トピック

これぞ“オーディオスマホ”「Xperia 1 III」の有線出力や360 Reality Audioを聴く

Xperia 1 IIIのフロストパープル

Xperiaの最新フラッグシップモデル、「Xperia 1 III」が登場した。Xperia 1シリーズと言えば、21:9のシネマワイドなディスプレイと、映画の撮影にも使えるほどの高性能カメラというイメージが強いが、今回の新機種「Xperia 1 III」は、実は“音も凄いスマホ”に進化。クリエイターのみならず、「音楽や映像コンテンツをハイクオリティで楽しみたい」という多くの人に、要注目の端末になっている。

黒が締まる、超ハイコントラストなシネマワイドディスプレイ

外観の特徴はなんといっても、6.5型、アスペクト比21:9のシネマワイド有機ELディスプレイ。シネマスコープサイズの映画と相性の良いアスペクト比なので、AVファンにはこの時点で“グッと”くる。HDRコンテンツを視聴する際も、有機ELの締まる黒と明るい部分の輝度の鋭い、超ハイコントラストな表示が非常に美しい。また、リフレッシュレート120Hz駆動もサポート。ゲームなどを滑らかに……ゲーミングモニタ風に言えば“ヌルヌル”に表示できる。

実際に本体を手にすると、大画面ディスプレイにも関わらず、横幅が狭く、ズボンの尻ポケットやジャケットの胸ポケットにもスッと入れやすい。

アスペクト比21:9のディスプレイを搭載しているので、筐体は縦に長い

触っていて感じるのは、質感の高さだ。マットな仕上げのメタルフレームと、前だけでなく背面にもガラスを使ったフロスト仕上げ。全体的にマットに見せつつ、光によって色の濃さなど表情が変化して見える絶妙なバランスで高級感がある。個人的には指紋が目立ちにくいのが嬉しい。

ちょっと角度を変えて撮影した写真だが、背面の色味が変化して見えるのがわかる

バックパネルには高強度のCorning Gorilla Glass 6、前面にはさらに耐久性を高めた最新のGorilla Glass Victusを使っている。カラーはフロストブラック、フロストグレー、フロストパープルで、今回はフロストパープルを使っている。

嬉しい3.5mmイヤフォン出力搭載

今回のメインであるサウンド面をチェックしよう。まず注目は3.5mmイヤフォン出力を備えている事。ご存知の通り、イヤフォン出力は昨今のスマホから消えつつある、貴重な存在。ワイヤレスイヤフォンの人気を考えれば「仕方ないのかな」と思う一方で、お気に入りの有線イヤフォンが使えず寂しい思いをしている人も多いだろう。

もちろん、イヤフォン出力の無いスマホでも変換ケーブルやポータブルアンプなどを接続すれば有線イヤフォンも使えるが、そうした別パーツを持ち歩かなくても、スマートに有線イヤフォンが使える便利さは、やはり使ってみるとありがたい。

嬉しい3.5mmイヤフォン出力搭載

また、“単にイヤフォン出力をつけました”というわけではなく、その音質にこだわっているのがオーディオメーカーのソニーらしいポイント。スマホは、非常に限られた空間にノイズを発する様々なパーツを詰め込んだ機械だが、そうしたノイズが音に影響を与えないように対策も徹底しているそうだ。

新機種のXperia 1 IIIではさらに、最大音圧が前モデル「Xperia 1 II」と比べて約40%向上。より大音量で音楽を楽しむことができ、能率の低いイヤフォン/ヘッドフォンも鳴らしやすくなった。ちなみに、前モデルのXperia 1 IIは、オーディオビジュアルアワードの「VGP2021」で、そして新機種のXperia 1 IIIも「VGP2021 SUMMER」で、どちらも「スマホAVクオリティ大賞」を受賞。評価されたAV機能をさらに進化させたのがXperia 1 IIIというわけだ。

実際に有線イヤフォンで音を聴いてみよう。標準の「ミュージック」アプリで、「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best of My Love」の96kHz/24bitファイルを再生する。ちなみに、このアプリはプラグインなど追加せずにハイレゾの再生が可能だ。

冒頭、向かって左側のアコースティックギターのソロから音楽が始まるが、もうこの時点で音の良さがわかる。静かな音場に、ギターの響きが波紋のように広がっていくのだが、その背景にある“音の無い空間”が“しっかりと静か”なのだ。ノイズの多いスマホだと、“音の無い空間”がザワついて、楽器の音が不明瞭に聴こえてしまう。Xperia 1 IIIでは、無音部分がしっかりと無音で、音の無い空間にスッとギターの音が立ち上がる。音場に浮かぶ楽器の輪郭がクリアに聴き取れ、立体感があり、生々しく聴こえる。

ギターに続いて入ってくる女性ボーカルの声もナチュラル。人の声は、日常生活で聞き慣れているので不自然な音だと違和感を感じやすい、“ごまかしの効かない音”だが、Xperia 1 IIIは色付けが少なく、非常にリアルだ。

関心するのは1分過ぎから入ってくるアコースティックベースの低音。これが「ズーン」としっかり沈み、ちゃんと“低い音”が出ている。中低域を膨らませた“なんちゃって低音”ではない。

深い低音の中にも、しっかりと芯がある。ベースが「ブォーン」と不必要に膨らまず、適度にタイトな締りがある。分解能が高いため、「ズーン」という低音が大味にならず、低い音の中に、弦がブルブルと震える細かな音が含まれているのが聴き取れる。

SN比が良いだけでなく、イヤフォンをドライブするアンプの駆動力が高くないと、こういう低音は出せない。これは、小さな筐体にアンプまで内蔵する完全ワイヤレスイヤフォンが苦手とする部分であり、有線イヤフォンの良さが発揮できている。

本格的なヘッドフォンもしっかり鳴らせる

ソニーの「MDR-Z7M2」を接続

ヘッドフォンはどうだろうか。ソニーの「MDR-Z7M2」を接続してみる。このヘッドフォンの特徴は、最上位機「MDR-Z1R」の技術を投入した、70mm径の大型アルミニウムコートLCP(液晶ポリマー)振動板を搭載している事だ。

大型ユニットを搭載したヘッドフォンは、イヤフォンよりも本格的な低音が再生できる。ただ、それもアンプが良くなければ実現できない。Xperia 1 III×MDR-Z7M2では、その持ち味をしっかり発揮できる。「イーグルス/ホテルカリフォルニア」(192kHz/24bit)を再生すると、冒頭のベースが「ズゴーン」と驚くほど深く沈む。イヤフォンでも迫力はあったが、ヘッドフォンでは迫力を通り越して“凄み”を感じる。

沈み込む低音の上に、メロディーを奏でるギターの細かな音が展開。さらに左からも追加のギター・メロディーが登場、そして中央にドン・ヘンリーのボーカルが歌い出す。深い低音の中でも、ギターの旋律やボーカルの輪郭はクリアなままで、個々の音がキッチリと描き分けられている

音場はイヤフォンより広く、左右・前後の空間が広がるだけでなく、上下にも空間が拡張。その空間の中に、各音像が定位するので、音楽がどのような構造で作られているのかよくわかる。モニターヘッドフォンライクな楽しみ方もできるだろう。

ボリューム値は80~90%くらいまで上げる必要があるが、それで十分な音量が得られる。関心するのは、音量を上げていっても空間の広さや、細かな音の明瞭さといった特徴が維持される事。ドライブするスマホにノイズが多かったり、アンプ駆動力が弱いと、音量を上げたときに描写が雑になり、悪く言うと“音楽がうるさく”感じられてしまうものだ。だが、Xperia 1 III×MDR-Z7M2では音量を上げても歪が少なく、情報量が多いままなのでうるさく感じない。むしろどんどん“気持ちよく”なっていく。

試聴中は、音の印象をメモりながら聴くのだが、ヘッドフォンで聴く音が気持ちよすぎて、ついメモを書く手が止まってしまう。意識を乗っ取られて音楽に浸ってしまうこの感覚が、スマホでも味わえるのは嬉しいポイントだ。

音が良いので、ハイレゾ楽曲ばかり聴きたくなるスマホだが、御存知の通り“非ハイレゾ曲”もまだ多く存在する。Xperia 1 IIIにはそんな非ハイレゾ楽曲を、より高音質で楽しむ機能も搭載されている。それが「DSEE Ultimate」だ。独自のAIが曲を解析して、ハイレゾ相当の高音質に変換するもので、Xperia 1 IIIではAIのアルゴリズムが進化し、さらに再現性が向上したそうだ。

「くるり/ワンダーフォーゲル」をMP3/128kbpsでエンコードしたファイルがあるので、それを再生しながらDSEE UltimateのON/OFFを切り替えてみると、違いがよくわかる。冒頭エレキギターとドラムの鋭い音が切り込んでくる楽曲だが、OFFで聴いていると、高域が荒く、音像が薄く、なんと言うか“ガチャガチャした音”に聴こえる。だが、ONにすると、高音の質感が豊かになり、鋭い音の中にもなめらかさが出て、1つ1つの音の違いがちゃんと聴き取れるようになる。

高音質配信サービスをフルに楽しむ

「Amazon Music HD」や「mora qualitas」など、ハイレゾの楽曲を配信するサービスが身近になり、手持ちの音楽ファイルより、これらのサービスで日々音楽を楽しんでいる方も多いだろう。

そこでAmazon Music HDとmora qualitasアプリをインストールして聴いてみたが、こっちでもハイレゾ楽曲の情報量の多さがじっくり楽しめる。例えば宇多田ヒカル「One Last Kiss」には、ささやくようなボーカルと、かすかな吐息が多く含まれているが、こうした細かい音はハイレゾでないと音像が薄く、悪く言うと“雑”に聴こえてしまう。だが、96kHz/24bitで聴くと質感まで聴き取れるようになるため、かすかな吐息に含まれる湿度まで伝わってくるような生々しい音に聴こえてゾクゾクする。

こうした音楽配信サービスを、ワイヤレスヘッドフォン/イヤフォンで楽しんでいる人も多いと思うが、SBC/AACといった不可逆圧縮コーデックでワイヤレス伝送するイヤフォンの場合、せっかくハイレゾで配信された曲も、イヤフォンへの伝送時に情報が欠落してしまう。

有線イヤフォンであれば、ハイレゾ配信の情報量もあますことなく、ロスレスで楽しめる。“音楽配信サービスをぞんぶんに楽しむためのスマホ”としても、Xperia 1 IIIには魅力がある。

ワイヤレスもLDACで高音質に

一方、「有線の音が良いのはわかってるけど、ワイヤレスの便利さは捨てがたい」「もう有線には戻れない」という人も多いだろう。そこで注目となるのが、“ワイヤレスでもハイレゾの情報量を楽しむ方法”だ。

Xperia 1 IIIは、ワイヤレスでも最大転990kbps、ハイレゾの情報量で伝送できるLDACコーデックに対応している。接続相手がLDACに対応するワイヤレスヘッドフォン/イヤフォンであれば、ワイヤレスでもハイレゾの情報量を伝送できるのだ。

ソニーの完全ワイヤレス新モデル「WF-1000XM4」

ちょうど最近、ソニーの人気完全ワイヤレスの新モデル「WF-1000XM4」が登場したが、このイヤフォンはLDACに対応しているので、ペアリングして音を聴いてみた。

「WF-1000XM4」と「接続優先」で接続するとAACでの伝送となるが……

まず、AAC接続の状態で、先程の宇多田ヒカル「One Last Kiss」を聴き、その後、アプリ「Sony | Headphones Connect」の「Bluetooth接続品質」を「接続優先」から「音質優先」に切り替えると、LDAC接続に切り替わる。アプリの上部に「LDAC」と表示されるのでわかりやすい。

「Bluetooth接続品質」を「接続優先」から「音質優先」に切り替えると、LDAC接続に切り替わる

AACでも十分に高音質なのだが、LDACに切り替えると、宇多田ヒカルの声が音場に広がり、音の波紋が空間の奥まで広がっていく様子が“より見えるように”なる。俗に言う“空気感が出る”というやつだ。ボーカルの音像にも“厚み”が出て、人間らしい実在感をまとう。ささやくような歌声の“サ行”の高音も、質感描写が豊かになり、より艷やかな“生っぽい”声になる。これぞLDACの醍醐味と言えるだろう。

WF-1000XM4のサウンドは、非常にニュートラルかつバランスも良好。低音が不自然に膨らんだり、高音を強調したりもしない、ピュアオーディオライクな音が好印象だ。送り出し側であるXperia 1 IIIの情報量の多いサウンドを、そのままストレートに聴かせてくれる。

ちなみに、「Sony | Headphones Connect」では、ユーザーの耳にイヤーピースのサイズが合っているかどうかのテストも可能。測定音として短い音楽が3、4秒ほど流れ、イヤーピースが耳穴の中で密閉しているかどうかを確認できる。「装着したピースのサイズが合っているか」という測定だけでなく、幾つかのサイズのピースからどれが合っているかを判断するという測定も可能だ。

Xperia 1 III×WF-1000XM4の組み合わせは音が良いだけではない。WF-1000XM4は、ワイヤレス充電のQiに対応しているのだが、Xperia 1 IIIもQiに対応し、さらに“おすそわけ充電”機能も備えている。つまり、Xperia 1 IIIの背面に、WF-1000XM4の充電ケースを乗っけると、Xperia 1 III内蔵バッテリーを使い、WF-1000XM4へ充電ができてしまう。出先でイヤフォンの電池が無くなった時に、ケーブルも何も使わず、Xperiaから充電できてしまうというわけだ。

Xperia 1 IIIはXperia史上最大容量の4,500mAhバッテリーを搭載しているので、“困った時の外部バッテリー”としてもベストな組み合わせになるわけだ。

Xperia 1 IIIの背面にWF-1000XM4の充電ケースを乗せて充電できる

360 Reality Audioが楽しめるスマホでもある

高音質だけでなく、Xperia 1 IIIは話題の“360度オーディオ”にも対応している。具体的には、ソニーが展開している360 Reality Audio認定スマホなのだ。

360 Reality Audioは簡単に言うと、チャンネルベースではなく“オブジェクトベース”のサラウンドを、イヤフォンやヘッドフォン、スピーカーで再現する技術。つまり、音楽制作時に、ユーザーの斜め上とか、真後ろなど、空間の様々なポイントに音像を配置した曲を作ることができ、その曲を、イヤフォンやスピーカーといった個々の再生機器で最適化しながら再現できる……というものだ。

360 Reality Audioは、一般的なイヤフォンで聴いてもある程度効果が体験できる。360 Reality Audioのデモ楽曲が楽しめる「Artist Connection」で、通常の2chサウンドと、360 Reality Audio版サラウンドを聴き比べると、通常の2chでは頭の中心にボーカルや楽器の音像が“みっちり”詰まってしまう曲でも、360 Reality Audio版では音場が横にグワッと広がり、その空間に、しっかりと距離をおいてギター、ベース、ボーカルと、音像が違う位置に定位しているのがわかる。音が頭の中に定位して圧迫感を覚えてイヤフォンが苦手という人は、360 Reality Audioのサウンドを体験して欲しい。

そして360 Reality Audioは、普通のイヤフォンではなく、360 Reality Audio認定イヤフォン/ヘッドフォンを使うと、さらに効果が高まる。……というか“真の実力”を発揮できる。

先程のWF-1000XM4が360 Reality Audio認定イヤフォンなので試してみよう。アプリの「Sony | Headphones Connect」を起動、ウィザードに沿って自分の耳を横からスマホのカメラで撮影すると、耳やその周囲の形状を解析。1人1人の聴感特性にマッチしたサウンドに変換した上で、360 Reality Audioコンテンツを再生してくれる。

アプリの「Sony | Headphones Connect」で耳の形状を撮影
そのデータを測定し、ユーザーの耳に最適なサウンドで360 Reality Audioを再現してくれる

実際に、最適化した状態のWF-1000XM4で360 Reality Audioを聴くと、先程の一般的なイヤフォンよりも、音場が大きく広がる。音像の水平方向の“移動感”も明瞭になり、「マイケル・ジャクソン/スリラー」冒頭で、足音の音像が右から左へ移動するシーンでも、“移動した距離”が360 Reality Audioの方が明らかに長く感じる。音像がそのまわりをグルグル回る音源では、確かに“頭の後ろから音がする”感覚が味わえる。「スリラー」で音場の背後にとどろく雷鳴も、最適化した360 Reality Audioでは、しっかりと“奥から”聴こえる。

360 Reality Audioの良いところは、360 Reality Audio版として作られた音に、あまり不自然さが無いところだ。バーチャルサラウンド系の技術では、「音は広がるけれど、位相が狂ったような変な音になる」パターンが多く、常用しにくい事が多いのだが、360 Reality Audioにはそのような違和感がない。

なお、この体験は当然360 Reality Audio対応楽曲でないとできないが、Xperia 1 IIIには普通の2ch音源を、擬似的に360 Reality Audioのような立体的なサウンドに変換して再生してくれる「360 Spatial Sound」という機能も搭載している。

実際に変換して聴いてみると、360 Reality Audio楽曲ほど効果は強烈ではないが、頭内に定位していた音像がフワッと広がり、圧迫感、密閉感がやわらいで聴こえる。ライブ音楽などでより効果的だが、広がりのある音で楽しみたいときには積極的に使いたい機能だ。

上から2つ目が「360 Spatial Sound」の設定

なお、360 Reality Audioに関しては、Xperiaと連動したキャンペーンも実施中。9月21日まで実施している「360 Reality Audio体験がアタル!キャンペーン」では、期間中にXperia 1 IIIと、WH-1000XM4もしくはWF-1000XM4を購入し、10月4日までに応募すると、「THE FIRST TAKE 360 Reality Audio音源」スペシャルコンテンツがプレンゼントされる。

同じく9月21日まで実施している「Xperiaで最新の音楽体験キャンペーン」では、Xperia 1 III、Xperia 10 III、Xperia 5 II、Xperia 1 IIを購入後、ユーザーがXperia Lounge Japanアプリから応募すると、Deezer/Nugs.net/mora qualitasのいずれかが3カ月無料で利用できる。詳細はキャンペーンのページを参照のこと。

内蔵フルステージステレオスピーカーで映画もクリアに

ここまではヘッドフォン出力やワイヤレスでの音質をチェックしたが、実はXperia 1 IIIは内蔵スピーカーも音が良い。スマホでは、本体の下だけにスピーカーを搭載している機種も多いが、Xperia 1 IIIは本体上下にユニットを内蔵。映像を見るために横向きにすると、左右からキッチリステレオで再生できる。

本体上部、下部にフルステージステレオスピーカーを内蔵している

YouTubeでミュージックビデオを見てみたが、非常に音がクリアで、音場の広がりも良好。聴き取りやすく、かつ気持ちの良い伸びやかな音だ。

筆者はよく、YouTubeでFPSゲームの実況動画を見るのだが、音の悪いスマホだと「ズドドド」という激しい銃撃音と、プレーヤーのボイスチャットの声が全部くっついてしまい、何を喋っているのか聞き取れない事が多い。

しかし、Xperia 1 IIIのスピーカーは個々の音がキレイに分離されており、銃撃の中で、複数の人が大声を上げていても、それらがクリアに聴き取れる。それだけでなく、音が広がる範囲も広く、画面や本体を超えて、なにもない空間にも音が広がっているのがよくわかる。

120Hz駆動で遊べるFPS「Call of Duty:Mobile」もプレイしてみたが、銃撃音が非常にクリアで鮮烈だ。敵味方が入り乱れる乱戦時は、そこらじゅうで銃撃音が鳴り響くが、その中でも、足元の草を踏みしめる「ザッザッ」という音や、敵が木の階段を登る「コツコツ」という細かな音が聴き取れる。音で知る情報も武器になるFPSでは、この高音質スピーカーは頼りになる。

音がクリアなのには秘密がある。前モデルのXperia 1 IIでは、スマホの筐体自体がスピーカーエンクロージャーを兼ねたような設計で、音を出すと本体自体も振動し、そこから出た音がスピーカーの音と混ざり、音が濁る原因になっていた。

Xperia 1 IIIでは、スピーカーを専用のエンクロージャーに内蔵。その振動が、筐体に伝わりにくいようにしており、スピーカーからの音だけをクリアに聴き取れるようになった。実際にボリュームを上げていっても、スマホを持っている手に振動がさほど伝わらないのがわかる。明瞭なだけでなく、音圧も前モデルより約40%向上している。

音楽再生時の音質については、ソニー・ミュージックエンタテインメントも協力して作り上げたそうだ。

ゲームはもとより、Netflixでアクション映画を見ている時も、サウンドが明瞭なので何が起きているのかわかりやすい。壮大なBGMはキッチリ広がり、それでいてセリフは中央にキチッと定位するので、スマホを顔に近づけると、ちょっとホームシアター気分が味わえて楽しい。

さらに音場を広げる「Dolby Atmos」も備えているので、有効化すると、さらに映画館気分がアップする。なお、Dolby Atmos ON時のサウンドチューニングには、映画のソニー・ピクチャーズエンタテインメントが協力している。Xperia 1 IIIはまさに“ソニーの技術を集約したスマホ”と言えるだろう。

αシリーズの技術を投入したカメラにも注目

音に関して注目してきたが、Xperia 1 IIIのもう1つの特徴はカメラ。背面に16mm/24mm/70mm/105mmと、4つの焦点距離に対応するレンズを備える。そのすべてがDual PD(デュアルフォトダイオード)センサーを搭載し、高速なAFが可能。一番下の望遠レンズは可変式で、内部でレンズが動くことで、70mmと105mmの撮影ができる。その上に搭載しているのはレンズではなく、被写体までの距離を素早く測定できる3D iToFセンサーだ。レンズコーティングはもちろんZEISSのT*コーティングだ。

背面に16mm/24mm/70mm/105mmと、4つの焦点距離に対応するレンズを搭載

ソニーの一眼カメラ、αシリーズで培った技術が投入され、被写体をタップすると自動でフォーカスを合わせ続ける「リアルタイムトラッキング」や、お馴染みの「瞳AF」も搭載。連写はAF/AE追従で最高20コマ/秒というから、スマホカメラの域を超えている。

動画向けには、ソニーの映画撮影用カメラ開発チームが監修した「Cinematography Pro」アプリも用意。ガチなシネマカメラ「CineAlta」のノウハウを色相や画作りに反映したLookで、シネマライクな映像が撮影できる。

Photography Pro
Cinematography Pro

どんな時も音が良いXperia 1 III

Xperia 1 IIIを使っていて感じるのは、“どんな時でも音が良い”という事。有線イヤフォン/ヘッドフォンが高音質なだけでなく、ワイヤレスもLDAC、さらに内蔵スピーカーもクリアなサウンド。非ハイレゾ音源であればDSEE Ultimateで高音質に変換、映画やゲームを楽しむ時は360 Spatial SoundやDolby Atmosでよりシアター気分と、“あらゆる場面を高音質にしよう”という哲学みたいなものが感じられるスマホに仕上がっている。

昼間、有線イヤフォンを使ってじっくり高音質を楽しむのも満足感が高いのだが、個人的に非常に楽しめたのが“ベッドの中での映画鑑賞”だ。21:9のシネマワイド有機ELディスプレイは、黒が良く締まり、映像の“奥行き”すら感じさせるハイクオリティな描写なのだが、Xperia 1 IIIの内蔵スピーカーの音の広がりは、その映像にまったく負けていない。

いままでは「寝る前にちょっと内容確認」くらいのつもりで映画を見ていたのだが、Xperia 1 IIIを使うと「満足度の高い映画鑑賞」がベッドの中で出来てしまう。最高なのだが、映画に夢中になって眠気が飛んでしまうのが困りものだ。

4,500mAhの大容量バッテリーも搭載しているので、映画や音楽をたっぷり楽しんでも、バッテリー残量に余裕がある。こうした基本的なスマホとしての使い勝手の高さも、魅力の1つだろう。

ちなみに、スタンダードモデルながら5Gに対応した「Xperia 10 III」や、シンプルかつコンパクト4G対応の「Xperia Ace II」もラインナップされている。

Xperia 10 III

Xperia 10 IIIは、6型でアスペクト比21:9のHDR対応有機ELディスプレイを搭載し、トリプルレンズカメラも搭載、LDACやDSEE Ultimateも搭載した高機能が特徴。こちらもAV Watch読者には注目モデルだ。

Xperia Ace II

Xperia Ace IIは全長140mmのコンパクトなボディながら、狭額縁デザインで5.5型ディスプレイを搭載し、迫力の映像が楽しめる。予算に合わせて選択肢が豊富なのが特徴だが、これら3機種は全て3.5mmのステレオミニ出力を備えているのも嬉しいところだ。

最上位のXperia 1 IIIは、音楽や映像、そしてゲーム、カメラやシネマライクな動画撮影と、様々なニーズに対応できる。創造も鑑賞も、ハイクオリティにこなせるハイエンドスマホだ。

左からXperia Ace II、Xperia 10 III、Xperia 1 III