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伝説のVシネマ版「呪怨」が4K&5.1chで劇場復活。やはり今でも怖かった
2025年8月28日 08:00
2025年夏、平成Jホラーの名作「呪怨」(監督:清水崇)がまさかの復活を遂げ、往年のファンを喜ばせている。シリーズの原点にあたるVシネマ版2作が、なんと4K化&5.1chサラウンド化されて、8月8日から劇場上映されているのだ。題して、「呪怨〈4K:Vシネマ版〉」と「呪怨2〈4K:Vシネマ版〉」。
あのJホラー代表作がカムバック! というニュース性はもちろん、VHS作品からのアップスケーリングという面も注目ポイントなのでご紹介したい。
伝説の始まり―Vシネマ版「呪怨」とは
さて、「呪怨って映画じゃないの? Vシネマって何?」と思う方もいるかもしれないので、軽く説明しよう。
「呪怨」といえば、2003年に劇場公開された映画版第1作が有名だが、実はその3年前にVシネマとして制作されたのがスタートだった。VHSという記録媒体をよりしろに、最初の「呪怨」「呪怨2」が誕生したのは2000年のこと。このVシネマ版、リリース当初は大きなセールスを記録することもなかったという。
しかし「めちゃくちゃ怖いホラービデオがある」と、レンタルビデオ店の棚にひっそりと置かれたそれの評判が徐々に口コミで広がり、2003年に劇場映画版が制作されるまでになるのだ。
そして映画は大ヒット。本編に登場する佐伯伽椰子とその息子・俊雄くんの怨霊親子は、Jホラーの代表的アイコンとして有名になり、いくつもの続編や派生作品が制作され、ハリウッドリメイクまで果たした。
そんな「呪怨」シリーズのいわば“原点”となるVシネマ版は、ファンの間で「シリーズ中、最も怖い呪怨」として語り継がれてきたもの。それが今夏、ビデオリリースから25年の時を経て、現代の映像技術と音声技術でアップグレードされ、劇場上映されている……というわけだ。
物語のあらすじは以下の通り(いずれも公式より)。
不登校の生徒・佐伯俊雄の家庭訪問に訪れた担任の小林。俊雄の母、伽椰子は小林の大学時代の同級生であった。訪問した佐伯家には俊雄の姿しかなかったが、そこで目にした伽椰子の日記には、異常ともいえる小林への想いが綴られていた。その家の異様な空気の中、俊雄の両親を待つ小林の携帯に着信が入る…。
時は移り――かつて佐伯親子が住んでいた家には、その後村上家が暮らしていた。長女の柑菜は従妹の由紀に家庭教師をしてもらっていたが、用事を思い出した中学へ向かう。一人残された由紀は、その家でただならぬ気配を感じる…。
不動産業者の鈴木達也は、霊感のある妹・響子に買い手のつかない事故物件となった家を見てもらうが、そこは響子の想像を超えた気配に満ちた場所だった。だが何事もなかったかのように新たに北田夫妻が入居する。
響子はその家にまつわる因縁めいた逸話を集めるが、同じころ達也の息子である甥の信之にも異変が起こっていた。離婚した達也が息子とともに越した団地のその部屋は、かつて小学校の教師、小林が妊娠中の妻と共に暮らしていた部屋だった…。
※なお、「呪怨2〈4K:Vシネマ版〉」には第1作の後半が重複して収録されており、VHS時代の構成意図がそのまま残されている。
清水崇監督による完全監修。映像と音のアップグレード
今回の「呪怨〈4K:Vシネマ版〉」と「呪怨2〈4K:Vシネマ版〉」の大きなポイントは、清水崇監督自らが完全監修を行い、映像と音声がともに現代の技術でブーストされたことだ。
まず映像は、当時ベータカムで撮影されたVHS版のビデオマスターを、おなじみソニーPCLの「RS+」技術で4Kマスターへアップスケーリング。オリジナル素材はブラウン管モニターでの鑑賞を意図して制作されていたわけだが、それが現代のスクリーン鑑賞に適する状態にアップグレードされた(※上映には4KのDCPが使用されているが、上映環境によって2Kコンバート上映となる)。
なお「こういうホラーって、画質が粗い方が怖いんじゃないの?」という声もあるだろう。しかし実際に観てみると、ベースにはVHS時代のザラついたディティールが残りつつ、現代の感覚で自然に視聴できる&恐怖も深まる状態にアップスケーリングされたイメージだ。
2作とも変にキレイすぎて作品性が変わってる……みたいなことは全くない。もちろんアスペクト比も4:3のままだし、“VHS感”は良い具合にあるのでご安心(?)を。その上で、映画館のスクリーンや自宅の4Kテレビで観ることを想定した場合に、今どきのフィーリングで鑑賞しやすいくらいに精細化されていると感じた。
あと、実は映像以上に効果が大きいと感じたのが、音声のリマスタリング。VHS時代のステレオ音源が5.1chサラウンドへ進化し、音響の演出効果が最大化されている。
個人的には第1作の前半・家庭教師「由紀」の章で、伽椰子の「ア゛ア゛ア゛」という声だけが微かにリアから聴こえてきたのは、素敵な恐怖体験だった(実際、このシーンで後ろを振り返っている観客もいたくらい)。改めて、ホラー映画は音響が大きくモノを言うのだな……と実感した次第だ。
間違いなく「呪怨」の原点にして頂点。ぜひ劇場で
最後に。そもそもVシネマ版の「呪怨」2作は、今観ても抜群に面白いホラーだ。Vシネマゆえに許された自由度の高さもあり、その後の「呪怨」シリーズ作品群とは異なる根源的な禍々しさは大きな見どころ。
当時、予算も撮影期間も限られた中で、清水監督が若き情熱をぶつけた約70分×2本の恐怖と暴力。それが、映像と音声のアップスケーリング効果で濃密に味わえることに歓喜しかない。ぜひみなさんも、劇場の暗闇の中で呪われてほしい。