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コンパクトでリッチな音楽体験、FYNE AUDIO同軸ブックシェルフ「F500S」を、ストリーミングアンプで聴く
- 提供:
- アクシス
2025年7月4日 08:00
音楽配信サービスの進化によって、好きな曲をいつでも、どこでも気軽に楽しめる時代になった。Apple MusicやQobuzといったロスレス、ハイレゾの高音質ストリーミングも普及し、「手軽だけど、ちゃんと“良い音”で聴きたい」というニーズが、かつてないほど高まっている。
一方で、大掛かりなオーディオシステムを部屋に組むのは、現代の暮らしにそぐわないことも多い。できる限りシンプルな構成で、生活空間に自然に馴染むサイズ感で、なおかつ音にはきっちりこだわりたい。そんな“さじ加減”が求められるようになっているのだ。
FYNE AUDIO「F500S」(ペア195,800円)は、そんな理想を叶えるために生まれたブックシェルフスピーカーだ。小さな筐体に、上位モデルゆずりの技術を詰め込み、前モデル「F500」で得た評価をさらに高めてきた。日常の中で音楽にじっくり向き合いたい――そう思ったとき、F500Sはどんな風景を見せてくれるのか。じっくり確かめてみた。
3つの独自技術をさらに洗練させた「F500S」
FYNE AUDIOは、スコットランド発のスピーカーブランド。タンノイのDNAを引き継ぐ技術陣が集まり、2017年に設立された。伝統と革新、その両方を併せ持つメーカーとして、世界中のファンを魅了してきた。
そのコアにあるのが、「IsoFlare」「FyneFlute」「BassTrax」という3つの独自テクノロジーであり、F500Sには、これら3大技術がギュッと詰め込まれている。
IsoFlareは、ツイーターとウーファーを同軸上に配置することで、音像定位や位相特性に優れ、指向性の狭さも徹底して改善されている。
F500Sではこのユニットが更に進化。ツイーターの開口部の曲面とウーファーの曲面を複合解析し最適な形状とすることで、同軸ドライバーのメリットである位相特性に優れつつ、狭くなりやすい指向性を改善し、よりワイドで自然な音の広がりを実現した。
ツイーターは25mm径のマグネシウム製ドームへと刷新。高域の繊細さやレスポンスが一段と向上しており、中低域とのつながりもなめらか。ウーファーには、特殊な溝加工を施したエッジFyneFluteを採用。これがウーファーの固有共振を抑制し、歪みの少ないタイトな低域を実現する。
さらに、アルミダイキャスト製フレームの恩恵で、クリアでスピード感のあるトランジェントも特徴だ。
もう一つのポイントが、低域を360度に拡散する「BassTrax」ディフューザーだ。スピーカー底部の円錐状ディフューザーから音が四方に広がり、部屋全体に自然な低域が行き渡る。F500Sではディフューザーのマウント構造やキャビネット一体の開口部を見直すことで、安定感や音の浸透力がさらに向上した。
そして今回は新たに「プレゼンスコントロール」を搭載。バイワイヤリング対応スピーカーターミナルの間に付けられたスイッチで、2.5kHz~5kHzの中域のバランスを「標準」「+」「-」の3段階で調整できる。部屋や機器、設置場所によって音のキャラクターを細かくコントロールできるのは嬉しい進化だ。
デスクトップリスニング:ミニマム空間で際立つ「F500S」のクリアな音
F500Sがコンパクトなので、組み合わせるアンプなどもコンパクトなものを選んでみた。用意したのは、現代的のリスニング環境にフィットしたストリーミング対応アンプから、Bluesoundの「POWERNODE EDGE」とマランツの「MODEL M1」だ。
まずは、幅140×奥行60cmの筆者デスク上にF500Sを設置。F500Sの幅204×奥行317×高さ325mmというサイズは、デスク上で使うにはやや大きいと感じていたが、実際に置いてみると意外なほど圧迫感がない。ピアノグロス仕上げの上品な佇まいもあり、“机の上に特別な空間が生まれる”ような感覚がある。
ストリーミング対応アンプにはBluesoundのPOWERNODE EDGEを選んだ。幅220mmとコンパクトな筐体にストリーミング再生機能、40W×2のD級アンプを内蔵。スマホ一つで操作できる手軽さもポイントだ。スペースに限りがあるデスクトップシステムの中核を担うにふさわしい一台である。
「BluOS Controller」アプリでQobuzから、「Mrs. GREEN APPLE/ライラック」を再生。音が出た瞬間、目の前の空間が澄み切った空気で満たされる。F500SとPOWERNODE EDGEが紡ぎ出すサウンドを一言でいうなら「清澄」。どこまでもクリアで、中高域の繊細な表情が際立つ高解像度サウンドだ。
イントロの軽快なギターリフが一切の混濁なくシャープに空間を切り裂く。特にマグネシウム・ツイーターの恩恵は絶大で、音の立ち上がりが速く、余計な響きを残さずにスッと消えていく。
デスクトップのような近接環境では、曲によって中高域が少し強く感じられることもある。そこでプレゼンスコントロールを「-」に設定すると、全体のバランスが見事に整う。目の前にスピーカーがあることを忘れてしまうほど、自然な音場が広がった。
「松原みき/真夜中のドア~stay with me (2023 mix)」は、艶やかなサックスの音色に引き込まれる。少しハスキーなボーカルが、耳元で囁かれているかのように生々しい。特筆すべきはベースラインの表現力だ。一音一音の輪郭が明瞭で、音が立体的に感じられる。
ジャズの名盤、「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ/Moanin'」では、F500SのIsoFlareドライバーが真価を発揮する。楽器ごとの定位が明快で、シンバルの刻みからホーンの高鳴りまで、目の前でライブが繰り広げられるような臨場感。限られたデスクトップ空間が、一気に“プライベートなジャズクラブ”へと変わった。
ダイニングのカフェコーナーでのリスニング:生活空間に溶け込む豊潤な音
コンパクトで移動も楽なので、次はF500Sをダイニングの一角のカフェコーナーへ移動。3mほど離れた距離で、よりリラックスした“生活の一部”として聴いてみた。
アンプには、マランツのワイヤレス・ストリーミング・アンプ「MODEL M1」を組み合わせる。100W+100W(8Ω)の余裕ある出力で、小型ながらも存在感のある一台だ。HEOSプラットフォームによる操作性も秀逸。この組み合わせではQobuzアプリからこの春新たにサポートされた「Qobuz Connect」で曲を再生した。
プレゼンスコントロールは「標準」のまま数曲聴いたが、その違いは歴然であった。クールなPOWERNODE EDGEに対し、こちらは響きも豊かで音に厚みがある。潤いや温度感のある「豊潤」なサウンドだ。音像はしっかりしつつも、エッジはまろやか。音楽的なうねりと抑揚が、部屋の中にふんわりと満ちていく。
「松原みきの/真夜中のドア~stay with me (2023 mix)」は、冒頭のベースラインが太く、グルーヴィ。ボーカルには艶と温かみが加わり、声の表情がぐっと前に出る。BassTraxの全方位拡散による豊かな低域が、離れた距離でも音の質感を損なわない。部屋のどこにいても、包み込まれるような低音が心地よい。
レディー・ガガとブルーノ・マーズによるデュエット曲「Die With A Smile」では、二人のボーカリストの巧みな掛け合いが、広大なステージの上に展開される。ピアノの響きは深く、リヴァーブ成分が美しく空間に溶けていく。音のディテールを凝視するより、音楽そのものに“包まれる”感覚を味わえる。そんな、生活に寄り添う音楽体験だ。
リビングのカウンターでのリスニング:広い空間を満たすエネルギーのある音
最後に、MODEL M1との組み合わせはそのままに、より広いリビングのカウンター上にF500Sをセットした。ダイニングよりもさらに空間が広く、家族の話し声や生活音も混じる。より日常的なシチュエーションで、F500Sがどんな表情を見せてくれるかを確かめた。
カウンターの上にF500SとMODEL M1を置くと、オーディオ機器でありつつ、インテリアとしての存在感も際立つ。音楽を流していないときも、空間そのものの“質”を引き上げてくれるようだ。
音楽を再生すると、ダイニング時よりも音の拡散が大きくなり、やや輪郭が甘く感じられる場面もあった。BGM的に聴くなら快適だが、もう少し音の“芯”がほしい。そういう時にこそ、プレゼンスコントロールの出番。設定を「+」に変えると、中高域のエネルギー感が高まり、音の輪郭がシャキッと明確になる。リビングのどこにいても、メロディやボーカルがしっかり耳に届き、音楽の存在感がグッと前に出る。
この設定で「松原みき/真夜中のドア~stay with me (2023 mix)」を流すと、ボーカルが空間の中央にスッと浮かび上がり、リビング全体をやさしく包み込む。プレゼンスを上げたことで、楽曲の華やかさや“体を動かしたくなる”高揚感も増した。
圧巻だったのは、ワーグナーの「ローエングリン」第3幕への前奏曲。ブックシェルフサイズとは思えないスケール感なのだ。金管のファンファーレ、弦楽器のうねり、ティンパニの迫力までしっかり再現し、音のダイナミックレンジと空間描写力の高さに唸らされた。F500Sのポテンシャルを存分に引き出すには、MODEL M1のようなアンプとの組み合わせも実に効果的だ。
「F500S」は、現代のリスニングスタイルに寄り添う名機
Bluesound「POWERNODE EDGE」とマランツ「MODEL M1」という、それぞれに個性的な小型ストリーミングアンプと組み合わせて、FYNE AUDIO「F500S」を聴いた。環境や機器によって表情を変えつつも、常に“音楽そのものの本質”を誠実に伝えてくれる――そこがこのスピーカー最大の魅力だと感じた。まさに、現代の多様化するリスニングスタイルに寄り添う逸品といえよう。
生活の中で、自由に、深く音楽を楽しみたい。そんな願いに、F500Sは応えてくれる。最新ストリーミングアンプとともに、ぜひ一度その音を体験してほしい。日々の音楽が、きっと少し豊かになるはずだ。