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3万円切りなのに“家が劇場気分”サウンドバー!JBL「CINEMA SB580 All-in-One」の低音と声に痺れた

JBL「CINEMA SB580 All-in-One」

いま、サウンドバー市場において、JBLの存在感がすごい。

理由は明白で、リアスピーカーが分離する機構で話題を呼んだ「BAR1000」など、多数の人気モデルを抱え、音にこだわるユーザーからの支持を獲得しているためだ。

実際に、独自の音響技術の数々が投入されたJBLサウンドバーは、いつ体験しても満足度が高い。なんといっても特筆すべきは音質の良さで、映像鑑賞だけでなく、音楽用スピーカーとしても十分に通用するほどだ。

そんなJBLサウンドバーの新モデル「CINEMA SB580 All-in-One」(以下、SB580 All-in-One)に、個人的にもいま一番注目している。理由は、29,700円と、3万円を切る価格でDobly AtmosによるJBLサウンドが楽しめる、衝撃的なコストパフォーマンスの高さだ。

ワンバータイプで導入しやすい3.1chモデル

SB580 All-in-Oneは、ワンバータイプの3.1chサウンドバーだ。

スピーカー構成は45×80mmドライバー×3で、本体左右に1基ずつ、そしてセンターチャンネルスピーカーを独立して配置している。マルチチャンネルのコンテンツでは、セリフなどの重要な情報の多くがセンターチャンネルに収録されているため、専用スピーカーの意味は大きい。

3基のドライバーを搭載しており、そのうち1つは専用のセンターチャンネルスピーカーとなっている

また、臨場感を高めるには良質な低音が欠かせない。SB580 All-in-Oneはスリムな筐体に、70×88mmのレーストラック型サブウーファーを内蔵した点もトピックだ。これらユニットを総合出力200W(50W×4)というハイパワーで駆動する。

ワンバータイプの筐体にはサブウーファーを内蔵している

前述の通り、3万円を切るエントリーモデルだが、Dolby Atmosにも対応。Netflixなど動画配信サービスで配信されているコンテンツの没入感を高めてくれる。音をビーム状に放出して壁の反射を利用するJBL独自の「MultiBeam」テクノロジーは非搭載で、一般的なバーチャルサラウンドでの再生はあるが、価格を考えればなんの文句もない。

そもそも、バーチャルサラウンドは部屋の形状や配置の影響が少なく、テレビ前のスイートスポットで視聴するなら十分なサラウンド効果が得られるというメリットがある。一般的なリビングなどで多く使用されるであろうSB580 All-in-Oneには、むしろ相性の良い技術だ。

自宅で使ってみて好印象なのは、設定がシンプルなこと。操作はすべてリモコンもしくは本体から行なえ、アプリを必要としない。リモコンのボタンも少なく、オーディオ機器に慣れていない方でも迷わず使えるだろう。HDMI eARC端子を備えているので、テレビとHDMIケーブル1本で接続するだけで設置完了。こうした導入ハードルの低さは、エントリーモデルにとって重要な要素だと思う。

操作は基本的にリモコンから行なう。1ボタン1機能が割り振られているので迷わず使えるはずだ
背面端子部はHDMI×1、光デジタル×1、USB-A×1というシンプルな構成になっている

サウンドモードはMovie/Music/Voiceの3モードが用意されているが、基本はMovieを選択しておけば良いだろう。Musicを選ぶとMovieよりも低音がやや抑えられたフラットな傾向になるため、音楽鑑賞する際にはMusic、ライブ映像を観るならMovieといった使い分けを楽しみたい。Voiceは中高域が少し引き上がり、さらに声が目立つようになる。

また、リモコンのBASSボタンから低音レベルを1~5の5段階で調整できる。デフォルトが3なので、例えば夜間には低音を1まで絞ることで、全体の音量を下げることなく周囲への騒音を抑えて楽しめる。

設定状況は本体のインジケーターの色や光り方で判断する

ちなみに、オンライン限定販売なのでご存じない方も多いかもしれないが、JBLからは「CINEMA SB580」というモデルが発売されている。今回登場のSB580 All-in-Oneとの大きな違いは、サブウーファーが別筐体か、内蔵されているかにある。

オンライン限定販売の「CINEMA SB580」は、別筐体のサブウーファーを同梱する

単体サブウーファーのど迫力な低音はたしかに魅力的だが、すでにゲーム機などに占領されている筆者の家では、設置スペースを確保することが難しかった。しかし、SB580 All-inOneのような、サブウーファーをサウンドバー本体に内蔵したワンバータイプであれば、低音を担保しながら設置性も良いというわけだ。

もちろん、単体サブウーファーが置けるなら通常のSB580は有力な選択肢だが、多くの方にとってSB580 All-in-Oneの設置しやすさは魅力的に映るのではないだろうか。

本体の外観はシックに仕上げられている

エントリーモデルとは思えない表現力を実現

ここまでSB580 All-in-Oneのスペック的な概要を紹介してきたが、本モデルの真価はそこではない。JBLサウンドバーが評価されているのは、“劇場の音”を再現できるからだ。

これは比喩的な表現ではなく、多数の映画館にJBLスピーカーが導入されている実績があり、本当に“JBLの音”は“劇場の音”と言えることがミソ。もちろん、開発陣にその気がなければそんな音にはならないが、エントリーモデルのSB580 All-in-Oneでも、JBLのフィロソフィーは受け継がれている。

まずはNetflixやAmazon Prime Videoで映像コンテンツを鑑賞してみた。よく使われる表現だが、これまで聴こえなかった音が聴こえてくる。それだけでも導入の価値はあるが、衝撃的なのは「これまでも聴こえていた音なのに、受け取れる情報量がまったく変わる」体験ができたことだ。

映像配信サービスなどで様々なコンテンツを視聴する

例えばテレビで映画を見たときに、人物のセリフを耳にして、内容を言葉として理解できたとしよう。SB580 All-in-Oneを介して聴くと、そのセリフに乗せられた感情が伝わってくるのだ。これは高音質でなければできない体験だが、それを3万円切りのモデルが実現していることに驚かされた。

『岸辺露伴は動かない 懺悔室』では、登場人物の静かな語りの場面が多いが、抑えた声色の奥に後悔や恐怖といった感情が見えてくる。絶望の淵で呪いの言葉を放つソトバには、映画館で鑑賞したときと同じように背筋がゾッとした。

これはセンターチャンネルのおかげだと思うが、セリフがハッキリと聴き取れることも大きい。自宅で映画を鑑賞する際、テレビ直出しの音だとセリフが不明瞭なことがストレスになりがちだが、SB580 All-in-Oneではすべてがクリアだ。大小さまざまな音が入り混じる激しい銃撃戦のシーンでも、セリフが埋もれずに耳に届く。

『今際の国のアリス』のシーズン2(エピソード7)で、植物が生い茂った渋谷での銃撃戦のシーン。広い空間で乱射される銃と逃げ惑う人々の悲鳴、さらには緊迫感を煽る音楽が入り混じるのだが、そのなかでもアリスやウサギらのセリフや息遣いが耳に届く。

そして、ワンバータイプとは思えないほど、低音に迫力がある。これまでテレビ直出しだった人はもちろん、すでにワンバータイプのサウンドバーを使用中の人でも「うちのサウンドバーとまったく違う」と驚愕するかもしれない。それほどの低音だ。

ベースは5段階から調整でき、デフォルトは「3」になっている。4以上はかなり強力なので、よほどのことがなければ1~3で満足できるはずだ

ただデカい音を出しているのではなく、ボワつかず、量感のある低音なのが素晴らしい。さすがに超重低音というわけにはいかないが、作品に臨場感を出し、没入するには十分過ぎる。この低音が、自宅のテレビ前の空間に“劇場らしさ”をもたらしてくれる。

『もののけ姫』(ディスク再生)の序盤、タタリ神がアシタカの暮らす村を襲うシーンや、コダマに誘われた先の湖でシシ神を目にするシーン、たたら場で人々が仕事をする様子など、低音の恩恵によりリバイバル上映で鑑賞した際の感動が蘇った。

サラウンド感についても、価格を考えれば健闘している。実写版『シティーハンター』のクライマックスで、上空を飛ぶヘリコプターのプロペラ音は額の上から響くように感じるし、飛び去っていく際の移動感もスムーズ。左右方向も見ているテレビの画面サイズ以上の広さが出ている。これ以上を求めるのであれば、BAR1000 MK2などを検討するのが良いだろう。

Youtubeやゲームなど、映画鑑賞以外の用途にも活躍する

続いて、Youtubeを視聴してみる。様々な動画が配信されているが、ゲーム実況やトークバラエティなど、映画よりも声が中心になるコンテンツが多いように思う。つまり、SB580 All-in-Oneとの相性がバツグンということだ。

そもそもの録音環境が良くないような動画でも、しっかりと音が粒立ってくれる。普段は手軽さを優先してスマートフォンでYouTubeを見ているが、その手軽さを捨ててでもテレビで見たくなった。

ゲームプレイにおいても、音の良さが臨場感を高める効果に繋がっている。1つ1つの音が明瞭に描き分けられ、昨今の映画のような演出が多いタイトルでは、まるでその世界に入り込んだかのような感覚が味わえる。音情報も駆使して敵の位置を察知するようなシビアなプレイにはゲーミングヘッドフォンなどを用いるべきだが、RPGやアドベンチャーなど、臨場感をじっくり味わうタイプのゲームであれば、SB580 All-in-Oneで聴いた方がより没入して楽しめるだろう。

高音質Bluetoothスピーカーとしても使える

SB580 All-in-OneはBluetooth接続が可能なので、スマートフォンを繋いでAmazon Music HDで音楽再生を試した。サウンドモードはMusicにしている。

Bluetoothスピーカーとして使用しても、クオリティの高さを発揮してくれる

帯域バランスは低域が盛り上がっているため、かなりパワフルな聴こえ方をする。その一方、中高域は力強い低音に埋もれることなくクリアさを保っており、サウンド全体の印象をブーミーにしていない。ただ、超低音が多用された現代的なポップスでは低音が強すぎるように感じるかもしれないので、その場合はベースレベルを下げるのが良さそうだ。

ユニットの距離が離れていることも奏功してか、1筐体のスピーカーとしては音の分離感が高い。ボーカル曲も良いが、クラシックなどのインストゥルメンタルにもよくマッチする。同価格帯のBluetoothスピーカーでは、このコントラバスの深い響きは出せないと思う。

結局サウンドバーに求めるのは「音の良さ」

エントリーモデルでも、しっかりとJBLの“劇場の音”が体験できる

サウンドバーは新機種が次々に登場する人気ジャンルであり、様々なメーカーから意欲的なモデルが発売されている。エントリークラスにおいてもラインナップが充実しており、そのなかで多機能を売りにしたモデルは魅力的に見えると思う。

だが、ちょっと待ってほしい。なんのためにサウンドバーを導入したいか、その目的を考えたときに必要なのは、使う機会が少ない機能ではなく、「本当に音が良いこと」ではないだろうか。

SB580 All-in-Oneは、まさにその“音が良いサウンドバー”だ。もし、この音が気に入れば、JBLの上位ラインへステップアップする選択肢が用意されているのも嬉しい。

もしサウンドバー選びに迷っているなら、もう考えることはない。“JBLサウンドバーが3万円切り”なんだから、SB580 All-in-Oneに決めてしまおう。

小岩井 博

カフェ店員、オーディオビジュアル・ガジェット関連媒体の編集・記者を経てライターとして活動。音楽とコーヒーと猫を傍らに、執筆に勤しんでいます。