小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1043回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

Google Pixel 4aから6aへ乗り換え。2世代でどこまで進化した?

新たに購入したPixel 6aは白っぽい「Calk」を選択

個人的なリファレンスモデルとして

IT系ライターという仕事柄、iPhoneとAndroidの両方持ちが必須になっているわけだが、様々な動作検証を行なう関係で、特にAndroidの場合はなるべく広く普及するであろう標準的なモデルを購入することにしている。そんな理由で2020年11月に購入したのが、Googleの「Pixel 4a(5G)」であった。ご承知のようにPixelの「a」シリーズは、「a」の付かないモデルの廉価版という位置づけで、多少機能は落ちるがリーズナブルな価格で購入できる、ミドルレンジモデルである。

Pixelシリーズは、3世代のOSアップデートが保証されていることもあり、長く最新状況がフォローできるというメリットがある。したがって約2年前のモデルであるPixel 4a(5G)も、現在Android 12までアップデートできており、次期Android 13まではサポートされる見込みだ。

現在もレスポンス等には問題ないところだが、さすがに2年間充放電を繰り返していると、若干バッテリーの保ちが悪くなってきた。以前はあまり使わない日が続くと2日ぐらい充電なしで行けたのだが、今は余り使わなくても2日は保たない。

もう1つの問題は、色である。ボディカラーは黒を購入したのだが、夏場に子供のテニスの試合などを定点で録画していると、熱のために録画が再開できないというトラブルが数回起こっている。またカーナビとしてダッシュボードに固定していると、これも熱のために途中で止まってしまう。高速道路に乗って知らない場所へ行く際に、突然ナビを失うとめっちゃ焦る。黒を買ったのは失敗だったか、と考えるようになった。

そんなタイミングで、「Pixel 6a」の発売となった。すでにPixel 7、7 Proの足音も聞こえているところではあるが、この夏の活用を考えると、早めに買い換えておいたほうが良さそうということで、Google公式サイトより購入した。

安く買うための指南情報も色々あるようだが、定価53,900円のところ、Pixel 4a(5G)を下取りに出すと5,477円から20,897円の割引となるようだ。加えてイヤフォンの「Google Pixel Buds A-Series」が無料で付いてくる。

今回は下取りキットが届くまでのあいだ、4a(5G)と6aの進化点を確認してみたい。

サイズ感は数字ほどは変わらず

オーダーしたのは、白に近い「Calk」である。Pixel 6aは、6と比較する例が多いと思うが、同じaシリーズ同士で比較した例は少ないように思う。

まず本体サイズだが、4a(5G)が155×75.1mmであるのに対し、6aは152.2×71.8mmと、横幅がちょっと細くなっている。ディスプレイサイズも19.5:9の6.2インチに対して、20:9の6.1インチと差がある。ただ実際に横に並べてみると、ディスプレイサイズの差は数字ほどには感じられない。

右が6a。横は若干スリムになった程度で、画面サイズはそれほど変わらない

フレームは4a(5G)がポリカーボネート製であったのに対し、6aは合金製となっており、カメラ部のデザインは6シリーズ共通となっている。また防塵・防水性能については、4a(5G)では特に言及されていなかったので水回りでの使用がためらわれたが、6aではIP67となっている。

6a(右)のほうがボディ材質にも高級感がある

4a(5G)では背面にあった指紋認証は、6aではディスプレイ内部に組み込まれた。セキュリティチップはTitan MからTitan M2にアップグレードされている。6シリーズでは指紋認証の精度が低いとして問題になったが、6aに関してはセンサーが変更されたということで、問題なく認証できている。

RAM容量は同じ6GBだが、6aは2020年にはハイエンドモデルにしか搭載されていなかったLPDDR5となっており、4a(5G)のLPDDR4Xと比べて伝送効率や電力効率の面でメリットがある。

プロセッサは4a(5G)がQualcomm Snapdragon 765Gであったのに対し、6aはGoogleオリジナルのGoogle Tensorとなった。

外部構造で大きく変わったのは、ついにアナログイヤフォン端子がなくなった事である。Pixel 5aまではあったので、aシリーズにはずっとあるものと思っていたが、ワイヤレスイヤフォンの普及からすれば、ついにそういう時代になったということであろう。Google Pixel Buds A-Seriesが無料で付いてくるのも、ワイヤードのイヤフォンを使ってきたユーザーへの便宜を図ったのかもしれない。

5a(5G)まであったイヤフォン端子はついに廃止

カメラは、意外に2年前から進化していない印象だ。ワイドカメラの画素数は下がったが、視野角は若干広い。コストがかかるハードウェアでスペックを上げるよりも、プロセッサとソフトウェアでカバーするという事だろう。

フロントカメラは左端から真ん中へ変更
Pixel 4a(5G)Pixel 6a
メインカメラ画素数12.2MP12.2MP
絞り値ƒ/1.7ƒ/1.7
視野角77°77°
ワイドカメラ画素16MP12MP
絞り値ƒ/2.2ƒ/2.2
視野角117度114度
フロントカメラ画素数8MP8MP
絞り値ƒ/2.0ƒ/2.0
視野角83度83度

ナチュラル方向へ倒した動画性能

スマートフォンのカメラは、もっとも気軽に使われる機能であり、進化も著しい部分である。スペックを見る限り、ハードウェア的に変更されたのはワイドカメラだけのように見えるが、実際どうなのだろうか。

まず写真だが、カメラとしてはメイン(1.0)とワイド(0.6)の2つながら、デジタルズームによる2.0モードの3つがある。

ワイド(0.6):4a(5G)
ワイド(0.6):6a
メイン(1.0):4a(5G)
メイン(1.0):6a
デジタルズーム2.0:4a(5G)
デジタルズーム2.0:6a
4a(5G)のメインカメラ
6aのメインカメラ

写真で比較してみる限り、機能的にはほとんど違いがわからない。色味に関しては、6aのほうが空抜けはいいが、柴の緑は4a(5G)のほうが若干良いように見える。

フロントカメラによるポートレート撮影では、6aのほうが肌色を浅く発色する傾向があるものの、ディテールなどはそれほど違いがない。ただ背景をボカすための輪郭の切り取りに関しては、6aの方が髪の細かい部分までよく判定されており、不自然さはかなり解消されている。

4a(5G)のフロントカメラ
6aのフロントカメラ

動画に関しては、メインカメラでは4K/60pまで撮影できるが、ワイドカメラでは4K/30pまでである。今回は4K/30pで撮影している。

4K/30pで撮影したサンプル

こうして比べてみると、6aはHDR的な手法でダイナミックレンジを圧縮する傾向があり、白飛び・黒つぶれは少ないが、見方によっては低コントラストに見えるかもしれない。一方4a(5G)はグリーンの発色を記憶色方向へ引っぱっているのか、緑だけは見栄えが良いが、空抜けなどは6aの方が優れている。6aはホワイトバランスも極力ナチュラルでリアリティのある方向へ持って行こうとしているようだ。

4a(5G)で撮影。緑の発色はいいがホワイトバランスは不自然
6aで撮影。空抜けは良く、全体的にナチュラルな傾向

一方HD解像度で撮影すると、画質面では6aのほうが劣る。気になったのでコーデックの詳細を調べてみたところ、4a(5G)ではH.264 High L5.1であったのに対し、6aではH.264 High L4.2になっている。ビットレートはほぼ同じだが、レベルが2段階後退しており、その影響が大きく出ているものと思われる。

なぜHDのみ動画コーデックを2段階も落とす必要があったのかは定かではないが、プロセッサが変更された影響なのかもしれない。

4a(5G)の動画キャプチャ。コントラストは浅めだが、ディテールは正確
6aの動画キャプチャ。見栄えはいいが、輪郭補正が強すぎる
HD/60pで撮影したサンプル

スローは、4a(5G)の時は解像度が720pになっていたが、6aではフルHDで撮れるようになっている。グリーンの発色でみると、4a(5G)はちょっとわざとらしい感じがするし、ディテールが飛んでしまっている。一方6aのほうは、グリーンの発色がリアルで、シャツのシワなども潰さずによく表現できている。

スロー撮影 Pixel 6a -AV Watch

音声収録もテストしてみた。2つ並べて同じ音声を収録しているが、4a(5G)のほうは風によるフカレでほとんど何を言っているのか聴き取れない。一方6aは風切り低減されており、音声レベルは少し低いものの、何をしゃべっているかは判別できる程度には集音できている。

音声収録テスト Pixel 6a -AV Watch

強力な「消しゴムマジック」

Google Pixelは、先進的な機能をまず最新機種の目玉として投入し、のちに下位モデルへ展開するという手法を取っている。Pixel 6/6Pro登場時にこれらの機種限定で投入された機能に、「レコーダー」アプリの文字起こし機能があった。だが今はアップデートにより、以前のモデルにも同様の機能が追加されている。

一方で今のところPixel 6シリーズにしか搭載されていない機能に、「消しゴムマジック」がある。これは「フォト」アプリの「ツール」に追加されたものだ。

「ツール」内に追加された「消しゴムマジック」

機能としては2つ、「消去」と「カモフラージュ」である。興味深いのは、このモードに入るとすぐAIが演算を始め、写真の中で異質のものを自動判定するところである。この画像の場合、日傘をさしている人物が、この画像の中で異質のものであると判定している。

ツールを起動すると、演算が始まる
演算の結果、人物が検出された

このまま「すべてを消去」を選ぶと、人物だけを消す事ができる。ただし、日傘は異質のものとは認めなかったようで、人だけが綺麗に消えてしまっている。改めて手動で日傘を選択すれば、それも消してくれる。このような異物判定は、かなり正確にマスクしてくれる。

オリジナル画像
人物「だけ」を消去してしまった
手動で選択すれば、傘も綺麗に消してくれる

一方「カモフラージュ」は、写っているものを消すのではなく、目立たない色に変えてくれる機能だ。例えば以下の写真は、手前にある赤い車だけがやけに目立って奥の建物の邪魔になるので、手動で選択して効果をかけると、目立たない色に変えてくれる。

オリジナル画像
赤い車だけ目立たないようカモフラージュ

こうした消去機能は、Adobe PhotoShopなどハイエンド画像処理ソフトにはすでに搭載されているところではあるが、スマホの純正アプリでここまでできるというのはなかなか強力である。さすがに大量に人が写っている写真から全員を消してしまうには無理があるが、ちょっと知らない人が見切れてしまった、みたいな場合には使えるだろう。

ただ、こうした機能を使ってゴミやノイズを修正する程度ならいいが、人などを丸ごと消した写真を報道などのメディアで使うのは、倫理的に難しいところだ。本来ならあったものを、痕跡も残さずなかった事にするのは、事実を報道していないとの批判も出てくるのではないだろうか。ここまで綺麗に消せるとなれば、どの範囲なら利用できるのか、様々な観点から議論したほうが良さそうだ。

総論

Pixel 5a(5G)が出たときには、4a(5G)からあまり変化がないということでちょっと安心したものである。だが6aはデザインもプロセッサも違っており、世代交代にふさわしいモデルチェンジである。

カメラ性能はそれほど変わっていないが、発色やダイナミックレンジの面で工夫が見られ、極力ナチュラルに見えるよう絵作りが変更されている。また音声収録についてもレベルが上がっており、かなり動画撮影に注力した点は評価したい。また静止画の「消しゴムマジック」も強力な機能だ。

動画コンテンツも視聴してみたが、HDRコンテンツの表示やサウンドは、ほとんど差が見られなかった。音楽再生については、4a(5G)が中低音重視なのに対して、6aは高域の抜けを重視したことで明瞭感が高い。ただ、スマホ直で音楽再生するというケースはそれほど多くはないだろう。

さすがに2世代も違えば、絵作りの面で進化が見られる。さらにもっと劇的な変化が欲しいと言う方は、7シリーズ登場まで待った方が良さそうだが、円安と半導体不足で価格がどれぐらいになるのか不安なところではある。

Googleの最新技術をリーズナブルな価格で体験できるモデルとして、このタイミングでの6aの購入は、悪い選択ではなかったと思っている。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。