レビュー

カラオケもできるBluetoothスピーカー、クリエイティブ「Axx200」で遊んでみた

Sound Blaster Axx200

 スマートフォンの普及に合わせて、量販店などの店頭には様々なデザインや機能を持つBluetoothスピーカーが並んでいるが、クリエイティブメディアの「Sound Blaster Axx200」は、その中でもとりわけ多機能な機種だ。主な機能だけを並べてみても、「Bluetooth/USBスピーカー」、「ボイスレコーダ」、「SDカード音楽再生」、「メガホン」、「サイレン」、「モバイルバッテリ」など、盛りだくさんとなっている。

 また、Sound Blasterシリーズの製品だけあって、スマホやPCで細かな音質調整もできるといった特徴もある。本体デザインもユニークな六角柱の縦長形状で、1本でステレオスピーカーとして使える。直販価格は15,223円(税込)。

 ちょうど筆者が長年愛用していたクリエイティブの有線接続のアクティブスピーカー「TravelSound 200」が、最近になって片方のユニットから音が出なくなってしまったこともあり、買い替えるならワイヤレスで使えるBluetooth対応のポータブルスピーカーと思っていた矢先、Axx200が登場した。Bluetoothスピーカーとしての使い勝手や音質を試すとともに、カラオケもできるというメガホンなどの機能が、実際どれだけ使えるかチェックした。

省スペースな縦型デザイン。1本でステレオ再生

 大きな特徴は、本体の前面にスピーカーユニットが上下に2つ並んだ「スタックステレオスピーカーデザイン」を採用し、それぞれのユニットが左右を向くことで、1本でステレオサウンドを再生できること。

 大きさは500mlのペットボトルを少し大きくしたようなサイズで、バッテリを内蔵していることもあり、手に持ってみると見た目よりも重量感がある。外形寸法は72.3×64×200.6mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約0.5kgだ。材質は、前面が金属製のメッシュで、裏側は樹脂製。ボタンや端子は背面に配置されており、前から見るとスッキリとした印象だ。縦型なので占有面積が小さく、狭い机の上でも邪魔にならずに置ける。

14型ノートPCと並べたところ
手に持つと重量感がある
前面はメタルメッシュ、背面は樹脂製

 背面にはバスレフポートのほか、USB、ステレオミニのヘッドフォン出力、マイク入力(AUX入力兼用)、microSDカードスロットなどの端子類と、操作ボタンが配置されている。Bluetooth以外にも、ステレオミニケーブルによる有線接続や、パソコンとUSB接続に対応しており、様々な機器の外部スピーカーとして使うことができる。

 Bluetooth接続はNFCに対応しているので、対応するスマートフォンなどではワンタッチで接続可能。ウォークマンF880で試したところ、簡単にペアリングができた。iPhoneなどのNFC非対応機種では、電源ボタンを長押し(約2秒)して手動でペアリングを行なう。アプリやPCから設定変更で自動接続をオンにしておけば、2度目以降は、再生デバイス側のBluetoothをオンにするだけで簡単に再接続が行なえる。登録できるデバイス数は8台まで。コーデックはSBCとAAC、aptXをサポートしており、AACやaptXに対応する機器ならより高音質なワイヤレス伝送ができる。対応プロファイルはA2DP、AVRCP、HFP。

ボタンや端子は全て背面に集まっている
側面のNFCマークに対応機器でタッチするだけでBluetoothのペアリングが行なえる

 iPhone 5とBluetoothで接続して音を聴いてみたところ、ユニットが左右に並んだTravelSound 200と比べてステレオ感は弱いが、それでも音がきちんと左右に分かれて聴こえる。スピーカーの横に移動してみたり、スピーカーを床に置いて聴いてみたりしたが、音の指向性も広く、置き場所を選ばず使えそうだ。

上部のタッチコントロールパネル

 上部には静電式タッチコントロールパネルを備え、スピーカー/マイクのミュートや、音質調整機能「SBX Pro Studio」のオン/オフなどが行なえる。音量の調整は、パネルの中心のゲージをスライドして行なう。音量ボリュームをゲージの真ん中よりやや下げたくらいでもかなり大きな音が出るので、騒がしい場所や屋外でも十分使えるだろう。

カラオケやボイスチェンジャーなど遊べる機能も搭載

背面下部にmicroSDカードスロットやアナログ音声出力・入力端子などを備える

 microSDカードスロットを搭載しており、microSD内の音楽ファイルを再生するプレーヤーとしても使用できる。再生できる音楽ファイル形式はMP3/WMA/WAV。本体背面のボタンで再生/一時停止、曲送り/曲戻しの操作が可能。シャッフル再生/全曲リピート再生も選択できるが、スマホからフォルダ内の曲を選んだり、プレイリスト再生はできないので、基本的には音楽を順番に流しっぱなしにするような使い方になる。

 本体に4つのアレイマイクを内蔵し、スマホでのハンズフリー通話やPCでのボイスチャットのほか、会議など広範囲の音声を拾うこともできる。さらに、microSDに音声を記録することもできるので、ボイスレコーダとしても利用可能。記録方式はWAVだ。

 このほか、「メガホン機能」や、「ボイスチェンジャー機能」、「サイレン機能」など、他にはないユニークな機能も搭載している。メガホン機能は、本体背面のスライドスイッチをオンにして背面のマイクに向かって喋ると、声を拡張して再生するというもの。背面のマイクに触れるくらい口元を近づけなければ声を拾えないのが難点だが、夜中に使うと家族に怒られそうなくらい大きい音量が出せるので、簡易マイクとしてパーティーや集会などで使えそうだ。

 また、microSDやBluetoothで音楽再生しながらマイクに向かって歌えば、カラオケ気分を味わうこともできる。実際に試してみたところ、最初は再生する音楽の方が音が大きく、自分の声が聞き取りづらかったが、マイクの音量や再生側の音量を調整していくと、なんとか自分の声が聞こえるようになった。再生音楽の歌声だけを小さくするカラオケモードなど、1発で設定できるモードが欲しいところだ。イヤフォンを使用すれば音楽と自分の声を合わせて聴けるので、周囲に気兼ねせず一人でカラオケの練習もできる。

 入力した音声を変えられるボイスチェンジャー機能は、「悪魔」、「ロボット」、「男声」、「女声」など18種類のバリエーションを用意。テレビでよくある、「プライバシー保護のため声は変えてあります」的な声に変えられるので、パーティや宴会などでジョークアイテムとして使うとよさそうだ。声を変えてカラオケをすると、自分がボーカロイドになったような気分も味わえる。

 サイレン機能は、その名の通りパトカーのようなサイレン音を再生する機能だ。緊急用ではないが、宴会などの騒がしい場で鳴らすと、周囲の気を引くことができるだろう。タッチパネルのノイズキャンセルマークを2度タッチするとサイレンが鳴り、再生中にもう1度タッチすると止まる。かなり大きい音がするので、不意に鳴らしてしまわないよう気をつけたい。

 内蔵バッテリでの駆動時間は約15時間で、充電用のUSBケーブルとUSB-ACアダプタが付属している。外部充電用のUSB端子(5V/1A)を備えており、いざというときにはスマホなどのモバイルバッテリとしても活用できる。本体の底面にはゴムのカバーがあり、外すと別売の専用充電スタンド(5,696円)と接続するための端子が現れる。この充電スタンドは、海外のコンセントに接続するためのアタッチメントが4種類付属しているので、海外に行くことが多いユーザーならあると便利だろう。

底面のカバーを外すと充電スタンド用の端子が現れる
別売の充電用スタンド
スタンドにAxx200を設置したところ
充電用スタンドに付属する海外コンセント用アタッチメント
ACアダプタにアタッチメントを装着したところ
USBを繋いでスマホなどの充電ができる

便利なリモコン機能や音質調整など機能充実のスマホ用アプリ&パソコン用ソフト

 PCオーディオメーカーのクリエイティブらしく、パソコンやスマートフォン用アプリの機能が充実していることも特徴。パソコン向けソフトとして「Sound Blaster Axxコントロールパネル」と、iOS/Android用アプリ「Sound Blaster Central」が用意されている。対応OSは、パソコン用がWindows Vista/7/8とMac OS X 10.5以上。スマホ/タブレット用がiOS 5.0以上とAndroid 2.2以上。パソコン用とスマホ用でほぼ同等の機能が利用できるので、今回はiOSアプリを使用している。

パソコン向け「Sound Blaster Axxコントロールパネル」のトップ画面
スマホ向け「Sound Blaster Central」のトップ画面

 このアプリでできることは、主に「リモコン操作」と「音質調整」の2つだ。リモコン機能は、アプリで本体の操作ボタンやタッチパネルとほぼ同等の操作を可能にするもので、操作のためにいちいち本体の向きを変えたり、離れた場所のスピーカーまで移動する面倒がなく、非常に使える機能となっている。メガホンスイッチの操作はできないが、メガホン機能は持って使うことを前提としているので問題ないだろう。

アプリ上で本体のタッチパネルと同じ操作ができる
背面ボタンも再現

 もう一つは「音質調整」だが、Axx200はクアッドコアプロセッサ「SB-Axx1」を内蔵し、11バンドイコライザなどの本格的な調整ができる。また、シーンや用途に応じた「プロファイル」というサウンドモードも複数用意しているので、再生するコンテンツに合わせて気軽に音質を変えることも可能だ。内蔵マイクの音質やボイスチェンジャーの設定なども行なえる。

再生音質を調整するSBXプロファイル
マイク音声調整のCrystalVoiceプロファイル

 このほか、プレーヤー機能やスピーカーのバッテリ残量表示、アラーム設定も備えている。プレーヤー機能は、初めに再生リストを作成する必要があり、デバイス内の曲を1曲ずつ選んだり、全曲インポートすることも可能。iPhoneの場合は、「ミュージック」アプリで作成したプレイリストもインポートできた。ただし、いったん再生リストを作成してしまうとアーティストやジャンルでのソートなどはできず、アプリを終了させるとリストが消去されてしまうなど、ややクセのある仕様なので、このあたりは改善して欲しいところだ。

バッテリ残量確認画面
アラーム設定画面
シンプルなプレーヤー画面
初めに再生する曲を選択する。プレイリストの曲を丸ごと選択することもできる

11バンドイコライザや映画用/ゲーム用プリセットなど多彩な音質調整機能

 音質調整も含めて、音質をもっと細かくチェックしてみた。プレーヤーはiPhone 5を使い、再生アプリは「Sound Blaster Central」を使用、Bluetoothで接続している。まず、素の実力を聴くためにSBXをオフにして再生した。宇多田ヒカルの「First Love」を聴いてみたところ、歌声などの中音域が目立つバランスで、ボーカル曲向きの音質だと感じた。一方、宇多田ヒカルの「Movin'on Without You」のような打ち込み系の曲では、低音が目立たずやや物足りない。ボーカルの無いクラシックやジャズなどは、小編成の室内楽やトリオなどは良いが、スケールの大きな交響曲などでは音の広がりが弱く、迫力に欠ける。

 続いて、音質調整機能のSBX Pro Studioを試してみる。アプリからSBXプロファイルを開くと、「ミュージック」、「ムービー」、「ゲーム」の3つの項目があり、それぞれに3つのモードが用意されている。これらはバーチャルサラウンドの「Surround」、高音域強化の「Crystalizer」、低音域強化の「Bass」などのエフェクトを組み合わせたもので、各エフェクトの効き具合を調整することもできる。

コンテンツプロファイル名効果
ミュージックSBXデフォルト低音や高音を強め、音にメリハリを付ける
ウォームサウンド真空管アンプのような温かみのある音を再現する
Smart Volume急激な音量変化を抑える
ムービーダイナミックブースト低音と高音を強化しダイナミックレンジを上げる
ナイトモード会話の明瞭さを保ちながら急激な音量変化を抑える
クリアダイアログ会話を聞き取りやすくする
ゲームスタジアムサラウンドサラウンド感を高める
クリアコミュニケーションゲーム内の音声会話を聞き取りやすくする
シネマティックアクション映画のような迫力のある音声を再現する

 また、プロファイルの編集画面で左にスワイプすると、11バンドイコライザを使ったさらに細かい調整が可能。イコライザは「ロック」や「ポップス」などのプリセットも用意する。

プロファイルの編集画面
各項目のiボタンをタッチすると、説明が現れる
より細かい音質調整ができる11バンドイコライザ
イコライザはプリセットも用意されている

 用意されたプロファイルの中から、ミュージックの「SBXデフォルト」を選択して「Movin'on Without You」を聴いてみると、高音/低音が強調されるとともに、エコーがかかったような音に変わった。SBXオフの状態では不満に感じた低音の弱さが補正されたが、エコーがやや不自然な印象だったので、プロファイルの編集画面を開き、Surroundだけをオフにしたところ、不要な響きが消えて好みの音に近づいた。交響曲などでも、設定を調整することで、ある程度音の広がりを感じられるようにようなった。

 また、タブレットでアクション映画を観る際に、ムービーの「ダイナミックブースト」を選択したところ、高音や低音が強化され迫力が増した。もう少し音の広がりが欲しいと思ったので、Surroundを初期値より強めに調整すると、より臨場感のある音を楽しむことができた。最初は用意されたプロファイルを試していき、そこからプロファイルの調整やイコライザなどで自分好みの音質に調整していくとよいだろう。

機能満載でお得感のあるBluetoothスピーカー

 ずっと有線接続のアクティブスピーカーを使っていた身からすると、ワイヤレスになっただけでも格段に便利になったが、それに加え、豊富な接続方法と、持って運べるポータブルサイズがさらに利便性を高めている。Axx200は、筆者のようにスマホやタブレット、ノートパソコンなど複数のデバイスを所有し、しかもそれらをリビングや寝室など、家のあちこちに持ち運んで利用するという使い方と非常に相性が良い。ペットボトル程度のサイズなので、カバンに入れて外へ持ち出すのも容易だ。欲を言えば、防水機能があれば、台所や浴室、アウトドアなどさらに使えるシーンが増えてよかったと思う。

 音質調整機能は、音楽だけでなく、映画やゲーム用の設定も用意しているので、タブレットで映画を観るときや、ポータブルゲーム機やスマホでゲームをするときなど、幅広い場面で活用できる。ボイスレコーダやメガホンなどの機能は万人向けとは言えないが、オマケの機能としてはなかなか使えるので、あって損はないだろう。音質だけを求めるなら他にも選択肢はあるが、これだけの機能を備えたBluetoothスピーカーはなかなか無いので、音質調整やメガホン、カラオケなどの機能に興味を持った人や、ちょっと変わったものが好きな人は、ぜひ試してみてほしい。

一條徹