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イヤフォンでも驚愕の“デビアレサウンド”実はNC超強力「Gemini II」を聴く

Devialet Gemini II

これまで、いろいろなオーディオ機器を取材してきたが“音が出た瞬間にぶったまげる”ような製品には、なかなか出会わない。数少ない例外が、フランスのDevialet(デビアレ)が作ったワイヤレススピーカーのPHANTOMだ。

GOLD PHANTOM

タマゴのような、宇宙船のような不思議なフォルムなので「デザイン重視っぽいから、音はそんなに期待できないだろうな」と思いながら取材に行ったら、このサイズからは信じられないほどパワフルな音が大きな部屋に充満。しかも音がボワボワ膨らまず、クリアさで、「これが鳴ってるの! マジで!?」と、ぶったまげた。それからというもの、Devialetは筆者の中で「オシャレなブランド」というより、「羊の皮を被ったオオカミ」のようなブランドというイメージがある。

Devialetがそんなクオリティのスピーカーが作れるのには理由がある。同社はもともとアナログのクオリティと、デジタルの効率という、両方のメリットを組み合わせた技術「ADH」を用いて、100万円を超えるようなアンプを開発する“ガチな”ピュアオーディオメーカーだ。

プリアンプ、アンプ、DAC、ストリーマー、フォノ・ステージを薄型筐体に搭載したExpert 250 Pro(261万8,000円)

ただ、巨大なスピーカーやコンポを展開する一般的なオーディオメーカーとは異なり、「生活に溶け込むように機器はできるだけ小さして、そこからDevialetサウンドが楽しめるようにしたい」という理想を持っており、それがPHANTOMを生み出したというわけだ。

そして、その理想をさらに追求したと言えるのが、完全ワイヤレスイヤフォンの「Devialet Gemini II」(64,800円~)。前置きが長くなったが、今回はこのイヤフォンを聴いてみる。結論から先に言うと、耳穴に入るこの小さなイヤフォンから、あのDevialetサウンドがしっかり流れ出してくる。

Devialet Gemini II

エレガントなイヤフォン

Gemini IIの外観は「エレガント」の一言に尽きる。市場には、美しいイヤフォン、可愛いイヤフォン、高そうなイヤフォンは存在するが、Gemini IIのように優雅で気品が漂うイヤフォンというのはなかなかな無い。

カラーはアイコニックホワイト、マットブラック、ゴールドの「Opéra de Paris」。今回はマットブラックを聴いている。普段使いはもちろんだが、通勤や出張など、スーツにもマッチする高級感がある。写真でおわかりかと思うが、充電ケースをぐるっと取り囲む光沢のあるパーツは金属製で、手にすると少し冷たいのが良い。

マットブラック。充電ケースをぐるっと取り囲む光沢のあるパーツは金属製
ケースの充電端子はUSB-C

ちなみにゴールドのOpéra de Parisは、その名の通り、パリのオペラ座とのパートナーシップから生まれたMODELで、この金属分に24Kゴールドを使うことで、さらにエレガントな仕上がりになっているが、他のカラーと異なり、価格は99,800円となる。

アイコニックホワイト
ゴールドのOpéra de Paris

イヤフォンの形状は楕円形で、ちょっとPhantomシリーズとも似た柔らかいフォルムだ。耳に挿入するだけでは引っかかりがないが、挿入した後で、後ろに倒すようにすると耳にフィットする。イヤーピースはXS、S、M、Lの4サイズを同梱するので、よりマッチするサイズを選ぶとよりホールド力を高められる。

イヤフォンの形状は楕円形
イヤーピースはXS、S、M、Lの4サイズを同梱

コンパクトなボディだが、内部には10mm径と大きめなダイナミック型ユニットを搭載する。このユニットは独自開発したもので、振動板の表面に3層のチタンコーティングを施している。磁気回路には強力なネオジウムマグネットを採用するなど、中身の本気っぷりが伺える。Bluetooth 5.2に対応し、対応コーデックはSBC、aptX、AACだ。

イヤーピースを外したところ。ノズルはオーバル型だ

ハウジングへのタッチで操作で再生/停止や、音量調整、曲送りが可能。アプリの「Gemini」から、タッチした操作のカスタマイズができる。アプリでは6バンドイコライザーや、NC/外音取り込みモードの切り替えなども可能だ。

アプリの「Gemini」
6バンドイコライザー
タッチ操作のカスタマイズも可能だ

実は超強力なNC機能

音質と共に追求しているのが、アクティブノイズキャンセリング機能だ。このイヤフォンのために開発された「Devialet Adaptive Noise Cancellation」を備えており、周囲の環境音に合わせてノイズキャンセルのレベルをリアルタイムに調整してくれるという。

ノイズを検知するマイクは、ハイブリットデュアルマイクを搭載する。風の影響を抑えるために、各マイクは防風性のある素材で保護され、風切り音を低減。筐体表面から一定の空間を持って設置する事で、イヤフォン表面で発生する風や乱気流の影響を受けないようにもしている。

機構的な工夫に加え、ソフトウェア面でも、独自の風検知アルゴリズムを用いて、NCの外音取り込みモードを使った際の風切り音も抑えている。

さらに骨伝導センサーまで搭載。音声信号から不要なノイズを除去して、クリアな通話も実現するそうだ。

実際に、電車の中でNC効果を試してみよう。

NC OFF状態では、電車のボディが振動する「ゴーッ」という断続的なノイズや、レールの連結部分を超える時の「タタン、タタン」という音などが耳に入る。

NCをONにすると、一番不快な「ゴーッ」という中低域のノイズが綺麗に消え、一気に静かになる。「タタン、タタン」というレールの連結音も極めて小さくなるため、音楽をスタートするとまったく気にならないレベルになる。

特筆すべきは、高音のNC性能だ。一般的なNCイヤフォンでは、高音はキャンセルしにくく、電車のノイズも「ザー」とか「サァー」という高音部分が低減しきれず、耳に入ってしまう事が多い。

しかし、 Gemini IIではこれをかなり低減できている。もちろん全て消え去る事はできないが、「スッー」というかすかな高音だけ残してキャンセルできている。音楽を流していない状態では聴き取れるが、再生をスタートするとまったく意識に入らない。このNC能力の高さは見事だ。

幹線道路を歩きながら使ってみたが、「グォオオ」と音を立てて行き交う車のエンジン音が綺麗に消え、静かな空間を散歩できる。タイヤが地面とこすれる音の、高域部分だけが少し残る「サァー」という音で「車が来たな」という事はわかるが、これも音楽を再生するとほとんど意識に入らなくなる。

これだけNC性能が高いのに、鼓膜への圧迫感が少ないのも良い。喫茶店でGemini IIを使ってノイズを抑えつつ、音楽は流さないで原稿を書いてみたが、1時間ほど書き続けても閉塞感は感じなかった。

細かい点だが、NCのON/OFFで再生音がほとんど変化しないのも使いやすい。外音取り込みモードにすると、駅のアナウンスなどが聞き取りやすくなるのだが、その時に“外の音が自然”なのもポイントが高い。NCイヤフォンによっては、マイクで集音した中高域だけが取り込まれて、ハイ上がりな、キツイ音が耳に入って不快な製品もあるのだが、Gemini IIではそんな心配はない。

音を聴いてみる

Pixel 9 ProとaptXで接続、「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生する。

冒頭、ピアノとアコースティックベースでスタートするが、ベースの音が響いた瞬間に「おおーっ!」と小声でつぶやいてしまう。ベースの低音が非常に深く沈み、井戸の底から響いてくるような迫力がある。それでいて、音の輪郭はシャープ。

よくある「中域を膨らませて低音っぽく感じさせる音」ではない。芯のある、タイトでしっかり“重い”低音が重厚に響く。そして、そのパワフルな低音に埋もれず、解像度のある中高域も耳へダイレクトに届く。この“パワフルさとクリアさの共存”は、まささにDevialetサウンド。この小さなイヤフォンでも、その醍醐味がしっかり味わえるのが嬉しい。

チタンコーティングドライバーの剛性の高さもあると思うが、それだけでこのサウンドにはならないだろう。ネオジウムマグネットを使った強力な磁気回路やアンプ、信号処理などを組み合わせ、ユニットの振幅をしっかり制御する事が、このキレ味を生み出していると思われる。

ダイアナ・クラールの声は自然で、色付けはほとんど感じられない。人の声の温かさが感じられる。クリアで解像度は高いが、強調感は少なく、サ行も耳に刺さらない。

低音がパワフル、中高域がクリアなので、「米津玄師/KICK BACK」のような疾走感のあるロックがハマる。地を這うようなベースのうねりの上空に、力強いボーカルが突き抜け、細かなSEが空間に広く乱舞するのがメチャクチャ気持ちいい。

解像感が高いので、散りばめられた細かな音がキッチリ聴き取れ、自分の耳の性能がアップしたようにも感じる。

イヤフォンで最も大切な音質に全力投球

いろいろなジャンルの曲を聴いて気がついたのは、例えば前述の「ダイアナ・クラール/月とてもなく」や、オスカー・ピーターソン・トリオ「You look good to me」のような、アコースティックな楽曲を聴く際に、Gemini IIのNC性能の高さが役に立つという事だ。

ジャズやクラシックは、静かな空間で、かすかな音の動きを楽しむようなシーンが存在するが、そうした音は、電車や飛行機のノイズに負けてしまいがちだ。Gemini IIでは、高いNC性能で、静かな音場を作った上で、そこにクリアな音を描写してくれるので、小さな音や、微妙な声のニュアンスなどが聴き取りやすい。

イヤフォンやヘッドフォンにおいては、音質を高めるだけでなく、外のノイズをできるだけ耳に入れない工夫も重要だと改めて気付かせてくれるイヤフォンがGemini IIだ。

64,800円~という価格は、完全ワイヤレスイヤフォンとしては高価な部類に入る。他社のライバル製品と比べると、例えば、再生音のパーソナライズ機能や空間オーディオなどの機能はGemini IIには無い。だが、そうした機能の中には一度使って、結局OFFのまま使うというパターンも少なくない。そういった意味で、イヤフォンに最も大切な音質と、それをしっかり味わうためのNC性能、そして所有満足度を上げるデザインに全力投球しているGemini IIは、「おヌシ、わかってるな」というイヤフォンだ。

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Devialet Gemini IIを購入すると、もれなくQobuzの60日間無料トライアルコードをプレゼントするキャンペーンが11月29日からスタートする。スケジュールは以下の通り。

・購入期間:2024年11月29日(金)~ 2025年1月14日(火)
・応募期間:2024年11月29日(金)~ 2025年1月17日(金)
・対象製品:Gemini II(全色)
・プレゼント内容:Qobuz 60日間無料トライアルコード
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山崎健太郎