西田宗千佳の
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RC版から見るWindows7のAV系機能

~設定が容易でトランスコーダも優秀。DTCP-IPは「見送り」~


Windows 7 RC版

 5月7日、マイクロソフトが「Windows 7」のRC(製品候補)版を公開した。今回は、RC版をベースに、Windows 7のAV機能をチェックした。今回初めて公開された新機能に加え、すでに報じた部分も含め、色々と興味深い事実が判明している。

 今回は特に、DLNAを中心とした「メディアストリーミング」について、実証した結果を交え、紹介したい。


 


■ 設定を「大幅に簡素化」して幅広い利用を後押し

 1月30日付けの本連載で触れたように、Windows 7では、数多くの標準技術をサポートする方向でAV機能の強化が行なわれている。AVCHDやHDVなどのビデオカメラ用動画やMPEG-AVC/H.264、AACといったコーデックのサポートが追加され、「家電・ITの世界で標準的に使われるビデオ/オーディオコーデック」は、ほぼすべてが網羅された、といって良い状態になった。追加が必要なのは、OGG VorbisやMKVといった、ネットコミュニティを中心に使われるコーデックやファイル形式などだ。

Engineering Windows 7」にて公開された、Windows 7で追加サポートされる再生用コーデックのリスト(画像は同ブログより引用)。業界標準的なコーデックは、ほぼサポートされた

 5月12日付けで公開された、米マイクロソフト運営によるWindows 7の技術面に関する情報公開のための公式ブログ「Engineering Windows 7」では、次のような見出しが使われている。

「Not Just for the Techie」(技術マニアのためだけのものじゃない)

 こういった方針を採った理由は、マイクロソフトが「デジタル家電やPCの周辺機器を入手した人が、できるだけ戸惑わず使えるようにしたい」という意識を持っているためだろう。

 またそもそも、Windows 7は、家庭内LANによるファイル共有を簡便化する、という役割もある。それが「ホームグループ」という機能だ。

 ホームグループは、正確にいうと「家庭内LAN構築技術」ではない。家庭内LANを利用する仕組みそのものは、特にこれまでのWindowsから変更されているわけではないからだ。

 違うのは設定方法である。

 これまでのWindowsでは、LANでファイル共有などをする際、細々とした設定をそれぞれのパソコンで行なう必要があった。わかってしまえばどうということのないものではあるが、設定する項目もそこそこ多く、普通の人には難解である。

ホームグループのパスワードは、1つのLANに1つ。このパスワードを入力することで共有設定が終了するようになっており、作業の簡便化とセキュリティの強化に一役買ってる

 そこでWindows 7では、できる限り追加設定が必要にならないよう、初期設定を見直した上で、LAN構築時に相互接続時の「共有設定」などを簡単にするための「1つの家庭内LANに1つ指定される、一意なパスワード」を入力することで、自動的にそれらの設定を代替する形となった。ホームグループとは、これらの「設定機能」を中心とした、「家庭内LAN構築簡便化システム」のことなのである。

 1台目のWindows 7マシンをセットアップする際には、ホームグループ設定用のパスワードが決定される。その後、家庭内LANにパソコンを追加する場合には、無線なり有線なりで接続した上で、ホームグループ用パスワードを入力するだけで、おおむね設定が終了するようになっている。ここで共有されたPCも、エクスプローラ内の「ホームグループ」内に表示される。このあたりも、以前に比べシンプルになった。また、ホームグループのパスワードを設定しない場合、および、ネットワークの接続種別が「ホームネットワーク」以外の場合、標準の設定では、ファイルやプリンターが共有されないようになっている。この点は、セキュリティ向上のための改善点といえる。

 


■ DLNAは「メディアストリーミング」と呼称。「ライブラリ」活用でシンプルに

 Windows 7のネットワークAV機能は、ホームグループを中核に構築されている。中でも、大幅な機能強化が図られているのが「メディアストリーミング」に関する機能である。

 メディアストリーミングという単語は、今回のWindows 7 RC版よりフォーカスが当たったものである。要は、DLNAなどのように、「他の機器にあるファイルを、LANを含むネットワーク内でストリーム転送して再生する機能」の総称である。これまでは「共有(Sharing)」と表記されてきたが、それではファイルの共有とDLNAなどの違いがわかりづらい、ということもあり、「メディアストリーミング」という表記に変更されたようだ。

メディアストリーミングの設定は、コントロールパネルやWindows Media Player内の「ホームグループ」設定から行なう。共有開始の設定は、チェックマークを1つ入れるだけ。あとは、OS起動時から、、自動的にサーバーとして動き続ける

 だが、メディアストリーミングは、まさに「DLNA」そのものである。DLNA 1.5に準拠した上で、さらにいくつか追加要素を追加したものとなっている。マイクロソフトは、Windows XP後期に「Windows Media Connect」として、Windows Vista時代には「Windows Media Player」の一機能として、DLNAのベース技術であるUniversal Plug and Playを基本としたメディアファイル共有機能を提供してきたが、DLNAに完全準拠していなかったことと、設定が複雑で利用しづらかったことなどから、あまり活用されてこなかった。だが今回は、DLNA 1.5に改めて準拠し、ホームグループと統合して設定をわかりやすくすることで、「OSの基本機能」に格上げされている。

 基本的にメディアストリーミングは、同じ「ホームグループ」に属した機器同士で利用可能なものだ。そのため、設定も「ホームグループ」内に存在する。ホームグループを設定する際に、「デバイスとメディアの共有」をオンにすることで、メディアストリーミングが自動的に開始される。DLNAに準拠しているので、マイクロソフト以外の機器、例えばPLAYSTATION 3などからも、「DLNAサーバー」として問題なくアクセスすることができる。

 Windows 7には、DLNAサーバー(正確にはDigital Media Server/DMS)としての機能だけでなく、DLNAクライアント(Digital Media Player/DMPもしくはDigital Media Renderer/DMR)としての機能も備わっている。クライアントとしては、Windows Media Playerを使うことになっており、ローカルにあるライブラリの下に、「その他のライブラリ」として、同じ家庭内LAN(ホームグループ)内にあるDLNAサーバーが表示される。後は各サーバーのアイコンをクリックしていけば、その中にあるデータが再生可能になる、という仕組みである。


PS3から、Windows 7の「メディアストリーミング」にアクセス。表示されるアイコン自身はVista時代と変わらないようだが、機能は大幅に向上しているWindows 7内蔵のWindows Media Playerから、他のDLNAサーバーにアクセスした画面。ウインドウ左下にあるDLNAサーバーリストの中に、DLNAサーバー機能を持つソニーのBDレコーダ「BDZ-X95」が見えるところに注目

 共有するデータの保管先は、「ピクチャ」や「ミュージック」、「ビデオ」といった「ライブラリ」内である。この「ライブラリ」という考え方は、Windows 7ではじめて導入されたものである。

 これまで、OS内でのファイル管理は「フォルダー」が基本だった。「マイドキュメント」にしろ「マイピクチャ」(Vistaでの名称は「ドキュメント」「ピクチャ」)にしろ、「OS内で決められた標準的なファイル保管場所」を示すものであり、特定のフォルダーに対するリンクのような役割をしていた。

 だがWindows 7の「ライブラリ」は、考え方が変わった。7の「ドキュメント」や「ピクチャ」はどこか1つのフォルダーを指すのではなく、「ドキュメントに分類されるファイルを集めたフォルダーを登録したライブラリ」として扱われるのだ。

 例えばピクチャの場合、標準で登録されているのは「マイピクチャ」と「パブリックのピクチャ」(PC内のアカウントすべてで共有されるフォルダー)の2カ所。その中にあるファイルが、1カ所からまとめて見られるようになっているのである。他に画像が入っているフォルダーがあれば、そのフォルダーを開いた上で「ライブラリに追加」していくことになる。

 このような形式を採る理由は、複数のフォルダーを管理する労苦を軽減したい、というものなのだろう。またメディアストリーミングやファイル共有を行なう、という観点でいえば、「どこにあるどんなファイルが共有されるのか」という情報をシンプル化し、設定を簡単にする、という効果がある。他方で、設定は簡単になるものの、表示形式が変わったことは、すでにXPやVistaに慣れた人々にとって、利用開始時に違和感を感じさせる原因となる可能性もある。まあ、ライブラリにフォルダーを追加しなければ従来の「マイドキュメント」「マイピクチャ」と、操作方法は大差ないのではあるが。

Windows 7での「ピクチャ」ライブラリの例。よく見ると「対象フォルダーが2つであること」が明示されている。左のツリー部には、「ピクチャ」内に登録されたフォルダーが一覧表示されているライブラリにフォルダーを追加するには、そのフォルダーを開いて「ライブラリに追加」をクリックする。デフォルトでは「ドキュメント」「ピクチャ」「ビデオ」「ミュージック」が登録されているが、別途追加も可能。ただし、メディアストリーミングで共有されるのは「ピクチャ」「ビデオ」「ミュージック」のみだ

 さて、話をメディアストリーミングに戻そう。すでに述べたように、メディアストリーミングで共有されるのは、各「ライブラリ」に登録されているフォルダーである。なので、メディアストリーミングの対象となるファイルを増やすには、各ライブラリにファイルをコピーするか、それらのファイルの入ったフォルダー自身を、ライブラリに「追加登録」していくことになる。

 このライブラリは、OS上でのファイル管理の単位として使われる他、Windows Media Playerのライブラリそのものとしても使われる。正確に言えば、Windows Media Playerが、Windows 7のライブラリ機能を参照しているわけだ。なので、OS規定の「ライブラリ」内のファイル整理=Media Playerのライブラリの整理となる。

 詳しくは後述するが、メディアストリーミングに備わるいくつかの機能を活用するには、やはりOS側でなく、Windows Media Player側での設定が必要になる。しかし「簡単にファイルを共有し、必要な映像をワンクリックで見たい」というニーズを満たすだけならば、設定は大幅に軽減され、使いやすくなったといっていい。

 

■ 「全自動」トランスコーダー搭載! 多くの機器でDLNAの再生互換性が向上

 ただし、DLNAにはさらなる難しさがある。

 それは「DLNA準拠であっても、サーバーとクライアントの組み合わせによって、再生できない場合が多い」という点だ。PC上ではファイルが再生できるものの、クライアントの側でそのファイルコンテナやコーデックの再生がサポートされていないと、クライアント側では表示ができない。

 では、Windows 7ではどうか?

Windows 7のDLNAサーバーに対し、MPEG-2しか再生できないREGZA Z3500でアクセスした結果。トランスコードを伴うため、再生開始までには数秒から十数秒かかる上に、圧縮ノイズが目立つ場合もあるが、とにかく「どれも見られる」ようになったのは大きな進歩だ

 結論からいえばかなり優秀だ。写真は、東芝の液晶テレビ「REGZA Z3500」で、Windows 7のDLNA(メディアストリーミング)サーバーにアクセスした時の画面だ。REGZA Z3500のDLNA機能は非常に基本的なもので、再生可能な動画用コーデックはMPEG-2のみである。しかし、写真に写っているファイルは、すべてMPEG-2では「ない」。AVCHDにVGAサイズのMPEG-4 AVC、WMV、DivXといった、レグザでは対応していないファイルばかりである。

 再生が可能になっている理由は、Windows 7のDLNAサーバー(DMS)に「トランスコーディング」機能が搭載されているためである。映像はMPEG-2にトランスコードされ、REGZA側で再生されることになる。トランスコーダは、DLNA 1.5準拠のDMSには必須とされており、Windows 7もその関係から搭載が行なわれた、ということになる。

 トランスコーダ搭載のDLNAサーバーは、決して珍しいものではない。フリーウエアから市販まで、いくつかの選択肢が存在する。しかしそれらと比較しても、Windows 7のトランスコーダは、決して劣るものではない。むしろ「きちんと動いて簡単に使える」という点では、これまでにないほど「快適」なものといえる。

 理由は「設定項目がない」ためだ。多くのトランスコーダ搭載DLNAサーバーには、「どのフォーマットに対し、どのコーデックでトランスコードを行なうか」といった設定項目が用意されている。そのため柔軟な設定が可能だが、逆にいえば「きちんと設定できなければ正しくトランスコードできない」のである。

 だが、Windows 7にはその設定がない。なぜなら、「Windows Media Playerで再生できるものは、自動的にトランスコードされる」ようになっているからだ。

 Windows 7のトランスコーダは、他のものと違い、「クライアント側でサポートされているコーデックやネットワークの接続速度、サーバーの動作速度を自動判別し、最適なトランスコードを行なう」機能を持っている。だからこそ、設定項目がなくても、かなりきちんとトランスコードしてくれるし、お互いが同じコーデックをサポートしており、しかも十分に回線速度もある場合などは、逆に「トランスコードしない」で送ってくれるのである。

「メディアストリーミング」時のCPU負荷

 右図は、REGZAとWindows 7の組み合わせで、いくつかのファイルを「メディアストリーミング」した際のCPU負荷である。

 左の大きな山が1,920×1,080ドットのAVCHD映像をレグザへ転送したところ、中央の谷が有線LANで、他のWindows 7動作機に対し、VGA解像度のMPEG-4 AVCの映像を転送したところ、右側が、同じAVCのファイルをレグザへ転送した場合の負荷である。フルHDのAVCをMPEG-2にトランスコードする際にはほぼCPUを使い切っており、SDのAVCをトランスコードする際には、負荷がやはり低くなっている。それに対し、元々AVCの再生をサポートしているクライアントで再生を行う時は、トランスコードが自動的に止まるため、中央部はほとんどCPU負荷がなくなっているわけである。

 Windows 7のトランスコーダは、CPU性能を見ながら解像度や負荷を変化させる。当然CPU性能が高いほど、解像度やビットレートは高くなるが、逆に性能が低いと、トランスコードは行なわれない。試しに、CPUにAtom N270を使っているネットブックにWindows 7を入れ、それをサーバーにして転送を行なってみたが、トランスコードは行なわれなかった。

 残念ながら、Windows 7のトランスコーダも完璧ではない。今回のテストでは、1,920×1,080ドットのAVCHDをトランスコードした場合、コマ落ちがかなり激しく発生した。テストに用意できた機材の機材がCore 2 Duo E6550(2.33GHz)やTurion X2 TL-60(2.0GHz)といった、最高速とは言えないレベルのCPUを利用しているためと考えられる。ビットレートの設定ができれば、「とりあえず見れるレベルまでビットレートと解像度を落としておく」という形も取れるが、「全自動」のWindows 7ではそうもいかない。

 また、PS3においては、WMVにおいてトランスコードが行なわれず、結果的に再生できない場合も見受けられた。これは、DLNAが「ファイルの拡張子」や「ファイルにタグ付けされたファイル形式」などを元にトランスコードするか否かを決定するためだろう。PS3はWMV9にのみ対応しており、すべてのWMVが再生できるわけではない。しかしWindows 7のトランスコーダーは、ファイルタイプの情報から「すべてのWMVはトランスコードなしで送信する」と判断し、PS3が非対応のWMV8などについてもトランスコードせずに転送した結果、再生ができなかった……ということなのではないだろうか。これもまた、Windows 7が「全自動」でなければ、解決可能である。

 このようなことは、PS3に限らず、他のDLNAクライアントでも起きうる。トランスコーダが存在する前提に立てば、「MPEG-2のようにバリエーションの少ないコーデックのみに対応している方が再生互換性が高い」という事になるかも知れない。

 なお、このトランスコードの仕組みは「Media Foundation Technology」というフレームワークで規定されていて、CPUによる処理の他、専用ハードウエアなどを使って代替できる仕組みになっている。将来的には、SpursEngineのような演算専用LSIや、GPUの余剰演算能力を使った「GPGPU」、もしくは動画再生支援LSIなどで、この部分のクオリティと速度を上げる、ということも可能だろう。


■ DTCP-IPは「7には実装されない」。「プラグイン」でサードパーティーがサポート?」

 DLNAに関し、もうひとつ問題となっているのが「著作権保護」。日本のデジタル放送録画の運用ルールでは、DLNAを介して映像を再生する場合、LAN内の経路は「DTCP-IP」によって暗号化し、著作権保護を行なうこととなっている。DTCP-IP対応でないクライアントでは、当然映像の再生は行なえない。

 マイクロソフトは、いくつかのインタビューや取材の場で「Windows 7ではDTCP-IPをサポートする意向」とのコメントを残しており、筆者も複数回、そのような回答を聞いている。DLNA 1.5には、DTCP-IPのサポートを含む「コンテンツプロテクション・ガイドライン」も存在するため、「Windows 7ではDTCP-IPのサポートが標準で行なわれる可能性が高い」と考えられてきた。

DTCP-IPでデジタル放送の映像を配信する「BDZ-X95」にアクセスした結果。著作権保護されたコンテンツはサムネイルも出ず、再生もできない。コーデック的にはMPEG-4 AVCもMPEG-2 TSもサポートしているので、再生できない原因は「DTCP-IP未対応」だからだ

 だが、1月に公開されたベータ版においても、今回のRC版においても、DTCP-IPはサポートされていない。画像は、DLNA対応BDレコーダ「BDZ-X95」にアクセスした場合のものである。コピーフリーなAVCHDの映像は、サムネイルも表示される、もちろん再生も可能。しかし、ダビング10やコピーワンスで録画されたデジタル放送の映像については、番組名などは見えるものの、再生は行えない。

 最終的に、DTCP-IPはWindows 7でサポートされるのだろうか? マイクロソフトにコメントを求めたところ、以下のような回答となった。

「Windows 7においては、残念ながら、DTCP-IPのサポートは行なわれないことが決定した。いくつかの場でDTCP-IPサポートに関するコメントが行なわれていたようだが、訂正させていただきたい」(マイクロソフト 広報)

 実に残念だが、Windows 7も「デジタル放送録画の活用」の救世主にはなりそうにない。

 ただしこの点を、マイクロソフトもこのまま放置するつもりはないようだ。「(DTCP-IP対応は)課題であると認識しており、パートナーの協力により、プラグインなどで実現させることを検討している」とのコメントもあわせて寄せられている。サポートの可能性に期待したい。

 筆者の知る限り、DTCP-IP対応のDLNAクライアントやサーバーを、「ソフトウエア」として購入後に追加できるパソコンや家電機器はほとんどない。パソコン用の地デジ録画対応周辺機器がなかなか出なかったのと同様に、「最初から『機器にDTCP-IPを組み込んだ形』以外では、出荷が難しい」状況に近いのではないか、と考えている。

「その予想は、そんなに外れてはいない。Windows 7の件は、色々と足並みが揃わなかったのだろうと思う」。あるPCメーカー関係者は、筆者に対して語った。

 現状では、なにが障害なのかはっきりわかっているわけではない。DTCP-IPが手軽に使いづらいのは、正直残念で、おかしいと思う。「録画」にルールがあるのだから、それは守らねばならない。だが、利用者としては「ルールを守った上で便利に使える」用意くらいは望みたい。

 


■ 宅外から自宅のDLNAにアクセスする「リモート・メディアストリーミング」

 他方で、Windows 7 RCでは、新しく可能性を感じる機能も搭載された。それが「リモート・メディアストリーミング」だ。言葉通り、メディアストリーミングを「モバイル」の場へ拡張するものだ。メディアストリーミングはLAN内のものだが、リモート・メディアストリーミングでは、宅外から、自宅内のDLNAサーバーに接続し、蓄積された映像を見られるようになる。

 といっても、外部にサーバー公開などを行なう必要はない。「オンラインID」とパソコンをリンクし、その「リンク情報」を使って、「自宅のIPアドレス」の取得と、「自宅のホームグループ」へのアクセスを行なう。「Orb」や「Simplify Media」のようなAV系ホームサーバーサービスに似た機能、といえば、わかる人にはわかるだろう。

 ここでいうオンラインIDとは、具体的にはマイクロソフトの「Windows Live ID」のことである。だが、別にLive ID専用のサービスというわけではないようで、他の「オンラインIDプロバイダー」が現れれば、そちらを利用することもできる形にはなっている。

リモート・モバイルストリーミングの設定は、Windows Media Playerを開き、上にある「ストリーム」メニューの一番上の「ホームメディアへのインターネットアクセスを許可」から行なうリモート・メディアストリーミングには、オンラインIDの「リンク」を行なう必要がある。現在はWindows Live IDのみが対応している

 宅内のPCとモバイルPC、両方で「オンラインIDのリンク」を行なった上で、公開の設定をすれば、設定は完了である。リンクが終わった状態で、宅外のネットワーク(公衆無線LANでもいいし、イーモバイルなどのワイヤレスサービスでもいい)にモバイルPCを接続すれば、もうそれで利用可能だ。Windows Media Playerを開き、ホームグループ内ならば他のDLNAサーバーが表示されているべきところを見ると、小さな地球のアイコンがついたサーバーが見つかるはずだ(画像)。これが、リモート・メディアストリーミングが可能な印である。

 アクセスしてみても、まったく普通にライブラリが見える。サムネイルなどもきちんと表示される。

モバイルからのアクセスとはいえ、ライブラリの見え方はローカルとまったく同じ。違いは、サーバーのアイコンに「地球」があるか否かと、アイコンなどの情報取得に多少時間がかかることくらいだ
リモート・メディアストリーミング中のDLNAサーバーの負荷率。前半が640×480ドット・MPEG-4 AVCの映像を、1,920×1,080ドット/AVCHDの映像を転送した場合の負荷。ローカルでのメディアストリーミングに比べ、全体的に負荷は高まっているようだ

 リモート・メディアストリーミングの通信は暗号化されており、不特定多数に見られることはない。そのためか、Windows Media Player上で管理される著作権保護済みコンテンツ(すなわち、Windows DRMを使った音楽配信や映像配信で購入したコンテンツ)も、宅外から再生可能である。

 また、ホームグループのメディアストリーミングで使われていたトランスコーダは、ここでも同様に働く。宅外ではどうしても回線速度の問題が出るため、映像は自動的に解像度やビットレートが落とされた形にトランスコードされて転送される。今回は光回線+イーモバイルでテストしたが、再生中にはDLNAサーバー側の負荷が高まること、モバイルPC側の表示解像度が下がることがあることが確認できた。しかし「自宅にある映像・音楽を、特別なコストを負担することなく、自由に楽しめる」ことを思えば、十分納得できるトレードオフだ。前述のように、ハードウエアトランスコーダがうまく活用されるようになれば、こちらもかなり面白いことになりそうな印象を受ける。RC版を利用できる環境をお持ちの方は、ぜひ一度試してみていただきたい機能だ。


(2009年 5月 14日)


= 西田宗千佳 = 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、月刊宝島、週刊朝日、週刊東洋経済、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、家電情報サイト「教えて!家電」(ALBELT社)などに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。

[Reported by 西田宗千佳]