小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1166回

小型化と性能のバランス極めた、500ml缶より小さいAnkerプロジェクタ「Capsule Air」の実力
2025年3月12日 08:00
世界最小のGoogle TV対応プロジェクター登場
昨年はプロジェクタの当たり年ともいえるほど多くの製品が登場し、また技術革新や低価格化も進んだ。今年も面白い製品が期待できそうな様子だが、早速Ankerが仕掛けてきた。
3月6日より発売が開始されたモバイルプロジェクタ「Nebula Capsule Air」は、Google TV対応モデルとしては世界最小を謳うモデル。500ml缶より小型ながら、150 ANSIルーメンを確保する。価格は49,990円だが、Amazonおよび公式サイトでは1,000台限定で20%オフクーポンが配布されている。また公式サイトでは、先着各色500個限定で公式スタンドのプレゼントキャンペーンも行なわれている。
円筒系が特徴のNebla Capsuleシリーズは、2018年から展開している、息の長いシリーズだ。バッテリー内蔵なので家じゅうどこでも、また出先でのプレゼンやアウトドアでも使えるということから、Ankerプロジェクタの中でも人気商品となっている。
しかし当然ながら小型化すれば、様々なところでしわ寄せが来るのも事実だ。そのバランスにどう納得できるか、というところがポイントになってくる。
Ankerの新作は、我々を納得させてくれるのか。借りてみたので、さっそく試してみよう。
小型ボディに詰め込んだスペック
Nebula Capsule Airは、スペースグレーとホワイトの2色展開となっている。ちなみにホワイトはシリーズ初のカラーで、今回はこちらをお借りしている。
サイズは直径68mm、高さ140mmの円筒形で、重量は約650g。500ml缶は缶重量と内部の液体の比重を考えると、だいたい510g前後だと思うので、サイズは500ml缶より小さいが、重さはある。
とはいえ500ml缶と比べても高さが合わない。何か適当なものはないかと探したところ、パルメザンチーズのケースとだいたい同じ高さだった。おおよその大きさは察していただけるのではないかと思う。
正面にレンズ、背面に端子類、天面に操作ボタンという構成だ。底部には固定用の三脚穴がある。操作用リモコンも付属する。
ディスプレイは0.16インチDLPで、解像度は1,280×720画素、光源はLEDで、明るさは150 ANSIルーメンでコントラスト比400:1となっている。独自のテクノロジー「Nebula IEA 4.0」という、オートフォーカスや自動台形補正も備える。投影画角は、40インチ投影で約1m、60インチで1.6m、80インチで2.13m、100インチで2.65mとなっている。
スピーカーは5Wが1基のモノラル仕様だが、Dolby Audioを採用している。Dolby Audioは特に小型デバイスの音質向上に効果があるとされる再生技術だ。オーディオフォーマットとしてはDolby Digital Plus対応となっているが、内蔵モノラルスピーカーでの再生には限界があるものと思われる。
スピーカーの位置は、後ろから見て背面のやや左向き。プロジェクタは自分の右側に置いたほうが良さそうだ。
内蔵バッテリー容量は仕様書に記載がないが、背面のUSB-C端子は内部バッテリーを充電できるほか、給電しながらの投影もできる。また別売のバッテリー搭載スタンドを利用すると、最大4時間の投影が可能になるという。スタンド側にバッテリーを持たせるというのは、面白いアイデアだ。
OSはGoogle TVで、NetflixやAmazon Prime Video、YouTubeなどのサービスに対応している。リモコンにもこの3つのサービスはショートカットボタンがある。
付属充電器はUSB-Cタイプで、最大出力は45Wとかなり大容量だ。
最小限ボディでも豊かなコンテンツ体験
では早速投影してみよう。今回はスクリーンから約2mの距離で投影しているので、サイズ的には80インチ弱というところだ。
レンズは仰角に付けられており、水平に設置すれば、だいたいレンズの高さが投影画面の底辺となると思っていただければいいだろう。
台形補正とオートフォーカスは、設置したらすぐに動作するので、あまり手間がかからない。AFは多少ズレる感じがある場合は、マニュアルで調整できる以外に、AFの校正を行なう事ができる。毎回ズレるようであれば、校正するといいだろう。ただ校正するには指定の距離と角度に置かなければならないので、カメラ用三脚を使って設置するといい。
150 ANSIルーメンという明るさをどう評価するかというところだが、日中に一般家庭のカーテンで遮光したぐらいでは、あまり見えない。やはりメインの利用は夜という事になるだろう。
画像モードとしては、標準、ムービー、会議、カスタムの4タイプが選択できる。会議モードが一番明るいが、カラーバランスが緑っぽくなって調整もできなくなるので、標準かムービーモードが使いやすいのではないだろうか。ムービーモードは、標準よりもやや暖色になる。
今回はNetflixにて、昨年公開された実写版「CITY HUNTER」を視聴した。HDR、5.1chコンテンツである。本機は一応HDRコンテンツ対応だが、2mも離れると輝度が出ないので、あまりHDRらしさはない。投影距離を60cm程度にすると輝度が稼げるのでHDRらしくはなるが、画面サイズは14インチぐらいになるので、プロジェクタらしい大画面にはならない。
色彩はRec.709に対して124%カバーということで、発色は高い。クロマが飽和する部分もないので、小型プロジェクタの割には鮮明な映像が楽しめる。
モバイルプロジェクタはバッテリーで動かせるのが一つのポイントになるわけだが、標準モードで連続再生してみたところ、だいたい2時間10分ぐらいでOFFとなった。映画1本は厳しいところだが、アニメ作品なら4本ぐらい見られる事になる。夜にちょっとした楽しみという点では、十分だろう。
解像度はいわゆる720pでフルHDを下回るので、若干フォーカスが甘い感じは否めない。ただ字幕などは問題なく読めるし、全面テキストなどを読むわけではないので、視聴に不都合はない。
音質としては、モノラルスピーカーなので広がり感は期待できないが、音声領域の解像感は高く、セリフも聞き取りやすい。ストーリーを追うといった視聴スタイルなら十分だ。
放熱ファンは背面上部のパンチンググリル部から吹き出しているようだ。小さくサーッという音が聞こえるが、コンテンツを邪魔するほどではない。
しっかりステレオ感を感じたいのであれば、Bluetoothイヤフォンも使える。遅延はリップにシビアな実写コンテンツでも気にならないレベルに抑えられている。
背面のUSBポートにUSBスピーカーCreative「SoundBlaster GS3」を繋いでみたところ、こちらからも再生できた。ただUSBポートから電源を取るタイプなので、音量は小さい。別途電源が用意されているUSBスピーカーなら、そこそこの音量で楽しめるだろう。
そのほかの機能としては、アプリとしてプリインストールされている「NEBULA Life」がある。これは風景や壁時計といったコンテンツを表示するアプリで、コンテンツを視聴しなくても、ちょっとしたインテリアとして、あるいは照明の代用として使うことができる。
コントロール用アプリ「NEBULA Control」も提供される。ツルツルの画面で十字キー操作だと手探りで操作できないが、ほかにもタッチパネル型、マウス型とコントロール形式を変えられるのが親切だ。
総論
コンパクトなモバイルプロジェクタということで、前提はどこかに常設するというよりは、あちこちに設置していろんなところに投影するという使い方になる。そう考えると、設置位置と投影場所との関係が常に平行とは限らないので、底部に角度が付けられるスタンドが欲しいところだ。この製品は、実はそこにもポイントがあるのではないか。
昨今はミニ三脚も廉価で手に入るが、本機は約650gとサイズの割には重いので、脚部が小さいスタンドだとひっくり返る可能性がある。純正スタンドを購入すればその点は考慮されていると思うが、汎用品を買うのなら足が大きく開くものがいいだろう。
投影できる場所は白い壁があればどこでもOKだが、割と天井が空いているのでそこに投写したいというニーズは大きいところだ。だがNEBULAシリーズは円筒系なので、天井に向けると転がってしまう点、背面端子が使えなくなる点に課題がある。
ちゃんとスクリーンを設置したいというなら、今は割と選択肢が多い。100インチぐらいでピンとテンションがかけられる簡易設置スクリーンが、1万円以下で買えるようになっている。屋外でも使用できるよう支柱を固定するロープやペグも同梱されており、庭でバーベキューしたあと、日が暮れてからまったり楽しむというのもいいだろう。
リモコンを忘れても、本体上部パネルやスマホアプリで代用できるところも強みだ。本体だけ持っていけば、とりあえずなんとかなる強みがある。
Nebula Capsule Airは、テレビに変わる大画面を求める人には物足りないかもしれないが、生活の中にちょっとした楽しみが欲しいといったニーズを満たす製品である。