プレイバック2016

スマホでも自由にバスケ観戦。配信でスポーツをもっと楽しむ by 編集部:中林

 数ある話題の中で、「バスケットボールに大きな変化の年」だったことを挙げたい。昨年末から今年にかけて行なわれたアメリカのNBAファイナル(チャンピオンを決める試合)は、最終の第7戦までもつれ込み、1勝3敗からの大逆転など新たな記録がいくつも誕生。そして、日本では、何といっても9月から開幕したプロリーグ「B.LEAGUE(ビー・リーグ)」。日本でも今までにないほど、バスケットボールの話題が多く聞かれた。そんな今年は、動画配信サービスにとって“スポーツ”が一つのトピックになり、リオ・オリンピックの配信や、海外の「DAZN(ダ・ゾーン)」参入も注目された。

左がスポナビライブ(B.LEAGUE)、右がNBAの映像

 好きなNBAの試合を観るために、テレビ放送での録画視聴だけでなく、ネット配信も前から試したいとは思っていた。しかし、全部の試合は時間的に観きれないから……と、加入を迷っていたのも正直なところ。そこで、友人のすすめもあって、一番盛り上がるNBAプレイオフ(シーズンを締めくくる上位8チームのトーナメント戦)だけ、有料の「NBAリーグパス」を契約してみた。結果的には有料でも使い続けたくなったのが個人的にも大きな変化であり、他のバスケットボールファンにも教えたくなって、以前のレビュー記事を書く動機にもなっている。

 一番満足しているポイントは、ビデオオンデマンド(VOD)なので当然だが、とにかく観たい試合だけを、現地時間のライブでも、終了後からでも観られること。再生する端末も、外でスマートフォンを使って、家ではテレビ(Chromecastなど経由)やPCからと、自由に使い分けできる。観る方法が放送だけだった頃は、WOWOWやBS-1で、放送時間のリアルタイムか、録画して後から観るという方法で、番組側がセレクトした対戦カードしか観られなかった。今もテレビ録画は続けており、試合を観る重要な手段なのは間違いないが、新たに配信も選択肢となったことで、自分の環境や好みに合わせて使い分けられるようになった。録画しなくても、好きな試合やシーンを何度も観返せるのは快適。

 料金プランも豊富なのもNBAリーグパスならではの特徴。全試合を観たいなら、月額2,399円または年間21,999円。以前レビューしたときの料金プランから少し変更があり、新たに、好きな1チームだけの試合をシーズン通して全て観られる「TEAM CHOICE」(月額1,299円、年額13,999円)や、毎週8試合まで選択できる「GAME CHOICE」(月額939円、年額9,399円)というプランも登場した。なお、この料金はPCから購入した場合のもので、iPhoneなどのApple決済では少し金額が異なる。

NBAリーグパスの定額利用のプラン。この他に、1ゲームごとの個別購入もできる

 NBAに続き、9月にスタートした日本のB.LEAGUEも、開幕戦からライブ配信が始まった。ソフトバンクによる「スポナビライブ」内での配信で、日本のプロ野球や米国MLB(メジャーリーグ)、サッカーのプレミアリーグ、大相撲など計8競技を視聴でき、料金は、ソフトバンク携帯電話の契約者が月額500円。他社ユーザー向けは月額3,000円だが、'17年3月までは1,500円で利用できる。

 B.LEAGUE開幕に続いて、'16-17シーズンが始まったNBAも、リーグパスの契約を更新して視聴を開始。すると、似ているサービスだが、両者にはところどころに違いがあるほか、以前のレビュー当時からの変更もあったことに気付いた。

 まず、昨年NBAを観たときはそれほど気にならなかったが、改めて、手持ちのiPhone 6s画面で両サービスを見比べると、画質は圧倒的にB.LEAGUEのスポナビライブの方が良い。選手の顔や背番号などの違いが、ハーフコートを俯瞰した映像でもよく分かるのがスポナビライブで、NBAアプリは低ビットレートな映像のためブロックノイズが多く、動きがカクカクするシーンも時々あった。画質は回線に合わせるオートモードのほか、固定ビットレートの選択もできるが、無線LAN接続時でも最高で400kbpsしか選べないようになっている。

NBAのiPhoneアプリでは400kbpsまでしか選べなかった

 Apple TVを介してAirPlayで46型フルHDテレビ(ソニーKDL-46W900A)に表示したときも、SD画質のような粗さなのはちょっと悲しい。一方で、Chromecastを通じてテレビに表示すると、HD相当になり、46型の画面でも問題なく視聴できたので、この使い方が現実的だ。

 また、PlayStation 4アプリでも昨シーズンは視聴できたが、今の段階ではアプリの試合スケジュールが昨シーズン仕様のままで、最近の試合が観られなくなっている。NBAリーグパスのWebサイトでは、PlayStationも対応デバイスに含まれていると記載されている。PS4アプリは、早送り/巻き戻しがスマホに比べて操作しやすいので、今後PS4アプリのアップデートで、再び視聴できるようになって欲しい。

 NBAリーグパスがすごいと思うのは、アプリやサービスそのものが時々大幅にアップデートされ、加入済みの人に対しても、もっと利用してもらおうという姿勢が強く感じられること。公式だからといって「環境は用意したので、後は勝手にどうぞ」ではなく、次々に新しい提案をしてくる。前述したプランの追加や更新などもその一つで、最初は軽めの料金で楽しんでもらって、気に入ったらフル配信へアップグレード、という道筋がうまく用意されている。

NBAリーグパスの料金プランごとの主な違い

 一方、画質に関しては、ソフトバンクのスポナビライブを観てしまうと、どうしてもNBAが見劣りするのは残念。モバイル回線で見る場合にデータ制限を気にしないようにという配慮であれば理解できるが、自宅のWi-Fi環境でも、ワンセグのような画質になってしまったのは寂しい。画質だけがサービスの優劣を決めるわけではないにしろ、有料で観るならせめてHDクラスのクオリティは期待したい。今のところ、筆者の環境では、外ならiPhone、Chromecastとテレビで観るスタイルに落ち着きそうだ。

 国内B.LEAGUEのスポナビライブでの配信は、まだ始まったばかりだが、1部リーグは全試合ライブで、2部リーグの試合も積極的に配信されている。放送時間などに合わせて短く編集されることなく、フルで観られるので、楽しんでいる。

 これからB.LEAGUEとスポナビライブに期待したいのは、試合や選手の見せ方のバリエーションをもっと増やすこと。今もハイライトやインタビュー、名シーン集などが配信されていて面白いが、これから試合を重ねていけば、後でまとめて観たいシーンもどんどん蓄積されていくだろう。派手なダンクや3Pシュートだけでなく、注目の選手や試合にフォーカスした動画や特集などももっと増えていくと、より魅力が増すはずだ。そのあたりは、歴史あるNBAアプリの方が優れている。ゲスト解説の人選など、テレビとは違う配信ならではの新しい取り組みもどんどん進めてほしい。

 B.LEAGUEでは体格差のある外国人選手に負けずに日本人選手がぶつかり合ったり、うまくかわしてシュートを決めたりといった見ごたえあるシーンも多く、試合のトランジション(攻守の切り替え)がスピーディーな展開などは、観ていて思わず手に力が入る。映像を観ると、試合会場でも地元の人やファンが楽しんでいるようで、バスケが注目され、見られる機会が増えたことが、選手のプレーの向上にもつながっていると思う。

 今年のバスケを振り返ってもう一つ、改めて感じるのは田臥勇太選手の試合への並々ならない真摯さ。ほぼ同じ世代で身長も近い筆者は、高校生の頃の試合をビデオで見て、全く次元の違う存在だと衝撃を受けた。その後も、田臥選手は留学やNBA契約など様々な経験を得て、今も現役で若い選手とスピードと技術で張り合うこと自体がすごいのに、若手を引っ張るリーダーとして、言葉だけでなく自らのプレイで味方を奮起させるシーンに、心が震わされる。コート外でも“B.LEAGUEの顔”としてテレビを含めて活躍する姿も感慨深い。「名選手」や「スター」という枠を超えた存在としての姿を、これからも楽しみたいし、映像だけでなく実際の試合会場にも足を運んで、現場の迫力も味わってみたくなった。

スポナビライブはソフトバンクユーザー限定のデータ通信無料キャンペーン(低画質時)も実施

 冬のスポーツであるバスケットボールで、年末のもう一つの注目は、高校生による「ウインターカップ」。多くの高校3年生の選手にとって最後の大会であり、インターハイの雪辱に燃えるライバル校、ライバル選手同士の戦いも見どころ。この試合はJ.SPORTSで放送され、テレビでも無料放送されることは多いが、今年も多くのドラマが生まれることを楽しみにしている。

 B.LEAGUEで直近の注目は、'17年1月15日に開催されるオールスター。現時点で既にチケットは予定枚数を完売したとのことだが、チケットを買えなかった人も、ライブ配信なら視聴できる。出場選手をより良く知るためにも、まずは予習として、過去の試合をチェックしてみても良さそうだ。

中林暁