西田宗千佳のRandomTracking

第484回

PS5実機レポート! 静粛性・超高速読み込みによる“快適ゲーム体験”の正体

PlayStation 5。ディスクドライブ付きモデルの製品版だ

PlayStation 5実機のレビューをお届けする。

初回販売は完全にオンラインだけになり、その出荷数も需要を満たすには程遠い状況であるようで、「欲しいのに手に入らない」という方も多いことと思う。

一日でも早く需要が満たされ、そういった方々の手に製品が届くことを願っている。なぜなら、数日間のテストプレイを経た感想は、「確かにこれは、手に入れるだけの価値がある快適なゲーム機だ」の一言に尽きるからだ。

では、それはどういうことなのか?

操作感から設計思想を読み解き、解説してみたい。

なお、11月6日の段階では、発売前であることもあってか、ネットワークサービスなどの一部が動作しておらず、評価できる状況にない。そのため、PlayStation Storeなど一部の機能については言及することができない。そこには、映像配信の視聴アプリなどを扱う「メディア」タブの内容の詳細も含まれる。

また、今回の試用に合わせて、PS5専用タイトルとして、本体にバンドルされる「ASTRO’s PLAYROOM」、本体同時発売の「スパイダーマン:マイルズ・モラレス」も提供されている。さらに、比較用として、筆者私物のPlayStation 4 Proとその対応タイトルも使ってテストをしている。

以上をご留意の上、お読みいただきたい。

負荷が増えても音が変わらない静粛性を実現

前回、「PS5開封の儀」で外観をご紹介した。その時の写真でお分かりのように、PS5は比較的大柄なゲーム機だ。とはいえ、実際に使い始めるとそこまで気にならなくなる。今回の試用ではディスクドライブ搭載モデルを使っているが、ゲームについては全てネットワークからの供給を利用しており、ディスク入れ替えなどのために本体を触ることがほとんどなかったからかもしれない。

PS5の上面にあるスリット。エアフロー重視であることがよくわかる

そして、存在感の薄さにとってなにより重要なのは、「動作音が小さい」ことだろう。以前のハンズオン記事でも解説したように、PS5の動作音は、PS4やPS4 Proに比べてかなり小さい。正確にいえば、「電源を入れてもゲームを遊んでも、動作音が小さなままほとんど変化しない」ように感じるのだ。

スマートフォンの簡易的な騒音計では、本体から50cm離れた場所での計測した場合、室温(22度程度)でのゲームプレイ中のPS5の動作音は「平均35dB」程度。計測場所での周辺ノイズが平均33dBなので、ファンの音はほとんど感じない、といってもいい。

自宅のPS4 Proで同じテストをすると、メニュー動作時は「平均38dB」程度で大差ないが、負荷の高いゲームを少し長くやるととたんに音が大きくなり、50dBを超える。かなり耳障りだ。

もちろん、PS5のファンが回っていないわけではない。PS5に耳を近づけると何かが回っている音はするし、本体に触れると若干の振動を感じる。だが、本体から離れてしまえばもう感じられないし、テレビなどからゲームプレイの音が聞こえていればなおさらだ。

待望のUHD BD対応

テレビとの接続はHDMIで行なう。付属のケーブルにはロゴなどはないが、どうやら品質的にはHDMI 2.1相当である模様だ。今回手元でも、少なくとも、4K/60Hz+HDRの伝送速度18Gbps(HDMI 2.0)環境で問題なく利用できることを確認している。

HDRの効きや画面表示の調整などは、初回の起動時に行なう。もちろん後から設定で変更もできるが。この辺りは、PS4のものを多少わかりやすくした感じ……と思っていただいていい。

表示エリアやHDRの効きの調整もある

PS5はPS4同様、1,920×1,080ドットの「ハイビジョン」テレビでももちろん問題なく使えるし、4Kでなかったとしても、レイトレーシング対応を含めた描写能力の向上により、PS4よりも美しい画面が楽しめる。だが、やはり本質的には「4K+HDR」世代のゲーム機であり、4K+HDRなテレビと合わせて使うのがベストな存在だと感じる。

ただ残念ながら、現状、テレビ以外、PCモニターの利用は強く想定されていない。最近、ゲーム用に2,560×1,440ドット(1440p)を採用したモニターが増えているが、PS5は現状、1440pに対応していない。ライバルであるマイクロソフトの「Xbox Series S」「Series X」は1440p対応を明言しており、両者の姿勢の違いがここに現れている。

特にディスクドライブ搭載版の場合、AV的には「UHD BD」に対応したことが大きい。PS4 Proでは搭載しなかったが、PS5ではようやく(と言っていいだろう)搭載した。UHD BDプレーヤーの機能は基本的なものだが、表示映像のステータスも見れるなど、PS3以降のディスクプレーヤーでお馴染みのUIも健在だ。

ようやくPlayStationがUHD BDの再生に対応!
UHD BDプレーヤーの操作方法
操作そのものはPS4でのBDプレーヤーに近い
どのフォーマットのコンテンツが再生されているかも確認できる

なお、UHD BDプレイヤーは1本のゲームアプリという扱いではなく、映像配信などと同じく「メディア」タブ内の1機能、という扱いになっている。

3Dサウンドは「コントローラにヘッドフォンをつないで」利用

サウンドについては、HDMI接続の場合、テレビやサウンドバー、AVアンプなどを選んで出力できる。

サウンドの出力先は選択可能

ただし、PS5の「本命機能」の一つである「ゲームでの3Dオーディオ」は、これらでは完全に楽しむことはできない。

現状で推奨されているのは、コントローラーにヘッドフォンを接続することだ。サラウンド対応ヘッドフォンなどの特別なものである必要はなく、ごく普通の、3.5mmコネクターのあるヘッドフォンでいい。

3Dオーディオを使う場合には、まずコントローラーにヘッドフォンをつなぐ

ヘッドフォンをつなぐと、本体のサウンド関連設定項目の中に「3Dオーディオを有効にする」が現れ、立体感の調整が行なえるようになる。SIEは以前より「3Dオーディオの対象は拡充する」とコメントしているが、初手が「普通のヘッドフォン」だったことを考えると、3Dオーディオのために特別なハードウエアを別途用意する方向性を推しているわけではなさそうだ。

コントローラーにヘッドフォンをつなぐと3Dオーディオが有効になり、効き具合などの簡単なチューニングも行なえる

なお、PS4もBluetoothヘッドフォンには未対応だったが、その点はPS5も変わらない。高音質伝送とボイスチャットの両方の用途があり、HSP(ハンドセットプロファイル)とA2DP(オーディオプロファイル)の切り替え・同居問題が発生するからだろう。

Bluetoothヘッドホンは利用できない

ネットワーク設定は「アプリ連携」重視

ここからもう少し、ゲームとオンライン機能の方に入っていく。

ある意味当然のことだが、PS5は「ネットワークに接続されている」ことを前提としたゲーム機だ。もちろん接続がない状態でもゲームを遊ぶことはできるが、それでは機能の全てを生かすことができない。PlayStation Network(PSN)のアカウントを用意し、ログインして使う。

PSNアカウントのセットアップ。ソフトウエアキーボードも使えるが、アプリからの連携設定も可能

PS5のセットアップではもちろん、PSNのアカウントを入力する場面がある。ソフトウエアキーボードから入力していくのが基本ではあるが、事前にスマホアプリ「PlayStation App」をインストールしておき、こちらでPSNにログインしていれば、QRコードを使い、スマホアプリと連携してPS5にアカウントを設定することができる。スマホの方が文字入力が楽であり、そちらを使った方が早い、という人向けだろう。

また、「PlayStation App」はPS4と共用なので、PS4ユーザーがPS5へと移行するとき、より簡単になるように……という配慮でもあるだろう。

「PlayStation App」は先日リニューアルしたところだが、音声を含むチャットやゲームの購入、SIEのニュースなどがチェックできる。PS5とは密接に連携しており、例えば、購入したゲームのダウンロードをアプリで操作しPS5の側でスタート、ダウンロードが終わるとスマホに通知がくる……といったことも可能になっている。

スマホ用のPlayStationアプリ
PS5へアプリのダウンロードが終わると通知を出すこともできる

操作の起点は「コントロールセンター」

さて、お待たせました。

PS5のメニューなどを紹介していこう。以下に、操作全体を短い動画にまとめたものも掲載したので、そちらも併せてご覧いただきたい。

PS5のUIをウォークスルー。スッキリシンプルな印象になった。UIの要は、新しく登場した「コントロールセンター」だ

PS5のメインメニューは、ゲームアプリが並ぶシンプルなものだ。これとは別に、動画配信やディスクプレーヤーがある「メディア」タブがあるが、こちらは今回は画像を公開できない。

PS5のメインメニュー。ゲームが横に並ぶシンプルな構造

デザインこそ変わったものの、上に設定アイコンがあり、左右に移動してゲームを選ぶ……という形式はPS4と大差なく、複雑なものでもないので、誰でもすぐに使えるだろう。

違うのは「コントロールセンター」という要素が搭載されたことだ。

PS5のUIの要である「コントロールセンター」。PSボタンを1度、短く押すと画面最下部に現れる

コントロールセンターは、コントローラーの「PSボタン」を1回短く押した時に表示される呼ばれるコンパクトなメニューだ。通知の確認やフレンドの正体など、よく使う機能がすぐに呼び出せる。

コントロールセンターからは、通知の確認やSpotifyと連携した音楽再生、電源を切る処理など、ひんぱんに行なう操作がすぐに呼び出せる

重要なのは、「ゲームを一切止めない」「画面もあまり隠さない」ということだ。

PS4も後期になってメニューが変わり、左から「クイックメニュー」が出るようになって、そこで様々な設定切り替えや電源オフなどを行なっていたが、コントロールセンターはクイックメニューに近い機能でありながら、より画面を占有せず、挙動が素早く、直感的に使える。

全体的な印象としては、PS4時代に比べてさらにOS側の機能がシンプルになり、そこに小さなコンポーネントを都度読み込むことで、ゲームなどの動作を止めることなく、その場に応じた機能が呼び出せるようになっている……と感じる。

なお、今回から決定ボタンは「×」、キャンセルボタンは「◯」へと標準設定が変わる。海外ではこちらが一般的であり、日本とは逆だったために入れ替えたようだ。

設定変更は用意されていないものの、「アクセシビリティ」機能から、ボタンそのものの割り当てを、○と×で位置を入れ替えることで、従来通りの操作にもなる。しかし、こうするとゲーム全てで○と×の操作が入れ替わることになるので、あまりお勧めしない。

アクセシビリティからボタンの割り当ては変えられるが、あくまで「ボタンの完全入れ替え」なのでご注意を

筆者はPCなどでもゲームをするので、「×決定」にもすぐ慣れた。最初は戸惑うだろうが、意外と慣れてしまえるものではないか、と思っている。

ゲームの読み込みが最短数秒に! SSD最適化の効果は劇的

さて、肝心のゲーム体験はどうだろう?

まずは「スパイダーマン:マイルズ・モラレス」を中心に説明していこう。

今回「スパイダーマン:マイルズ・モラレス」を採用したのは、それが提供されたからだけではない。同ソフトが、2018年9月発売のPS4向けソフト「Marvel's Spider-Man」とほぼ同じ構造を持つ続編であり、実質的に「PS5最適化を施したリメイク」という側面があるからだ。全く同じタイトルで比較するのが理想ではあるが、「PS4版とPS5版のゲーム体験の違い」を解説するには最適なタイトルだと思う。

(C) 2020 MARVEL (C) Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Insomniac Games, Inc.
PS5専用タイトル「スパイダーマン:マイルズ・モラレス」。PS5と同時発売で、PS5に最適化された作りになっている
(C) 2020 MARVEL (C) Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Insomniac Games, Inc.

プレイを開始すると驚くことがある。

もちろん画質も向上しているし、DualSenseコントローラーでの微細な振動演出、3D音響などの魅力も大きい。だがそれ以上に驚くのは、ロードがとにかく速いことだ。

百聞は一見に如かずということで、以下の動画をご覧いただきたい。

PS4 ProとPS5のゲームロード時間を比較。PS5でのロードとPS4 Proの差が驚くほどあることに注目
(C) 2020 MARVEL (C) Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Insomniac Games, Inc.

これは、PS4 Pro実機(ハードディスク搭載、左上)とPS5のPS4互換モード(右上)で「Marvel's Spider-Man」を、PS5で「スパイダーマン:マイルズ・モラレス」をプレイする際、ゲームが始まるまでの様子を撮影したものだ。動画は1080p・SDRでキャプチャされ、見やすくするために並べて編集しているが、それぞれ、ゲームが始まるまでの間に、一切カットなどの「時間操作」は入れていない。

ハードディスクを使ったPS4 ProとPS5では、はっきり言って比較になっていない。まさに劇的な速度差だ。

PS5での動作には、ちょっとした秘密がある。

ゲームは1つのアプリケーションだ。やり直す時には「起動」する必要がある。最近は「中断」機能がついたため、こちらを使えば最初から起動する必要は減っている。

だが、PS5を見ると、ゲームの「起動」の形がいくつかあるのがわかる。

まず「初回起動」。PS5の電源を完全に切り、いわゆるコールド・ブート後にゲームを起動する際や、そもそもそのゲームの起動が初めてである時。この場合にはロゴなども表示され、ロードが少し長くなる。前出の動画の場合、これでゲームがプレイ可能になるまでの時間は「約40秒」だった。

次に普通の「起動」。一般的にゲームを起動する際の扱いは、おそらくこちらになる。前出の動画の場合、この時には、ロゴ表示などが全てスキップされ、よりロードが短くなった。これで「約18秒」である。

そして次が「再開」。前回の続きなど、特定部分へ直接ジャンプして起動する場合だ。前出の動画で最後に紹介した部分。こちらだとタイトル画面やセーブデータ選択すらスキップされ、「5、6秒」でゲームが開始される。

ゲームをメインメニューやコントロールセンターから「再開」できる。ゲームのオープニングなどを飛ばし、まさにそのシーンへと一気にジャンプする
(C) 2020 MARVEL (C) Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Insomniac Games, Inc.

重要なのはどれもいわゆる「中断」ではなく、ちゃんとゲームを「起動」している、ということだ。しかも、タイトル表示以降、ゲームが実際にプレイ可能になるまでの時間が、PS4版に比べ圧倒的に短く、本当に数秒以内である点に注目していただきたい。

PS5ではSSDを採用し、その高速読み込みを活かしている。とはいえ、SSDを使うだけではハードディスクに比べ、劇的に速度が上がるわけでもない。事実、PS4版をPS5上で「互換モード」で動作させた場合には、確かにPS4 Proのハードディスクで動作させた時よりも高速になるが、時間短縮の割合は40%弱でしかない。

ちなみに、PS4版のゲームは、PS5に「外付けストレージ」をつけ、そこから起動することもできる。動画には入れていないが、ポータブルSSD(BUFFALOのSSD-PG480U3。転送速度は320MB/s)を外付けにし、そこから「Marvel's Spider-Man」を起動した場合でも、起動速度はPS5の内蔵SSDからの場合とほぼ変わらなかった。

すなわち、PS5の読み込み速度の秘密は、やはり「PS5向けに最適化する」「PS5が規定する読み込み方法を考慮する」ことで実現されているのだ。これこそが、新しいプラットフォームになった効果そのものだ。

ただ、内蔵SSDは、ユーザーがゲームのインストールなどに使える容量が667GBしかない。そのため、大容量化した今のゲームをインストールするとすぐにいっぱいになる。

前出のように、PS4向けタイトルは外付けのSSDでも読み込み速度はそこまで変わらないので、別途用意し、そちらにインストールするようにした方がいいだろう。ちょっと出費が痛い。

コントロールセンター連携でゲームの遊び方が変わる

さて、読み込みの速さにはどういう意味があるのだろう?

起動が速いことは快適さにつながる。だが、単に「ゲームを始めるまでの待ち時間が短くなる」だけの話ではない。ゲーム最中のロードももちろん短くなる。

だが、PS5に本当に最適化されたゲームを考えると、読み込みの速さはゲームプレイの価値を変えていく……ということにも気付かされる。

「ASTRO’s PLAYROOM」をプレイすると、それが非常によくわかる。

PS5にバンドルされる「ASTRO’s PLAYROOM」。コントローラーから3Dオーディオ、高速読み込みまで、まさにPS5のショーケースのような作りのゲームになっている

以前のハンズオン記事では、ASTRO’s PLAYROOMが、振動やアダプティブトリガーなどの「没入要素」のショーケースになっていることを解説した。だが、完成版で遊んでみると、もっと「PS5ならでは」の部分が多数あることがわかる。

それが、コントロールセンターとの連携だ。

以下の画像は、プレイ中にコントロールセンターを呼び出したものだ。各シーンの「クリア度」が数字で示されているのがお分かりいただけるだろうか。

「ASTRO’s PLAYROOM」をプレイ中にコントロールセンターを呼び出した画面。各面の進行状況がパーセンテージで表されている

しかも各項目に入ると、そこには「何をすべきか」のリストが並んでいる。「+」のマークは、有料サービスであるPlayStation Plus加入者向けのサービス。その要素に関する「解説ビデオ」が流れるようになっているのだ。ただし、現時点では「PlayStation Plusに関わる要素はレビュー対象外」というルールになっているので、どういう動画が流れるかはお見せすることができない。

PlayStation Plus加入者は、各シーンのヒント動画を見られるようになっている。

各シーンは、□ボタンを押すことで「再開」できる。先ほど説明したように、タイトル画面などをすっ飛ばしてそのシーンへと高速移動できるのだ。

同様に、ゲーム中にあるタイムアタックなどの「チャレンジ要素」にもジャンプできる。

「スパイダーマン:マイルズ・モラレス」のカード。チャレンジ要素が独立して表示されていて、選ぶといきなりそのチャレンジをプレイできる
(C) 2020 MARVEL (C) Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Insomniac Games, Inc.

このように、コントロールセンターを介し、ゲーム内をガンガン移動するのがPS5のスタイルでもある。ここで読み込みに時間がかかって待たされるようでは興醒めだ。高速読み込みがあるからこそ、こういう構造でもゲームプレイがだれることなく続くのだ。

さらにこの要素は、ネットワークで友達と遊ぶ時にも活用される。

例えば、自分が遊んでいるゲームとは違うタイトルに「呼ばれた」場合を考えてみよう。ゲームを切り替え、一緒に遊ぶゲームを呼び出すのは、PS4までと同じである。

だが、読み込みはPS4より速くなるので、切り替えはもっと快適になる。一緒に遊び終わったあと、自分だけのプレイに戻る時も待ち時間は短くていい。先ほど説明したように「再開」機能などを使ってゲームの特定部分にジャンプできるので、「ゲームのあるルールでの対戦だけを一発で呼び出してすぐプレイ」ということもできるのだ。

Epic Gamesのアナウンスによれば、実は「Fortnite」のPS5版はそういう構造になっているらしい。

先日、SIEは「PS5のUX体験」を解説するビデオを公開している。この中で示されていたのは、こうしたプレイのあり方だ。実機での動作を理解した上でビデオを見ると、また新しい発見があるのではないだろうか。

SIEが公開しているPS5のUX体験解説動画

逆にいえば、読み込みの高速化にしろコントロールセンターの使いこなしにしろ、「ゲームメーカー側がPS5向けに特化して開発」する必要があるのが難点だ。今回試遊したSIEのタイトルならもちろんそうするだろうが、他のゲームメーカーはどこまでやってくれるだろうか? そこで「最適化したい」「最適化することがビジネス上メリットである」といかに理解させるかが、PS5の真価を発揮する上で重要な点であり、最大のウィークポイントであることも見えてくる。

一部「ダウンロードできない」タイトルがあるが、PS4互換はかなりのレベル

最後に、PS4の互換状況などについて触れておこう。

PS4向けにダウンロードで購入したタイトルは、PS5と共にリストになって表示される。自分で選んでPS5にダウンロードすれば、そのままプレイ可能だ。現状、動作は特に問題を感じなかった。大幅にPS4より快適になった……とは思わなかったが、読み込みも(ハードディスクモデルと比較すれば)高速になったし、動作も安定している。

PS5のものもPS4向けのタイトルも、PSNで購入したタイトルは全てそのままリストアップされる。
グレーアウトしているタイトルは、現状ダウンロードできない。理由は明確ではない。今後変化がある可能性も高い

ただ、全てのゲームがPS5でプレイできるわけでもないようだ。中にはグレーアウトしてダウンロードできないタイトルもあった。これはおそらく、ゲームメーカー側がまだPS5でのプレイを許可していないタイトルなのだろう。それが権利など許諾上の問題なのか、それとも互換モードでの動作保証の問題なのかはわからない。とにかく現状、1割くらい動かないソフトもあった、とだけコメントできる。

ただ、発売直前の動作状況と考えれば満足すべきレベルだろう。今後対応ゲームはさらに増えていくと考えられるし、中にはPS5向けに最適化パッチの提供を予定しているものもある。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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