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最新ブラビアは“ネット動画”がキレイ。大画面でも滑らか&ノイズレスに

85型の4KミニLED液晶「XRJ-85X95L」

ソニーマーケティングは、今年5月から順次発売を開始しているブラビア・2023年モデルの体験会を開催。2022年モデルからの進化点や、ブラビアに搭載されている独自機能、85型ブラビアとPS5「ファイナルファンタジーXVI」を組み合わせたゲーム体験などを、各設計者らが解説した。

本稿では、「映像」「音」「ゲーム」のパートに分けて、体験会の内容を紹介する。なお、各シリーズの詳細については4月掲載のニュースを参照されたい。

【2023年発売のBRAVIAラインナップ】
※数字は店頭予想価格(万円)

型名タイプ85型77型75型65型55型50型43型
A80L有機-84.7-50.639.6--
X95L液晶99-71.547.3---
X90L液晶60.5-4435.2---
X85L液晶---27.521.5--
X80L液晶41.8-30.824.218.716.515.4
X75WL液晶--24.218.714.913.812.7

映像:ネット動画の画質が大幅改善。85型鑑賞でもキレイに

2023年モデルにおける、映像面での進化トピックが「XR Clear Image」。

ブラビアには、上位モデルを対象に、ソニーが独自に開発した認知特性プロセッサー「XR」が搭載されている。XRは、OSなどを動かすSoCとは別に、映像と音の信号処理のために設けられた専用チップで、“人の脳のように”数十万の画質要素を横断的に分析・処理する事で、人が目で感じる自然な美しさを描写できるのが強み。さらに、あらゆる音源を立体音響へと変換し、独自技術と掛け合わせることで音の臨場感も向上。こうした映像と音の処理によって、ブラビアでは“究極の没入体験”を目指している。

認知特性プロセッサー「XR」

モデルの更新と合わせてXRプロセッサも進化しており、2023年モデルの有機EL「A80L」、液晶「X95L」「X90L」の3シリーズには、第3世代のプロセッサを採用。その第3世代で追加されたのが前述のXR Clear Imageとなる。

65型「XRJ-65A80L」
65型「XRJ-65X90L」

XR Clear Imageが行なう映像処理は、ノイズリダクション(NR)と超解像。NRと超解像は従来モデルにも搭載されていたが、用意されているパラメータが1種類だったため、処理の効きがコンテンツでまちまちだった。特に放送波やネット動画といった比較的低品位な映像では、圧縮ノイズやジャギーが取れず、55型を超えるような大画面ではそれらが余計に目立ってしまっていた。

XR Clear Imgaeでは、表示するコンテンツに応じて適応パラメータを可変させる処理を導入。コンテンツの解像度やエンコード情報、ビットレート、動き情報、テロップの場所など、様々な情報を高精度に検出することで、NRと超解像を最適化。これにより、パッケージから放送、ネット動画までノイズの少ないクリアな映像が楽しめるようにした。解像度検出については、ネイティブなのか、アップコンなのかの信号品位も見ているという。

なお、XR Clear ImageのON/OFFはメニューになく、ダイナミックやスタンダード、シネマなどのモードと、コンテンツに連動して動作する。原画忠実のカスタムやIMAX enhancedモードでは動作しない。

コンテンツに応じて、NRと超解像を最適化できるようになった
効果のイメージ

体験会では、85型の4KミニLED液晶「XRJ-85X95L」('23年)と「XRJ-85X95K」('22年)を並べ、地デジのバラエティ番組(TVer)を比較。85型のX95Kでは、テロップのジャギーが酷く、文字の周辺もノイズだらけ。至近距離(3m前後)での試聴、加えてコンテンツのカメラの動きが激しい事もあって、長時間見るのは正直かなり辛いクオリティと感じた。

一方、X95Lではテロップのギザギザが取れ滑らかになっており、周辺のノイズも減ってクリアーに。手持ちカメラがパンしても先ほどのような大きなブレが感じにくく、全体の精細感も大幅に改善されていた。これであれば、ネット動画もキレイに楽しめそう。

同機能については、「スタンダードモードにおいても、コンテンツが映画と判断した場合は、製作者が意図したエッセンスを極力残すようにチューニングしている」とのこと。

「(「シカゴ」のような)フィルムグレインが多いコンテンツにおいても、XR Clear Imageではグレインをノイズと誤って判断して除去しないようにしている。ただ、何もしないで鮮鋭感をただ強調しただけでは、大画面ではグレインがジラジラと目立ってしまう。顔の中のフォーカス感、目の切れだったり鼻筋の通っている感じだとかを強めつつ、グレインを目立たせずに残す。真っ暗な部屋で観た時、マスターモニターとなるべく同じような見え方になるようバランスさせた」という。

実際に、スタンダードモードのまま、暗室環境で映画を再生。全体に眠くノイジーな前モデルに比べ、最新モデルでは、グレインが程よく残りつつ、女優の顔もクッキリとし、大画面でも見やすい画作りになっていた。

聞けば、'22年モデルのXR搭載ブラビアから、環境光センサーが“暗室(相当)”と判断すると、スタンダードモードでもコントラストや色温度などを自動的に調整し「マスターモニターのような見え方に近づける画作りにしている」という。

環境光センター「入」の場合。左下が「BVM-HX310」、右が「XRJ-85X95L」
「切」の場合

「お客様が特別な操作をせずに、テレビが環境を自動的に検出してクリエイターインテントに近い画に仕上げるようにした。実際には、エンハンスもNRもしないカスタムモードが最もマスターモニターに近い状態にはなるのだが、部屋を暗くする&モードを変えるという2つの操作はなかなか手間。そうした煩わしさもなく、照明の操作だけで、スタンダードモードでもモニターライクな画が楽しめる」とのことだった。

環境光センター「入」の場合。左下が「BVM-HX310」、右が「XRJ-85X95L」
「切」の場合

音:‟ベゼルを叩いて”高音を出すフレームツイーターを初搭載

ブラビアでは、“映像と音響の一体感による臨場感再現”を音の目標として掲げており、その再現力を向上させるための様々な施策を行なってきた。

体験会では、2023年モデルのハイライトとして、有機EL「A80L」に搭載したピエゾアクチュエーターと4KミニLED液晶「X95L」に搭載したフレームツイーターが紹介された。

4KミニLED液晶「X95L」
4K有機EL「A80L」

4K有機ELブラビアでは、初号機から、Acoustic Surface Audioシステムを採用している。これはアクチュエーターと呼ぶ加振デバイスを有機ELセルに直接貼り付けることで、画面自体を震わせて画面から直接音を出すというもの。ただ、これにより画音の一体感は表現できる一方で、アクチュエーターに対して大きく重い有機ELセルを“細かく速く”加振させて高域を出すのは苦手だった。

そこを補完するのがA80Lに搭載したピエゾアクチュエーター。これをセルの左右に取り付けることで、従来のアクチュエーターでは出せなかった高域を表現。聞きやすさを改善したという。

写真左からピエゾアクチュエーター、55型と65型に搭載するダイナミックアクチュエーター、77型搭載のダイナミックアクチュエーター
これがピエゾアクチュエーター。実は'22年発売のA80Kから搭載しているという

フレームツイーターは、4KミニLED「X95L」シリーズに採用されている技術。

4K液晶ブラビアでは、Acoustic Multi Audioとして、画面下方のメインスピーカーと上部にダイナミックツイーターを組み合わせることで画音一体を目指してきた。ただ、この方法では回折や壁の反射を利用して高域を背面から前方に持ってくる必要があった。

そこで、「回折や反射ではなく、高域の音を直接視聴者へ届ける」べく、開発されたのがフレームツイーター。ピエゾ素子を内部に使ったデバイスを左右側面に設置。デバイスの突起部がディスプレイを囲う“ベゼル”そのものを高速で叩くことで、ベゼルを振動させて高域を生成させる。ツイーターの取り付け位置や、ベゼルの厚みをインチ毎に最適化する事で、音圧やメインスピーカーとの音の繋がりを向上させているという。

開発者は「ベゼルを加振させて直接音を届けることで、より音の迫力や拡がりを感じ、コンテンツへの没入感を高めることができる」とフレームツイーターのメリットを説明する。

フレームツイーター。写真右側の小さな突起で、ベゼルを叩く

このフレームツイーター、すでに海外で発売する8Kモデルには採用済みの技術で、日本での展開はX95Lが初めて。日本での展開にあたっては、デバイスの固定箇所を見直すことで低歪み化を実現したり、駆動系材料を最適化する事で音圧の向上に寄与。2キロヘルツから上の音圧を2~3dBアップさせることができたとのこと。

従来モデル(X95K)と映画コンテンツで聞き比べたが、フレームツイータ搭載のX95Lでは、高域の抜けが増し、音場も広くなっていた。またセリフの印象も異なり、スッキリと聞きやすくなっていた。

ツイーターの取り付けイメージ

ソニー製サウンドバーをブラビアと連携させる「アコースティックセンターシンク」も、XR搭載機が持つ機能の1つ。センター成分の再生を「高域:テレビ側、低域:サウンドバー側」と2ウェイ構成にすることで、人の声をテレビの画面内から聞こえるようにしている。

77型4K有機EL「XRJ-77A80L」と、サウンドバー「HT-A7000」

設計者らは「クロスオーバーの周波数」「ゲイン」「ディレイ」の調整が難しかった、と説明する。

「3つの項目を調整しないと、声がテレビとサウンドバーの両方から出てしまい、2重に聞こえたり、エコーがかかったように聞こえてしまう。声が画面に定位せず下から聞こえるなど、定位の改善どころか悪化につながり、臨場感も得にくくなる」と話す。

そこで設計チームでは、距離や角度、頭の高さを変えて、様々な位置で効果を確認。サウンドバーの音響設計とテレビの音響設計で選任されたメンバーが効果の最終判定を実施しているとのことだった。

なお、クロスオーバーの周波数はだいたい5~7kHzの間でテレビのシリーズ毎に設定しているという。

アコースティックセンターシンクは、ブラビアの「テレビセンタースピーカー設定」から行なう
サウンドバーの置き場所を設定する画面

ゲーム:専用メニューが新搭載。FF16の公認画質も

2023年モデルでは、専用UI「ゲームメニュー」が新たに搭載された。

これはゲームのステータスや設定などのアシスト機能を集約したもの。ゲーム信号を検知したときに動作するようになっており、シューティングゲームで活用できる中心点表示「クロスヘア」、暗部を持ち上げて視認性を高める「ブラックイコライザー」、プレイ画面のちらつきやカクツキを抑える「VRR」などの操作ができる。

ユニークなのが「画面サイズ調整」。後日のソフトウェアアップデートで対応する機能だが、画面をそのまま縮小でき、例えば65型モデルの場合でも、30型前後の画面サイズで表示することが可能。見慣れたゲーミングモニターのサイズに合わせたり、視線の移動距離を減らしながら対戦相手の動きを確認する場合などに活用できるという。

ゲームメニュー

ゲームプレイ時の入力遅延を短縮する専用モード「ゲーム」も搭載。4K120p入力に対応するXR搭載機では、入力遅延が8.5msとなっている。なお、8.5msという数字については「他社の最新モデルに比べて遅延が大きいことは把握している。今後強化していきたい」とのことだった。

XR搭載機は、HDMI 2.1もサポートしており、4K120p入力や可変リフレッシュレートのVRR、自動低遅延モードのALLMに対応。4K120p入力時のフル解像度表示も行なえる。

PlayStation 5とXR搭載機による連携機能「Perfect for PlayStation 5」もポイント。接続したテレビの表示性能に最適なHDR設定信号をPS5が送出する「オートHDRトーンマッピング」、PS5でゲームプレイ中はゲームモード、映画視聴中はスタンダードに自動切り替えする「コンテンツ連動画質モード」も備える。

また、6月22日に発売したシリーズ最新作「ファイナルファンタジーXVI」の公認画質として、'23年モデル「A80L」「X95L」「X90L」、'22年モデル「A95K」「X90K」が選ばれたとのこと。

マーケティング担当者は「スクウェア・エニックス社での画質確認を経て、『ファイナルファンタジーXVI』の公認画質を取得した。クリエイターのこだわりを忠実に映し出すことができるブラビアで、ゲームを楽しんでほしい」と話した。

阿部邦弘