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小型・低価格でも“驚異の明るさ”、ViewSonicの4K DLPプロジェクタ「X10-4K」の実力

コンパクトで多機能かつ低価格な注目プロジェクター

昨年末、ビューソニックから画期的なプロジェクター「X10-4K」が登場した。DLP独自の画素ずらし方式であるXPRテクノロジーにより、4K/HDR 830万画素の投写が可能なプロジェクターだが、スピーカーを内蔵したポータブルプロジェクターとしての性格を持ち、さらに独自OSの搭載で単体で動画再生できるなど多機能さも特徴。さらに、店頭予想価格は16万円前後(税込)と、盛りだくさんの内容でありながらリーズナブルな価格となっているところもポイントだ。

ビューソニック「X10-4K」

端的に言ってX10-4Kは“プロジェクターの進化形”を感じさせる製品に仕上がっている。だが、そのベースにあるのはやはり純粋なプロジェクターとしての完成度。この記事では、X10-4Kの据え置き/ポータブルプロジェクターとしての使い勝手やクオリティ面について紹介していく。筆者は以前同社の前モデルに相当する「PX727-4K」もレビューしているので、そちらとの比較もあわせて行なっていきたい。

レザーを使ったデザインがカッコいい

X10-4Kのサイズは261×271×166mm(幅×奥行×高さ)で、重さは約4.1kg。奥行と高さはPX727-4Kを僅かに上回るが、幅がかなり小さくなったこともあり、見た目から受ける印象はさらにコンパクトになった。

幅がかなり小さくなったこともあり、見た目から受ける印象はさらにコンパクトに

良くも悪くも「廉価なプロジェクター」然としていたPX727-4Kとは打って変わって、X10-4Kは筐体の金属の質感とハンドルやバックカバーのレザーの質感を組み合わせるなど、デザイン面にも力が入っている。国際的なデザイン賞であるiFデザイン賞も受賞したとのことだ。

投射レンズは中央配置。PX727-4Kはオフセンターだったので、それと比べると設置は容易になった。LED光源の採用により、2,400LEDルーメンという高輝度と同時に標準で約30,000時間という光源寿命を実現している。

投射レンズは中央配置

両側面には吸排気のファンとスピーカー。投射時の光漏れは皆無と言っていい。

天板の正面向かって右側には電源と音量調整を兼ねたボリュームノブがある。ちなみに本機のスピーカーはHarman Kardonが手掛けており、Bluetoothスピーカーとして使うことも可能だ。

天板には電源と音量調整を兼ねたボリュームノブ
スピーカーはHarman Kardonが手がけている。音質にも期待が高まる

バックパネルはマグネット装着のレザーカバーによって覆われている。入力はかなり豊富で、HDMIのほか、USB-C端子やMicro-SDスロットも備える。

マグネット装着のレザーカバーで覆わたバックパネルがカッコいい
カバーを下げると、豊富な入力端子が

本機にはWi-Fi接続用のUSBドングルが付属し、バックパネルに接続することで各種ネットワークサービスをワイヤレスで利用可能になる。なお、USBドングルの接続端子はかなり奥まったところにあるため、ドングルを接続した状態でもバックパネルをカバーで覆うことができる。

Wi-Fi接続用のUSBドングルを接続しているところ。接続した状態でもデザイン性が損なわれない

脚部は四点支持。高さは固定だが、折り畳み式のスタンドを使って二段階(115度・130度)の仰角を付けることができる。また、天吊りも可能だ。

底部
底部には折り畳み式のスタンド。これにより、二段階の仰角がつけられる
仰角をつけたところ

ハンドルも備えているため、移動は片手で簡単に行なえる。さらに縦にして置けるので使わない際はより小さなスペースで済むのも便利だ。

ハンドルも備えていて、持ち運びも楽だ

付属するリモコンは非常にシンプルなものだが、必要な機能にはすぐアクセス可能。後述するオートフォーカス機能もボタン一つで利用できる。

付属するリモコンはシンプルなデザイン

投写距離が短くなり、設置しやすくなった

X10-4Kは短焦点タイプのプロジェクターであり、レンズシフトやズームは搭載しないものの、約1.77mの距離から100型の投写が可能。PX727-4Kが100型の投写に約3.25m必要だったので、投射距離は一気に短くなった。より短い距離からより大きな画面を映せることは、部屋が狭くても大画面で楽しめるという事で、設置の自由度が高いポータブルという側面も持つ本機の性格からすれば明らかな強みとなる。

電源を入れると、ビューソニックのロゴが表示された後でオートフォーカス機能が働く。オートフォーカスは数秒で完了し、精度も手動で追い込むのとほとんど変わらないレベルを実現している。ポータブルプロジェクターは本来移動のたびにフォーカスなど映像を調整する必要があるが、本機はオートフォーカス機能と自動縦台形補正機能のおかげで、「置くだけ」で最適な映像が表示可能になる。

電源を入れると、ビューソニックのロゴが表示
起動時の自動フォーカスはオフにできるほか、手動でフォーカスを合わせることも可能だ

初回起動時には使用言語とプロジェクターの設置位置を選択し、Wi-Fi接続のガイドが表示される。

メニューはグラフィカルで、各種設定は見やすく、わかりやすい。「設定」→「基本設定」「詳細設定」からプロジェクターの基本的な設定を行ない、画質調整は入力ソースの表示中あるいはコンテンツの再生中に行なう形になる。

「画像設定」では、「カラーモード」「輝度」「コントラスト」「色温度」「色調」「彩度」「シャープネス」「ガンマ調整」に加え、赤・緑・青・シアン・マゼンタ・イエローをそれぞれ調整可能なカラーマネジメントが用意されている。

 「詳細設定」では、「アスペクト比」「HDR」「EOTF」「フレーム補正」「HDMI設定」「3D設定」のほか、音声設定を行なう「Harman/Kardon」、ソースの情報を表示する「インフォメーション」が用意されている。「EOTF」はHDR有効時、入力ソースに応じて画像の輝度レベルを自動的に調整する機能で、低・中・高から選択できる。

UHD BDソフトでプロジェクターとしての能力をチェック!

画質チェックは4K ULTRA HD Blu-rayソフトを中心に行なった。

画の第一印象は、先代と同様“とにかく明るい”。最初に見た「レヴェナント:蘇えりし者」では、陽射しや闇の中で燃える炎が実に鮮烈だ。自然光を活かして撮影された本作の映像美を、有り余る輝度の余裕でもって映し出す。多少気になる点があっても圧倒的な光量で押し切ってしまう、そんなインパクトの強さと充実感がある。

とはいえ、完全に照明を落とした環境で使うには「カラーモード」でどのモードを選んでもさすがに明るすぎ、かつ色も鮮やかすぎるほどなので、輝度と彩度を下げる方向で調整するのが良いと感じた。ある程度プロジェクター側の輝度を下げても、HDRならではの煌めきや高輝度領域での豊かなグラデーションは十分に味わえる。

視聴に使用したUHD BD

「スパイダーマン:スパイダーバース」では、クライマックスのシーンをチェック。粒子加速器によって時空が歪曲し、滲み出した無数の宇宙が極彩色の泡となって揺らめき弾けるこのシーンではX10-4Kの色域の広さが存分に活かされ、文字通り色彩の洪水が楽しめる。解像感も申し分なく、画面の隅々までディテールがシャープそのもの。それでいて描線に強調感がなく、滑らかさが保たれるのは本機の美点である。

「トランスフォーマー:最後の騎士王」では、終盤敵の空中構造物に殴り込みをかけるシーンをチェック。紺碧の空に浮かぶ雲の濃淡、陽光を浴びた敵味方の金属構造物が放つ複雑な光沢など、HDRの恩恵がいたるところで感じられるシーンだが、ここでもX10-4Kはまだまだ輝度に余裕があり、白飛びを感じさせない、光に満ちた見事な映像を見せてくれた。

「スパイダーバース」しかり「トランスフォーマー」しかり、力強い光彩と優れた解像感があわさって、“プロジェクターから投写した光をスクリーンに反射させて見ている”というよりも、100型の直視型テレビを見ているような感覚がある。

フィルム撮影かつ闇が支配的な映像はどうかと、「エイリアン」の序盤、未知の惑星で発見した異星人の宇宙船内部を探索するシーンを見てみると、かなり平均輝度の低いシーンでも階調はしっかりと粘り、暗部の情報量もしっかりと表出できている。黒浮きはそれなりにあり真っ黒とはいかないものの、時折現れる光が小さくとも強い印象を残すため、画面から感じられるコントラストは相当に高い。

プロジェクター内蔵とは思えないサウンド

X10-4Kは8W×2のスピーカーを搭載しており、一台で映像の投写と音声の再生が可能である。さすがはHarman Kardonが手掛けただけのことはあり、スピーカーの再生品質は単なるおまけの域を越えた本格的なもの。激しい効果音が乱舞するアクション映画でも音楽とダイアローグが主体となるサスペンス映画でも、作品の雰囲気はしっかりと伝わる。

音の広がりに優れ、100型の画面サイズに負けないスケール感を出せるうえに、音量にも余裕がある。純粋なBluetoothスピーカーとして音楽再生に使った場合でも満足度は高い。

両側面から音が出る

プロジェクターとしての実力の高さを確認

X10-4Kは、高輝度を存分に活かした4K/HDRプロジェクターとして確かな実力を持っている。投写距離が短くなった事や、オートフォーカス機能と自動台形補正機能のおかげで設置性も優秀。特にオートフォーカス機能については、あらゆるプロジェクターに同じ機能を搭載してほしいと思えるほどだ。

なによりもまず純粋にプロジェクターとして使いやすく、高画質な映像を楽しめるということが、X10-4Kの大きな魅力であることは間違いない。

次回は、その多機能さを活かして、ゲームなど、様々なコンテンツを楽しんでみるつもりだ。