小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1216回

空飛ぶ360度8Kカメラ、DJI「Avata 360」。クセになる爽快感
2026年4月1日 08:00
全景撮影に特化したドローン
DJIはドローン業界において、業務用とホビー用の両方をカバーする。昨今ホビー用は手のひらサイズの小型機に注力しており、「DJI Neo」シリーズはコントローラなしでハンドジェスチャーにより効果的な自撮りを実現するという方向に進化した。
また小型モデルでは昨年1月にDJI初の折り畳みモデル「DJI Flip」を発売しており、旅行先での気軽な自撮りにも対応した。
一方でゴーグルを使ってフライトを楽しむ、「DJI Avata」シリーズも展開している。初代「Avata」は日本では発売されなかったが、後継機の「Avata 2」から国内展開が始まった。
そしてAvataシリーズの新モデルが今回ご紹介する、「DJI Avata 360」だ。
価格はドローン単体が77,330円、コントローラー「DJI RC 2」のセットが116,380円、「Fly Moreコンボ(DJI RC 2付属)」が159,830円、「Motion Fly Moreコンボ」が162,140円。中国では3月26日から発売で、それ以外の地域は4月から順次発売が始まる見込みである。
ポイントとしては、DJIとしては初となる360度カメラ搭載ドローンということだ。先行する製品としては、昨年暮れにInsta360がサードパーティと共同開発したAntigravity A1があり、アクションカメラだけでなくドローンでもDJIとInsta360で火花を散らすことになりそうだ。
今回はFly Moreコンボに加えて、DJI Goggles N3とDJI RC Motion 3もお借りしているので、Motion Fly Moreコンボとしても使える状態にある。
早速試してみよう。
想像よりちょっと大きめの機体
まず機体だが、Avataシリーズとして手のひらサイズぐらいなのかと思ったら、246×199×55.5mm(長さ×幅×高さ)と、想像の一回り半ぐらい大きかった。手のひらに乗せようと思えば乗らなくもないが、底面積で言えば両手のひらをいっぱいに広げたぐらいのサイズだと思っていただければいいだろう。
プロペラは4枚羽根で、ガードがあるためか2枚羽根のように押して捻るだけみたいに簡単に交換できるような構造にはなっていない。もちろんプロペラは消耗品なので、ネジを外せば交換できる。
前方には2タイプの光学センサーが左右均等に付けられている。底部にも高度と位置を測定するセンサーがある。
正面から見て左側面にUSBポートとmicroSDカードスロットがある。内蔵ストレージも42GBあり、動画最大ビットレートは180Mbpsなので、30分ぐらいは内蔵だけで記録できる計算だ。
注目のカメラユニットは、前後に広角レンズが付いた360度カメラスタイルで、上下にチルトできる。左右のパンやZ軸回転機構はない。ブレ補正はチルト軸はメカニカルだが、それ以外は電子補正だ。
360度撮影の時はユニットが水平になり、レンズは上と下を同時に撮影する。シングルショットの場合はカメラユニットが垂直になり、片方のカメラだけを使うという仕組みだ。
レンズは視野角200度で、35mm換算7.8mm相当、絞りはF1.9で固定フォーカスである。最短撮影距離は1.5m。
センサーは1/1.1インチの正方形CMOSセンサーで、有効画素数は64メガピクセル。正方形なので、8000×8000ピクセルということになる。このレンズとセンサーが2つあるわけだ。
静止画最大サイズは360°モードの15,520×7,760ピクセル。動画撮影モードは表にまとめる。
| 撮影モード | 解像度 | フレームレート |
| 8K (2:1) | 7,680×3,840 | 60/50/48/30/25/24fps |
| 6K (2:1) | 6,000×3,000 | 60/50/48/30/25/24fps |
| 撮影モード | 解像度 | フレームレート |
| 4K (4:3) | 3,840×2,880 | 60/50/48/30/25/24fps |
| 4K (16:9) | 3,840×2,160 | 60/50/48/30/25/24fps |
| 2.7K (4:3) | 2,688×2,016 | 120/100/60/50/48/30/25/24fps |
| 2.7K (16:9) | 2,688×1,512 | 120/100/60/50/48/30/25/24fps |
障害物検知は、360°モードの場合はメインカメラが全域を捉えているので、全方向障害検知が可能だ。シングルレンズモードの場合は前方のみ障害検知が可能で、後方は効かないので、注意してほしい。
コントローラの「DJI RC 2」は以前から販売されているもので、5.5インチフルHDディスプレイを搭載している。中身はAndroidで、この中でDJI Flyが動くという作りになっている。32GBのストレージを搭載しており、画面収録やキャッシュが保存できる。
「DJI Goggles N3 」もすでに発売済みのモデルで、DJI Neo/DJI Avata 2に対応している。今回新たにファームアップでAvata 360にも対応した。内部構造に余裕があるので、メガネのままでも装着できる。
「DJI RC Motion 3 」は片手でドローン操作が可能なコントローラで、DJI Goggles N3と組み合わせて使用する。
コントローラを使ったフライト
では早速フライトしてみよう。場所はいつものように筆者が宮崎県児湯郡高鍋町に所有する山林である。まずは通常のドローン同様、DJI RC 2で操作してみる。
撮影モードとしては、360°モードとシングルレンズモードがあるが、これらは録画停止中でないと切り替えできない。
まずは一般的なシングルレンズモードでテストしてみた。飛行レスポンスとしては、DJIの他のドローンと比べるとかなりスポーティな感じがする。同じ撮影用とはいっても、微妙に性格が違うということだろう。
障害検知が正面しか効かないので、進路を後退する際は機体を前後180度回転させて、前向きにして戻す必要がある。
シングルレンズモードは、撮影メニューが少なく、「動画」が撮影できるのみだ。写真も撮影できないので、この機体では積極的に使うメリットが少ない。
360°モードでは、写真、動画、クイックショットの3つが使える。また人物などを範囲指定して自動追従させるトラッキングモードが使えるのも、360°モードだけだ。
トラッキングモードはアクティブトラック、スポットライト、POIの3つが使える。アクティブトラックでは、撮影シーンが選択できる。今のところ標準、サイクリング、スキーの3タイプだ。
スポットライトでは、「標準」に加えて「フリー」が選択できる。これは撮影方向をドローンが自動的に判断して移動しながら撮影してくれる。
レンズは360度撮影を前提とした超広角なので、従来機よりもかなり広角で撮れるものの、何かを狙って撮るという画角でもない。
コントローラによる操作は、ジョイスティックによる微妙な操作が可能なのがポイントだが、Avata 360はその微妙な操作にあまり対応できず、ガバッと動いてしまう。 また高速で動くことが前提なのか、物体検知のセンシング範囲が従来機より広い印象だ。
テストとして6畳間で飛ばしてみたが、壁の1.5mぐらいまでしか接近できず、身動き取れない感じになってしまった。この傾向は、ゴーグルと片手コントローラのほうがより顕著だ。
なおこの機体は自撮りメインのNeoシリーズと違い、機体単体での自動フライトやスマホアプリでのコントロールには対応しない。専用コントローラか、後述するゴーグルと片手コントローラのいずれかが必要になる。
新体験! ゴーグルと片手コントローラ
次にDJI Goggles N3とDJI RC Motion 3によるフライトを試してみた。実はこのセットは「DJI Neo 2」の時にもお借りしていたのだが、ゴーグルと機体がペアリングできず断念していた。
原因はゴーグルのファームが古く、新モデルの機体に対応していなかったためだ。「Motion Fly Moreコンボ」をお買いになる方はすでにゴーグル側は対応ファームが入っているものと思われるが、先にゴーグルを買ってある方、ゴーグルは後で流通在庫を購入される方はファームが古くて接続できない可能性があるので、ご注意願いたい。
ファームアップはゴーグルとスマホをケーブル接続し、DJI Flyアプリから行なう。途中片手コントローラを接続するように指示されるが、仮に持っていても「持っていない」を選択しないとファームアップへ進めない。以前筆者はここでつまづいていた。そんなわけでファームアップを完了し、ようやくフライトできるようになった。
片手コントローラは、ジャイロセンサーとグリップ型アクセル、ジョイスティックを使って機体をコントロールする。ゴーグルをかぶってしまうと手元が見えないので、事前にボタンなどの位置と操作方法を暗記しておく必要がある。
アクセルは2段階になっており、1段まで軽く握ってコントローラを左右に倒すと、機体も左右に旋回する。2段階まで深く握ると、前進する。逆にアクセルを開くと、後退する。
動作としてはシンプルだ。要するにアクセルを握ってコントローラを左右に倒すだけで、前進しながら左右に旋回するわけだ。
一方でドローン特有の垂直に上昇・下降、横移動といった操作は上記の操作ではできない。これらはジョイスティックを使って操作する。
なお日本の現行の法律では、操縦者がゴーグルを付けてフライトさせるのは目視外飛行に該当するので、ドローン情報基盤システム(DIPS)への申請が必要になる。今回は苦肉の策としてドローン空撮ができる友人に依頼し、目視による操縦とゴーグル装着によるアングル操作を交互に分担という格好でテストした。
カメラは360度全周を撮っているので、ゴーグルを付けて首を振るだけでそちら側の映像を確認することができる。首の動きと映像のレスポンスは、ほとんど遅れは感じられない。実際に伝送されてくる映像とはディレイがあるのだろう。伝送された後の映像をジャイロセンサーで動かしているので、その部分でのディレイはない。
リアルタイムの風景と映像は伝送によるディレイは発生しているはずだが、そもそも機体が見えているわけではないので、遅れていてもわからない。
ゴーグル内の映像も記録できるので、今回はそちらで見ていくことにする。ステータスなどを確認しながら見ていくといいだろう。
所有する山林はかなり広いものの、中に道があるわけではないので、筆者も中に入ったことはない。よって植生もよくわからないのだが、ゴーグルで見下ろせば、状況が確認しやすい。
一箇所、木がひっくり返って根っこが見えているのではないかと思われる場所を見つけたが、真下を見ながら、友人にドローンを垂直に降下させてもらうと、根っこではなく枯れた木であることが確認できた。
従来機でも似たようなことはできるが、操作に気を取られてなかなか画面内の映像までしっかり確認できなかった。ゴーグルの映像はHD解像度しかないが、太陽の反射もなくしっかり確認できるので、こうした見回りみたいなことにも非常に有用であることがわかった。
障害物検知も優秀で、低空飛行で樹木に接近すると警告音が鳴るので、引き返せる。前に進みながら上下左右にフライトするのは、アクセルを握って片手コントローラを倒すだけなので、思ったよりも簡単にマスターできた。
前回同じ場所でNeo 2を飛ばした時は、カラスが向かってきて大騒ぎになってしまったが、Avata 360は機体もそこそこ大きいので、カラスも勝てないと判断したようだ。どこかで鳴き声はするが、向かっては来なかった。そういうところも一つのメリットなのかもしれない。
写真モードでも撮影してみた。15,520×7,760ピクセルで撮影されるので、かなりの巨大画像である。逆に言えばこうした360度写真しか撮れないので、アングルが決められず露出もオートで撮るしかない。空撮写真を楽しむのであれば、Avata 360以外のモデルのほうが楽しめそうだ。
総論
360度カメラ搭載ドローンは、本来ならば360度撮影した動画を後から切り出すことで撮影の失敗をなくすという使い方が妥当である。
もちろんそうした使い方も可能なのだが、機体としての最大の面白さは、ゴーグルを使ってフライト中に首を振ればその方向が見られる自由さにあるのだと思う。前方しか見られず、違うところを見るには機体を旋回させなければならないのに比べると、格段に自由度が違う。
フライト中は、ゴーグルで見ている方向と機体が進行中の方向が違うと、自動で機体進行方向の画像もPinPされる。ゴーグルで他のところを見ていても、状況が確認できる。
今回片手コントローラを初めて試してみたが、ひらけた場所での操作は、かなり爽快感がある。これまでのドローン体験とはまた違い、録画しなくてもとりあえず飛ばしてみたいという面白さを感じた。
一方でシングルレンズモードは、何かシングルならではの機能があればまた違ったのだろうが、現時点では積極的にこのモードを使うメリットが感じられなかった。今後のアップデートを期待したい。
Antigravity A1と競合するモデルだが、あまり大仰感がなく、これまでの延長線上で360度撮影に対応した点では、安心できる。現在価格的にはAntigravity A1がスプリングセールとしてAvaita 360と価格を合わせてきているので、ちょっと悩ましいところだ。
このクセになるフライトの爽快感を、ぜひ挑戦してみてほしい。


















