【レビュー】DLNA&AirPlay対応、パイオニア無線スピーカーを聴く

-バッテリ内蔵「XW-SMA3」。手軽にクリアサウンド


バッテリ内蔵/防滴対応の「XW-SMA3-K」

 各社からDLNAやAirPlay対応コンポ、およびAVアンプの発表が相次いでいる。PCやネットワークHDDに蓄積した音楽ファイルを再生する、高音質なネットワークプレーヤーとして利用できるほか、スマートフォンから手軽に音楽をワイヤレス送信して楽しむという使い方も可能であり、今後のオーディオ機器の標準機能になっていくのは間違いないだろう。

 そんな中、パイオニアが投入するのが一体型のDLNA 1.5 & AirPlay対応ワイヤレススピーカー「スマートモバイルオーディオ」の、「XW-SMA1」と「XW-SMA3」だ。特徴としては、シンプルかつコンパクトな一体型スピーカーながら、DLNAとAirPlayの両方に対応している事。さらに、上位モデルの「XW-SMA3」は、バッテリ内蔵で防滴仕様であり、手軽に持ち運んで使ったり、キッチンなどで音楽を楽しめるという特徴もある。

 価格はどちらもオープンプライス。発売日と店頭予想価格は、バッテリ無しで防滴非対応の「XW-SMA1-K」が7月下旬で25,000円前後。バッテリ内蔵/防滴対応の「XW-SMA3-K」は8月下旬発売で、35,000円前後となっている。

 今回、発売前の「XW-SMA3-K」をお借りできたので、使い勝手や音質を紹介する。




■シンプルなデザイン

 まずは筐体を見てみよう。2ウェイ3スピーカー構成となっており、筐体が若干上を向いているのが特徴。26mm径のツィータ×1と、77mm径のウーファ×2を搭載している。

 サウンドチューニングは、同社のフラッグシップモデル「EXシリーズ」の音質チューニングを行なっているAndrew Jones(アンドリュー・ジョーンズ)氏が担当しているとのこと。背面には同氏のサインも入っている。再生周波数帯域は50Hz~20kHzだ。

正面から見たところ。ネットの奥はよく見えないが、2ウェイ3スピーカー構成となっている若干筐体が上を向いているのが特徴横から見たところ。外形寸法は320×145×180mm(幅×奥行き×高さ)、重量は2.5kgだ
向かって右側の操作パネル。タッチ操作が可能で、電源ON/OFFやソース切り替えはここから行なえる向かって左側には、ステータスインジケーターを装備背面。Andrew Jonesのサインが入っている
背面に備えた無線LAN用アンテナ

 ワイヤレススピーカーなので、ネットワーク接続機能を持っている。具体的には、IEEE 802.11b/gの無線LAN機能を内蔵するほか、背面にEthernet端子も装備する。これを用いて家庭内LANに接続。同じくLANに繋がっているスマートフォンやタブレット、PC、ネットワークHDD(DLNAサーバー)などから、音楽をワイヤレスで再生できる。

 これ以外にも、ステレオミニの音声入力を背面に装備。さらにUSB端子も備えており、iPhone/iPod/iPadを接続すれば、それらの音楽を再生できるほか、充電もできるようになっている。


背面には指をかけるくぼみもついており、手軽に持ち運べる背面にあるゴムのシールドをめくると、EthernetやiPod接続用のUSB端子、アナログ入力やACアダプタ接続用端子などが現れる
付属のACアダプタ。かなり大きいiPhone 4SとUSB接続して再生しているところ付属のリモコン

 ネットワークセットアップの方法はいくつかある。一番簡単なのは、LANにケーブルでルータと有線接続する事。ルータと設置場所が近いのであればこれで良いが、バッテリ内蔵の上位モデルの場合、できれば無線LANで接続して、ケーブルにとらわれない自由な設置をしたいところだ。なお、バッテリ駆動時間は約4時間。

 無線LANのセットアップで便利な点は、WPSに対応している事。WPS-PBCに対応したルータであれば、スピーカーの電源がONになった状態で、背面のnetwork setup/wireless directボタンを押し、2分以内にルータのWPSボタンを押せば接続設定が自動的に完了。PCやネットワーク設定が不安な人でも大丈夫だろう。

 これ以外に、ルータのSSIDを指定し、パスワードを入力してLANに繋がる方法もある。この場合は、起動状態からnetwork setup/wireless directボタンと、ボリュームの「マイナス」ボタンを3秒間押すと、自動で再起動。PCやスマートフォンから、無線LANを検索すると「Pioneer Setup:xxxxxx」というような設定用のSSIDが見えるようになる。これと接続した上で、ブラウザから「http://192.168.1.1」にアクセスすると、セットアップ画面に移動。ここから、接続したい無線LANのSSIDやパスワードを入力すればOKだ。

今回はiPhoneからセットアップしてみた。まず、無線LAN設定から、「Pioneer Setup:xxxxxx」に接続接続した状態でブラウザから「http://192.168.1.1」にアクセススピーカーの設定画面。ここからSSIDやパスワードの設定を行なえば、準備完了

 セットアップが完了してしまえば、後は簡単。iPhoneの場合はAirPlayが手軽だ。音楽再生画面の出力先アイコンから「XW-SMA3」を選ぶだけで、スピーから音が流れ出す。ネットワーク経由なので一瞬間があるが、実に簡単だ。PCのiTunesからの再生も同様に行なえる。

 DLNA経由での再生もテスト。DLNA対応のiPhone用プレーヤーソフト「PlugPlayer」を起動すると、再生先のレンダラーとして「XW-SMA3」が表示される。あとはソース側としてDLNAサーバー内の音楽ファイルを選ぶか、iPhone内の楽曲も指定可能だ。

 なお、再生対応ファイルはMP3/WAV/WMA/AAC/FLAC。FLACとWAVは24bit/96kHzまでサポートしている。 

スピーカーとiPhoneが同じLANに接続していれば、AirPlayの出力先として「XW-SMA3-K」が選べるDLNA対応のiPhone用プレーヤーソフト「PlugPlayer」の場面。同じように出力先として「XW-SMA3-K」を選ぶ


■クリアかつ真面目な再生音

 音質もチェックしてみよう。「Diana Krall/Temptation」を聴いてみると、一体型の小型筐体とは思えないほど、厚みのあるヴォーカルがクリアに再生される。プラスチック製の製品だが、筐体の鳴きはあまり感じられず、再生音を汚さず、明瞭度の高い中高域が心地良い。安物のPCスピーカーやiPodスピーカーとは格の違うサウンドといえる。

 「山下達郎/Ray Of Hope」は、量感豊かな中低域の張り出しが味わえる楽曲だが、このスピーカーでも「ヴォーン」と胸に迫る中低音がしっかりと楽しめる。同時に、その中域に埋もれず、ヴォーカルの口の開閉など、細やかな描写もキッチリ描写できている。このクリアさが持ち味だ。

 低音をチェックするため、 「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best OF My Love」を再生。アコースティックベースの量感はそれなりに出せるが、「ズシン」と床まで沈み込むほどは出ない。ロックなども同様で、迫力のある再生音を期待すると、ちょっと方向性が異なる。

 このコンパクトな筐体で、低音を無理に出そうとすると、おそらく筐体の振動が激しくなり、中高域の明瞭度が下がってしまうだろう。クオリティの低い重低音を出すよりも、クリアな中高域の再生にこだわっているという印象で、パイオニアらしい真面目なサウンドという印象。派手さは控えめだが、ピュアオーディオライクな音が好きな人に受け入れられやすい傾向だ。

 そのため、透明感のあるフュージョンや、シンプルな女性ヴォーカルなどを、BGM的に、ちょっとボリュームを上げ目にして、クリアで素直な音が部屋に良く浸透するように再生すると、とても心地よい時間が過ごせた。

 気になる点は、音場の広がりだ。一体型筺体でコンパクトな製品なので当然ではあるのだが、真正面で聴いていると、ヴォーカルや楽器の音像が、筐体の外部に大きくはみ出るほどは広がらない。

 これを電気的に広げるような、例えばDSPで処理するバーチャルサラウンドモード的な機能が入っていないため、PC用スピーカーのようなつもりで、ニアフィールドで聴いているともう少し音に包まれる感覚が欲しくなる。

 そこで、机のすぐそばに置くのではなく、部屋の端にある、棚の上に設置。少しボリュームを大きめにしてみたところ、心地よく音楽が部屋全体に広がった。多人数で楽しんだり、部屋の中を移動しながらBGM的に楽しみたい場合は、ある程度距離をとった設置が良いだろう。また、このように、気軽に置き場を変えられるのは、バッテリ内蔵モデルならではの利点と言えそうだ。

ゆったりと音楽を楽しみたい時は、ある程度距離をとると良い結果になった


■まとめ

 ネットワークHDDに音楽を貯めていたり、スマートフォンに沢山の音楽を入れて、それを家の中でも手軽に楽しみたい。しかし、あまり大きなコンポやスピーカーを置きたくない。同時に、低音がボンボンと膨らむようなブーミーなサウンドは好きではないという人には、マッチする製品だろう。

 小型スピーカーとして、実売35,000円前後は高価と感じるかもしれないが、無線LANやバッテリ、防滴機能も加味すると満足度は高い。置き場所が決まっており、水まわりや屋外で使わないという場合は、実売25,000円前後の下位モデル「XW-SMA1-K」でも良いだろう。

 オーディオマニアが、主にクオリティの面で注目し、人気が広がってきたネットワークオーディオだが、マニアでなくても手軽に使いこなせるところがポイント。主張の少ないシンプルなデザインも、多くの人に受け入れられやすそうだ。また、オーディオマニアのサブシステムとしても注目したいモデルである。


スマートモバイルオーディオ
XW-SMA1-K
発売元パイオニア
対応機器DLNA 1.5/AirPlay対応機器
発売日2012年8月下旬
標準価格オープンプライス
(店頭予想価格35,000円前後)
Amazonで購入
Pioneer
スマートモバイルオーディオ
XW-SMA3-K
Pioneer
スマートモバイルオーディオ
XW-SMA1-K



(2012年 7月 31日)

[ Reported by 山崎健太郎 ]