2020年10月期。「呪術廻戦」や「神様になった日」など

編集Yのチェックポイント

「100万の命の上に俺は立っている」は、「別冊少年マガジン」連載中のコミックが原作。合理的で単独行動が好きな中学3年生の四谷友助は、ある日ゲームのようなファンタジー世界に転送される……となると、お馴染みの「なろう系」作品で、主人公が最初から超強くて、魔物を瞬殺して……と予想するが、この作品は大きく異る。

ゲームのような世界なので、死んでも生き返る事が可能だが、パーティーが全滅すると、現実の世界でも本当に死んでしまうという。さらに、クエストをクリアしていくと、最終的に東京でドラゴンと戦う事になるという。

合理的で、冷酷な判断も下せる四谷は、パーティーの全滅を防ぎながら、クエストをクリアする方法を模索。一方で彼は、何故か東京を忌み嫌い、自然の中で、一人でも生きていけるファンタジー世界に居心地の良さを感じている。そして、自分が頑張らなければ、忌々しい東京を滅ぼせる可能性に気づいてしまう……。

異世界転生でのデスゲームであり、GANTZのような作品でもあり、四谷の“心の闇”が大きなテーマになっているのが特徴だ。

「週刊少年ジャンプ」連載の人気コミックをアニメ化したのが「呪術廻戦」(じゅじゅつかいせん)。

驚異的な身体能力を持つ少年・虎杖悠仁は、ある日“呪い”に襲われた仲間を救うため、特級呪物“両面宿儺(りょうめんすくな)の指”を食べ、己の魂に呪いを宿すことに。呪いである“両面宿儺”と肉体を共有することになった虎杖は、最強の呪術師である五条 悟の案内で、対呪い専門機関である「東京都立呪術高等専門学校」へと編入することになる……。

ジャンルとしては、“怪異バトル物”になるだろうか。人間が生む“負の感情”が呪いとなり、その呪いは人間を死に導く。ポイントとなるのは、“呪いは呪いでしか祓えない”という事。類まれな身体能力を持つ虎杖も例外ではなく、呪いを倒すために、自らもまた“呪われた身”となり、「正しい死」を求め、後戻りできない呪霊との戦いに身を投じていく。重厚な物語と、MAPPAによるハイクオリティな映像に注目だ。

「戦翼のシグルドリーヴァ」は、「Re:ゼロから始める異世界生活」の作者・長月達平がシリーズ構成・脚本を担当、「魔法少女リリカルなのはViVid」などの藤真拓哉がキャラクター原案、そして「ガールズ&パンツァー」などを手掛ける鈴木貴昭が世界観設定・設定考証を担当と、豪華なスタッフ陣に注目のオリジナルアニメ。

突然現れ、人類の脅威となった“ピラー”と呼ばれる敵。追い込まれた人類に手を差し伸べたのは、自らを“オーディン”と名乗る神。オーディンはピラーに対抗する術として、戦乙女“ワルキューレ”と、彼女たちの翼となる“英霊機”を人類に授けた……。

結論としては、美少女ワルキューレが、レシプロ機など往年の戦闘機を操り、ピラーとの壮絶な戦いを繰り広げる“空戦アニメ”がシグルドリーヴァだ。「ガールズ&パンツァー」だけでなく、「ストライクウィッチーズ」などを楽しんだ人にも、要注目の作品だ。

今期スポーツ系アニメの注目は「いわかける! - Sport Climbing Girls -」。石坂リューダイによる同名コミックが原作。題材としているのは、珍しい“スポーツクライミング”の世界。

主人公はパズルゲームの天才・笠原好。彼女が偶然クライミングウォールと出会い、その世界にのめり込んでいく……。己の体だけで壁を登る競技ゆえ、筋力や握力が大事なのかと思いきや、頂上までどのように登っていくのか? を瞬時に見極める頭脳戦の要素もある。そこで活きるのが、ウォールが色とりどりの“岩のパズル”に見えるという、パズルゲームの天才・好の能力。頭脳と肉体を駆使するクライミングの醍醐味が実感できる作品だ。

スポーツアニメでは「体操ザムライ」にも注目。大ヒットした「ユーリ!!! on ICE」や「ゾンビランドサガ」を手掛けたMAPPAによる、オリジナルアニメの新作だ。

時は2002年。かつては強かった日本男子体操界。体操に人生を注いできた元日本代表、荒垣城太郎(29)は、思うように演技ができなくなっていた。それでも練習を重ねる日々を送っていたが、ある日コーチの天草から「引退」を勧められてしまう。悩む城太郎。それを支える娘の玲。だが、ある『出会い』によって荒垣家の運命は大きく変わっていく……。

「無能なナナ」は、月刊「少年ガンガン」連載中コミックを原作とした作品。舞台となるのは、孤島にある学園。そこには、炎や氷を操ったり、宙を飛べたりと、様々な能力を持つ少年少女が集められ、“人類の敵”だという怪物と戦うための訓練を受けている、育成機関だ。

そんな学園の中で、無能力(?)ゆえに疎まれる少年・中島ナナオの前に、「人の心を読む能力がある」と言う、転校生の柊ナナが現れる。彼女は何故か“ナナオこそ、リーダーにふさわしい”と言うのだが……。

設定だけ見ると、“怪物と戦うヒーロー育成機関で、ヒーローを目指す少年少女の熱血物語”だ。しかし、物語が進むと、その先入観は気持ちよく裏切られ、驚くべき策略・陰謀が渦巻く、驚異の世界観が姿を見せ始める。

「魔王城でおやすみ」は、前代未聞の“睡眠アニメ”だ。物語の舞台は、魔族と人間が争うファンタジー世界。魔王が人間の姫をさらい、自らの城に幽閉……人間の勇者がそれを助けに行くストーリー……ではなく、メインとなるのは囚われの“スヤリス姫”の日常。

囚われの身として、寝るくらいしかする事がないスヤリス姫は、安眠・快眠とは程遠い魔王の城の環境を改善すべく、牢獄から抜け出し、城にいる魔族から集めた素材で上質な枕やシーツを作ったりと、自らの“睡眠の質の改善”に全力を傾ける。というかそのまま魔王城から逃げ出せるんじゃないかというツッコミはNG。やっぱり睡眠は大事ですからね。

「キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦」は、細音啓によるライトノベルが原作の作品。舞台は、科学技術が発達した機械仕掛けの理想郷「帝国」と、“魔女の国”と恐れられる「ネビュリス皇庁」が、百年にわたる戦争を続けてきた世界。

両国には、二人の英雄がいた。最年少にして帝国の最高戦力となった最強の剣士イスカ、ネビュリス皇庁の王女にして“氷禍の魔女”の異名を持つアリスリーゼ。宿敵である2人は当然、戦場で命を奪い合う事になる……はずが、激闘の中で互いの素顔に触れた事で、その生き方に、その理想に惹かれてしまう。

“恋に落ちてはいけない、敵同士のカップル”。王道とも言える物語だが、そんな王道さにグッと来てしまう人には見逃せない作品だ。

「神様になった日」が注目作である理由は、手掛けるスタッフ陣だ。ゲームブランド「Key」の立役者として「AIR」や「CLANNAD」、「リトルバスターズ！」などを生み出してきた麻枝准が“原点回帰”を掲げて原作・脚本を担当。制作は、「true tears」や「Angel Beats!」、「有頂天家族」などハイクオリティな作品を手掛けてきたP.A.WORKS。

高校最後の夏休み。大学受験を控えた日々を送る成神 陽太の目の前に、突然「全知の神」を自称する少女・ひなが現れる。「30日後にこの世界は終わる」と告げるひなに困惑する陽太だが、神のような予知能力を目の当たりにし、その力が本物だと確信する。

超常的な力とは裏腹に天真爛漫であどけないひなは、なぜか陽太の家に居候することが決まり、2人は共同生活を送ることになる。「世界の終わり」に向けた、騒がしいひと夏。切なくも愛しい物語の幕が開ける。