第118回:LED+エリア駆動+新超解像の「REGZA」進化形
~“ナチュラル”なLED採用機。東芝「55ZX8000」~
液晶テレビのバックライトのLED化が進んできている。
民生向けテレビとしては2004年のソニーのQUALIA005が第1号製品と言うことになるが、その後この流れはゆっくりとしていたものの、2008年末は、シャープがAQUOS XSシリーズ、ソニーがBRAVIA XR1シリーズ、ZX1シリーズを発売。2009年以降、LEDバックライト時代の本格始動を予感させる。
東芝も今期、同社初となるLEDバックライト採用REGZAを投入した。それがREGZA ZX8000シリーズだ。今回は55V型モデルの55ZX8000の評価を行なった。
■ 設置性チェック ~画面も重さも重量級。消費電力はそれほど大きくない
55ZX8000。55V型は今期のREGZA最大画面サイズ |
REGZA ZXシリーズは今期REGZAのトップエンドモデルに属する製品となる。画面サイズは46型と55型のみが設定され、あくまで大画面指向のハイエンドユーザー向けというコンセプトの製品となる。今回の評価では55型の実機を筆者宅に持ち込んでのテストを行なった。
55V型はさすがに大きく、本体寸法はディスプレイ部だけで136.2×11.3×83.9cm(幅×奥行き×高さ)もある。表示面は121×68cm。今期からREGZAは最大サイズが55型となり、先代までの52型の設定がなくなった。
側面に目をやると、最近の薄型液晶テレビに見慣れてきたせいか、厚みが凄くあるように見えるのだが、実際には奥行きは11.3cmで、同型サイズのCCFL機と比較しても10%くらいしか厚くなっていない。
重量はスタンド込みで42.5kg(ディスプレイ部は37.2kg)。競合機のソニーのRGB LEDバックライト採用BRAVIA「KDL-55XR1」はディスプレイ部だけで47.5kgとより重いが、プラズマテレビのパナソニックの「TH-54Z1」がディスプレイ部だけで32kgとREGZAより軽い。
筆者宅の二階のリビングに男性2名で運ぶことはできたが、かなり重かった。また、設置後のテレビ台からの上げ下げも男性一人ではきつい。面積が大きく、重心が高いため、持ち上げたあとの取り回しも難しい。運搬も設置も無理をせず二人以上で行なうべきだ。
奥行きは約11cmで、極端に厚いというわけでもない |
額縁部もやや太め。額縁の寸法は実測で、上が6.5cm、左右7cm、下9cmあった。画質に関しては後述するが、光沢パネル(クリアパネル)を採用している関係で設置場所に相対する方向に窓や照明があると映り込みやすい。
映像を表示してしまうと表示面の映り込みは気にならなくはなるが、額縁部分への映り込みは視聴時、常時目に付くので、設置場所はよくシミュレーションをして決めたいところ。プラズマはもともと光沢パネルのようなものなので、プラズマからの乗り換えの場合は、それほど意識する必要はないかも知れない。
額縁部分もクリアコーティングされている。画面への映り込みよりもここへの映り込みの方が気になるかも? |
スピーカーは流行のインビジブルデザインで下部に配されている。表示面側のパネルにはスピーカーの開口部はなく美しい。このあたりのデザインは見事だ。開口部は下向きに空いており、おそらくテレビ台側の天板に音を反射させてバッフル効果を狙った音響設計になっていると思われる。スピーカーユニットは13cm×6.5cmの角形ユニット×2、3.2cm径ユニット×2の2ウェイ方式で、総出力20W(10W+10W)。音質は上々で、常用音量のレベル20~30に対し50~60の視聴でもビビリはなし。ステレオのパンニングもしっかりとした定位感が得られていた。
55ZX8000。スタンド部はブーメラン型ではなく楕円型に。左右の首振り機構はない |
設置スタンドは、最初からディスプレイパネル部に組み合わされている。46型の46ZX8000のスタンドには左右±15度のスイーベル機構が実装されているのだが、55ZX8000のスタンドは完全リジッド構造で左右の首振りスイーベル機構は省略されている。これはディスプレイパネル部の重量に配慮した結果なのだろう。重い55ZX8000だが、ちゃんと純正オプションの壁掛け設置金具「FPT-TA12」(オープンプライス)が用意されている。
定格消費電力は353W。CCFLバックライトの55型REGZA「55ZH8000」が306Wなので、それほど極端に消費電力が高くなってはいるわけではない。(RGB)LEDのソニーKDL-55XR1が480W、プラズマのTH-P54Z1が536Wと比べるとさらに、その低さが際立つ。このあたりはLEDバックライトとはいえ、ホワイトLEDを採用している点が功を奏しているのだろう。なお、55ZX8000の年間消費電力は271kWh/年で、CCFLの55ZH8000が273kWh/年であり、あまり大きな差はない(参考:KDL-55XR1は非公開、TH-P54Z1が300kWh/年)。動作音はほぼ皆無で静粛性に問題は無い。
■ 接続性チェック
~HDMI階調レベルの明示設定が可能に。外付けHDD接続だけで録画もOK
接続端子パネルは、背面と、正面向かって右側面にレイアウトされている。この側面パネルにはB-CASカードスロット、SDカードスロット、USB端子(キーボードやデジカメなどの接続専用)、メイン電源スイッチ、チャンネルや入力切換などの基本操作ボタン、そして各種AV接続端子が配されている。
側面接続端子。SDカードスロット、B-CASカードスロットなどもこちらにまとめられている |
デジタル端子としてはHDMI端子を4系統装備、4系統のうち1個は側面側に備える。HDMIバージョンは1.3aに対応。55ZX8000はDeep Colorとリップシンクに対応するがx.v.Colorへの対応は謳われない。
アナログビデオ入力としては「ビデオ入力1/2/3/4」として4系統が用意されており、うちビデオ入力4が側面パネル側の端子となる。背面のビデオ入力1、2はD4入力とコンポジットビデオの排他仕様で、ビデオ入力3と側面側のビデオ入力4はS2ビデオ入力とコンポジットビデオ入力の排他仕様となっている。いずれもステレオ音声入力(RCA)付きだ。また、背面にはSD(480i)画質で映像と音声を出力するためのアナログビデオ出力端子も用意されている(S2ビデオとコンポジットビデオの両方)。
背面接続端子パネル。HDMIは3系統。D端子はコンポジットビデオと排他兼用端子となった |
PC入力端子は設けられていないが、市販のDVI-HDMI変換アダプタ/ケーブル等を用いることにより、PCとはデジタルRGB接続が可能だ。本連載での度重なる訴えが届いたか、今期のREGZAからはPCやゲーム機と接続したときの細かいチューニングが行なえるように機能強化されている。
まず、RGBの階調レンジをマニュアル設定できるような新機能が設定された。従来機ではPC接続時にもビデオ向けの16-235範囲の階調として受け付けられてしまい黒沈みの白飛ばし気味の映像になってしまうことがあった。これは、多くのテレビ製品で起こっているトラブルなのだが、意外にこの事実を知らないで使っているPCユーザー/ゲームユーザーも多い。テレビメーカーはゲームやPCへの対応が積極的でないのだが、東芝REGZAはいち早く対応をしてきてくれた。
55ZX8000(今期8000型番REGZAでは共通仕様)ではメニューの「機能設定」-「外部入力設定」-「RGBレンジ設定」にてデフォルトの「オート」から「フルレンジ(0-255)」と「リミテッドレンジ(16-235)」が明示的に設定できるようになったのだ。
外部入力設定 | 「RGBレンジ設定」メニュー。PCを接続したときは「フルレンジ」設定にしよう | 筆者の要望が取り入れられたプロジェクタライクな詳細ステータス表示モード。色深度、色空間、RGB/YUV(階調レンジ)はビデオカメラ、PC、ゲーム機などを繋ぐユーザーにはありがたいはず |
PCの映像(0-255)をREGZAがフルレンジ(0-255)で受けた場合 | PCの映像(0-255)をREGZAがリミテッド(16-235)で受けてしまった場合。暗部が極端に沈み、最明部付近が飽和して飛ぶ |
この設定は4系統のHDMI端子に個別に設定できるので、PCを接続したHDMI端子に対しては「フルレンジ」設定をしておくとよいだろう。ゲーム機の場合も「フルレンジ」がお勧めだが、その場合にはゲーム機側の設定とREGZA側の設定を明示指定で合わせる必要がある。
また、背面3つのHDMI端子のうち、HDMI3に関しては、これとペアにして利用できるアナログ音声入力端子(ステレオミニジャック)も用意されている。これは、DVI+アナログ音声出力などのHDMIで音声出力できないPCとの接続に有効活用でき、55ZX8000のスピーカーをPCスピーカーとして利用できるのだ。
HDMI3の音声はアナログ入力が可能。PCディスプレイ的に活用するときに便利だ |
55ZX8000は、録画関連端子もハイエンド機らしく充実している。i.LINK端子を2系統を装備、さらに録画用の外部HDD接続用のLAN端子、USB端子も備えている。
なお、55ZX8000は内蔵HDDはないが、市販の安価なLAN-HDDやUSB-HDDを購入して接続するだけで録画が行なえる。デジタルチューナは2基搭載されているので、視聴している番組とは別の番組を録画できる。
さらに、新機能として、この2基のチューナを両方とも録画に割り当ててしまうこともでき、REGZA本体だけで2番組同時録画も可能となっている。2番組同時録画中も録画しているどちらかの番組であればテレビの同時視聴も可能だ。市販のHDDを組み合わせればわずか1万円前後でハイビジョン録画環境を揃えられる。55ZX8000ユーザーになった暁には是非ともHDDを接続したい。
この他、外部オーディオシステムとの接続に必要な光デジタル音声出力端子、インターネット接続用のLAN端子、ひかりTV専用のLAN端子などが実装されている。
ハイエンド機らしく、現状で、思いつく限りの全ての端子が実装されているのはお見事だ。55ZX8000は、テレビとしてはもちろんだが、本格的なホームシアターのAVセンターモニターとしての役割も十二分に果たすことが出来ることは間違いない。
USB HDDやLAN HDDを接続すれば安価にハイビジョン録画環境を構築可能。しかにも2番組同時録画にも対応しているのは嬉しい | SDカードスロットにデジカメで撮影した写真データ入りのSDカードを挿せばすぐにスライドショーが楽しめる |
■ 操作性チェック ~超解像技術を的確に活用できるように進化
リモコンはフォントが若干異なるボタンがある程度でほぼ先代から変更なし。操作性の基本部分やメニュー構造も変わらない。
よって、アスペクトモードの紹介、二画面機能の活用、ドルビーボリュームを初めとしたサウンド関連機能、基本的な画質調整機能の詳細については本連載第99回の「REGZA 46ZH500編」、および第103回「REGZA 46FH7000編を参照して欲しい。本稿では55ZX8000で新設された機能などを中心に見ていくことにする。
リモコンは従来のZシリーズとほぼ同仕様 |
まず、リモコンそのものは、全体的な使い勝手は悪くはないのだが、リモコン下部の蓋下に追いやったボタンの使用頻度が高く、リモコンの蓋を常に空けた状態で使っている自分に気がつく。ここに今後の改善のポイントがあると感じる。
特にメニューの起動ボタンや[設定メニュー]、プリセット画調モードの切り替え操作を行う「おまかせ映像」ボタンなど、使用頻度の高いボタンが、ここにあるのがよくない。むしろここの蓋は無くてもよいのではないか、と思ったりもする。数世代のREGZAに渡って使われてきたこのリモコンもそろそろ根本的なリファインが必要かもしれない。
電源を投入してから、地デジ放送の画面が出るまでの所要時間は約6.0秒。早さ的には平均的と言ったところ。
入力切換はリモコン最上段の横長のシーソー式ボタンの[入力切換]ボタンを押して順送り式に行なう仕組み。ボタンは左右のシーソーなのに、開かれるメニューが上下並びなのが直感的にわかりにくい。[入力切換]ボタンを入力切換メニュー起動ボタンにして、その後、数字キーを押して目的の入力切換に一発で切り換えられるような方式にして欲しい。入力切換所要時間はHDMI→HDMIで約3.5秒、HDMI→D4で約4.0秒。地デジ放送のチャンネル切換は約1.5秒とまずまずの早さとなっている。
アスペクト比の切換は瞬間的に行なわれ所要時間はほぼゼロ秒。これはとても高速だ。
プリセット画調モードの切換は、前でも少し触れたように、リモコン下部の蓋を開けたところにある右上の「おまかせ映像」ボタンで行なう。このボタンはREGZAのイチオシの機能の「おまかせドンピシャ高画質・プロ」を制御するものでもあるので、蓋下ではなくて表に出してあげるべきだろう。たぶん、メーカーとしては「『おまかせ』モードにしておけば後は変更しなくてもいいから蓋下に追いやった」というところなのだろうが、ハイエンドユーザーになればなるほどこの部分は好みにうるさいはず。これを表に出して欲しいユーザーは少なくないだろう。
この「おまかせドンピシャ高画質・プロ」については少々、解説が必要だろう。
先々代の500型番のREGZAで、ユーザーの視聴環境をリアルタイムに検知して、現在視聴中の映像ソースのタイプに適した画質調整を自動的に行なうインテリジェントなシステムを「おまかせドンピシャ高画質」と命名して搭載した。続く、7000型番のREGZAからはこの「おまかせドンピシャ高画質」機能に対して「24fps映像への最適化」、「動的バックライト制御の最適化」、「超解像技術との連動」といった3点の改良を行ない「おまかせドンピシャ高画質・プロ」とした。
55ZX8000をはじめとした今期のREGZAでは、設置環境における急な照明のオン、オフの変化に対し柔軟な対応をするようにチューニングされている(機能名称に今回は変更はない)。具体的には人間の目は明るいところから暗いところに行くと、目が慣れるまで時間がかかり(暗順応)、暗いところから明るいところへ行くと比較的早く目が慣れる(明順応)という特性があるが、この人間の視覚モデルに併せて「おまかせドンピシャ高画質・プロ」を調整している。要は、画調モードを「おまかせ」にしておいたときの信頼性がより向上した、ということだ。
実際に「おまかせドンピシャ高画質・プロ」をオンにした状態で照明のオン/オフをしながらテレビ放送を見てみたが、バックライト輝度が徐々に変わっていく様は気付くが、嫌な感じはない。
映像設定 | 映像調整 | 詳細調整 | 画面調整 | 音声設定 |
音声調整 | イコライザー | 機能設定 | HDMI連動設定 | 初期設定 |
もう一つ、55ZX8000だけでなく、今期のREGZA ZX/ZH/Zシリーズの新機能に「1080p処理モード設定」機能がある。これは意外に動作が複雑で深いので紹介しておこう。
従来のREGZAではスケーラ処理をYUV=4:2:2で動作させることしかできなかったが、今期Z型番REGZAではYUV=4:4:4で動作させ、映像エンジンである「メタブレイン・プレミアム」の全ての動作をYUV=4:4:4で処理させるモードが選べるようになったのだ。
「映像設定」メニューの「1080p処理モード設定」には「おまかせ」「DVDファイン」「ピュアダイレクト」の3設定が選べるが、「ピュアダイレクト」と設定した時にのみYUV=4:4:4で処理させる動作となる。
「おまかせ」はその1080p映像に対して「レゾリューション・プラス2」(超解像)を効かせる動作となり、「DVDファイン」はその映像がDVD映像(=SD映像)をアップコンバートした1080p映像であることを明示設定して「レゾリューション・プラス2」を効かせる動作となる。
全体像(PS3から480pにスケーリングダウンしたものを1080pでHDMI出力) |
実際にPS3のアップコンバート機能を活用してDVDビデオを1080p出力で再生してみたが、「おまかせ」よりも明らかに「DVDファイン」を選択した方が、超解像処理がより効果的に効いてディテール感が向上する。
「ピュアダイレクト」設定したときには一貫したYUV=4:4:4処理がなされるが、その代わり「レゾリューション・プラス2」はバイパスされる点に注意したい(レゾリューション・プラス設定そのものが適用できなくなる)
「おまかせ」。その映像の周波数ヒストグラム解析を行なって超解像適用強度を決定するため、どうしても効き目は控えめとなる | 「DVDファイン」。SD映像であることが確信できるため、超解像の効きが強くなる | 「ピュアダイレクト」 |
まとめると、活用方針としては、DVDビデオ映像やSD映像のAV機器、レトロゲーム機を接続した入力系統では「DVDファイン」設定が望ましい。そして確実にリアル1080p解像度の映像を出力するゲーム機やPCを接続した入力系統では「ピュアダイレクト」設定がいいだろう。テレビ放送は様々な映像ソースが映ることになるので「おまかせ」が無難となる。
■ 画質チェック ~直下型LED+エリア駆動でプラズマ並のコントラスト感
今期のZ型番REGZAはZXシリーズのみが垂直配向(VA)型液晶パネルを採用する。一方、ZH/ZシリーズではIPS液晶が採用されている。VAとIPS、それぞれの得意分野があり、それぞれの短所は克服されつつあるが、傾向としては、「VAパネルは暗部の沈み込みとコントラスト重視」、「IPSパネルは視野角の安定感」(見る角度によっての色変調が起こりにくい)という特徴がある。
公称ネイティブコントラストでいうとVAパネルのZXシリーズが5,000:1、IPSパネルは1,100:1であり、数値的にもその特性は現れている。このネイティブコントラスト5,000:1のVAパネルを、LEDバックライトで駆動するというのがREGZA ZXの映像表示システムの特徴となる。
バックライトに使用されているLEDは白色タイプになる。白色LEDにはいくつかのタイプがあり、液晶バックライトに用いられる主流は青色LEDに赤色と緑色の蛍光体を組み合わせて白色に光らせるシングルチップタイプだ。このため、白色LEDは初期のものは、色が青に振れたり、黄に振れたりしたものであった。REGZA ZXでは、白色LEDタイプを公開していないが、良質な白色光が取れるものを採用しているという。
液晶ディスプレイ(TV)のLEDバックライトのタイプには液晶パネルの背面に直接LEDを配置視する「直下型」と、液晶パネルの外周などに設置したLED光を画面全体に導光板を使って照射する「導光型」の2タイプが存在するが、REGZA ZXは「直下型」を採用する。
白色LEDバックライトの液晶テレビと言えばソニーのブラビア「KDL-40ZX1」が思い起こされるが、あれは「導光型」だ。
直下型LEDバックライトの液晶TV製品としてはシャープ「AQUOS XSシリーズ」、ソニー「BRAVIA XR1シリーズ」があるが、これらは赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のLEDをバックライトに配したものになる。
RGB-LEDタイプは色純度が高いため、色域を広く取れるのが利点となるが、LEDの部品点数が多くなり、さらには消費電力が大きく、価格も高めになる傾向が強い。
白色LEDバックライトは、冒頭でも触れたように消費電力がほとんどCCFLバックライトの液晶と変わらず、価格もRGB-LEDバックライトタイプよりもだいぶ低く抑えられる。まだ、発売直前ということもあり、10カ月前に発売されたソニー、シャープの両製品より、ZX8000シリーズが高めのようだが、製造コスト(LED部品点数や駆動基板)のことまでを考えれば、いずれはREGZAの方が安くなる可能性が高いだろう。
東芝では、一般的な映像ソースが広色域を前提に作られていないため、RGB-LEDの良さが活かされる状況が限定的と考え、それよりは直下型LEDバックライトの恩恵が最大限に活かされる「エリア駆動」の方を強く訴求すべき、と判断。今期のREGZAでは白色LEDを採用している。
直下型LEDバックライトは液晶パネルの背面側にLEDを配列させるが、全部のLEDを同じ明るさで光らせるのではなく、液晶パネル側に表示する映像の明暗にシンクロしてLEDの明るさを個別に駆動しようとするのが「エリア駆動」だ。
直下型白色LEDバックライトによるエリア駆動発光により、液晶パネルで自発光画素さながらの高さのインフレーム・コントラストを実現する |
具体的には、映像フレーム中の明るい部分に相対するLEDを明るくし、映像の暗い部分に相対するLEDは暗くする。つまり、表示映像を“エリア”に分割し、その「エリア単位に最適な輝度でLEDバックライトを駆動しよう」というのが「エリア駆動」だ。このエリア駆動はLEDバックライトでも導光型では実現できないし、直下型であってもCCFLでは棒状に広範囲に光を照射するため実現できない。直下型のLEDバックライトだから出来るのがエリア駆動なのだ。
エリア駆動は、そのエリア単位を十分細かく駆動できれば、「明るい画素は明るく、暗い画素は暗く」が実現でき、いわばプラズマやブラウン管などと同じ、画素自体が発光する自発光画素を擬似的に再現できることになる。このエリア駆動の精度(粒度)は液晶パネル直下に配列されるLEDの配置密度(個数)に依存する。東芝はREGZA ZXのLED個数は発表していないが、55ZX8000と46ZX8000とでは個数が違うことは取材で確認しており、画面サイズが大きい55ZX8000の方がエリア駆動範囲が粗くなると言うことはない。
実際に暗室にて全黒映像を実機で表示してみたところ、ほぼ部屋の暗さに表示面が消失したに近い状態となった。これは、前回取り上げたプラズマのTH-P42V1よりも暗い。
ここで、画面の一部に何かアイコンのようなものを表示させると、そのアイコンの周辺が若干明るくなる。こうしたことはプラズマでは起こらないので、この面ではプラズマに軍配が上がる。ただし、その表示させたアイコン以外の部分は真っ暗な漆黒のままだ。
映像を表示してみると、なるほど、1フレームに高輝度部分と暗い部分が同居しているような、液晶が不得意とする映像でも、安定した暗部階調表現が実現できていることが分かる。これまでのCCFLバックライトのREGZAでもバックライト輝度制御はやっていたが、あれらはフレーム単位での制御になるので、暗部がどうしても最明部の輝度に引っ張られて浮いてしまう傾向はあった。55ZX8000では、これがほとんど無い。明色の方も暗色に遠慮無く輝かせられるので伸びが凄い。
エリア駆動あり | エリア駆動なし。未表示の黒部分が微妙に明るくなってしまう。また、最暗部に若干の黒浮き浮きが出てしまっている |
ちなみに、このエリア駆動によるダイナミックコントラストは公称値で200万:1とのこと。数字だけではイメージがわきにくいだろうが、喩えるならば、最新世代のプラズマのコントラスト感を手に入れてしまったような感じだ。
コントラスト感と立体感の次に、55ZX8000の映像を見て気づかされるのが1ピクセル1ピクセルのクリア感。1m離れた位置で見ていても、髪の毛のような細い線分表現や、模様の細かいディテール表現がパリっと見える。フォーカス感が凄く、PCやゲーム映像を映すと、もっとこの部分がわかりやすく伝わってくる。1メートル離れた位置でWeb画面を見たとき、たとえば画面上の「画質」の文字の“田”や“貝”の部分の穴までがクリアに見える。
この画素描画のクリア感は、「映像エンジンがどうこう」という映像の味わい部分ではなく、光学的な、視覚的な違いとして感じられる。
この種明かしは単純で、ZXを含む今期のREGZA Zシリーズでは全て、液晶パネルにクリアパネルを採用したことがその理由となっている。
視力がよくなったかのように画素形状がくっきりと見える55ZX8000の液晶パネル |
クリアパネルとは表示面側のスクリーンにクリアコートを施した、いわゆる「光沢(グレア)パネル」と呼ばれるタイプのこと。先代までのREGZA、そして他社製品でも、液晶テレビはノングレアパネルを採用しているものが多い。クリアかノングレアか、どちらを選ぶかはメーカーの自由、ひいてはユーザーの自由なのだが、画質面でいえば、圧倒的にクリアパネルの方が優位だ。
その理由は、画素からの出力光の経路を考えれば明白。そう、液晶(画素)層から通ってきた出力光(≒出力色)がピュアな形でダイレクトに視聴者の目に届けられるためだ。また、暗色や暗部階調表現も出力光の損失が少なく目に届くため、視覚として得られる情報量のダイナミックレンジも必然的に大きくなる。
一方、ノングレアパネルの液晶層からの出力光は、ノングレアのスクリーン層を通ったときに若干、拡散してしまう。拡散反射とは全方位に光を散乱させるので画素描写をぼやけさせてしまい、出力光そのもののエネルギーが目に届く前に減退してしまう。画素描写をぼやければ、1ピクセル1ピクセルがぼけて解像感が低下する。また、出力光が拡散して減退してしまえば、コントラスト感の低下につながる。
これまで、多くの液晶テレビが、なぜ慣例的にノングレアパネルを使っていたかというと、やはり、周囲の映り込みを気にしてのことだろう。そして今回のREGZAであえてクリアパネルを搭載してきたのは、ここ数年で、そうした点よりも、液晶テレビにも絶対的な高画質表現こそが求められるようになってきたためだ。
プラズマテレビは表示面がガラスなので、最初からいわばクリアパネルだったわけで、これをとやかく言う人はいなかった。その意味では、液晶テレビが「画一的にノングレアパネルだけだった」ということの方が異常事態だったといえなくなもない。ちなみに、最近のノートPC製品で、高画質映像表示を謳うAV機能特化モデルは皆クリアパネル採用機になっている。他社製品でも、高画質を謳うモデルは徐々にクリアパネル採用機が増えてくるかもしれない。
東芝の発表によればこのクリアパネルによって明所コントラストが同条件下のノングレアパネルと比較して約30%も向上したとしている |
さて、55ZX8000は、発色はRGB-LEDバックライト採用機と比べると、よい意味で「普通」だ。あまり、記憶色再現に振るような彩度の高いチューニングにはなっておらず、あくまでナチュラルな味わいだ。この傾向はREGZAの伝統的なコンセプトでもある。
広色域バックライトを採用していた前モデルのZ7000とは違い「色空間」設定はカットされている。その関係からか、x.v.Colorへの対応も行なわれていない。東芝によればZX8000では、デジタル放送やハイビジョンソフトの標準色域であるITU-R BT709(sRGB相当)の忠実再現に特化した発色にチューニングとしたとのこと。
とはいえ、純色はなかなか鋭い発色で、緑が特に豊かだ。赤と青のバランスも良好。色深度はかなり優秀で、最暗部付近でも、目を凝らすとちゃんと色味が残っているのが凄い。
二色混合グラデーションも擬似輪郭が全く無く、実にスムーズ。これだけでなくあらゆるグラデーション表現がなめらかで美しい。この部分はZ7000シリーズでも感心させられたが、この性能は8000シリーズでもあますことなく継承されている。液晶パネルは10bit、1,024階調に対応しており、さらに映像処理部での内部演算精度を14bitとして優れた階調分解性能が与えられている。このパネルを映像エンジン「メタブレイン・プレミアム」に含まれる「新・パワー質感リアライザー」のアルゴリズムの下、駆動するとこういう表現になる……ということだ。
そして、肌表現は、歴代REGZAの中でもかなり優秀だと感じる。55ZX8000は、比較的赤が鋭く、緑も深い発色傾向を感じるが、肌色が黄色に引っ張られていない。また、どの画調モードにしても肌色が破綻しないのもお見事。陽光に照らされた白い肌は、自然な白さと、かすかな血の気の赤らみが乗る感じでとても美しい。頬のグラデーションも前述の「新・パワー質感リアライザー」の効果もあってとてもなだらかで"柔らかい触感"までをイメージさせるほど。日の当たっていない茶色に落ちていく肌の"陰"の部分のグラデーションも美しいのが印象的だった。
LEDバックライトのエリア駆動の効果もあって、暗部階調の表現力も優秀だ。明部と暗部が交差する箇所は、エリア駆動の粒度上の制約から、独立した暗部と比べると、若干明るくなるが、映像全体のコントラスト感は前述したように常に安定している。
動画表示時のインプレッションも述べておこう。ZX8000を含む今季のZ系REGZAでは「Wスキャン倍速」と命名された新しい動画表示支援機能(残像低減技術)が搭載されている。
液晶テレビが「動画に弱い」とよく言われるのは、これは液晶パネルが次のフレーム表示まで、ずっと前のフレーム表示を行なっている「ホールド表示」の仕組みに原因があるとされる。映像が次のフレームに切り替わった瞬間まで前のフレームを見続けてしまうことで、人間の視覚(脳内)として前フレームの残像が残ってしまう。いわば人間の視覚応答速度に起因した問題といってもいいかもしれない。
この問題を解消するために考案されたのが「倍速120Hz駆動技術」で、前のフレームと次のフレームの間の映像の間に算術合成した補間フレームを表示してやることにより、なめらかに映像表示を繋ぎ、視覚上の残像を低減しようとしたのだ。これは「モーションクリア」と呼ばれる技術でREGZA Z7000にまで搭載されていた。
2008年からは競合他社も倍速120Hz駆動技術の“次”の模索を開始。ソニーは4倍速240Hz駆動技術を開発、他社は倍速120Hz駆動技術の改良型を搭載し始めている。REGZAに搭載された「Wスキャン倍速」は後者のタイプに属する。
元々算術合成した映像フレームには予測を失敗しているエラー画素も含まれている。240Hz駆動ではエラー画素を含む補間フレームからさらにエラーを生む補間フレームを作り出す危険性をはらんでいる。特にこうしたエラー画素は周波数の高いディテール表現を含む映像で発生しやすく、最悪のケースではディテール部でブルブルと画素が揺れて見える「表示振動」を起こしてしまうこともある。
東芝はこれを嫌い、算術合成するのは従来の倍速120Hz駆動と同じ1フレームだけにして、その表示の仕方に工夫を凝らす手法を採択した。
よく「ブラウン管は残像が少なかった」といわれるが、あれはブラウン管が短残光の映像表示だったからだ。具体的に言うと、高輝度に映像が一瞬だけ光ってすぐ消えてしまう表示方法だった。
一瞬映像が消えるのだが、このおかげで前フレームの知覚が消え、なおかつ、その消えている間に、人間の脳は映像の動きを脳内で補間して知覚する。見えてない部分は人間の脳が自然に見えたという風に知覚してしまうわけだ。このブラウン管のように映像を一瞬だけ表示して消してしまう映像表示方法をインパルス駆動という。
Wスキャン倍速では、このインパルス駆動の仕組みを活用する。補間フレームを倍速で生成するが、その2倍に増えた毎秒120フレームの映像フレームをブラウン管のように短残光で表示していく。これにより、倍速120Hz駆動技術によるなめらかな動きの補間と、人間の視覚モデルの特性の短所を補い、それぞれの長所を活かした表示が行なえるという具合。
いわば、Wスキャン倍速は、液晶とブラウン管の残像低減表示方式の"ハイブリッド手法"ということができる。
Wスキャン倍速は、倍速120Hz駆動技術にインパルス駆動の原理を組み合わせたハイブリッド型倍速駆動技術だといえる |
なお、REGZA ZXのWスキャン倍速は、REGZA Z/ZHのものよりも細かく制御しており、今期のZ系モデルのなかではもっとも効果が高いとされる。具体的にはREGZA ZXでは、LEDの高速応答性を利用し、画面を水平方向に8分割し、この各1/8領域に対して上から下への走査発光を行なっている。まさに、ブラウン管のようなインパルス駆動を行なっているのだ。
実際のインプレッションだが、「スターウォーズ・エピソード2」(DVD)のチャプター19でのアナキンとパドメがデッキガーデンを画面左から右へ歩くシーンと「ダークナイト」(BD)のオープニングのビル群のフライバイシーンで視聴してみたところ、いくつかの傾向が見て取れた。
まず、この機能の調整に関わるのは「映像設定」メニュー階層下の「映像調整」-「詳細調整」にある「Wスキャン倍速」(オン/オフ)設定と、「オートファインシネマ」(5-5フィルムモード、スムーズモード、オフ)設定だ。
まず、毎秒24コマの24fps映画ソースにおける「5-5フィルムモード」では補間フレームが入らず、24fpsの各フレームを5回ずつ表示しての120fps表示となり、事実上、毎秒24コマ表示を忠実に実現するモードとなる。この時、「Wスキャン倍速」をオン、オフと切り換えて見れば、補間フレームなしで純粋に24fps映像をインパルス駆動の恩恵だけを得て映像を見られるようになる。
一方、「スムーズモード」にすると補間フレームが入っての120fps表示となり、映像の動きが非常になめらかになる。この時に「Wスキャン倍速」をオン、オフと切り換えると、オフ時はフレーム補間のみの前モデルまでの「モーションクリア」と同等の画質となり、オンとすれば"“残像低減技術の全部入り”の状態での視聴となる。
Wスキャン倍速のオン/オフの差は、動く映像のディテールの向上とエッジのブレの低減という形で現れていた。画質そのものについては“全部入り”の状態で見た方が最良であったが、インパルス駆動の恩恵自体は「スムーズモード」よりも「5-5フィルムモード」での時の方がわかりやすかった。
インパルス駆動というと、黒表示期間が挿入されることで知覚上の輝度不足やチラツキを懸念する人もいるだろう。REGZA ZXでは、LED発光時の輝度を高めに取っているためか、黒表示期間による輝度低下は感じない。チラツキについても、チラツキとして知覚される限度を超えた240Hz単位(約4ms間隔)の明滅なので問題がない。画素の色発光自体は完成色での発光となるので、プラズマのような色割れも知覚されない。概ね、Wスキャン倍速の完成度は高いといってよいと思う。
気づいた点としては補間フレームが他社同様時々エラーを含むこと。たとえば「ダークナイト」のオープニングのビル群のフライバイシーンでは左奥の白いビルの窓枠が若干振動していた。画面中央や右のモールドについては他社のものよりも逆に安定したディテール感を描き出せていてお見事であった。
REGZA Zシリーズということは「超解像技術」についても触れておかねばならないだろう。第二世代バージョンの「レゾリューション・プラス2」に強化されているのだ。超解像技術についての詳細や原理について第102回で解説しているのでそちらを参考にして欲しいが、ここでも簡単に説明しておこう。
現実世界の情景の解像度は無限大だ。しかし、その解像度無限大の「情景」はカメラなどで撮影することで、カメラの撮影解像度に情報が落ち込んだ「映像」となる。撮影対象の「情景」は完全なランダムノイズでないので規則性をもっている。しかも、その「情景」を撮影したカメラで生じる「解像度無限大→カメラの撮影解像度」の変換自体にも法則性はある。ここに着目し、その法則性を逆利用して、その映像で失われたと推測される情報を復元してやる技術が「超解像技術」になる。
REGZA Z/ZH7000シリーズに搭載されていた「レゾリューション・プラス」では、デジタル放送の映像の他、DVDなどのSD映像に対しても適用はできたのだが、プレーヤー側がアップスキャンコンバートして出力しているとREGZAはハイビジョン映像だと認識して超解像処理を行なっていなかった。これは、「レゾリューション・プラス」では主に入力信号フォーマットに着目して超解像技術を適用していたからだ。
今期モデルの「レゾリューションプラス2」では、映像信号フォーマットではなく、映像そのものを解析して適切な再構成処理を行なうように進化している。いうなれば、「レゾリューション・プラス2」では入力された映像の全てに対し、全自動で適切な超解像処理を行なってくれるようになった、ということだ。
REGZAに搭載された超解像技術の概念図 | 超解像処理の適用範囲、活用範囲を広げるような拡張が行なわれた「レゾリューション・プラス2」 |
だから、Blu-rayレコーダ/プレーヤーで再生した1080p映像でも、アップスキャンコンバートされたDVDのSD映像にもちゃんと効く。デジタル放送でもSDカメラで撮影された映像、あるいは古めの番組の再放送など、伝送映像は1080iでも、実体映像がSD映像の番組はまだまだ多い。前モデルでは適用されなかったそうした「実体はSD映像。信号だけHD映像」にもリアルタイムに反応して超解像処理を適用してくれるのだ。
PLAYSTATION 3にて、1080pへアップスキャンコンバート機能を使ってDVDビデオを再生してみたが、的確に超解像処理が適用されていることが確認できた。興味深かったのは、PS3側のアップスキャンコンバート機能のオン/オフで超解像処理の効き方が変わるというところ。PS3のアップスキャンコンバート機能をオンにした映像に対しての方がよりレゾリューションプラスが強く効いてくるようだ。また、PS1、PS2のゲームを試してみたが、こちらにもちゃんとレゾリューションプラスが効くのが面白い。PS1、PS2ゲームの粗いテクスチャ模様がぼやけることなく自信ありげに描き出されている。
【1080p映像にも効く超解像】
全体像(PS3、HDMI、1080p) | 1080pでの超解像オフ | 1080pでの超解像オン。陰影がくっきりすることで解像感がアップ。さらに副次効果でコントラスト感も向上する。 |
「レゾリューション・プラス2」はデジタル放送はもちろん、ブルーレイなどの1080pのフルHD映像への超解像処理も映像の周波数ヒストグラム解析をベースにして行なうため、フルHD映像主体で見ているユーザーにも恩恵はある。実際に「ダークナイト」のオープニングのビル群のシーンで視聴してみたが、オンにすると奥のビルの窓枠の格子模様や、数ピクセル単位で描かれているビル屋上に敷き詰められた砂利の陰影がしっかりと描き出されることが確認できた。映像の情報量が増し、視力が向上したかのような高解像感が得られるのはなかなか感動的だ。
ちなみに、いろいろな映像ソースを「レゾリューション・プラス2」のオン/オフで比較して見てみたが、この処理結果によるエラーピクセルはほとんど無かった。スムーズモードの補間フレームのエラーピクセルが気になる画質マニアでも、「レゾリューション・プラス2」はオンで常用しても問題ないと思う。
【ゲームの映像にも効く超解像】
全体像(Xbox360、D4端子、720p接続) | 720pでの超解像オフ | 720pでの超解像オン。ライト内のディテール表現が鮮明に |
480pでの超解像オフ | 480pでの超解像オン。消失しかけていた網目の陰影が復活 |
【超解像の弊害】
1080pでの超解像オフ | 1080pでの超解像オン。超解像の結果としてモアレ(中央ビルの縦筋)が出ることもある。この場合は超解像のレベルを下げればOK |
最後に、55ZX8000で、新設された画質関連の設定項目について、解説とインプレションを述べておこう。
■ 色帯域
前シリーズのZ7000では「色空間」の設定があったが、ZX8000ではこれがカットされている。その代わり、今世代では「色帯域」の設定が追加された。「色空間」と「色帯域」、ややもすると名前が変わっただけと思われがちだが、その実、全くの別物の設定だ。これはHDMI入力専用の設定項目で、HDMIで伝送されてくる映像信号のクロマバグを低減したり、色解像度を向上させるものだ。
デジタル放送やDVDビデオではYUV=4:2:0の色差映像信号で、これは輝度は1ピクセルごとに表現されているが、色情報については2ピクセルごとに、しかも一走査線ごとにすっ飛ばして表現している(インターレース映像)。これをプレーヤーなどのAV機器が4:4:4:にアップサンプリングしてHDMI伝送をするわけなのだが、その際に機種や映像プロセッサによっては色抜けやジャギーを発生させている。
「色帯域」設定は、これに対応する設定になる。「スタンダード」設定はこのクロマバグをフィルタリングして低減させるモードになり、「ワイド」は独自のアルゴリズムで失われた色解像度情報を復元しようとするものだ。
おそらくほとんどのユーザーが切り換えても違いが分からないかも知れない。
どうしても効果を確認したい場合は、PS3などで、HDMI出力を480pに限定し、ここで適当なカラーバーやカラーグラデーションを表示するといい。「ワイド」設定にすると色と色との境界線での滲みが低減される。
まあ、これは「ワイド」設定にして常用すればいいだろう。なお、設定項目名は「色帯域」よりは「色解像度」とした方が分かりやすいと感じる。
全体像(PS3、HDMI、480p) | 「スタンダード」設定。マゼンタとシアンの色境界に太い滲み線が見える | 「ワイド」設定。その色滲み線が低減される |
■ LEDエリアコントロール
「映像設定」メニュー階層下の「映像調整」-「詳細調整」にある「LEDエリアコントロール」設定は、読んで字の如く液晶パネルのエリア駆動のオン/オフを設定するものだ。
オフに設定すると、液晶パネル全体を同じ輝度の明るさでLEDバックライトを駆動するようになり、いわば、CCFLバックライト風の画調が楽しめる(?)ことになる。もちろん、暗いシーンでも、シーン内に明るい箇所があれば、その表現に合わせた輝度で画面全体のバックライト輝度が上がるので当然黒浮きが目立つようになる。
プリセット画調モードの「ゲーム」では、なぜか「LEDエリアコントロール」がオフ設定になっている。もしかして、LEDエリアコントロールが表示遅延に関係しているのかと思い、東芝に問い合わせてみたが、「液晶パネルのエリア駆動のオン/オフは表示遅延に関係ないので、是非ともオンでお使いください」とのことであった。オフ設定にしたのは特に理由はないようなので、ゲームユーザーも安心して「オン」で活用しよう。
LEDエリアコントロール・オン | LEDエリアコントロール・オフ。右下に暗部階調に黒浮きがでるようになる |
LEDエリアコントロール・オン | LEDエリアコントロール・オフ。左上と右下の真っ暗な部分に黒浮きがでるようになる |
■ まとめ ~ハイコントラスト+ナチュラルチューニングが魅力
今期のREGZA Z8000シリーズ(ZX/ZH/Z8000)のポイントは倍速駆動とインパルス駆動のハイブリッド型「Wスキャン倍速」、第2世代超解像技術の「レゾリューション・プラス2」、そして、クリア液晶パネルへの変更、この三点になるかと思う。
個人的には、デジタル放送視聴への活用がメインだった超解像技術が、レゾリューション・プラス2により、あらゆる映像メディアに効かせられるようになったことは、とても大きい訴求力になっていると感じる。超解像技術を搭載したテレビは、まだREGZAだけであり、これをさらに進化させたことは他社製品を比較検討している人には強く響くことだろう。
くっきりとした画素描画が印象的なクリアパネル採用もトピックだが、こちらは、もしかすると、従来の液晶テレビユーザーからの買い替え組には好き嫌いをいう人も出てくるかも知れない。一方で、プラズマテレビからの乗り換え組には、逆に、このクリアパネルがプラズマっぽい表示面の映り方をするため、プラスに働くかも知れない。クリアパネルかノングレアパネルか、ここは今期のユーザーの反応を東芝も伺っているといったところだろうか。
そしてREGZA ZX8000のポイントはなんといってもエリア駆動に対応した直下型白色LEDバックライトだ。プラズマやブラウン管のような自発光画素に近いダイナミックな明暗表現は、ZX8000だけのもの。ここは、強力なアピールポイントだ。
エリア駆動対応LEDバックライト採用の競合製品としては、やはり、シャープのAQUOS XSシリーズ、ソニーのBRAVIA XR1シリーズということになるだろう。この競合2機種は、RGB-LED採用であることから、その広色域性能を活かした記憶色再現をウリにする。
一方でREGZA ZXは白色LEDで、マスターモニターライクなナチュラル方向な画調にチューニングされている。この発色チューニングの違いこそが製品選びの際のポイントとなることだろう。
(2009年 6月 25日)