プレイバック2023
30年以上前のシステムでレコード再生! やはりアナログは面白い by 山之内正
2023年12月29日 10:00
オーディオ専門誌の試聴や秋のオーディオイベントでレコードを再生する機会が年々多くなってきた。私自身、一年間に購入したアルバムをざっと数えてみると、CDが減る一方なのにLPの購入枚数は着実に増えている。実際に新製品の数を調べたわけではないが、国内メーカーのレコード関連の製品開発は以前に比べて活発化しているように見える。欧州では数年前からその傾向が顕著だったが、日本国内もそれに近い状況になってきた。
そんななか、自宅でLPを聴く時間も確実に増えてきたので、長年使い続けてきたレコードプレーヤーをリニューアルすることにした。とは言っても新たに購入したのはアームレスのターンテーブル(ラックスマン「PD-191AL」)だけで、トーンアームとカートリッジは従来使ってきた製品を載せ替えてしばらく使い続ける予定だ。
レコード関連の機器はデジタルのように短期間でフォーマットや技術が目まぐるしく変わることがないし、適切に扱えば機構部品の劣化もそれほど進まず、意外なほど寿命が長い。性能を維持できている間は、できるだけ長く使い続けてみたいと考えている。
眠っていたアームと針で、もう一台プレーヤーを組んでみた
ところで、今回は新機種導入の話題ではなく、これまで使っていた古いターンテーブルを再活用する話をしよう。
動かなくなったから買い替えたわけではなく、モーターの回転はまだ安定しているし、壊れそうなパーツも見当たらない。まだしばらくはそのまま使えそうなので、ラックのなかで眠っていた手持ちのトーンアームとカートリッジを物色し、もう一台プレーヤーを組んでみる気になったのだ。
つい最近まで現役だったターンテーブルはDENON「DP-80」と、専用キャビネット「DK-300」を組み合せたもので、入手後少なくとも35年は経っている。
交換式のアームボードは以前買い足したものが手元にあり、そのうちの一枚はサエクの「WE-308」に合わせて取付穴を加工済みだ。しばらくぶりなので探すのに少し手間取ったが、アーム本体とともに無事見つかったので、端子やパイプの可動部などを慎重にクリーニングしたあと、DK-300に取り付ける。
このトーンアームも35年ぐらい前に入手したものだが、外観上はどのパーツも光沢を保っていて、リフターの上下動もなめらかだ。肝心のナイフエッジ機構の精度が落ちていないかどうか、少し不安があるが、とりあえず動作に問題はなさそうだ。
カートリッジは最近のモデルも候補に挙がるが、せっかくなのでターンテーブルやトーンアームと同じ時代のものを選ぶことにしよう。少し迷った末に、何年も眠ったままだったオルトフォンの「MC-20MkII」を久々に引っ張り出し、それよりさらに世代が古いDENONの「DL-103」も鳴らしてみる。どちらもかつて長年使い続けて愛着のあるMC型カートリッジである。
まずはルーペを使って外観をチェック。カンチレバーとスタイラスに問題がなさそうなので、WE-308に取り付けて再生音を確認する。カートリッジはカンチレバーと針先に問題がなくてもダンパーなど外側からは見えにくい部分のパーツが劣化していることがあるので、どんな状態なのか、実際に音を出してみないとわからないのだ。
ゆったりとした気持ちでいつまでも聴き続けられる
かつて毎日のように聴いていた製品の音は、長い時間が経った後でも記憶から消えることはないものだ。特に、今回久しぶりに聴いたMC-20MkIIは、記憶に刻まれていたのとほぼ同じ音を再体験することができ、とても懐かしかった。少し厚めの低音は現代のカートリッジに比べると少し柔らかいが、ヴォーカルやギターと自然に溶け合って、心地よい音がする。
30年以上前の製品だけで組んだレコードプレーヤーは、最新プレーヤーで聴く音とは違う味わいがある。理詰めの緻密な音ではないが、ゆったりとした気持ちでいつまでも聴き続けられる。特に声やヴァイオリンの肌合いは格別で、レコードによっては、あえてこちらのプレーヤーで楽しむのもありだと思った。
年末年始、時間を確保できたら1980年前後に使っていたMM型カートリッジも試してみよう。