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4K TVに最適な超スペックプレーヤー「Air Stick 4K」、一部TSUTAYAでも体験可能

 18日に発表&発売された「Air Stick 4K」は、ストリーミング映像配信サービスなどの各種エンタメコンテンツを大画面テレビで楽しめる、HDMI接続式のスティック端末だ。OSにAndroid TVを採用しており、各種アプリの追加にも対応。家電量販店やECサイトに加え、書店・レンタルビデオ店のTSUTAYAでの販売も、一部店舗で予定しているのがポイントだ。

CCC AIR代表取締役社長の渡邉健氏

 製品化にあたっては、スペック、価格、さらには販売戦略までを周到に練り上げ、まさに満を持して送り出したという。その背景について、開発・発売元であるCCC AIRの代表取締役社長・渡邉健氏に話を伺った。

これ1台で「スマートテレビ」 Android TVでアプリ追加も自由自在

 Air Stick 4Kは、TSUTAYA事業などのエンタテインメント事業を展開しているカルチュア・コンビニエンス・クラブのグループ企業であるCCC AIRが、1月18日に発表&発売したばかり。テレビのHDMIに接続するスティック型(ドングル型)のデバイスで、価格は9,800円(税別)。取扱店舗はWebサイトから確認できる。

こちらが「Air Stick 4K」
左の2つが「Air Stick 4K」のリモコンと本体、右の2つが従来モデル「Air Stick」の本体とリモコン。外観はほぼおなじだが、中身は大幅にパワーアップさせた

 用途として一番分かりやすいのは、やはり「TSUTAYA movie」の利用だ。月額950円からはじめられるマルチデバイス対応映像見放題サービスで、スマホ・タブレット・PCから手軽に映画・ドラマなどを視聴できる。これらのデバイスに加え、大画面テレビでリラックスしてTSUTAYA movieを見たい……という時こそ、まさにAir Stick 4Kの出番。ちなみに月額1,950円のプランでは、新作映画にも使えるレンタルチケットが毎月2枚プレゼントされる。

 加えて、Air Stick 4Kが「Android TV」を採用している点にも注目だ。音声入力による作品検索、アプリ追加による機能拡張など、従来のテレビでは難しかった機能をことごとく実現。そして何よりオープンなプラットフォームでもある。TSUTAYA movie以外の定額制映像サービスをAir Stick 4Kで見ることも可能で、Air Stick 4KにはあらかじめYouTubeやhulu、DAZN、AbemaTVなどの視聴アプリがプリインストールされている。また、Netflixには近日中にファームアップデートで対応予定だ。

 特に最近は、50インチを超えながら実売10万円以下といった低価格4Kテレビが増えているが、これらはチューナーが非搭載のモニタだったり、映像配信対応などのスマートテレビ機能を省略しているケースが多い。また、デスクトップPC用モニタでも、HDMI入力の搭載が進んでいる。これらの機器ともAir Stick 4Kの相性は良いだろう。

従来とほぼおなじ外観のまま、4K対応にスペックアップ

 ここでAir Stick 4Kのスペックをおさらいしておこう。SoCはAmlogic S912J(1.5GHz)で、これはオクタコア仕様。メモリは2GB、ストレージは16GBだ。なお、Fire TVは1.5GHzのクアッドコアでストレージ8GBとなっている。Air Stick 4Kは通信機能として、Wi-FiはIEEE 802.11ac/b/g/n(5GHz帯対応)に対応。Bluetooth 4.1も内蔵しており、コーデックはaptX/aptX HDもサポートする。

 映像周りではHDMI 2.0に対応し、4K/2160p(60fps)出力が可能。今後の増加が予想される4Kでの高画質映像配信を難なくこなす。また、ダイナミックレンジ豊かな表示を行なうHDRも、HDR10規格をサポート済みだ。2017年末時点での映像トレンドをきっちり盛り込んだモデルと言える。

HDMI 2.0に対応し、4K/2160p(60fps)出力が可能

 「スペックは相当頑張りました。Amlogic S912Jを採用したモデルは、国内では恐らくAir Stick 4Kが初です。あと、これだけコンパクトな筐体にまとめあげた点もご注目いただきたいですね」(渡邉氏)

左が「Air Stick 4K」、右が「Air Stick」。本来カラーをホワイトにしたのも、実は戦略の1つ。この手の製品は黒1色が相場だが、女性客が手に取ることを考え、美しさを重視した

 Air Stick 4Kが発売する約1年前、2016年12月には前身モデルにあたる「Air Stick」が発売されている。こちらは2K(フルHD)視聴を上限とするモデルだが、大きさはほぼ一緒。それでいてCPUを大幅にパワーアップさせたとなると、熱処理の問題が顕在化するが、これを基板の多層化などで解決した。「ただ、それでも体積レベルでは2%小型化しています。それと、強制リセット用のボタンをピンで刺し押す方式から、物理的なボタンにしたり、細かいところで色々変えました」(渡邉氏)。

 リモコンもパワーアップした。やはり見た目は似ているが、ボタン電池2個で動作する方式から内蔵バッテリーによる充電式へと変更。より薄くなりスマートな印象になっている。

「Air Stick 4K」に付属するリモコン
デザイン的に大きな変更は無いが、左側のAir Stick 4K用リモコンは、より薄くなり、窪みが無くなっている

 短時間ながらAir Stick 4Kの実機を体験させていただいた。最終製品版1歩前のファームウェアのため、調整はまだ完全ではないとの事だったが、それでも2K版Air Stickとの体感速度の差は明らか。TSUTAYA movieアプリの画面遷移、作品カタログのスクロールなどで速度向上を感じられた。Abema TVアプリにおけるチャンネルのザッピングも高速だ。

TSUTAYA movieアプリを起動したところ
コンテンツ選択画面のスクロールも、写真撮影すると残像が残るほど高速だ
映画再生中のジャンプなど、トリックプレイもサクサク

 そして何より4Kだ。4Kはコンテンツの絶対数こそ限られるが、NetflixやYouTubeでは少しずつ増えている。そして実際に視聴してみると、2Kコンテンツとは精細感が違う。4Kテレビをすでにお持ちの方であれば、Air Stick 4Kの意義はさらに増すだろう。

YouTubeの4Kコンテンツも高解像度で楽しめる

価格でもライバル端末と真っ向勝負、通なら“有線LAN端子標準搭載”にも注目

 渡邉氏は、今後の市場を見据えた際に4K対応が非常に重要になってくると指摘する。しかし、それだけではダメで、製品の価格にもこだわったという。「2K視聴に対応したFire TV Stickが4,980円で現実に買えてしまう以上、やはり『4Kモデルだから2万円』といった値付けはできません」(渡邉氏)。

 Air Stick 4Kの価格は9,980円。これに対し、4Kにも対応したAmazonの「Fire TV」(非スティック型)は8,315円と、Fire TVの方が安い。ただし、ここで注目したいのは有線LAN端子の有無。Air Stick 4KではACアダプタと有線LAN端子が一体化したアダプターを標準で同梱している。一方のFire TVは、標準では無線LAN接続しかできず、有線LAN接続のためには1,780円(税込)のオプションを購入しなければならない。つまり有線LAN接続する場合は、Air Stick 4Kの方がわずかながら安価になる。それでいて、前述の通りCPU性能・ストレージ容量はAir Stick 4Kが上回っている。

こちらが電源・有線LAN端子一体型のアダプター。やはり2K版Air Stickと比べて、デザインなどを改善させた

 この有線LAN端子の標準搭載は、サービスの使い勝手・顧客サポートなどを考慮すると、必須の装備という。「下り100Mbpsクラスの光ファイバー回線で、かつWi-Fi経由で4K映像を視聴するとなると、映像安定性の面でやはり有線LAN端子があったほうがいいと考えました」(渡邉氏)。

 Wi-Fiは確かに便利だが、広帯域を長時間に渡って占有し、さらにコマ落ちなく映像をストリーミングするという観点においては、動作安定性で一抹の不安があるのも事実。「お客様対応の中では、『見られないから返金して』という話はどうしても出てきます。Wi-Fi接続は不安定な面がありますが、そこで『有線LAN端子に繋いでみてください』とご説明できるのは、やはり意味が大きいんです」(渡邉氏)。

シリーズ累計45万台出荷の立役者?! Air StickがそのままWi-Fi親機になる

 Air Stick 4Kに先駆けて販売されている2K版のAir Stickだが、この機種の姉妹機が、賃貸住宅の事業者向けに展開されている。これが好評で利用実績も多く、当初の導入予定数から大幅に増加、累計出荷台数は45万台に到達したという。

 その好評の要因の1つと見られるのが、Air Stick(姉妹機含む)がそのままWi-Fi親機、つまりルータになる機能だ。Air Stickを有線LAN接続していると、メイン画面にWi-Fi接続用のSSID・パスワードが表示される。これをスマホに入力すれば、そのままネットに接続OK。

 導入された賃貸住宅では、ほぼ全ての物件で光ファイバーベースの有線LANネットワークが構築されていたため、これに接続すれば、部屋をWi-Fi化できる。当然、専用ルーターを追加導入する手間もないため、貸主(大家)にもメリット大。導入開始以来、まさに引く手数多で、増産を繰り返すこととなった。

2K版Air Stickのメイン画面。右上のSSID・パスワードを使えば、スマホなどでそのままネット接続できる

 「日本には、多機能なものを好む文化がありますよね。それこそ昔の『テレビデオ』あたりは、日本ならではの発想だと思います。Air Stickもそれと同じで、4K映像が見られ、Wi-Fi親機にもなり、そして将来的にはスマートスピーカーとの連携も考えています。この3つの機能がトライアングルになる事で、他社とも十分戦えるようになると思います」(渡邉氏)。

 このWi-Fi親機機能は、Air Stick 4Kでも引き続き提供される。

プリインアプリを充実させた理由

 Air Stick 4Kは、プリインストールアプリも充実しているのが特徴。TSUTAYA movie以外にも、YouTube、Abema TV、niconico、DAZN、Hulu、Spotifyなどのアプリがすでにインストールされている。

プリインストールアプリがズラリと並ぶホーム画面

 これにより、ユーザーはAir Stick 4Kの初期セットアップ時にGoogleアカウントを入力・認証しなくても、これらプリインストールアプリが利用できてしまう。ITに詳しくない人に、少しでも安心してAir Stick 4Kを使い始めてもらいたい……そんな配慮から、プリインストールアプリを充実させたそうだ。

 実際、2K版Air Stickの利用動向を調査した結果からも、多くのユーザーがまずはプリインストールアプリを中心に使い、Google Playからアプリをダウンロードするユーザーは相対的に少なかったという。

 ユーザー重視の姿勢は、プリインストールアプリのチョイスにも現れている。TSUTAYA movieと直接競合しそうなサービスのアプリも多い。しかし、渡邉氏はこう例える。「日本ではiPhoneが普及していますが、もしiPhoneでiTunes以外のサービスが使えなかったらどうなっていたか」。競合にこだわる事なく、開かれたオープンなプラットフォームとして、Air Stick 4Kを育てたいと言う。そのため、プリインストールアプリには、ユーザーの支持が高く、著名なアプリが多く選ばれている。

機能拡張も。スマートスピーカーとの連携も間もなく

 いち消費者から見ると、Air Stick 4Kはあくまで「数あるスティック型端末の1つ」である。ただ、それが実際に製品化されるまでには長い道のりがあった。渡邉氏はCCCグループで長らく映像配信事業にも携わっており、そこで得たノウハウもAir Stick 4Kに活かされている。

渡邉社長

 御存知の通り、ITの世界は何事もドッグイヤー。サービス開始から数年が経過すると、技術は進歩し、ユーザーニーズも大きく変わってくる。サービス内容・機能も当然それに合わせて改善したいが、旧来のWebベースのTVプラットホームでは、大規模な改修も難しい。

 そこで渡邉氏らは2013年ごろから次世代サービスの有り様がどうあるべきか、本格的な検討を開始。海外の動向なども踏まえ、2014年にはAndroid TVの導入を決めたという。

 Android TVという最新のプラットフォームを得た事で、今後はより積極的に新機能・新サービスを打ち出していく計画だ。まずAir Stick 4Kでは2018年春のタイミングで、スマートスピーカー「Google Home」に対応するための機能を追加する予定。これにより、例えばGoogle Homeに「TSUTAYA movieで○○が見たい」と話しかければ、Air Stick 4Kを繋いだテレビでその作品の再生がスタートする。つまり、物理リモコン不要でAir Stick 4Kを操作できる。

Air Stick 4Kのリモコンはマイク装備で、Android TVを採用しているので、現時点でも音声でのコンテンツ検索が可能。ソフトウェアキーボードの入力と比べて、音声入力の方が便利だ

グループ企業のTSUTAYAが培った“レンタル”ノウハウも活用

 そしてAir Stickでは、販売手法についても非常に力を入れている。量販店などでの販売に加え、Air Stickならではの武器となりそうなのが、グループ企業のカルチュア・コンビニエンス・クラブが展開しているTSUTAYAでの「ハードウェアレンタルとの連携」だ。

 TSUTAYAと言うと、映像ソフトやコミックのレンタルを想起するが、一部店舗では各種電子機器のレンタルも本格化している。例えばモバイルルータのレンタルも行なっており、スマホの通信容量を使い切ってしまった若者が、月末近くになると借りにくる例が多いという。さらに、スマートスピーカーのGoogle Homeのレンタルも開始している。

 そこでCCC AIRは、Air Stickの販売に協力してくれる店舗において、2K版のレンタルサービスを開始している。料金は7泊8日で500円だ。

 「お客様にとって、1万円を超えるようなものを買うとなると、やはり“一度試したい”、“どんなもなのか知っておきたい”というご要望が絶対にあります。そしてTSUTAYAの強みは“店頭で気軽にモノを借りられる”こと。これはAmazonさんには絶対マネできません」(渡邉氏)。

2K版Air Stickのパッケージは紙製だが、TSUTAYA店頭でのレンタルにあたっては、専用のプラスチックケースが用意される。簡易説明書もケースにシール貼りされるなど、わかりやすさと繰り返しの利用に配慮。まさにTSUTAYAのノウハウが詰まった部分だ

 店頭の売り場に、Air Stick関連コーナーを設置してくれる店舗も、2017年度上半期までに約500店舗に増えた。端末とテレビだけでなく、ソファーなども設置してもらい、自宅におけるAir Stickの利用イメージを掴んでもらうのが狙い。これもネット販売ではできない強みだ。

Air Stick関連コーナーを設置している店舗の例

 渡邉社長は、Air Stickや、連携する各種IoT機器などの普及において、キーになりそうなタイミングを2019年~2020年と見ている。東京オリンピックの前後であるだけに、製品・サービス・通信環境などが激変し、IoT機器の相場観も今以上に身近になると予想される。

 そんな時期に、“いきなり買うより、近所のTSUTAYAなら色んなものが展示され、試せるから、見に行ってみよう”と思ってもらえるよう、Air Stick売り場を設置してくれるTSUTAYA店舗を増やしていきたい……というわけだ。

 そしてAir Stick 4Kの登場。4Kモデルのレンタルは行なわないが、2Kモデルのレンタルを実施している店舗ではAir Stick 4Kの販売も予定。渡邉氏はこうした取り組みも含め、販売目標として、これまでの累計出荷分(45万台)と合わせて“ズバリ100万台”を掲げる。Air Stick 4Kのスペックと価格に対する自信と共に、レンタルという文化を活用し、“消費者に体験してもらう事”を重視する姿勢が感じられる。

 また、Air Stick 4K単体をガジェット好きから見た場合も、スマートスピーカー連携や、Google アシスタント対応などの機能追加が予定されている点が魅力。OSについても、Android 8.0 Oreoへのアップデートを明言している。1台買えば、長く使える機種になってくれそうだ。

渡邉氏はコンパクトさを活かし、出張先にもAir Stickを持参。ホテルのWi-FiやポケットWi-Fiルーターなどを使って、映画を楽しんでいるという