小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第843回
RDファン歓喜!? 新生REGZAが繰り出すこだわりのレコーダ「DBR-T2008」
2018年3月7日 08:00
継続するREGZAブランド
2015年の粉飾決算事件に端を発した東芝危機だが、最近は一応の安定を取り戻した。事業も着々と整理が続いてきたが、REGZAに代表される黒物部門は、子会社である東芝映像ソリューションへと移管。今年2月末に発行済み株式の95%を中国ハイセンスグループへ譲渡した。
東芝映像ソリューションはハイセンスの子会社ということになるが、REGZAを含めた「東芝」の名前の使用権はそのまま残る。開発陣もそのままということで、コンシューマからすれば「東芝REGZA」という見え方には変わりがない。現在もREGZAのサイトは、東芝ドメイン内にある。
そしてこの春も順調に、REGZAブルーレイの新モデルが続々と登場する。トリプルチューナの「DBR-T3008/2008/1008」、ダブルチューナのDBR-W2008/1008/508だ。TシリーズWシリーズ共々、末尾型番はHDDの容量違いで、ごく一部の機能を除けば基本性能は同じである。今回はトリプルチューナの真ん中、2TBの「DBR-T2008」を取り上げる。
前作T2007の発売が2016年11月で、約1年半ぶりの新作という事になる。前作のウリは“時短”だったが、今回のシリーズはさらにそれを極めていったモデルのようだ。店頭予想価格は8万円前後で、通販サイトでは8万円から2,000円程度安いところもあるようだ。T2007よりも5,000円ほど安いスタートとなる。
新生REGZAが考える時短とは、どういうものだろうか。さっそく試してみよう。
- DBR-T3008(3TB):9万円前後
- DBR-T2008(2TB):8万円前後
- DBR-T1008(1TB):65,000円前後
- DBR-W2008(2TB):65,000円前後
- DBR-W1008(1TB):6万円前後
- DBR-W508(500GB):5万円前後
見た目変わらず!?
レコーダのデザインも、色々変遷がある。所詮は四角い箱であるわけだが、レコーダが主役だった2000年代初頭まで、フロントパネルというのは一つの顔であり、各社とも一目でわかるアイコン的な特徴を取り入れてきたものだ。
だが2011年ごろから多くのレコーダが薄型化し始め、面積的にデザイン的な顔を持たせるのが難しくなっていった。次第にレコーダのデザインも、存在を消す方向でミニマル化していったという流れである。
東芝もRD時代は結構凝ったデザインのものが多かったが、REGZAブランドへ切り替わってから、特にBD時代になってからはシンプルなデザインとなっている。前作のT2007では、全面黒でシックにまとめたデザインが特徴的だったが、今回のT2008は前作を踏襲、というか、見た目的には同じである。実機を2つ並べているわけではないが、写真を見るかぎり同じに見える。
厚みは1Uサイズで、左右がおおきくラウンドしているところも同じだ。丸い電源ボタンは、周囲にLEDを配し、ステータスを色で表示する。イジェクトボタンを真ん中に持って来ているのも特徴だ。B-CASカードは、Miniタイプを搭載。USBやSDカードスロットも装備している。内蔵HDDは2TBで、最上位のT3008は3TBとなる。
デジタルカメラの世界では、ボディは同じで中身が違う、いわゆる「Mark II」モデルが多数存在する。コスト削減や製品化のスピードアップに繋がるわけだが、レコーダこそ、そういう考えでいいということだろう。カメラと違い、持ち出して人に自慢する事もないわけだから、カメラよりも妥当である。
背面のレイアウトも同じだ。昨今には珍しく、アナログAV入力を備えている。HDD増設用USB、HDMI端子は1系統ずつ。有線LANだけでなく無線LANにも対応する。なおこの春のラインナップのうち、W508だけは無線LANを内蔵しておらず、アダプタ対応となるのでご注意頂きたい。
リモコンも同じである。四角い十字キーの周囲にボタンを配置し、目立つ場所に「時短」ボタンを配している。ガワは同じで中身を変えたのが、この春モデルと言えそうだ。
こだわりの時短機能
そもそもレコーダのメインの役割は、タイムシフトである。時間を効率的に使うために存在するわけで、そこを切り口にレコーダの機能をまとめたのが、この春のメッセージという事になる。東芝では「時短」として、5つの機能にまとめている。
時短で見る | らく見/らく早見/飛ばし見 |
時短で録る | おまかせ自動録画 |
時短で探す | 人物リスト検索 |
時短で残す | おまかせダビング |
スマホでも時短 | どこでも時短 |
では順に見てみよう。まずは「時短で見る」だ。録画した番組をあとから見るにしても、忙しい現代人にしてみれば、テレビにかけられる時間は限られている。そこで登場するのが、CMスキップであったり、1.x倍再生だったりするわけだ。
T2008では、通常再生以外に、チャプターを選択して自動スキップ再生をする「らく見」、らく見動作に加えて1.3倍再生する「らく早見」、らく見を20分割して15秒間再生し、次々とスキップ再生する「飛ばし見」を搭載する。
リモコンの「時短」ボタンを押すと、「時短で見る」モードとなる。それぞれのモードにかかる時間も、目安として表示される。1時間枠のドラマの場合、通常再生では54分、らく見で46分、らく早見で35分、飛ばし見で5分となるようだ。1週間の節約時間も積算されるというのはなかなか面白い。
「らく見」の場合、CM枠をジャンプするわけではなく、その部分は自動で早送り再生となる。CMをカットして再生する機能は、2011年に当時の民放連会長が問題視したことを受けて、全面に押し出すことを控える結果となった。完全にスキップして見えなくするわけではないあたりに、配慮が伺える。
1.3倍再生する「らく早見」では、台詞が聴き取れるかは番組にもよるだろう。アニメのように声優さんが明瞭に喋る番組では聴き取りやすいが、ドラマやバラエティでは早口のタレントさんもいるので、1.3倍ではよくわからない人もいる。一方で映像のほうは、早回し特有のカクカク感が少なく、画像処理のレベルも上がってきている。
「飛ばし見」は斬新な機能だ。番組本編のみを20箇所ピックアップして15秒間、通常スピードで再生する。かなり飛ばし飛ばしの再生で、初めて見る番組は正直、わけがわからない。ただ毎回見ているドラマの場合は、すでに世界観は把握しているので、あらすじだけだいたいわかればいいときには使えるだろう。
ためしに「サザエさん」を「飛ばし見」してみたが、オープニングとエンディングも20箇所のうち3回も入ってしまうので、内容のほうが薄まってしまう。最近のネット動画サービスでは、オープニングをスキップする機能も出てきているところだ。コンテンツの中身を事前に把握できないレコーダには難しいかもしれないが、1週間前の番組との差分を取れば、毎週決まりの部分は検出できるのではないか。このあたりは、今後のアルゴリズムの進化に期待したい。
続いて話の流れから、「時短で録る」を見ておこう。これは他のレコーダにも同様の機能が存在する「自動録画予約」機能ではあるのだが、そこへの動線に工夫がある。
スタートメニューから「予約」を選ぶと、おまかせ自動録画の設定へ行ける。そこで設定画面へ進むと、まず再生コースが設定され、次いで番組カテゴリー選択となる。つまり時短で見る機能とおまかせ自動録画を、セットで考えているわけである。
ここから先がようやく「おまかせ自動録画」機能の設定だ。選んだジャンルごとに、保存期間や対象となる番組の長さ、時間帯などが設定できる。ここでフォルダ分けも可能だ。録画の優先順位は、リストの数字順である。あとから並び替えもできるので、長尺故に他の番組と被りやすい映画などは、上位に上げておくといいだろう。ただトリプルチューナ機ならチューナ数には余裕があるので、自動録画の成果がより充実するはずだ。
「時短で探す」機能は、毎日更新される人物リストから名前を選ぶ事で、出演番組を探す事ができる機能だ。番組表のサブメニューからアクセスすると、番組表の中から出演番組が検索できる。
またお好みカテゴリーページに人物名を設定しておくと、録画された番組内から出演番組を探す事ができる。
人物リストを録画予約と録画番組検索の2つで使うわけだが、録画番組検索のほうは、若干裏技っぽい使い方だ。もう少し機能の体系化が必要だろう。
もうひとつ時短で探す機能を紹介しよう。リモコンの「時短」ボタンを押して「時短で見る」画面を出し、サブメニューから「再生時間で絞り込み」を選ぶと、特定時間内で見られる番組をピックアップしてくれる。あと15分で出かけるけどそれまでに見られる番組はないかな、といった時にも便利だろう。
保存もスマホ視聴も時短で
続いて時短で残す「おまかせダビング」を見てみよう。普通ダビングというと、スタートメニューの「ダビング」から入っていくのが筋かと思うが、この機能は「時短で見る」メニューからアクセスする。
ここで保存したい番組を選び、サブメニューから「ダビング」を選ぶと、「おまかせダビング」機能にアクセスできる。これはチャプターを選択して自動スキップ再生をする「らく見」で再生された部分だけをダビングする機能で、手動のプレイリスト編集などをすることなく、番組本編だけを残すことができる、と説明されている。
これは、実際に一度「らく見」をしないといけないのか、それとも視聴モードを「らく見」に設定しただけで編集ダビングされるのかをテストしたのだが、手順どおりにBlu-ray Discにダビングしてみたところ、どちらも単に録画番組全体がダビングされたのみで、本編だけがつなぎ合わされた結果とはならなかった。このあたりはまだ発売前の機材をお借りしたので、うまく動作しないのかもしれない。
時短機能とは真逆の機能ではあるが、プレイリスト編集が復刻した。かつてRDシリーズ時代に、チャプターを選んで1つのプレイリストを作り、それをディスクに焼くという機能があったが、見た目はまさにそれである。そもそも今となっては、「チャプター」や「プレイリスト」が分かる人も少なくなっているかもしれないが、昨今のレコーダが提供する、ざっくりしたダビング機能では納得いかない人には朗報だろう。
スマートフォン視聴については、「スマホdeレグザ」を全面に打ち出している。ただしスマホdeレグザというアプリがあるわけではなく、アプリとしてはデジオンの「DiXiM Play」を利用する。DiXiM Playの中に「スマホdeレグザ」という機能があるというイメージだ。
メインメニューとしては、「放送中番組を見る」「録画番組を見る」「時短で見る」「リモコン」の4機能が使える。注目は「時短で見る」だろう。レコーダからのストリーミングでスマホ内で視聴する際は、通常再生の他、「早見」機能が使える。レコーダ側で再生させる場合は、フル機能が使える。
総論
東芝のレコーダは、テレビ番組の扱いに対してこだわりのある人のための機能を多く搭載してきたため、マニア気質の人には人気があった。その一方で、操作がわかりにくいといった批判もあり、また昨今は自動録画しておいて、視聴したら残さないというスタイルが定着したこともあり、レコーダの役割も少しずつ変わってきたように思う。
そうした中、時短に対して東芝なりのこだわりを見せたのが、本機という事になる。少ない手間で効率を上げるためには、ある程度の自動化や割り切りも必要で、それをどう実現するのか、開発には苦労したことだろう。
その一方で、相変わらずディスク保存に関しては細かい編集機能を再搭載してくるあたり、こだわりの仕掛けを存分に機体に入れ込むことができる体制になったという点は大きいだろう。
スマホ連携も、これまであれこれ多数のREGZAアプリが存在して、リアルユーザーでもわけがわからなくなっていたきらいがあったが、近年はDiXiM Playで一本化したため、わかりやすくなった。ストリーム視聴にはライセンス購入が必要だが、レコーダのコントロールだけなら無料で使える。
ハードウェアをこよなく愛するものとしては、ボディデザインやリモコンが変わらなかったのは残念ではあるが、新生REGZAの方向性が見えるレコーダと言えるだろう。
東芝 2TB HDD内蔵 ブルーレイレコーダー REGZA DBR-T2008 |
---|