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ネットワークオーディオをもっと簡単&自由にする「OpenHome」とは何か?

 デジタルファイル再生に興味のある人なら、ネットワークオーディオの「OpenHome」という単語を見たことがあるかもしれない。ただ、製品やソフトが「OpenHome対応」と書かれることはあっても、それが何なのか、どんな意味を持つのかについては、あまり詳しく触れられてこなかったように思う。

 OpenHomeを使う主なメリットは、組み合わせる機器や操作の自由度の高さにある。そこでこの記事では、OpenHomeというものについて、概要の紹介やシステムの構築、実際の運用を行ないながら解説していく。決して複雑なものではなく、導入することで大きなメリットが得られるとわかってもらえるはずだ。

ネットワークオーディオの基本。OpenHomeとDLNA

 基本的に、ネットワークオーディオは「UPnPを利用するシステム」と、そうでないシステムに大別できる。UPnPをベースにしたものでは「DLNA」というガイドラインが有名だ。

 今回解説するOpenHomeは、DLNAと同様、UPnPをベースに構築されたネットワークオーディオのプラットフォーム。OpenHomeは音楽再生のためのより高度な機能を備えており、DLNAの事実上の改良版と考えることもできる。DLNAは昨年初頭に解散し、今後ガイドラインのアップデートも行なわれない。そのため、OpenHomeは実質的な「DLNAの後継」という意味でも重要になる。

 OpenHomeを語るために、まずDLNAについて改めて説明しよう。

 DLNAは今から10年以上前に、ネットワークオーディオのシステムを構成する3つのデバイスクラスを規定した。音源の保存と配信を担う「DMS」(Digital Media Server)・音源の再生機能を担う「DMR」(Digital Media Renderer)・音源のブラウズや実際の再生操作を担う「DMC」(Digital Media Controller)である。この「サーバー」、「プレーヤー」、「コントローラー」の3要素から成るシステムは、DLNAという枠を越えて、今日に至るまでネットワークオーディオの基本形となっている。

 初めてネットワークオーディオのシステムを構築する際、製品の多さや相互接続性が保証されていることから、DLNA対応の機器を選んだ人も多いだろう。もしネットワークオーディオプレーヤーのメーカー純正アプリが気に入らなくてもサードパーティー製アプリが使えるなど、自由度の高さもDLNAの魅力。実際DLNA対応・互換を謳う製品は非常に多く、オーディオ用途に関して言えば、「UPnPと、それをベースにしたDLNAがほとんど同じものとして扱われる」状況になっている。

 ただ、DLNAは「そのまま」オーディオ用途に用いるには様々な面で問題を抱えていたと言わざるを得ない。その具体的な内容については後述していく。

OpenHomeの成り立ちとこれまでの動き

 OpenHome、あるいはネットワークオーディオそのものを語るうえで、スコットランドのオーディオブランドであるLINNの存在を無視することはできない。

 LINNは2007年、世界に先駆けて本格的なネットワークオーディオプレーヤー「KLIMAX DS」を登場させた。プラットフォームとしてDLNAを採用せず、UPnPでシステムを作り込んでいくことを選択したLINNは、発売以降不断のアップデートを重ねてDSを進化させていった。その結果、国内外のメーカーから本格的にネットワークオーディオプレーヤーが登場し始めた2010年には、DSシリーズは既に現在と遜色ないレベルの快適な音楽再生を実現していた。「SongBook DS」、「ChorusDS」という優れた専用コントロールアプリが存在したことに加え、同年に初代iPadが登場したことも大きく寄与した。

ChorusDSのiPad版「ChorusDS HD」
SongBook DSをiPadで使った例

 さらに、LINNはDSの開発にあたって作り上げてきた様々なソフトウェア・ライブラリをオープンにしてきた。LINNは伝統的に閉鎖的なやり方を好まず、「オープンであること」を大切にするとはいえ、いささか驚くべき方針と言うほかない。これを基に、幅広く利用可能なネットワークオーディオのプラットフォームとしてまとめられたのがOpenHomeだ。

 このようにLINNとの関係が深いOpenHomeだが、LINNとは別組織であり、独自の団体として活動している。

 OpenHomeに対応するネットワークオーディオプレーヤーは2014年頃から、海外メーカーを中心に登場し始めた。日本メーカーとしては、2014年の秋にバッファロー(現メルコシンクレッツ)のDELAブランドのミュージックライブラリが、アップデートで音源の再生機能を搭載する際にOpenHomeに対応したのが初となる。

 これらの製品はいずれも、従来のDLNAを採用する製品とは一線を画したユーザビリティを実現している。特にDELAの製品が「OpenHome対応ネットワークオーディオトランスポート」としての機能を獲得したことは、USB DACをネットワークオーディオのスタイルで活用する道を切り開いたこととあわせ、大きなインパクトがあった。

 昨今ではティアック/エソテリック、アイ・オー・データのfidata、SFORZATOといった国内ブランドからもOpenHome対応プレーヤーが登場している。さらに、JPLAYやTuneBrowserといったPCの再生ソフトにもリモートコントロールのために採用されるなど、OpenHomeは存在感を増している。

OpenHomeのネットワーク再生で使う機材は?

 実際にOpenHomeに対応するプレーヤーとアプリを使い、ネットワークオーディオのシステムを構築してみよう。

 OpenHomeは基本的に「プレーヤー」と「コントローラー」の枠組みであり、「サーバー」は従来のUPnP/DLNA対応のものをそのまま利用することができる。既にDLNA対応のプレーヤーを使っている人であれば、プレーヤーとアプリを替えるだけで済む。

 「サーバー」「プレーヤー」「コントローラー」はネットワークで接続され、役割を図に示すと以下のようになる。今回はサーバーに「Soundgenic HDL-RA2HF」(アイ・オー・データ機器)、プレーヤーに「NT-505」(ティアック)、コントローラーには「HR Streamer」(ティアック)を用いた。

「サーバー」、「プレーヤー」、「コントローラー」の役割

 サーバーとして使った「Soundgenic HDL-RA2HF」はアイ・オー・データ機器のネットワークオーディオ向けNAS。HDD搭載モデルとSSD搭載モデルが用意され、今回使用したのはHDDモデル。実売35,000円前後の安価な製品とはいえ、ファンレス仕様で、サーバーソフトにTwonky Serverを採用、高剛性筐体など、しっかりとオーディオ用途を意識している。

 同社のオーディオブランド「fidata」で培った機能を継承しており、サーバーだけでなくOpenHomeに対応するプレーヤー機能も持ち合わせている。純正アプリ「fidata Music App」の完成度も高く、USB出力を持つ優れたネットワークオーディオトランスポートとして機能する。本機のプレーヤー機能については記事後半で活用する。

アイ・オー・データ機器「Soundgenic HDL-RA2HF」

 「NT-505」はティアックのネットワークオーディオプレーヤー/USB DAC。OpenHomeに対応するDAC搭載型のネットワークオーディオプレーヤーとしては安価な部類だ。USB入力も備えているため、柔軟なシステム構築が可能。非常に多機能なモデルであり、ネットワークオーディオプレーヤーとしても、USB DACとしても先端の仕様を備える。DACチップにAKM AK4497をデュアルモノラル構成で搭載、さらに電源部もトロイダルトランスをデュアルモノラルで搭載するなど、オーディオ機器としての作り込みも徹底されている。今回のシステムではSoundgenicをサーバー、NT-505をプレーヤーとして使用したが、Soundgenicをサーバー兼プレーヤー、本機を純粋なUSB DACとして使用することも可能だ。

ティアック「NT-505」

 HR StreamerはTEACのネットワークオーディオプレーヤー用コントロールアプリ。高い完成度で定評のある「LUMIN App」をベースにしており、操作性は極めて優秀。情報量豊かに表示されたライブラリの中から聴きたい曲を素早く探し出し、アルバムの枠に捉われずに聴きたい曲を聴きたいように聴くという一連の音楽再生操作を快適に行なえる。現状ではiPhone版とiPad版が用意されている。

コントローラとして使ったスマホアプリ「HR Streamer」

OpeHomeのネットワークオーディオ環境を作る

 SoundgenicとNT-505のLAN端子をルーターまたはハブに有線接続し、HR StreamerをインストールしたiPhoneまたはiPadをWi-Fi(無線LAN)接続すれば、音楽を聴く準備は完了。言うまでもないことだが、再生する音源はあらかじめ用意しておき、サーバー(この場合はSoundgenic)に保存する必要がある。なお、Soundgenicの設定や使い方については、以前掲載されたレビュー記事で詳しく紹介されている。

SoundgenicとNT-505をネットワーク接続

 機器の接続と起動が完了したら、NT-505の入力は「NET」を選択。コントロールアプリのHR Streamerを起動する。HR Streamer(iPad版)は、画面上部に再生情報と各種操作ボタン、左にプレイリスト、右に音源のブラウズ領域というレイアウトになっている。

「HR Streamer」のiPad画面。上部は再生情報と各種操作ボタン、左がプレイリスト、右が音源のブラウズ

 まずは使用するプレーヤーとサーバーを確認/選択するために、画面右上の歯車のアイコンをタップ。今回は「Music Player」(プレーヤー)にNT-505、「ミュージックライブラリー」(サーバー)にSoundgenicが選択されており、これで問題ない。

 同一ネットワーク上に複数のプレーヤー・サーバーがある場合、それぞれの枠をタップし、使用するものを一覧の中から選択する。詳細設定ではNT-505のオプションやアプリの挙動も細かく設定可能。

Music Player」(プレーヤー)にNT-505、「ミュージックライブラリー」(サーバー)にSoundgenicが選択されている
プレーヤー選択
サーバー選択
詳細設定画面

 あとは、ブラウズ領域のサムネイルをタップし、「アルバム」、「アーティスト」、「ジャンル」といった様々な要素で絞り込みながら、聴きたい曲を探していけばいい。

「アルバム」、「アーティスト」などでソートしながら曲を探す

 なお、音源のブラウズの際に利用できる項目は、サーバーが搭載しているサーバーソフトによって異なる。Soundgenicは「Twonky Server」のカスタム版を使用しており、「作曲者」、「フォーマット」、「年代」といった項目も用意されている。

「アルバム」を選択したところ。Soundgenicに保存されたすべてのアルバムが表示されている

 アルバムのサムネイルを長押しタップすることで、アルバム単位でプレイリストへの登録が可能。この時、「プレイリストの末尾に登録してすぐに再生」「現在再生中の曲の次に登録」「プレイリストの末尾に登録」「現在のプレイリストを消去して登録」という四つの挙動が選択できる。

4つの方法で登録可能
アルバム全曲をプレイリストに登録して再生している様子。画面上部には再生している音源の情報がアルバムアートを含めて詳細に表示
アルバムをタップすれば、その中の全曲が表示される。ここでは一曲ずつ、自由な順番でプレイリストに登録できる

 「聴きたい曲を選んでプレイリストに登録」を繰り返すことで、アルバムの制約を越えた音楽の聴き方が可能になる。数時間に及ぶ長大なオペラをディスクの入れ替えなしに通して聴いたり、同じ曲のバージョン違いを即座に切り替えながら聴き比べたりと、プレイリスト再生には大きな可能性がある。

複数のアルバムをプレイリストに登録

 アルバム単位でも一曲単位でもプレイリスト登録時の自由度は変わらない。再生中の音源のアルバムアートをタップすることで画面一杯に表示することもできる。

アルバム単位/曲単位でも自由に登録できる

 さらにNT-505はロスレス音楽ストリーミングサービスのTIDALとQobuzに対応(日本向け配信は未サービス)。HR Streamerを使えば、あたかも「選べるサーバーが増えた」感覚で、プレイリストへの登録と再生はローカルの音源と区別なく行なえる。なお、今後アップデートでRoon対応(Roon Ready)となる予定。

TIDALやQobuzの楽曲もローカルの音源と区別なくプレイリストに入れられる

 iPhone版アプリは再生情報・プレイリスト・ブラウズを画面単位で切り替える形になるが、基本的な操作感はiPad版とかわらない。

iPhoneアプリ画面

 このような音楽再生の操作のすべてを手元の端末から、視聴位置の椅子に腰かけたまま行なえるというのが、ネットワークオーディオならではの醍醐味である。

DLNAに比べた優位点とは? 注意したいことや賢く使う工夫も

 ここまでは、使用しているプレーヤーやコントロールアプリの機能性は違うかもしれないが、音楽再生の流れそのものはDLNAのシステムとなんら変わらない。OpenHomeがDLNAに対してはっきりと優位性を示すのはここからだ。

 DLNAに準拠するプレーヤーが抱えている最たる問題を挙げるとすれば、「ギャップレス再生」と「プレイリスト再生」の2つになるだろう。

 クラシックやライブ音源を再生する際、曲間で音が途切れる(ギャップ)ことなく再生が行なわれる。これをギャップレス再生と呼ぶ。従来のCD再生からすればあまりにも当然の機能なのだが、DLNAに準拠する初期のネットワークオーディオプレーヤーは対応しない製品も多かった。

 次に、プレイリスト再生。プレイリストとは、HR Streamerの解説でも触れたように、ファイル音源を再生する際に使われる一時的な再生曲のリストを指す。

プレイリストの例

 ネットワークオーディオのシステムで、プレイリスト関連の機能は「コントローラー」、つまりスマートフォンやタブレット端末にインストールするコントロールアプリが担う。聴きたい曲を自由にプレイリストに登録したら、あとはアプリを閉じて端末を置いて、目を瞑って音楽に浸りたいところだ。しかし、DLNA準拠のプレーヤーでは、ここで問題が起きた。

 DLNAのシステムでは、プレイリストは基本的にコントロールアプリが保持する。そのため、たとえプレイリストに複数の曲を登録していても、アプリがアクティブではなくなると、その時点で再生指示が行なわれなくなる。結果的に、「プレイリストの次の曲が再生されない」、「一曲で再生が止まる」という笑えない事態が生じる。

 一方、OpenHomeのシステムではコントロールアプリではなく、プレーヤーがプレイリストを保持する。プレイリストの管理編集は今まで通りアプリの側で行ない、「保持」をプレーヤーの側が担うという仕組みだ。この機能は「オンデバイス・プレイリスト」とも呼ばれる。これにより、コントロールアプリでプレイリストを作り、曲の再生を始めれば、アプリを終了させようが端末をスリープさせようが、プレイリストの全曲が再生される。

 ちなみに、プレイリストをプレーヤーが保持するOpenHomeならではの機能として、「プレイリストや再生している音源の情報を複数のアプリで同期できる」というものがある。これは発想次第では面白い使い方が可能。現在再生中の曲の情報を複数の端末から確認できるのはもちろん、たとえば試聴会的なものを行なう際、まさにカラオケの曲予約のごとく、各自の端末から聴きたい曲をプレイリストに登録していくこともできる。

iPhoneとiPadのHR Streamerで、プレイリストと再生情報を同期

 クラシックやライブ音源で音が途切れることなく再生される。再生を始めればアルバムの全曲が終わりまで再生される。一時停止・スキップ・シークといった操作が滞りなく行なえる。これらはあまりにも当然のことであり、CDやPCの再生ソフト等を使って音楽を聴いている人からすれば「今さら何を言っているんだ」と思うかもしれない。しかし現実には、ネットワークオーディオの黎明期から今に至るまで、音楽再生機器として当たり前の機能すら備えていない製品が存在してきたことも事実。

 DLNA準拠のプレーヤーが長らく抱えてきたこのような問題を一挙に解決し、プレーヤーが音楽再生機器として備えていて然るべき機能を実現するという点で、OpenHomeは大きな意味を持つ。

 もちろん、DLNAにのみ対応するプレーヤーであっても、優れたユーザビリティを実現することは決して不可能ではなく、そういった製品も存在している。しかしその場合、プレーヤーを満足に機能させるためには得てして純正アプリとの組み合わせが必須となり、DLNAの魅力でもある汎用性は失われる。

 それに対してOpenHomeは、様々なコントロールアプリを使える汎用性も併せ持つ。LINN KazooやBubbleUPnPなど、OpenHome対応プレーヤーで汎用的に使用可能な優れたコントロールアプリの存在は大きな強み。よほどのこだわりでもない限り、独自にシステムを作り込むよりも、素直にOpenHomeに対応した⽅が、メーカーとユーザーの双方に様々なメリットがあるというわけだ。

 ただ、同じくUPnPベースとはいえDLNAとOpenHomeは別のプラットフォームであり、機能しないプレーヤーとアプリの組み合わせもある。これはプレーヤー・アプリともに「DLNAにのみ対応」、「DLNAとOpenHomeの両方に対応」、「OpenHomeにのみ対応」の3種類が存在することによる。

 今回使用したSoundgenicはプレーヤーとしての機能をDLNAとOpenHomeから選択できる。これを利用して、プレーヤーとアプリの組み合わせについて解説する。下の画面はこれはSoundgenicの設定画面だ。「システム設定」の中に、「Network Renderer設定」という項目が用意されている。ここで、プレーヤー機能のDLNA(DMR)対応・OpenHome対応を選択できる。

Soundgenicの設定画面
Network Renderer設定から、プレーヤー機能のDLNA(DMR)対応・OpenHome対応を選択

 この状態で、NT-505とUSB接続したSoundgenic(HDL-RA2HF)を様々なコントロールアプリから見てみる。

 まずは、fidata/Soundgenicの純正アプリ「fidata Music App」を使用。どちらもOpenHome対応なので、Soundgenicをコントロールできる。筆者が使っているスフォルツァートの「DSP-Dorado」も表示されており、他社製のプレーヤーでも使えることがわかる。

Soundgenicの純正アプリ「fidata Music App」から見た様子

 次に、NT-505の純正アプリ「HR Streamer」から見てみる。他社製アプリではあるが、どちらもOpenHomeに対応しているので、Soundgenicをコントロール可能。

NT-505の純正アプリ「HR Streamer」から見た場合

 次は、記事中でもたびたび登場しているLINNの純正アプリ「Kazoo」でも見てみると、LINN DSだけでなく、他社製プレーヤーでも使用可能なのが分かる。

LINNのKazooから見た画面

 このように、SoundgenicはOpenHomeに対応するコントロールアプリであれば、かなり汎用的に使用可能となっている。

 一方、「mconnect player HD」では、Soundgenicが表示されない(使用できない)。このアプリはUPnP/DLNA対応で、同じくUPnPベースであるOpenHomeについては特に記載はないのだが、OpenHome対応プレーヤーでは使用できない。

mconnect player HDからはSoundgenicの中が見えず、OpenHome対応プレーヤーは使えないようだ

 このように、「使いやすい」、「プレーヤーを変えてもずっと使いたい」」と思えるUPnP/DLNA対応のアプリがあったとしても、OpenHome対応のプレーヤーでは使えなくなる可能性があるので注意が必要だ。

 続いて、Soundgenicの設定で「DMR」、つまりDLNA対応を選択する。

Soundgenicで「DMR」を選択

 fidata Music AppではOpenHome時同様にSoundgenicが表示されている。これはつまり、fidata Music Appが「DLNAとOpenHomeの両方に対応」するアプリということを示している。同じようなアプリにはLINNの「Kinsky」や、Bubblesoftの「BubbleUPnP」がある。

fidata Music App画面

 HR StreamerとKazooではSoundgenicが表示されない(使用できない)。つまり、このふたつは「OpenHomeにのみ対応」するアプリである。

DLNAではHR StreamerからSoundgenicが表示されなかった

 mconnect player HDでは「UPnP Devices」にSoundgenicが表示され、使用可能になった。つまりmconnect player HDはUPnP対応とは言いつつ、実質的に「DLNAにのみ対応」するアプリということになる。これは「ネットワークオーディオの領域でUPnPとDLNAはほとんど同じものとして扱われている」一例だ。

mconnect player HDの「UPnP Devices」にSoundgenicが表示された

これから始める人も、DLNAに不満があった人も

 OpenHomeはDLNAが抱えていた問題を払拭して満足のいくユーザビリティを実現する一方、例えば昨今注目を集めるRoon/Roon Readyのように際立った新規性はない。しかしUPnPをベースにしていることで、従来のサーバーを引き続き使用可能などシステムの構築や発展が容易であり、組み合わせの自由度もある。

 現にOpenHomeは優れた完成度のコントロールアプリが色々と出揃っているおかげで、「ライブラリを巡り、聴きたい曲を自由自在に選び、快適に音楽を聴く」というネットワークオーディオならではのメリットを存分に享受するための、最良の選択肢のひとつとなっている。

 これからネットワークオーディオを始めようというユーザーだけでなく、DLNA対応のプレーヤーのユーザビリティに不満を感じているユーザーも、ぜひOpenHome対応のプレーヤーを試してみてほしい。

逆木 一

オーディオ&ビジュアルライター。ネットワークオーディオに大きな可能性を見出し、そのノウハウをブログで発信していたことがきっかけでライター活動を始める。物書きとしてのモットーは「楽しい」「面白い」という体験や感情を伝えること。雪国ならではの静謐かつ気兼ねなく音が出せる環境で、オーディオとホームシアターの両方に邁進中。ブログ:「言の葉の穴」