小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第855回

1カ月前からドラマ・アニメ新番組を“先録!” ソニー「BDZ-FT3000」
2018年6月13日 08:00
ソニーとパナソニック、5月の陣
先週はパナソニックのレコーダをお送りしたところだが、今週はソニーのレコーダをお送りする。レコーダをいつ発売するかは、色々な戦略がある。レコーダ全盛期の2000年代には、テレビ番組改編期直前の3月と9月に合わせたり、あるいは夏冬ボーナス前となる7月と11月に合わせたりと、年に2回のピークがあったものだ。だが最近は、5月下旬もしくは10月下旬発売というのが定着しつつある。
高級モデルでも20万円を切り、エントリーモデルでは3万円台も珍しくないほど価格的にもこなれてきている。季節商品ではなく、いつでも買える製品へと変わっていったという事だろう。とはいえ、レコーダの大手2社の発売タイミングがほぼ重なると、どうしてもガチンコ勝負的な見え方をせざるを得ない。
さてソニーのレコーダ春モデルは、トリプルチューナ機が「BDZ-FT3000/FT2000/FT1000」の3モデル、ダブルチューナ機が「BDZ-FW2000/FW1000/FW500」の3モデルと、合計6モデルの展開となる。今回は最上位モデルのBDZ-FT3000をお借りしている。店頭予想価格は11万円前後となっているが、すでに通販サイトでは10万円を切るショップも出ているようだ。
ソニーのBlu-rayレコーダとしては初となる、Ultra HD Blu-ray(UHD BD)再生に対応した新モデルの実力を、早速試してみよう。
満足感の高いデザイン
まずデザインだが、艶消しの金属ボディの前面に光沢感のあるアクリルボックスが融合したような形となっており、なかなかカッコいい。昨年のモデルは上半分全部がアクリルの2段重ねのようなデザインだったが、このような「ずらした」デザインもカッコいい。
電源とドライブイジェクトボタンは1つに融合しており、上を押すと電源、下を押すとイジェクトとなる。以前は機能を左右に割り振っていたが、今回は上下に割り振って、ボタン全体も小さくなっている。
また電源を入れると、正面中央の下部に仕込まれた白色LEDが光る。手法としてはそれほど新しいものではないが、全体的な雰囲気を落ち着いたものに感じさせる。
フロントパネルはアクリル部の下部の細い部分が開くようになっており、カメラ接続用のUSB端子とB-CASカードスロットがある。
内蔵HDDは3TBで、USB3.0対応の外付けドライブを使えば、外付けにも3番組同時録画ができる。加えてSeeQVault USB HDDにも対応している。
BDドライブは、ソニーとしては初めてUHD BDの再生に対応した。一方記録では、4Kカメラの取り込みに対応し、4KのままでBD-R/REに記録できる機能もついた。4K動画をBDに記録できる機能は、国内レコーダとしては初となる。
背面に回ってみよう。アンテナ入力は地デジ、BS/CSの2系統で、4K放送の受信はできない。今年12月から本放送開始だが、各社から対応製品が出てくるのは11月頃になりそうだ。
HDMI出力はメインが1系統、音声用が1系統となっている。また昨今のレコーダには珍しく、アナログAV入力を備えている。
リモコンも見ておこう。基本的には2016年に大きくUIが変更された時期にデザインされたもので、2年間大きな変化はない。外からは見えないが、3方向にLEDが仕込まれており、放射角が広いのが特徴である。
新機能「新作ドラマ・アニメガイド」
では中身を見ていこう。ホーム画面や全体のUIは、2016年のリニューアルから大きく変わっていないが、この春から新たに搭載されたのが「新作ドラマ・アニメガイド」だ。
通常の番組表は放送局が作成し、放送波からダウンロードするものだが、これは1週間先(正確には8日分)しか配信されない。したがって番組予約も、1週間分に限られていた。
しかし番組情報誌などを見れば、もっと先の放送スケジュールまでわかる。さらに新番組のスタート時期には、1カ月ほど前から特設サイトができて、番組宣伝なども始まる。要するに放送波での番組表が1週間分しかないだけで、他から引っぱってくれば、もっと先の番組情報は手に入るのだ。
今回の春モデルではKADOKAWAと提携し、ネットを通じて最長1カ月先の番組情報を知ることができる。当然その番組情報から予約もできる。新作アニメの話題は1カ月ぐらい前から盛り上がるが、そんな先まで予約ができないため、予約し忘れて初回を見逃すという痛い経験をした人も多いだろう。
早速試してみたが、まだ7月の番組改編情報は提供されていないようで、1週間以上先の新番組情報は得られなかった。なお先録できる番組はドラマとアニメに限られるので、24時間テレビなどの特番は対象とならない。
新作ドラマ・アニメガイド内の番組情報は、EPG番組表にはない情報も多い。例えば声優として担当している他のキャラクターの番組や、同じジャンルで話題の番組も見つけられる。さらに番組に関するクチコミも読むことができるので、番組の具体的な評判を知ることができる。
一般の番組表でも、便利な機能があるのでご紹介したい。「オプション」表示のうちから「気になる語句で検索」を選ぶと、話題の人物や時事ネタとしてのキーワードが表示される。番組情報内の頻出ワードのうち、放送時間が迫っているもの中心を抽出しているのか、ニュースで旬なテーマを表示してくれるのはありがたい。
ただし汎用的なワード、例えば「事件」や「事故」だとドラマ等も沢山出てくるので、結果に応じてジャンルなどで絞り込みをかけたほうがいいだろう。
4K動画も! ハンディカム対応
番組録画以外の進化点も見ておこう。この春モデルから、UHD BDの再生をサポートしたことはすでに述べたが、これの意味するところは、内部的には4Kが処理できるようになったという事である。これに合わせて、4Kハンディカムで撮影した映像も扱えるようになった。
「ダビング」メニューの「カメラ動画ダビング」では、本体前面のUSB端子に接続したハンディカムを認識し、本体に4K解像度のままダビングできる。カメラ内の映像もサムネイルが表示できるので、どのカットを取り込むかの選択も簡単だ。
取り込んだ映像は、番組と同じ「録画リスト」から再生できる。今回使用したカメラは「FDR-AX700/B」だが、これはS-LogおよびHLGでも記録できる、いわゆるHDR対応モデルだ。
これらのHDRモードで撮影した映像も、基本的にはそのまま取り込んで再生できる。S-Logの映像は、LUTを当てるかカラーグレーディングしないと通常の映像コントラストにならないが、HLGで撮影したものは、少なくとも色域はBT.2020で表示されることは確認できた。一方ダイナミックレンジのほうは、メタデータがないのか、表示できなかった。
また本機に取り込んだ映像は、4K解像度のまま、データファイルとしてBD-R/REに書き込むことができる。このディスクは、そのまま本機で再生できるし、HLGで撮影したファイルもそのまま右から左にコピーするだけなので、対応テレビでは本体からの再生と同じように高色域で再生される。ただし「データディスク」なので、一般のBlu-rayプレーヤーなどでは再生できない事になる。
MP4の4K動画は、そのままではチャプタ編集もプレイリスト作成もできない。しかし「タイトル変換」機能を使って4K → 2Kの変換をすれば、テレビ番組同様、チャプタ編集やプレイリスト作成もできる。このファイルをBD-Rなどにオーサリングすれば、4K解像度ではないが再生互換性のあるディスクを作成することもできる。
ハンディカムからの取り込みでは、取り込み履歴を本機側で覚えているので、追加撮影した場合は、その差分のみを取り込むことができる。とりあえずのバックアップとしてレコーダ、という線はありだろう。
すでに4Kカメラが世に出て2年ぐらい経過しているので、MP4ファイルをパソコン内で管理しているユーザーも多いことだろう。こうしたファイルをUSBメモリーのルートにコピーして本機に取り込めるか試してみたところ、ビデオカメラとして認識していないようだった。
一方でハンディカムで撮影したSDカードを、USBカードリーダーに挿してレコーダに繋いでみたところ、取り込む事ができた。ハンディカムそのものを繋がなくても、ファイルストラクチャがハンディカムで制作されたものであれば、認識するようだ。
総論
レコーダは当然テレビ放送を録画するのがメインの機器だが、コンテンツは放送波からやってくるものの、番組情報はもはや放送波だけに頼る時代ではない。EPGよりも先の情報が取り込めるのであれば、それは録画手順の中に組み込んでもいい。
今回の「新作ドラマ・アニメガイド」は、いわゆる連続ストーリーものを撮り逃さないということにフォーカスしたが、仕組み的にはバラエティ特番でも何でも、予約するだけなら可能なはずだ。
将来的に、EPGとネットのデータをどうバランスして扱っていくのか。新聞の購読率も下がっている現状、いつまで番組データをラテ欄方式で見せていくのか、というところにさしかかってきているようにも思える。そもそもレコーダで見せるからには、タイムシフトで見るのが前提であり、もはや何曜日の何時にどの局で放送するのかは、視聴者にとっては大して意味のない情報なのである。
一方で先週のパナソニック同様、レコーダはすでにテレビ録画以外の使い方を模索する時代に入った。ソニーが4Kハンディカム連携に振ったことで、4Kカメラの映像をどこに保存すればいいんだ問題に光明が見えてきたのかなとも思える。パソコンに代わって、レコーダの「汎用機器化」が起こりつつあるという事なのかもしれない。
これまでパソコンが担ってきた、個人コンテンツの置き場というポジションにレコーダが座るというのは、日本においては必然のようにも思える。
ソニー BDZ-FT3000 3TB 3チューナ UHD BD対応 |
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