藤本健のDigital Audio Laboratory
第791回
超小型4Kカメラで音にも臨場感。96kHz/24bit対応「Q2n-4K」で撮った
2018年12月10日 09:30
ズームから4K対応の小型“音楽用”ビデオカメラ「Q2n-4K」が発売された。これは以前から発売されているビデオカメラQ2nが、4K映像を記録できるようになった新機種だが、従来機と同様に高品位なリニアPCMレコーダーとしての機能を備えている。X-Yマイクを備え、最高96kHz/24bitでの録音が可能で、4K/30fpsのMOVファイル内に収められる。これを使って実際に撮影してみたので紹介しよう。
広角で高音質動画が撮れる小型4Kカメラ
以前、Q2nはこの連載でもとり上げたことがあったが、今回のQ2n-4KはQ2nの後継モデルというわけではなく、Q2nとの併売となる上位モデルだ。大手量販店の価格で比較すると、Q2n-4Kが26,400円(税込)なのに対し、Q2nが17,610円という価格差。手元にQ2nがないので直接比較はできないが、パッと見の印象はそっくり。ただ以前撮影した写真と見比べるとちょっと違うデザインにはなっているようだ。
スペックで比較してみると、ビデオの解像度がHD 1080p/30fpsから4K 30fpsに変わったことと、レンズがF2.0 160°の広角からF2.8、150°の広角になったくらいで、目立った違いはないようだが、実際どうなのか。リニアPCMレコーダー機能を中心に基本的な機能からひとつずつチェックしていこう。
Q2n-4Kはビデオカメラとしてはちょっと変わった形で、机の上にもズンと鎮座させて撮影ができるもの。ただ、ボトムには三脚穴があるので、三脚に設置して使うこともできるし、そもそも124g(電池除く)の小さいボディーなので手に持っての撮影もしやすい。
ボトムのフタを外すところに入れる単3電池2本で動作。アルカリ電池またはニッケル水素電池、リチウム電池が利用可能で、カタログ値によるとニッケル水素電池で4K動画と48kHz/24bit音声で録る場合、約1時間の連続撮影ができるという。
この2本の電池の間にmicroSDのカードスロットがあり、録画データはここに記憶する形になっている。なお、オプションの電池ボックス、BCQ-2nを取り付けると、この中に単3電池4本が入るので、スタミナを4倍にすることができるそうだ。
フロントカメラの上の格子状の網の中に入っているのが120度の角度で設置されたX-Yマイク。これで高音質に、かつ立体的に音が捉えられるようになっているのだ。それらの設定、操作を行なうのがリアパネル。このリアパネルに1.77インチ、160x128のフルカラー液晶ディスプレイがあり、撮影している映像をモニターできるほか、各種状況を確認することが可能。
多くの設定は液晶の左右にある6つのボタンで操作ができ、メニュー構造などないから、直感的にすぐに使えるのが便利だ。左上のVIDEOボタンを押すと動画の解像度を4K-30、4K-24、1080-60、1080-30、1080-24、720-30、カメラオフと切り替えていくことが可能。動画はすべてMOVファイルで記録されるが、このカメラオフの状態だと、リニアPCMレコーダーとなり、WAVでレコーディングされる形となる。
左側中央のFOVというボタンを使うと画面サイズが5段階で切り替わる。最大のWIDEだと150°を捉える広角レンズとなるが、最小のTELEだと、正面の中央部分にフォーカスされ、レンズによる歪みもなくなり、ごく普通のビデオカメラとして利用できるようになる。
さらにその下のSCENEではAUTO、OUTDOOR、SUNSET、NIGHT、CONCERT LIGHT、JAZZ CLUB、DANCE CLUB、MONOCHROME、SEPIA、FILM、X-PROCESS、FLATと、シーンに応じたカメラ設定ができるようになっている。たとえばSEPIAを選べばセピア色の動画になるし、NIGHTを選べば夜間や暗いシーンに適した調整がされる形になる。
右上のLO CUTボタンを押すと、低域をカットする設定が行なえ、OFF、80Hz、120Hz、160Hzの4段階の切り替えが可能。
そしてAUDIOでは録音する音のフォーマットを96kHz/24bit、48kHz/24bit、44.1kHz/16bitの3段階から選ぶ形になる。これはWAVで録音するリニアPCMレコーダーモードにおいても、MOVファイルで録画するビデオモードでも有効だ。
右下のAUTO GAINは録音レベルの自動設定を行なうためのもので、OFF、CONCERT、SOLO、MEETINGの4つから選ぶ形になっている。ただ高音質にこだわるのであれば、やはりこれはOFFにして、サイドにあるインプットボリュームノブで調整するのがいいだろう。
いずれの場合でも入力音量は液晶ディスプレイの下にレベルメーター表示されるほか、ヘッドフォン端子からそのままモニターできるので、これを聴きながら録音すれば失敗はなくなる。ちなみに、このインプットボリュームノブは結構重めのトルクになっている。
広角動画+96kHz/24bit音声収録
一通りの動作を確認したのち、まずは外での録画をしてみることにした。せっかくなので、動画サイズは最高の4K/30fpsに、また音質は96kHz/24bitに設定した上で、近所の公園に行ってみた。多少なりとも動きのあるところ、ということで水鳥が集まっている公園の池で撮影してみた。
カモはあまり鳴いてくれず、少し遠くを飛んでいたカラスが鳴いていたくらいであって、音量はかなり小さめ。とはいえ、映像も画像もかなりリアルに捉えているのが分かると思う。これだけのビデオが26,400円の機材で録れてしまうのだから、いい時代になったものだ。ただ、実はこの公園において、一つ大きなトラブルが発生した。撮影をスタートさせてから15秒ほどで「カードへの書き込みが間に合いませんでした」というアラートが表示されるとともに、録画が終了してしまったのだ。
マニュアルにはClass 10以上のmicroSDと記載があり、使っているのはClass 10のものなのだが……。ただこのmicroSDは、AGPTEKというブランドの64GBで、秋葉原の安売り店で購入したもの。普通に一眼レフカメラで静止画を撮影するときには問題なかったのだが、やっぱりClassのスピードはしっかり出ないものだったようだ。ただ、時には30秒ほど撮影できることもあり、その撮れたビデオの1つが上記のものだ。
一度自宅に戻り、KINGSTONのmicroSDに交換した上で、今度は近所の線路際に。4K/30fpsで96kHz/24bitの設定のまま、インプットボリュームだけを絞った上で、電車が通過するのを撮影した。
やはり広角の4Kというだけあって、かなり迫力ある動画だ。また120度のX-Yマイクだけあって、左右の広がりも大きく、画像と相まってかなり立体的なサウンドになっていると思うのだが、いかがだろうか?
その後、自宅に戻り、いつものリニアPCMレコーダーのチェックと同様にCDの音も録ってみた。こちらはカメラはオフにして、リニアPCMレコーダーとしてやはり96kHz/24bitでレコーディング。ほかのリニアPCMレコーダーとの比較のため、いったん48kHz/24bitに変換した上で、波形分析した。また96kHz/24bitから44.1kHz/16bitに変換したWAVファイルも掲載する。
【録音サンプル】
CDプレーヤーからの再生音(44.1kHz/16bit)
q2n4k_music1644.wav(6.94MB)
楽曲データ提供:TINGARA
※編集部注:96kHz/24bitで録音したファイルを変換して掲載しています。
編集部ではファイル再生の保証はいたしかねます
実際に音を聴いてみても、ほかのリニアPCMレコーダーにまったく引けを取らない音質となっているが、ひとつ気になるのはQ2nとの違い。そこで昨年2月に取り上げたQ2nの結果も改めて掲載する。
波形を見るとQ2nと比べて高域の膨らみ方がやや弱くなっているが、音は非常に近いニュアンスだ。この波形の差が設計上の違いからくるものなのか、こちらの測定環境に微妙な違いがあったからなのかは判別できないが、ほぼ同等のものであると捉えてよさそうではある。
なお、ここでは詳細については触れないが、Q2n-4KはPCとUSB接続することで、Webカメラとして使用したり、USBマイクとして使ったり、カードリーダーとして使うことも可能。さらに、Lightning-USBカメラアダプタ経由でiPhoneやiPadと接続すれば、やはりUSBマイク、カードリーダーとして使うことも可能になっている。
ただし、USBクラスコンプライアントとして接続されるだけなので、Windowsで使用する場合、ASIOドライバは利用できない。もちろんASIO4ALLなどでの利用は可能だが、せっかくならWindows用のオーディオドライバも出してくれると利用範囲がさらに広がっていいのではと思う。
4K映像の撮影ということだけでいえば、いくつかのスマホでも実現できるようになっているが、これだけの広角で撮影できるとともに、やはりコンデンサマイクを用いた96kHz/24bitで精細に音も記録できるのは、大きなアドバンテージとなっている。サイズ的にもコンパクトだし、Q2nでは別売だったレンズキャップ、レンズフードも標準で付属するようになったので、より手軽に持ち歩けるようになったのも大きなポイント。一つ持っていて損のないデバイスだと思う。