー、パック、単品の3つの料金プランが予定されている。


AQUOS PHONE SH-06D。防水機能やおサイフケータイ機能、ワンセグ受信も可能だオプションの卓上スタンド「SH38」と組み合わせたところ。長時間視聴する時は、スタンドがあると便利だ

 放送エリアはNOTTVのWebサイトに記載されているが、4月現在は東京、名古屋、大阪の近郊、福岡市や北九州市、那覇市など。なお、東京向けの放送は東京スカイツリーから送信されており、「東京スカイツリーを電波塔として正式に活用し始めた日本初の放送局」でもある。今後もエリアは拡大する予定で、5月に広島、7月に静岡・岡山、10月に和歌山・熊本、2013年1月に宮城、石川、香川、愛媛、佐賀、4月に北海道、北関東、新潟、長野、鹿児島が予定されている。

 映像フォーマットとしてMPEG-4 AVC/H.264を採用し、リアルタイムの通常放送は720×480ドット/30fpsなど、後述する蓄積型の番組では最大1,280×720ドットのHD解像度での放送も可能。ワンセグは320×240ドット/15fpsなどであるため、解像度、フレームレート共に上回っている。



■都内で受信を試す

ホーム画面に、現在オンエア中の番組情報やニュースを流すガジェットも用意されている

 まずは視聴してみよう。今回はスマートフォン「AQUOS PHONE SH-06D」でテストしている。基本的にアイコンをタップしてアプリ起動すれば受信可能だが、Androidのホーム画面に、現在オンエアされている番組を定期的にお知らせしてくれるガジェットも用意されており、ここをタップする事でも起動できる。

 市ヶ谷にある編集部の2階フロア中央で、本体のアンテナを最大まで伸ばした状態で、方向を探せば受信可能。しかし、アンテナ表示は1~2本で、ノートPCが近くにあったり、わずかに角度が変わるなどすると受信できなくなる場面もあった。窓際に移動すると、アンテナが3本全部立ち、安定して受信できる。

 そのままビル内部の階段を降りてみると、受信できなくなる。玄関に近づくと再び受信可能。そのまま屋外に出ると安定して受信できる。歩いて市ヶ谷駅まで移動。ホームでもしっかり受信できた。

 電車(総武線)に乗り、ドア脇に立ったまま視聴していると、基本的には常時受信できる。しかし、トンネルに入るとまったく映らず、また四ツ谷駅のような半地下になっている駅では頻繁に受信不能になる。また、席に座り、ヒザの上に乗せたバッグの上に置いてみると、ドア付近に立っていた時よりアンテナ本数が減り、時折受信できなくなる。新宿駅から品川駅まで山手線に乗ってみたが、基本的には同様。できるだけ窓に近い場所に立つなど、気をつけていれば安定した受信はできる。

 一方、地下は基本的に映らないと思った方が良い。有楽町線や半蔵門線などに乗ってみたが、そもそも駅にたどり着く前の、地下道に入った瞬間に映らなくなる。乗車中ももちろん受信は不可だ。


チューニング中の画面受信できない時の画面地下鉄では受信できなかった

 杉並区にある家(エリア内)では、窓の近くであれば受信が可能。ただし、部屋の奥に入るとまったく入らない。また、夜になって鉄製の雨戸をしめると、室内では全く受信できなくなり、わずかに雨戸を開けて、その近くに設置というスタイルで鑑賞していた。ちなみに、室内の同じ場所で比較して、ワンセグがギリギリ入るポイントでも、NOTTVは入らないというケースがあった。多くの地点で比較したわけではないが、NOTTVの受信可能地域内でも、「ワンセグの受信が厳しい」というような場所では、NOTTVの受信も難しいと考えていたほうが良さそうだ。

同じ場所でワンセグ(右)は受信できるが、nottvは受信できない(左)

 しかし、良い点として、受信から表示までが高速な事が挙げられる。視聴アプリの起動は5秒程度、チャンネル切り替えも2秒程度で、表示まで待たされる感覚が無い。また、デジタル放送であるため、映る/映らないが、瞬時に変化するのも良いポイントだ。つまり地下に降りた瞬間に、アナログテレビのようにノイズがザーザーと走ったり、映像が歪んだりせず、「受信できません」画面に瞬時に切り替わる。地下から出て表示される時も瞬時であり、アナログ放送自体にあった「映りそうだけど映らない」という曖昧さがほとんど無く、映らなくてもすぐにあきらめがつくため、精神的にイライラしないのだ。



■ワンセグを上回る画質。録画はできない。

 ワンセグと見比べてみると、画質はケタ違いに良い。解像度面では、サッカーや野球の放送で、選手の情報が表示されたり、サッカーの布陣などが紹介されていると、選手名やデータなど、4.5型液晶でも、細かい文字がしっかりと読める。野球のスコアボードも同様だ。音楽番組で、タワーレコードからお勧めCDを中継する場面でも、背後に並んだCDのジャケットが判別できる。

 スポーツ中継では、フレームレートがワンセグ(15fps)の2倍、30fpsあるのが大きい。ドリブル中も動きが滑らかに表示され、解像度の高さも合わさり、ボールがどこにあるのかわかりやすい。ダッシュの最中は無理だが、パスを出そうと選手が一瞬止まれば、ユニフォームの文字もくっきり読める。ワンセグではフレーム補間で滑らかに見せるように工夫がされているが、NOTTVでは、もともとの情報量が多い恩恵が感じられる。 

サッカー中継の一場面。ボールの位置がよくわかる布陣を説明している画面。細かい文字も判別できる天気図も見やすい

 だが、高い解像度の反面、ビットレートが抑えられているようで、画面全体がパンしたり、別のカメラに切り替わったりする瞬間に、かなり盛大にブロックノイズが出る。トーク番組で静止している時は綺麗だが、別コーナーに切り替わる瞬間、ザワザワと輪郭が崩れる。韓流音楽紹介番組で、グループが5人くらいで踊っている時も、首から下に盛大なノイズが出る。アニメでも、動きが激しいオープニングは厳しい。ただ、ノイズまみれで見られないというほどではなく、高解像度であるため、そうした部分が気になりやすいとも言える。音質も良好。SH-06Dでは付属の変換ケーブルを使い、ステレオミニのイヤフォン/ヘッドフォンが接続できるが、圧縮率が高くて高域がシャリシャリしたり、音像が痩せるような事もない。

 この画質であれば、机の上に設置して、サブテレビのように長時間視聴しても良いかなと思わせてくれる。今回は試していないが、タブレット端末ではよりその傾向が強まるだろう。ワンセグと比べた際の“綺麗さ”は、端末の画面が大きくなればなるほど際立つはずだ。

 EPGが用意されており、番組情報はそこからチェックできる。チャンネルは「nottv1」、「nottv2」、「nottv NEWS」の3つあり、NEWSは24時間ニュースを繰り返し放送している。電車での移動中など、ちょっとした時間にいつでもニュースが見られるのは便利だ。

 また、これとは別に、ジャンルから気になる番組を見つけられるメニューも備えている。このメニューには「コンテンツリスト」と「コンテンツ予定表」というものも用意され、後述するシフトタイム番組で利用する。

番組表を表示しているところジャンルから番組を探せるリスト表示ちなみにNOTTVアプリを起動している間はスクリーンショットが撮影できない
ジャンルの海外ドラマを選んだところ

 予約機能は視聴予約のみで、録画機能は無い。リアルタイム録画もできない。気になる情報が流れているけれど、しっかり見ている暇がない時も多いので、録画できないのは残念だ。ワンセグでは当然の機能になりつつあるため、バージョンアップや今後の端末などで対応して欲しいところだ。

 もう1つ、ワンセグと比べて気になるのは、字幕が用意された番組が少ないことだ。ワンセグのニュースや録画番組は基本的に字幕があるため、電車内などでイヤフォンをいちいち装着しなくても、番組の内容が把握できて便利だ。NOTTVでもニュースには字幕をぜひつけて欲しい。前述のように、変換ケーブルが無いと通常のイヤフォンが装着できないので、なおのことだ。なお、現在のNOTTV対応機種では、HDMIなどの外部映像出力も備えていない。


イヤフォン端子はUSB兼用付属ケーブルを使ってステレオミニに変換する本体にもロッドアンテナを装備している


■シフトタイム視聴とSNS連動

 機能面の特徴である端末蓄積型の放送は「シフトタイム視聴」と名付けられている。これは、あらかじめ登録するか、自動的に登録された番組が端末のSDカードに蓄積され、リアルタイムの放送とは別に、いつでも視聴できるというものだ。蓄積された番組は、SDカードから再生しているので、放送が受信できない地下鉄などでも番組が楽しめるというものである。

 この蓄積方法だが、放送波を使って受信する。蓄積用の番組は、リアルタイムの放送とは別に放送されており、蓄積してからではないと見られない。例えば、4月15日の日曜日に放送される番組をまとめて紹介する「NOTTV INFO Sunday」というシフトタイム用番組は、4月15日の午前1時~1時48分の間に放送される。これを端末が受信し、蓄積し、ユーザーは日曜日の朝に再生するというわけだ。

 なお、午前1時~1時48分というのは、蓄積用のデータが配信される時間帯を示しており、この番組が48分間あるわけではない。現在蓄積型番組として提供されているのは2分程度の短いものが中心だ。この時間帯に端末が放送を受信できれば、コンテンツを蓄積できるという意味である。

放送予定の蓄積型番組のリストが表示される基本的には自動的に蓄積されるようになっているが、手動で蓄積する/しないを設定する事もできる

 だが、これがなかなか曲者だ。通信経由で番組を取得するわけではないため、深夜、端末を充電している時に、放送が受信できるような電波環境に置いておかねばならない。前述のように、私の家では、部屋の奥では受信できなかったため、電源タップを伸ばして窓際まで充電台を持っていき、雨戸を少し開けて、ガラス戸を閉めた状態で就寝。無事に蓄積された。当然ながら、そのように設置しなかった日は、シフトタイム番組が用意されていても、蓄積はできなかった。もっと頻繁にシフトタイム番組を放送してくれるか、何日か分の番組をセットで提供するなどの工夫が欲しいところ。欲を言えば、蓄積コンテンツだけは、無線LAN経由でも取得可能としてくれると嬉しい。

 蓄積用番組の放送予定は、前述メニューの「コンテンツ予定表」に、蓄積された番組は「コンテンツリスト」に表示され、そこから再生できる。ユニークなのは“再生できる期間”が決まっている事だ。先程の場合、深夜1時5分頃にコンテンツの蓄積が完了したのだが、すぐには再生できない。詳細情報を見ると「利用期間:4月15日5時~4月16日5時」とか書かれており、朝の5時にならないと再生できないのだ。

 つまり夜中の間は蓄積するだけで、「朝起きてから、再生してください」という意味だ。利用期間が過ぎたコンテンツは自動的に削除される。なお、この蓄積コンテンツは、基本的に、自動的に予約されているのだが、コンテンツ予定表から選択し、手動で予約したり、予約を解除する事もできる。

1番組が蓄積されると、コンテンツリストに「1」と表示されるコンテンツには利用期間が設けられており、その時にならないと再生できない

 もう1つの目玉機能がSNS連動だ。機能的にはシンプルで、縦持ちで表示している際、画面の下部にツイッターやFacebookのタイムラインを表示してくれるというものだ。Twitterでは、ハッシュタグ「#nottv」にヒットしたものを表示しているようだ。自分のタイムラインに切り替える事もできる。もちろん書き込みも可能で、番組を見ながら、感想などをつぶやけるようになっている。

 ただ、機能的には最低限といった印象で、しばらく表示していても自動的にリロードされなかったり、横向きの画面にすると、画面中央を大きく遮り、番組がまったく見えなくなる。画面の下部や上部にスクロール表示したり、自動リロードするなど、もう少し工夫が欲しいところだ。

縦位置で視聴していると、Twitterのタイムラインが下部に表示されて見やすい横向きにすると画面をほとんど覆ってしまい、番組が見えなくなる


■気になる番組内容

 ここまでは機能的な面を見てきたが、ある意味最も重要なのが「どんな放送が楽しめるのか」という部分だ。これは、視聴者毎に好みがあるので、番組表などを見て判断して欲しいところだ。

休日の昼間はお笑い芸人関係の番組が多い。地上波と比べると、ブレイク前の芸人が多いようで、ほとんど知らない人ばかり。逆に、マイナーなお笑い芸人に注目している人には良いかもしれない

 ざっくりと説明すると、平日の昼間は「notty★LIVE7時間!」と題した長時間の生放送を展開。グルメや美容、ショッピングなどに関する情報を生放送で流しているもので、地上波で言うところの「王様のブランチ」的な感じだ。

 長時間の生放送を毎日やるというのは、試みとしては面白いのだが、生放送であるため、途中の一部を視聴した時に面白いかと言われると微妙だ。BGM的にずっと流しておいて、興味のある話題になると意識を集中させる……というような“ながら見”がピッタリ合うと思うが、個人的に、平日の昼間にそんなに長時間視聴している暇は無く、何かの合間に短時間で楽しみたいモバイル向け放送とマッチしていないような気がする。“ながら見”ならば、固定テレビの方が適しているだろう。


目玉のAKB48番組み「AKB48のあんた、誰?」。秋葉原からの生中継だそうだ

 もう1つの目玉番組は、CMにも起用されているAKB48関連で、「AKB48のあんた、誰?」が平日の17時~18時にオンエアされている。秋葉原の「AKB48 CAFE&SHOP AKIHABARA」に併設されたシアターから生放送しているもので、各曜日をAKB48の5つの部活動のメンバー達が担当している。他では見られない番組なので、AKBファンには魅力的だろう。

 4月に放送されている海外ドラマは、「LOST」や「FRINGE/フリンジ」のJ.J.エイブラムスが製作総指揮を務めるスパイ・アクション「アンダーカバー」や、韓国ドラマ「神のクイズ」など。海外ドラマの第1話だけを放送する「一期一会」というのもユニークだ。

 アニメでは「エウレカセブンAO」や「Fate/Zero」、「偽物語」など。アニメ情報番組の「アニ充」も用意。旬な声優さんを招く「声優生電話」なる番組もある。スポーツはJリーグのJ1、J2や、「プロ野球ニュース2012」などだ。

 ユニークなところでは、「GIRIGIRIアウト! しばらくお待ちください」という番組。アイドル達が様々な企画に挑戦するというものだが、通常(?)向け放送が「nottv1」で流れ、同時刻に「nottv2」では、「さらに過激なギリギリ映像」をR-18指定として放送するという(まだ見ていない)。地上波ではありえない番組だろう。

 その他は、韓国のバラエティ番組「キム・スンウの乗勝長駆」や、K-POPのPVを流す番組など、韓流系のコンテンツが目立つ。全体的な印象としては、昼間が女性向け、夜はコア層向けの番組が多いようだ。

 前述のシフトタイム用番組のラインナップは寂しく、先程例に上げたオススメ番組紹介「NOTTV INFO Sunday」だが、実は4月15日の日曜日に提供されるコンテンツはこれだけだ。月曜日には同じく2分程度のオススメ番組紹介「NOTTV INFO Monday」に、「音CLIP♪シンチャク 4/16(月)」という約28分の音楽紹介番組(早い話が新曲PVを連続で流す番組)が加わるが、この2個だけ。他の曜日も基本的にこのような組み合わせのみだ。

 受信環境を気にせず番組が楽しめる機能として、積極的に活用して欲しいが、現状は“おまけ”の域を出ていないと感じる。

 これらの番組で月額420円が高いか安いかは人によると思うが、韓流やAKBに、女性向けトレンド情報などにあまり興味がない自分にとっては高価に感じる。アニメやガジェット系の情報、ゲーム系の番組(ファミ通TV)などが今よりも充実したり、SNS連携など、技術的な面で挑戦的な番組が増え、インターネット的なノリの、トンガッた番組が増えてくれれば、面白くなりそうだという予感は感じる。地方局で人気になり、放送されていない地域の人がDVDを購入したり、映像配信サービスに加入してまで視聴しようとした「水曜どうでしょう」のように、「あの番組が見たいから契約する」というほど、力が強い番組が誕生して欲しいところだ。

 だが、例えそうした番組が増えていっても、現状のように録画ができない仕様では、魅力は半減だ。当たり前だが、放送される時間に、忙しくてNOTTVが見られないかもしれないし、暇でも電波が入るとは限らない。地上/BS/110度CSならばBDレコーダでも導入すれば回避できるが、NOTTVの場合はその術が無い。お金を払って、観たいコンテンツを見逃す可能性があるというのは、最新の放送サービスとは思えない仕様だ。どうせならば、全番組を通信経由のVODで再視聴できるとか、ドラマの1話を見たら、番組蓄積機能で勝手に最終話まで端末に蓄積されていくとか、ユーザーの使いやすさを重視した、思い切った機能の実現を望みたい。

 主婦向けの情報番組や、若手お笑い芸人が集まってトークする番組、韓流ドラマ、K-POP、AKBなどは、おおまかに言ってしまえば、昨今の地上波のノリと同じであり、「画面の小さなNOTTVで、わざわざ見なければいけない理由」を考えてしまう。機能面でも、番組コンテンツ面でも、従来のテレビとは異なる、本当の意味での「“NOT”TV」になれるかどうかが、今後の鍵になりそうだ。


(2012年 4月 25日)

[ Reported by 山崎健太郎 ]