小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第819回
iPhone 7 Plusがメインカメラに変身!? 6個のレンズ付きケース「ShiftCam」が最高
2017年9月6日 08:00
もはやメインカメラ? のiPhone 7 Plus
先週のBIRTVレポートはいかがだっただろうか。予備知識なしで行ったので、どんなイベントなのか心配だったのだが、案外面白い話を仕入れることができてホッとしている。
実はBIRTVレポートの写真は、すべてiPhone 7 Plusで撮影している。一応バックアップとしてミラーレスの「DMC-G7」も持っていったのだが、結局使わずに済んだ。というのも、中国へ発つ直前に「ShiftCam」という拡張レンズ付きケースが届いたのだ。これが現場でとても有効に使えたので、一眼の出番はなかったというわけである。
このShiftCam、香港の同名ベンチャーがクラウドファンディングで資金を集めて制作する、レンズ付きiPhone 7 Plus専用ケースである。ご承知のようにiPhone 7 Plusにはレンズが2つあるが、それぞれのレンズに対して3つ、合計6つのレンズが使えるというスグレモノだ。
公式サイト「ShiftCam: World First’s 6 in 1 Dual Lens for iPhone 7 Plus」では、4日現在ディスカウント中で、本来99.00ドルのところ、79.00ドルで販売している。筆者はさらにFaceBookの広告でディスカウントクーポンをゲットしたので、47.40ドルで購入する事ができた。次期iPhone 8はレンズが縦方向に並ぶという噂もあり、そうなると現在の設計では使えなくなるので、一気に在庫処分にかかったのかもしれない。
そもそもiPhone 7 Plus用を謳った拡張レンズは種類が少ないが、6つのレンズが使えてケースも付属で、日本円にして5千円ちょっとなら安い。正直それほど期待していなかったのだが、すっかり愛用する事となったので、ご紹介したい。
スライドするレンズが秀逸
ShiftCamはiPhone 7 Plus専用なので、他のスマートフォンには使用できない。そもそもiPhoneの世界シェアは20%程度であり、しかも7 Plusはその中の1モデルにしか過ぎないため、かなりピンポイントな製品だ。逆に言えば、ベンチャーじゃなければチャレンジできない製品と言えるだろう。
ShiftCamのケース部は、外側と内側で別の素材が貼り合わせてあり、外側は固めの樹脂だが、内側は柔らかいゴム製である。したがってケースとしてはかなり厚みがあり、iPhoneに装着するとかなり大げさな外観になる。ただ、レンズが6個ある時点ですでに大げさなので、ケース自体がゴツくても開き直れる。
底部にストラップホールがあり、着脱可能なストラップが付属する。横に構えて右手の部分には、指がかりとなる突起があるが、本物のカメラのように大きく出っ張っているわけではないので、ここだけでホールドできるわけではない。指が引っ掛けられる、という程度である。
右手でホールドした時の人差し指のあたりに、シャッターボタンのような構造が見えるが、ここにはiPhoneのボタンは何もないので、何の機能もない、ただの飾りだ。あるいは将来的に別のスマートフォンにも使えるよう、設計してあるのかもしれない。
さて肝心のレンズ部に注目しよう。レンズユニットはケースの溝にはめ込む形でのスライド式になっている。レンズユニットの指がかりとなる部分にボールベアリングがあり、これが溝に穿たれた穴にはまることで、3段のレンズがちょうどいい位置にカチッと収まるという仕組みだ。
レンズはiPhoneの標準カメラ用に3段、2倍カメラ用に3段となるわけだが、それぞれ倍率が違う。
iPhone側レンズ | 標準カメラ | 2倍カメラ |
1段目 | 120度(0.65倍) | 2倍(標準の4倍) |
2段目 | マクロ(10倍) | マクロ(標準の20倍) |
3段目 | 180度(魚眼) | 2倍(標準の4倍) |
2倍レンズ側は、1段目と3段目が同じレンズとなっているのは、ネタ切れなのだろうか。3段目の魚眼と4倍ではかなり撮影の性質が違うため、隣り合っている必然性は薄い。がんばって2.5倍ぐらい積んで欲しかったところだ。
さらに2段目も、実は左右は同じレンズである。カメラ側の性能が違うので、結果としてマクロ倍率が変わるわけだ。
レンズにはカバーが付属しており、そこにも倍率が書いてある。またこのレンズユニットは、不要な時は取り外せるようになっている。上から抜けばいいのだ。筆者は基本付けっぱなしだが、デニムの尻ポケットに入れておいてスマホを引き出すと、レンズが抜けてしまうことが多々あった。狭いところにしまう際は、引き出しにくいので、あらかじめレンズは外して置いた方が無難だろう。
1cmにも満たないレンズでこの写り
では実際に撮影してみよう。まず標準カメラ側からテストだ。1段目の0.65倍レンズは、そのままの標準カメラに比べると、かなり広角で撮影できるのがわかる。ただし解像感は落ちるのと、4隅が若干落ちるのが残念だ。とは言え、先週のレポートでお分かりのように、ネット記事で使用するために縮小をかけると、解像度の低下はあまり分からなくなる。
魚眼レンズは、周辺がケラレるし周囲の絵の流れも激しいが、現場の状況を捉えたい時などに便利だろう。
続いて2倍カメラ側を試してみる。レンズなしと比較しても、解像度落ちはそれほど感じられず、かなり良好だ。ノーマルの標準カメラからすれば4倍で撮れているわけで、望遠が弱いスマートフォン全体からすれば、かなり寄れるほうだろう。
では2段目のマクロを試してみよう。標準カメラと10倍レンズ、2倍カメラと10倍レンズをそれぞれ試してみた。
標準カメラでこれだけ寄れるというのはかなり面白い。また2倍カメラ側は近距離ではフォーカスが合わないため、標準カメラよりも引いた画角でしか撮れないのだが、これがマクロになるとガツンと寄れて、20倍マクロとなる。
ただし2倍カメラ側には手ぶれ補正がないので、ハンディでの撮影はなかなか難しい。フォーカスの見極めも難しいので、複数枚撮影していいものを選ぶといった使い方になるだろう。また2倍カメラはフォーカスが合わないと、自動的に標準カメラに切り替わって2倍の電子ズームとなるので、そのあたりは注意が必要だ。
マクロ撮影に興味がない方もいると思うが、実は意外なところでマクロレンズは役に立つ。例えば、何らかのカードやレシートにプリントしてあるQRコードが小さすぎて、寄るとフォーカスが合わないし、フォーカスが合っても小さすぎて認識できなかったりといった経験はないだろうか。ああいうものも、マクロレンズに切り換えれば一発で読み取れる。
動画でもメリットあり
続いて動画の作例も交えながら、ポイントや弱点を見ていこう。iPhoneの場合、動画撮影をすると静止画よりも1段画角が狭くなる。センサーの使用面積を、動画に必要な読み出し範囲に限定するため、多くのカメラで起こる現象だ。
だが動画コンテンツとしては、あまり絵が詰まっていると撮りづらい。そこで0.65倍のレンズが役に立つ。静止画の画角よりも広い画角で動画撮影が可能になるのだ。
さらに動画では縦方向がクロップされるため、4隅の周辺落ちがカットされる。動画撮影に使うメリットはかなり大きい。
一方2倍カメラ×2倍レンズでの撮影では、通常の2倍カメラでも寄りきれなかった被写体にも寄れるので、感覚的にはズームレンズを手に入れたかのような使い勝手となる。もちろん、ズーム倍率がバリアブルに変えられるわけではないが、満足度は高い。
ただ残念なことに、ケース部が太くなりすぎるため、ハンディスタビライザーの「DJI Osmo Mobile」には装着できない。ケースがなければレンズを使えないので、スタビライザー使用時は従来どおり、クリップで固定するタイプのレンズを使うしかなさそうだ。
もう一つの弱点は、このレンズ使用時には7 Plus独自の機能である、「被写界深度エフェクト」が使えないところである。ShiftCamの左右のレンズの組み合わせでは、画角が全く違うため、演算ができないわけだ。無理矢理撮影してみたが、普通に2倍カメラ側で撮影したものが保存されていた。
総論
スマートフォンの機種に関わらず使えることを考えるならば、クリップレンズが一番妥当である。したがってここは一番製品の種類が多く、機能的にも大差ないところだ。
これまではワイドコンバータやテレコンバータ、マクロなどはいちいちレンズを付け替える必要があったわけだが、ShiftCamではそれをスライダー式にしてすばやく切り換えられるようにした点が秀逸だ。
iPhone 7 Plus決め打ちなのが残念ではあるが、これだけ評判がよければ、シングルカメラのiPhone用や、近日発表が噂されるiPhone 8用などにも拡充してくる可能性はあるだろう。
見た目がゴツくなるので、もっと日常的に使えるスマートなケースを使いたいといったニーズには対応できないが、このレンズのおかげで、写真や動画はiPhoneで済ませる機会が格段に増えた。
特に筆者の場合、BIRTV取材で便利に使えたので、十分元は取れたかなと思っている。