藤本健のDigital Audio Laboratory
第1041回

米NAMM Showで最新オーディオインターフェイス揃い踏み!ヤマハ・ローランド・コルグ・フェンダー速報
2026年1月26日 08:00
今年も例年通り1月23日~25日の3日間、米国アナハイムで世界最大級の楽器展示会「The NAMM Show 2026」が開催された。アコースティック楽器からプロオーディオ機器まで、世界中のメーカーが出展し、様々な新製品が発表されたが、ちょっと目立っていたのが大手メーカーが揃って“オーディオインターフェイス”を発表していたことだ。
具体的にはヤマハ、ローランド、コルグ、フェンダーの各社。最近、オーディオインターフェイスもコモディティ化が進み、目立った製品がなくなっていた中、それぞれかなり特徴をハッキリさせた製品を発表していた。
各製品の細かな検証は今後行なっていこうと思うが、本連載では各社がどんな製品をNAMMで発表したのか? その概要をレポートしていこう。
ヤマハ:DSP搭載のプロ志向オーディオインターフェイス「URX22/44/44V」
まず最初に取り上げるはヤマハだ。同社は1月15日に発表したばかりの新製品「URX22/44/44V」の3機種をNAMMで展示している。
NAMMの会場では3機種のうちURX44Vのみが実機展示されていたが、これらはSteinbergブランドから移行したURシリーズの新たな上位モデルという位置づけで、従来の「URX22C/44C」とは異なる設計思想を持つ製品だ。
最大の特徴は、本体前面に搭載された4.3インチのタッチLCDディスプレイと、強力な内蔵DSPを活用したミキサー機能である。
各チャンネルごとにゲート、コンプレッサー、4バンドパラメトリックEQ、リバーブ、ディレイなどのエフェクトを搭載し、それらをPC不要で本体だけで操作・設定できる。これは“PCありきのオーディオインターフェイス”という従来の概念から脱却し、現場での即応性を重視した設計だ。
「URX22」(63,800円)は2イン/2アウト、URX44(79,200円)は4イン/4アウト、URX44V(126,500円)は4イン/4アウトに加えてHDMI入出力を装備する。
注目すべきは、URX44とURX44Vに搭載されたmicroSDカードスロット。最大16トラックのマルチトラックレコーディングが本体単体で可能となっている。
音質面でも妥協はない。マイクプリアンプのダイナミックレンジは入力115dB、メイン出力で125dBを実現。AD/DAコンバーターは32bit/192kHzに対応し、従来のエントリークラスとは一線を画すプロフェッショナル仕様となっている。
操作系も興味深い。「Simple Mode」と「Standard Mode」という2つのオペレーションモードを搭載し、初心者からプロまで幅広いユーザーに対応する。
Simple Modeではセットアップアシスタントが用途に応じた最適な設定を自動で行ない、Standard Modeでは詳細なマニュアル設定が可能だ。さらにAuto GainやClip Safe、Ducker機能など、現場で“止まらない”ための機能も充実している。
NAMMの会場では、発表時には明かされていなかった新たな情報も得られた。それが、CubaseやSteinberg Mixkeyとの連携機能である。
基本的にはすべてURX22や44、44Vのディスプレイ上で操作するが、Cubase用のツールが間もなくリリースされ、Cubase側ですべてコントロールすることが可能になる。
またCubaseがない場合でもSteinbergのソフトウェアミキサーであるMixkeyでコントロールできる。CubaseやMixkeyでコントロールする状態にすると、URXのディスプレイにはCubase、Mixkeyというロゴ表示もされるようになっている。
ヤマハは同時にデジタルミキサーの「MGXシリーズ」や、USBコントローラーの「CC1」も発表しており、これらを組み合わせた統合的なエコシステムを構築しようとしている姿勢が見て取れる。
ローランド:8年ぶりの本格オーディオインターフェイス「GO:MIXER STUDIO」
続いてローランドである。同社がRubixシリーズ以来、8年ぶりに発表したオーディオインターフェイスが「GO:MIXER STUDIO」だ。
小型ミキサー「GO:MIXERシリーズ」の最新モデルという位置づけながら、USB Type-C接続で24bit/192kHzに対応し、12イン/6アウトを装備した本格的なオーディオインターフェイスとなっている。
最大の特徴は、スマートフォンでの配信・動画撮影とPCでの本格的な楽曲制作の両方に対応したハイブリッド設計だ。
iPhone、iPad、Windows、Macのすべてで使用でき、さらにスタンドアロンのミキサーとしても機能。本体サイズは110mm×156mm×65mm、重量はわずか440gとコンパクトで、底面には三脚取付用のネジ穴も装備されている。
入出力端子も充実しており、XLR端子のマイク/ライン入力2系統(ファンタム電源対応)、ハイインピーダンス対応のギター/ベース入力、標準フォーンのライン入力、3.5mmのAUX入力、ヘッドセットマイク対応のPHONES (MINI)端子などを搭載する。
マイクプリアンプは最大+75dBのゲインを実現しており、ダイナミックマイクでも十分な音量を確保できる。
注目すべきは本体に内蔵されたDSP。EQ、コンプレッサー、リバーブの3種類のエフェクトをパソコンやスマートフォンのCPUパワーを消費せずに使用できる。
特にリバーブは、ローランドの往年の名機「SRV-2000」をエミュレートしており、R0.3~R37(ルーム)、H15~H37(ホール)、P-A、P-B(プレート)というオリジナルのプリセット名称もそのまま使われている。
コンプレッサーも単なるデジタルコンプではなく、3種類の名機をモデリング。業務用ミキサーなどに搭載されるエクスパンダー付きコンプレッサー(CHCP-4K)、真空管を用いた光学式コンプレッサー(OPTCP-2A)、そしてスタジオ定番のFETコンプレッサー(FETCP-76)である。
Windows環境では専用のASIOドライバーを使用することで低レイテンシーを実現し、12イン/6アウトのフル機能を使用できる。各入力チャンネルはDIRECT、PREFADER、POSTFADERの3つのモードから選択でき、非常に柔軟なオーディオルーティングが可能だ。
PC用アプリケーションのGO:MIXER Editorを使用すれば、全チャンネルのミキサー画面を視覚的に管理でき、EQやコンプレッサーのパラメーターを細かく調整できる。16個のシーン・メモリーにより、異なる用途ごとに設定を保存しておくことも可能だ。
発売は1月24日の予定で、市場想定価格は44,000円前後。8年の沈黙を破ってローランドが放った本気の一撃といえる製品である。
コルグ:伝説“miniKORG 700S”フィルターを搭載「microAUDIO 722」
3番目に取り上げるのがコルグ。同社は初となるオーディオインターフェイス「microAUDIOシリーズ」の正式版となる、「microAUDIO 22」と「microAUDIO 722」を1月24日に発売した。
厳密にいえば、DS-DAC-10Rなど、DSDでのレコーディングを実現する製品や、市販されていないDSDでのマルチレコーディングシステムClarityなどはあったが、一般的な、いわゆるオーディオインターフェイスとしてはこれが初めての製品となる。昨年のNAMM Showでプロトタイプとして発表されていたものが、ついに製品化されたわけだ。
スタンダードモデルのmicroAUDIO 22は24,750円、上位microAUDIO 722は32,780円。両機種ともコンパクトなデスクトップサイズながら、24bit/192kHz対応、USB Type-C接続という現代的なスペックを装備している。
最大の特徴は、microAUDIO 722に搭載された、1974年発売の伝説的シンセサイザー「miniKORG 700S」由来のアナログフィルターだ。
単なるデジタルモデリングではなく、700Sの回路を再現した“正真正銘のアナログ回路”が搭載されており、ローパス、ハイパス、バイパスを物理スイッチで切り替えることができる。
フィルターのカットオフ周波数を調整するFREQUENCYノブ、共振を調整するRESONANCEノブ、そしてフィルターへの入力レベルを調整するLEVELノブの3つのノブで、直感的にサウンドメイキングが可能。さらにMODULATIONセクションも搭載されており、LFOによる周期的な変化や、入力音の強弱に合わせてフィルターを開閉させるエンベロープフォロワー機能も利用できる。
両機種ともDSPを内蔵しており、PCに負荷をかけることなく、NOISE GATEやCOMPRESSOR/LIMITERといったエフェクトをリアルタイムで使用できる。専用ソフトウェアのmicroAUDIO EDITORを使えば、より詳細な設定にアクセスでき、フィルターのモジュレーション機能やエフェクトルーティングなども細かく調整可能だ。
microAUDIO 722はPCと接続しないスタンドアローン動作にも対応しており、DC 5VのUSB規格準拠ACアダプターを接続すれば、単体のアナログフィルター兼ミキサーとして機能する。MIDI INおよびMIDI OUT端子(3.5mm TRS)も搭載され、TRS-DIN変換ケーブルも付属している。
さらにバンドルソフトも充実しており、Filter Arkという次世代フィルターデザインツールをはじめ、Ableton Live Lite、Native Instruments Komplete Select、iZotope Ozone Elementsなど、音楽制作に必要なソフトウェアが多数同梱されている。
コルグらしい遊び心と技術力が融合した製品で、特にアナログフィルターの存在は、ソフトシンセの音に物足りなさを感じているユーザーにとって魅力的な選択肢となりそうだ。
フェンダー:PreSonusが“Fender Studio”へ。新製品も登場
最後に取り上げるのがフェンダーだ。
「フェンダーがオーディオインターフェイス?」と疑問に思う方もいるかもしれないが、これは2021年にフェンダーがPreSonusを買収したことによる展開だ。
これまで“PreSonus”ブランドで展開していたオーディオインターフェイスが、今回新たに立ち上げられた「Fender Studio」ブランドへと移行することになった。
NAMMでは、この新ブランドのもとで展開される新製品「Fender Quantum LTシリーズ」および「Fender Quantum HDシリーズ」が発表された。Quantum LTシリーズは市場想定価格18,500円~62,300円前後、Quantum HDシリーズは72,700円~130,500円前後という価格帯で、卓越した音質、柔軟な接続性を特徴としている。
Quantum LTシリーズは2つのストリームレスな合体が特徴で、複数のオーディオインターフェイスを同時に使用できる柔軟性を持つ。
各モデルにはカスタム低レイテンシードライバー、75dBゲインのMAX-HDマイクプリアンプ、フェンダーによってチューニングされたインストゥルメント入力などが搭載されている。DSPモニターミキシングとループバックルーティングにより、ストリーミング、ポッドキャスト、レコーディングのワークフローが効率化される。
Quantum HDシリーズは、プロ品質の録音と精密さ、パワー、柔軟性を求めるクリエイターのために設計されている。24bit/192kHz高性能コンバーターを搭載し、楽器、ヴォーカル、フルバンドセッションのあらゆるニュアンスをプロフェッショナルな精度で捉える。オーディオルーティングとループバックにより、音色実験が可能となっている。
既存製品である「AudioBox Go」も“Fender AudioBox Go”として、新ブランドのもとで展開されることになった。市場想定価格は11,500円前後で、インスピレーションが湧いたその場でプロ品質の録音を必要とするミュージシャやポッドキャスターに最適な、コンパクトでポータブルなオーディオインターフェイスである。
なお、同じタイミングでDAWソフトウェアのStudio One Proも「Fender Studio Pro」へと名称を変更し、新たなスタートを切っている。フェンダーとPreSonusの統合が、新ブランドFender Studioのもとで一つのエコシステムとして展開されていく形だ。
以上の通り、今年のNAMMでは大手4社がオーディオインターフェイスを発表する、というちょっと最近では珍しい展開となった。
各社ともかなり方向性の異なるオーディオインターフェイスであったのも面白いところだが、今後、実機を使って音質チェックなども行なっていければと思っている。



























