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4月アニメをハイレゾのアニソンで振り返る。「月がきれい」など、注目の曲はコレ!

 各地で30度を超える暑さが続く中、この夏のアニメ新番組も熱い。7月からまた怒涛のようにアニメ新番組が始まった。本編ももちろん注目だが、作品の内容とも大きくつながる主題歌やキャラクターソングなどの「アニメソング」も、毎クールに大量の作品がリリースされている。4月期放送のアニメ作品の中から、あらゆる面でクオリティにこだわるアニメファンにおすすめしたい、ハイレゾのアニソン楽曲を紹介していこう。

 CDだけでなくハイレゾでもリリースされるアニソンのタイトル数は増え、最近はどのハイレゾ曲を買おうか悩める域まで達した。配信サイトのe-onkyo musicにおいて、アニソン大手レーベルのランティスが「ラブライブ!」などの楽曲配信をスタートし、曲が充実してきたのは2013年。まだハイレゾのアニソンが多くなかった、それ以前の状況を思うと隔世の感がある。

 アニメや二次元をこよなく愛し、ハイレゾ音楽制作にも関わる筆者が、4月期のアニメ作品を振り返りつつ、おすすめの曲を紹介。ハイレゾを既に楽しんでいる方も、「気にはなっているけどCDで満足」という方も、様々なシーンを思い浮かべながら一読いただきたい。

「月がきれい」エンディング主題歌「月がきれい」/東山奈央(48kHz/24bit)

 feel.によるオリジナルTVアニメ「月がきれい」のエンディングテーマ。

 歌唱は同作に教師役で出演する声優の東山奈央。作曲は、ナノへの楽曲提供などでお馴染みのWEST GROUND。編曲は劇伴を担当する伊賀拓郎が担当する。

月がきれい/東山奈央

 “恋テロアニメ”として話題となった本作は、中学生同士のリアルな恋模様を描いて全国のアニメファンを悶絶させた。等身大の中学生を丁寧に描いたことでも話題になり、昔を思い出しながら夢中になって視聴した方も多いことだろう。Cパートの短編では、美しすぎる本編とは変わって、ちょっと生々しい中学生の現実が描かれており、実にバランスの良い構成の作品だった。

 音楽面で注目なのは、サウンドトラックに往年のラブソングのカバーが収録されていること。ストーリー展開にピッタリハマった選曲とアレンジは、ぜひ作品と合わせて楽しみたい。

 ハイレゾ版を聴いた、今回紹介する楽曲は比較的オンマイクのボーカルとなっている。東山の丸みを帯びた声が情感たっぷりに感じられ、音の芯がしっかりしているから実在感も格別だ。ストリングスとバンドセクションの分離は良く、ギターやシンバルの音は粒が立って明瞭。48kHzフォーマットながら、音場の広がり感は上々でエンジニアリングの技を感じる。

 最後まで聴き通すと最終話の感動が蘇り、しばらく次の曲を聴きたくなかった。まさに音楽の力だ。

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・東山奈央/月がきれい

「リトルウィッチアカデミア」第2期オープニング主題歌「MIND CONDUCTOR」/YURiKA(96kHz/24bit)

 TRIGGERによるオリジナルTVアニメ「リトルウィッチアカデミア」の第2クールオープニングテーマだ。

MIND CONDUCTOR/YURiKA

 歌唱はアニソン界の新星シンガー・YURiKA。第1クールに続けてオープニングを担当する。作編曲は、(K)NoW_NAMEのコンポーザーとしても活躍するR・O・N。魔女学園モノという安定の題材ながら、正面から勇気・友情・夢・希望といった要素を扱い、アニメならではのコミカルな演出も魅力的だった本作。無性に「アニメっていいよね」と思えるような描写がたまらなかった。安易にアンドリューとのロマンス展開にならなかったのも良かったと思う。

 ハイレゾ版を聴いてみた。これぞアニソン! 実にアクティブな音作りだ。

 アグレッシブな演奏も相まって、まるでアリーナクラスの大空間で聴いているような音場の広さに呑まれそうになる。96kHz制作によるワイドな空間表現力を生かして構成されており、リバーブの響きも繊細に聴かせる。

 音のディテール感や演奏のキレ・スピード感、これらのステータスは良好であり、特に後半に掛けての音楽的な盛り上がりは必聴。思わず前のめりに聴き惚れてしまう、吸引力の高いナンバーだ。

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・YURiKA/MIND CONDUCTOR

「サクラクエスト」第1期オープニング主題歌「Morning Glory」/(K)NoW_NAME(96kHz/24bit)

 P.A.WORKSによるオリジナルTVアニメ「サクラクエスト」の第1クールオープニングテーマだ。

Morning Glory」/(K)NoW_NAME

 作品の音楽プロデュースは、クリエイティブ・ユニットの(K)NoW_NAMEが担当している。主題歌、劇伴含めトータルで(K)NoW_NAMEづくしのアニメだ。

 P.A.WORKSのお仕事モノといえば「花咲くいろは」「SHIROBAKO」と既に2作品発表されているが、本作も期待に違わぬ圧倒的な面白さである。特に印象的なのは、地方の町おこし事情が実に説得力を持って描かれていること。現実は厳しく町おこし企画の空振りも多い。見ているこっちがハラハラしてしまう。実際に間野山市が存在したら「ボクが行くよ! 」と押しかけるファンがどれだけいることか……想像に難くない。

 楽曲をスピーカーから流してみる。オープニング映像で主人公小春がほうきをリズミカルに掛けるシーンがあるが、まさにあの横ノリ感が味わえる。

 前向きな歌詞に合わせてか、楽曲はアレンジも含めゴージャスで、演奏にも熱が感じられる。全体的に音数は多めだが、混濁感はほとんど無い。

 ハイレゾらしいディテール重視のボーカルは情報量も多く、音圧よりも抑揚や空気感重視のリアルバンドサウンドと言えるだろう。特筆すべきは、左スピーカーから聴こえるエレキの肉厚感。この音の厚みと説得力はハイレゾだからこそ。

 音がリアルだと心から思えるのは、だいたい96kHz以上だと個人的には考えているが、アニソンであっても当たり前のように96kHzセッションが採用されることを願いたいし、本楽曲はその良例だと自信を持ってオススメできる。

【e-onkyo musicで購入】
・(K)NoW_NAME/Morning Glory


 以上、筆者の主観、ガチな思い入れが炸裂したレビューだったが、その分、作品への熱量が伝わればと思っている。

 上記で紹介した作品以外にも、4月クールの人気アニメの一つとしてブラスセクションが華やかな、「エロマンガ先生」のエンディングテーマ「adrenaline!!!」(TrySail)や、アトム ザ・ビギニングのエンディング「光のはじまり」(南條愛乃)など、紹介したい曲はまだまだある。また、Re:CREATORSのオープニング「“gravityWall”」(SawanoHiroyuki[nZk] )はCD版のみで、現時点でハイレゾがリリースされていないのが本当にもったいない。地上波放送でも作り込まれたサウンドに聴き惚れてしまったほどだ。

 こうした曲を含め、いつの日かアニソンのハイレゾ版が出るのが当たり前になることを祈らずにはいられない。

adrenaline!!!/TrySail

【e-onkyo musicで購入】
・TrySail/adrenaline!!!
・南條愛乃/サントロワ∴


 ハイレゾは“CDよりも大きな器”であって、その中身は様々なので、「ハイレゾだから全て良い曲」というわけではない。そんな中でも、ハイレゾ曲が増えることで、アーティストやシンガー、ミュージシャンやエンジニアが楽曲に込めた思いを、限りなく忠実に受け取れるようになってきたことはうれしい。

 アニソンというジャンルは、アニメの作風や世界観に合っていれば、ロックでもジャズでも何でもアリという自由な世界だ。音楽としての深みや独創性はもちろん、音の良さにもこだわっている作品が増えている中、ファンの前のめりな楽しみ方として、好きな作品の曲をハイレゾで楽しむことをおすすめしたい。


    【使用機材】
  • NAS「RockDiskNext」(アイ・オー・データ機器)
  • ユニバーサルプレーヤー(ネットワーク再生)「BDP-103DJP」(OPPO Digital Japan)
  • AVアンプ「AVR-X6300H」(デノン)
  • スピーカー「MENTOR2」(DALI)

橋爪 徹

オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。Webラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。Beagle Kick公式サイト