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秋葉原でも音切れなし? 完全ワイヤレスイヤフォン新時代「Air-X」の実力
- 提供:
- Mavin Inc.
2019年1月16日 08:00
スマートフォンなどの音楽をワイヤレスで聴けるイヤフォンの中で、スマホとの間だけでなく、左右ユニットの間も無線でつなぐ左右分離型の「完全ワイヤレスイヤフォン」。価格も手ごろになってきたが、一方で「音が途切れる」、「音質に不満」という声もよく耳にする。また、一番課題視されているのが「バッテリーの持ち時間」だが、これを克服しようと登場したのが、今回使った「Air-X(エアテン)」だ。
Air-Xは、完全ワイヤレスイヤフォンの要ともいえる「接続安定性」と「バッテリーの持ち」を大きく向上させたことがポイントだ。11月より発売しており、価格はオープンプライス。実売価格は18,380円前後だが、1月末旬まではセール中とのことだ。家電量販店やAmazonで販売されている。
ワイヤレスの“2つの課題”クリアした新チップ「QCC3026」搭載
取り回しのよさと見た目のスタイリッシュさから人気となり、2018年も多くの製品が発売された完全ワイヤレスイヤフォン。左右ユニットが分離したメリットは、取り回しのよさだけではない。ケーブルが体や服に触れることで起こるタッチノイズは発生せず、断線もありえない。ケーブルにまつわる一切のストレスから解放されるため、特に体を動かすシチュエーションには最適だ。スポーツジムのイヤフォン利用者が、瞬く間に完全ワイヤレスへ乗り換えたという話にもうなずける。
そうした中でも、よく言われる問題は「左右ユニット間の通信が途切れやすい」こと。左右どちらかがスマートフォンなどの送り出し機器とBluetoothで通信する親機となり、もう片方がその子機になるという構造が完全ワイヤレスイヤフォンの基本としてあるからだ。左右のユニットは人の頭部をまたいで通信するため、安定化にはアンテナ設計の高度なノウハウが要求される。
音質面での課題もある。バッテリーやドライバー、通信チップが載った基板を耳もとに収まる大きさにまとめなければならないうえに、アンテナの配置を考慮した設計が求められ、一時期は“完全ワイヤレスなどこの程度”という音質評価がついて回ったことは事実。ただでさえBluetooth/A2DPという情報量の制約があるところ、小型軽量化と左右ユニット間通信というハンデを背負う事情はわかるが、よりいい音で聴きたい人の願いは切実だ。
今回使ってみた「Air-X」は、完全ワイヤレスイヤフォンとしての利点を損なうことなく、通信の安定化と音質向上という難題をクリアしている。そのカギとなるのが、Qualcomm(クアルコム)が開発した最新のBluetoothオーディオチップ(SoC)の「QCC3026」だ。
QCC3026は、従来品と比較して受信感度が大幅に向上。電波強度に応じてデータのバッファ量を制御する機構も改善され、スマートフォンとの間の通信だけでなく、左右ユニット間の通信、ひいては音途切れも起こりにくくなったことが特徴だ。消費電力も大幅に低減、バッテリーの持ちが課題の完全ワイヤレスにとって大きなメリットになる。
さらに、高音質コーデック「aptX」をサポート。聴覚心理モデルに基づく情報の間引き(人間の聴覚では識別困難とされる高域部分を大幅にカットすることで圧縮率を高める)を行なわないため、“奥行き”や“空気感”という言葉で表現されるような微妙な音場表現が可能になる。スマホなどの送り出し側もaptXに対応している必要があるものの、ここ数年で発売されたAndroid端末の多くが対応しており、気軽に利用できる状況にある。
そして、将来の機能拡張という楽しみもある。QCC3026は、左右の音声チャネルを分離独立して伝送する「TrueWireless Stereo Plus(TWS Plus)」に対応しているのだ。この機能は、Snapdragon 845/855を搭載した、機能をアクティベートさせた対応スマートフォンと組み合わせる必要があり、さらに対応した音楽再生アプリも必要となる。そのため、現状は利用できていないものの、今後のファームウェアアップデートにより可能になる。機能としては、左右ユニット(親機/子機)が切り替わるオプションも含まれており、アップデートが実現されれば、Air-Xという完全ワイヤレスイヤフォンの可能性が大きく広がる。
Air-Xを開発したMAVINというメーカーは、イヤフォンなどオーディオ機器のOEM/ODMで豊富な実績を持つ。完全ワイヤレスもすでに複数の製品を手がけており、多くのノウハウが蓄積されている。Air-Xが(当初のプロトタイプ段階では)QCC3026を搭載した最初の製品だったという事実からも、その技術力の高さがうかがえる。
Qualcommシニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー Anthony Murray氏が語る「QCC3026」の実力
--省電力/接続性向上のために、これまで難しかった点と、それをクリアできた理由を教えてください。
Murray氏:2018年1月に発表したLow power Bluetooth SoC「QCC5100」シリーズをベンチマークに、「QCC3026」は従来の商品と比較して50%の低消費電力を実現しつつ、TWSの機能を損なうことなく低価格に抑えることができました。
Air-Xでは、データ転送率の最適化とMavinの特許を取得しているアンテナにより、通話や音楽再生時に途切れることのないより強力なRFを実現しました。
--Bluetooth関連、オーディオ技術でもリードするクアルコムだからこそ実現できたポイント、強みを教えてください。
Murray氏:Qualcommは、高品質なサウンドを伝送するTrue Wireless Stereoを確立しました。そして近年、スマートフォンなどの端末からヘッドホンジャックがなくなるという外的要因から、安定しかつ高品質なワイヤレス視聴体験へのニーズが急速に高まりました。
QCC3026は低コストでTWSの機能を引き出すソリューションを短期間で実現します。それにより、aptXやTrue Wireless Stereoのテクノロジーをいち早く低価格で提供することができるようになりました。
このSoCは手の届きやすい価格ゾーンでTWS製品を作ったことにより、TWSカテゴリーの拡大に寄与しました。そして、次世代のスマートフォンの同梱イヤホンにも採用されています。
あえて音切れしそうな場所で聴いてみる。音質も一段上のレベルに
Air-Xは、パソコンやDAPなどBluetooth/A2DPがサポートされているデバイスであれば利用できるが、よき相棒はやはりスマートフォン。そこで、iOSデバイス代表として「iPhone X」、Androidデバイス代表として「Xperia XZ3」をチョイスし、音途切れの有無や音質について検証した。
接続安定性の検証用に選んだ場所は、Bluetoothイヤフォン全般の音途切れやすさでも知られる秋葉原。筆者宅から電車で約1時間の道のりをSpotifyアプリの音楽(高音質モードでダウンロード済み)を聴きながら過ごし、到着後に駅の改札から中央通りを経て昭和通り付近の大手量販店まで歩く、という過酷なテストだ。念のためiPhone XとXperia XZ3をそれぞれ2往復、2日間にわたり検証してみた。
使い始めるにあたり、まずはAir-Xとスマートフォンをペアリング。イヤフォンを充電ケースに入れた状態で蓋を開けるとペアリングモードに入るので、スマートフォン側でBluetooth機器を検索する操作を行なえばOK。左右どちらかとペアリングを完了すれば、それが親機となり、もう一方(子機)を自動的に認識し接続完了となる。NFCによる自動ペアリングには対応しないが、設定でつまづくことはないだろう。
1日目はiPhone Xでテスト。朝の横浜駅・東海道線ホームは人で溢れ、入ってくる電車にも相当数のBluetoothイヤフォンユーザが乗車している(2.4GHz帯が混雑している)はずで、すれ違えばAFH(Adaptive Frequency Hopping、他機器が使用していない周波数を探し出すことで通信の安定化を図る)が起こりそうなものだが、音途切れはまったく発生しなかった。これまで利用してきた完全ワイヤレスは、混雑する駅に到着するたび音途切れを起こしたものだが、Air-Xではそれがない。秋葉原でのテストも滞りなく終了、駅改札付近も大手量販店付近も混雑由来の音途切れは起こらなかった。
2日目はXperia XZ3でテスト。こちらはコーデックにaptXを利用した接続となるため、AAC接続のiPhoneと比較すると音質では有利なものの、通信に要する帯域が広いため音途切れの起きやすさという点で、本来は不利だ。しかし、混雑する横浜駅でも、音途切れの名所・秋葉原でも再生はいたってスムーズ。多少の音途切れは予想していたから、逆に肩透かしと感じてしまったほど、期待以上の仕上がりといえる。
この音途切れにくさは、QCC3026の効果もあるだろうが、Air-Xに施された特許取得済のアンテナ設計によるところが大きいようだ。鉄筋コンクリートの建物内でiPhone X/Xperia XZ3と距離を置くテストを実施してみたが、どちらの端末でも3m、5mと距離を置いてもやはり途切れない。ドアを隔てた隣の部屋に移動しても、ドア2枚を隔てた10mくらい離れた部屋でも問題なし。端末から30m離れても接続できるというメーカーの説明は伊達ではない。スマホを常に持ち歩いて聴くという、今までのワイヤレスイヤフォンとは違った使い方もできそうだ。
バッテリーの持ちのよさも、完全ワイヤレスとしては驚愕の水準といえる。イヤフォン単体で約10時間ということは、通勤・通学片道1時間であればまるっと5日間利用できてしまう計算だ。実際、2日間に及ぶスマートフォンと組み合わせた再生テストは、一度も充電しないまま終わってしまった。充電ケースの併用で最大50時間の連続再生とのことだが、ケースは自宅に置いたままでも困らなそうだ。
装着感については、楕円形で耳にフィットするオーバルシリコンイヤーピースのS/Mサイズと、ラウンドシリコンイヤーピースSサイズ×1が付属、自分の耳に合わせて装着できる。
そして、肝心の音質も抜かりなし。直径6mmの極薄ダイヤフラムを採用したダイナミックドライバーは制動よく、スピード感あるベースがグルーヴ感を生み出す。アコースティックギターの音は輪郭が緻密なうえにキレがよく、特にaptX接続時の自然な胴鳴りは従来の完全ワイヤレスの水準を明らかに超えている。Spotifyなどのストリーミングサービスをカジュアルに楽しむのもいいが、CDから取り込んだ音源をじっくり聴くにも足るクオリティだ。
ワイヤレスの快適さと高音質に、使い勝手の良さも
このAir-Xは、QCC3026という最新BluetoothオーディオSoCの力を借りつつ、MAVINというイヤフォン製造の豊富なノウハウを持つメーカーの力量を存分に発揮したイヤフォンだ。技術力を活かしたアンテナ設計とそこから得られる通信の安定性は、AACおよびaptXのサポートなどオーディオ再生に対する配慮を加え、完全ワイヤレスイヤフォンとしての完成度を高めることに成功している。スペックや機能面だけでなく、実際の音を聴いてみても、完成度の高さを実感した。
充電ケースなしでも数日は持ちこたえられる省エネ設計も、スマートフォンと合わせて通勤・通学のお供として使うには重要なポイントだ。片側約4.5gと軽く、一時的な水没に耐えられるほどの防滴仕様も備えている。それでいて混雑した駅でも音途切れしないほど接続が確かなのだから、完全ワイヤレスがいよいよ実用的な時代になったといえるだろう。