小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第764回 TVにも繋がる! 小型がうれしい、ソニー新ハイレゾスピーカー「SRS-ZR7」

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TVにも繋がる! 小型がうれしい、ソニー新ハイレゾスピーカー「SRS-ZR7」

1ランク上としての「ハイレゾ」

 ハイレゾというキーワードは、2000年あたりに盛り上がったDVDによるサラウンド音声以来、オーディオ業界に久々に現われた大きなムーブメントである。ただあの時と違うのは、低価格商品がワーッと出てあっというまに消耗戦化してしまうのではなく、そこそこの金額で地に足の付いた流れになってきたという事だ。

奥がソニーの「SRS-ZR7」

 この背景には、日本ではここ数年間安定して高級ヘッドフォン/イヤフォンブームが続いており、そこにハイレゾという付加価値が乗せやすかったところはあるだろう。未だハイレゾ音源のラインナップが不十分という声が聞かれるのも事実だが、音源からハイレゾにこだわらなくても、ハイクオリティな再生装置というブランディングとして“ハイレゾブランド”は普及し始めているように思う。

 一方でハイレゾ対応のスピーカーだが、気軽に入門できるということで、ワンボックスタイプのスピーカーに人気が集まっている。中でもソニーのSRSシリーズは、2014年に最初のハイレゾ対応機「SRS-X9」をリリースして以来、毎年着実にラインナップを拡充し続けており、ファームウェアのアップデートにより機能追加もされてきている。

 今年4月にも、バッテリ駆動できる「h.ear go」こと「SRS-HG1」をリリースしたばかりのソニーだが、今回はそれの上位モデルが登場した。ワンボックスの中型機ゾーンを担う「SRS-ZR7」がそれだ。店頭予想価格は4万円前後となっているが、通販サイトでは35,000円~38,000円程度で販売されているようだ。

 SRS新シリーズの実力を、さっそくテストしてみよう。

ハイレゾの系譜

 ソニーのワイヤレススピーカーは、下はキューブ型の数千円で買えるモノラルスピーカーから、上は以前ご紹介した「X99」まで、エントリー、ミドル、ハイエンドの3段階がある。

 今年の4月まで、ハイレゾはハイエンドモデルしかなかったのだが、先日の「SRS-HG1」がミドルレンジで初のハイレゾ対応となった。一方ハイエンドは、最上位モデルのX99はそのまま継続。一つ下のX88と、ミドルレンジのX77を合わせた恰好で、今回のSRS-ZR7が登場した。2年続いたXシリーズからランクを上げてZシリーズとなった、最初のモデルだ。

 X88は、最上位のX9/99を少し小型にした程度だったが、サイズ的にはそこそこ大きい。片手でひょいと持つようなサイズ感ではなかったが、SRS-ZR7はハイエンドクラスでありながら、片手で持てる程度のサイズ感を実現した。外形寸法は約300×86×93mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.8kg。ACアダプタなどが付属する。

コンパクトボディに上位クラスの機能を詰め込んだ「SRS-ZR7」

 まずスピーカー構成から見てみよう。新開発の45mmのハイレゾ対応フルレンジスピーカーを2基搭載。振動板には発泡マイカを採用した。発泡マイカは軽量ながら剛性が高い素材で、従来はサブウーファによく使われていた素材だ。今回はこの超軽量素材を使って、スーパーツイータ無しにハイレゾ再生に必要な40kHzまでの超高域再生を可能にした。

新開発45mmフルレンジドライバ
中央部に2つあるのがデュアルサブウーファ
内部構造

 小型筐体ながら十分な低域を確保するため、サブウーファも62mmを2基搭載している。これはL/Rそれぞれの低域を独立して再生している。

 通常サブウーファは1基のため、低域のみL/Rミックスされた音を鳴らしている。元々低音は定位感が低いため、ミックス時にもセンターに定位させておくものだ。したがって左右独立のサブウーファはこれまであまり意味がないとして検討されてこなかったが、今回どうせ2つ積むなら分離感も良くしたいというところから、こういう設計になったようだ。

 背面の半分以上を覆うパンチンググリルの内部は、パッシブラジエーターになっている。実寸150mm×60mmの、長方形平面型だ。前面のツインサブウーファの空気振動を背面にも素直に放出することで、サイズ感を超えた低域の伸びを実現する。

背面の大部分はパッシブラジエータ
左からサブウーファ、フルレンジ、パッシブラジエータ

 天面のボタンは、電源ボタンのみがハードウェアスイッチで、ボリュームとファンクションボタンはタッチセンサーだ。ファンクションはオーディオの入力ソース切り換えだ。これを押す事で、DLNAなどのネットワーク、Bluetooth、HDMIなどを切り替えられるようになっている。詳細は下表の通りだ。

簡易化された天面のボタン
ソースポイント
NETWORKWi-FiによるDLNA、Google Cast対応
BluetoothSBC、AAC、LDAC対応
HDMIHDMI ARC対応
USB-AウォークマンなどのUSB機器を接続
USB-BPCなどと接続して
USB DAC/スピーカーになる
AUDIO-INアナログオーディオ入力

 天面にはNFCポートもあり、NFC対応スマートオフォンとはワンタッチでペアリングできる。

NFCでのワンタッチペアリングも可能だ

 前面のパンチンググリルは、磁石でくっついているだけで、底部にあるスライドスイッチを使って取り外す事ができる。このあたりの構造はSRS-HG1と似ている。

 背面の端子は、3つずつ左右にわけられている。左は電源とアナログオーディオ入力、USB-A端子、右は有線LANとHDMI ARC、USB-B端子だ。上にあるボタンは、新機能のワイヤレスステレオほかを設定するためのボタンだが、コントロール用アプリ「SongPal」でも設定できるので、使わなくてもいい。

背面右側の端子類。HDMI ARC対応もポイントの一つ
背面左側。上にあるネジ穴は壁掛け用のオプションを取り付けるもの

 なおこれまでハイエンドシリーズに付属していたリモコンは、付属しない。実際筆者は旧モデルのX9を所有しているが、リモコンはほとんど使ったことがない。リモコンでやれる操作はスマホでできるので、なくても困る事は少ないだろう。

満足行く低音と量感

 ではさっそく音を聴いてみよう。USB-B入力経由でパソコンからハイレゾソースを再生してみた。本機は大体カステラぐらいのサイズ感だが、そのサイズからは想像できないほど量感のある低音が出てくる。別途サブウーファを追加した2.1chオーディオぐらいのスケール感だ。

 サブウーファまで2ch分離しているせいなのかは不明だが、非常にスピード感のある低音が魅力だ。ボディが小型でどこににでも置けるという特性から考えれば、特にEDM系などのダンス系の音楽との相性がいいだろう。

 ボーカル周辺の中域は若干引っ込み気味だが、音のクセは少ない。高域の分離感も十分だ。横幅が短いので、音の広がりという点では若干不利である。またX99と違って上部にスーパーツイータがないので、顔の上下位置で音質が変わる。一番クリアなのは当然ながらスピーカーと耳の高さが同じ位置の時だ。床置きにはあまり向いておらず、棚などある程度高さのあるところに設置すべきだろう。

 また低域によっては、ボディがかなり振動する。もちろんボディには十分な剛性はあるようだが、不安定な場所に置くとウーファのストロークが吸収されてしまうので、できるだけしっかりした硬い場所に設置したほうが、量感のある低音が楽しめるだろう。

 このサイズなら、PC周りのニアフィールドスピーカーとしての活用も考えられる。ただステレオ感にこだわるなら、自分の正面に置きたいところだ。以前のようにデスクトップ機全盛の時代なら、モニターの手前に置けば良かったのだが、最近はすっかりノートPCが主流になっている。ノートPCの手前、真正面にスピーカーを置くわけにも行かないので、PC経由でハイレゾを聴くという用途にはあまりマッチしないだろう。

 恐らくもっとも多い使い方は、Google Cast経由の利用かと思う。実質的にはほぼGoogle Cast Audio対応アプリから音楽を再生する事になる。Google Cast Audioは昨年からスタートしたオーディオ伝送専用規格だが、再生ハードウェアのChrome Cast Audioの発売で一躍市民権を得た。現在対応アプリは、まもなく200に手が届く勢いで増えている。国内でサービスしているアプリ、AWAやKKBOX、Google Play Musicもあるので、多くのユーザーをカバーできるハズだ。ソースはハイレゾではないが、SRSシリーズでは「DSEE HX」によるアップスケーリングに対応しているため、日常的なリスニングには不満のない音質となる。

2台を連携させてステレオ再生

 コントロールアプリである「SongPal」を使い、複数台のSRSをグループにまとめて同時に鳴らすという「SongPal Link」機能は以前から提供されていた。一方、6月発売の本機からは新たに「Wireless Surround」と「Wireless Stereo」という機能が追加された。今年発売のSRS-HG1に対しても、ファームウェアアップデートにより同機能が提供される。

 従来の複数台が単純に同時に鳴るという機能は「Wireless Multi-room」という機能に位置づけられる。想定されるのは、主に部屋をまたいでの再生だ。寝室とリビングで同じ音楽を鳴らし、どこに移動してもシームレスで音楽を聴くといった使い方が想定される。

 「Wireless Surround」は、SRSシリーズ2台を自分の背後左右に配置し、対応するテレビ用サウンドバーなどと組み合わせてサラウンド環境を構築するという機能だ。つまりSRSシリーズをシアタースピーカーのリアスピーカーとして使うわけだ。

 ただし親機として、Wireless Surroundに対応したAVアンプか、サウンドバーが必要になる。当然新機能ゆえに、親機側も一部のソニー製品しか対応していない。今のところ親機になれるのはAVアンプ「STR-DN1070」と、サウンドバー「HT-NT5」の2モデルのみだ。

 今回はどちらもお借りしていないので、もう一つの機能、Wireless Stereoを試してみたい。これは同一モデル2つを組み合わせ、それぞれにLch、Rchの再生を担当させるところで、2ペアのステレオスピーカーとして使ってしまおうという機能だ。

2台をステレオスピーカーとして使う

 それというのも、SRSはワンボックスなので、どうしてもスピーカーの左右が近い。1台でステレオ再生ができるというメリットがあるものの、ステレオ感が希薄なのが難点だ。これをカバーできる機能として、SRS-HG1発売時からすでにアナウンスされていたものが、ようやく実装されたわけである。

 設定としては、まず2台のSRSをSongPalと接続する。その後どちらか1台を選び、グループ作成を行なう。ここでWireless Stereoを選択、LとRの振り分けを設定する。USBやアナログオーディオなど有線接続ソースを使う場合のマスター側を指定すると、Wireless Stereoのセットが登録される。

新しくなったグループ作成機能
どちらをマスターにするか選択

 SongPalのオーディオ機器のところを見ると、2台のSRSのほかに、Wireless Stereoの組み合わせができている。Wireless Multi-roomの組み合わせも別の機器として登録できるので、用途に応じて一発切り換えができる。

 Wireless Stereoは後発の機能だけあって、対応再生ソースが多い。Wireless Multi-roomではGoogle Castやスマホ内の音楽再生、ホームネットワーク経由のDLNA再生しかサポートしなかったが、そのほかにUSBやアナログ入力、HDMI ARCも左右に振り分けることができる。

Wireless StereoやWireless Multi-roomのセットも、1つの機器として管理される
単体で使用するのと遜色ないオーディオソースをサポート

 一方Wireless Stereoの弱点としては、必ず同一のモデルでないとステレオセットにならない事だ。確かに左右の特性が同じじゃないとサウンドが変になってしまうので、それは仕方のないところである。一方Wireless Multi-roomは、モデルが違ってもグループ化できるのに加え、2台限定ではなくもっと多くのスピーカーをグループ化できるところがメリットだ。

 さて実際にWireless Stereoを聴いてみた。スピーカーを左右離していけばいくらでもサウンドフィールドを広げることができるので、確かにSRSシリーズの“ステレオ感を得る”という課題はクリアできる。

 ただ、左右の音の位相差は完全に同期できる時もあれば、できない時もある。どちらかの音が明らかに遅れてしまうということはさすがにないが、本来ならばセンターにきっちり定位しなければならない音も、左右に飛び散った感じになる事があった。周波数帯域全体が逆相になっているわけではないので、おそらく極小のショートディレイが起こっているのだろう。

 基本的には片方がマスターとなってオーディオソースを受信し、もう片方へ伝送するはずなので、完全に位相差レベルまで追い込むのは難しかったのだろう。しかしながら、以前X99/X88でWireless Multi-roomを試したときは、曲再生の先頭で音ずれが起こったりしていたので、おそらくその時代からは同時再生のやり方が変わったのだろう。左右同期の確実性も含めて、今後のさらなるチューニングに期待したいところである。

テレビスピーカーにもなる

 もう一つ、本機から搭載された新機能を試してみよう。HDMI ARCだ。ARCとはAudio Return Channelの略である。

 HDMIは通常、再生機(プレイヤーなど)から表示機(テレビ)への一方向の信号伝送を行なうものである。だが2009年に策定されたHDMI1.4から、表示機から再生機へ音声信号のみを逆方向に流す規格としてARCが導入された。

 具体的には、テレビで受信した放送番組の音声を、HDMI経由でAVアンプに戻すわけである。当然HDMI ARC対応テレビでなければ使う事ができないが、だいたい2010年以降に発売されたテレビは対応しているのではないかと思われる。

 筆者宅の4KテレビもHDMI ARC対応なので、早速繋いでみた。テレビの内蔵スピーカーと聴き比べてみると、テレビの音声がぐっと自分の近くに引き寄せられた感じ聴き取りやすい。男性の声の低音もリアルに聞こえる。いつものテレビがワンステップ、ゴージャスになった気分だ。

 なお、単体でHDMI接続している際はほとんどわからないが、Wireless Stereoで2台を連携させると、映像に比べると多少音のほうに遅れを感じ、いわゆるリップシンクのズレが目立つようになる。

テレビと接続したところ。Wireless Stereo機能を使うこともできる

総論

 Xシリーズの次の世代ということで、本機からZシリーズの展開が始まった。要望の多かった小型ハイレゾ化を成功させ、さらにはHDMI ARC入力を追加してテレビスピーカーとしても利用できるようになった。価格的にも安い店では4万円を切っており、「高機能なんでもスピーカー」として完成度を高めている。

 外観的には上位モデルのX99を継承しているが、天板がアクリル張りではないなど、多少高級感の減少はある。だが、堅牢性の高いしっかりした作りは、実際に手に取るとわかるはずだ。

 発表から実装まで永らく待たされたWireless Stereo機能は、概ね期待どおりの出来と言っていいだろう。多少左右の時間差は感じるものの、不快に感じるほどでもない。ただ難点は、同モデルのスピーカーが2ついるという事だ。面白い機能ではあるが、わざわざこれをやるために2台買うというケースは少ないだろう。

 むしろこの機能は、もっと低価格のエントリーモデルに搭載したほうが面白い。兄弟や友達、恋人などで2台持ち寄ればより楽しい事になるという効果は、音楽とハードウェアを通じてより仲良くなれるという、美しいシナリオが描けるだろう。

 とはいえ実際には、かなり高機能なDSPを搭載しないと難しそうなので、廉価モデルで実装するのはすぐにはできないかもしれない。この機能をどのように育てていくのか、ソニーの技術+マーケティングの手腕が試されている。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。