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これを求めていた。Melody Wingsが4種ユニットで追求した“高解像度な美音”「Uranus」を聴く

Melody Wings「Uranus」

最近、個人的に注目しているイヤフォンブランドがMelody Wingsだ。理由は「音の良さ」、「デザイン性の高さ」がありつつ、「価格が手頃」という3点。そんなMelody Wingsが、9月28日に発売する「Uranus」も、方式の異なる4つのユニットを巧みに融合させながら、価格も3万円を切る29,990円と、非常に強力な新イヤフォンとなっている。

Melody Wingsは比較的新しいブランドだが、これまでリリースしている製品に外れがない。2025年に発売した第1弾IEM「Venus」(実売約2.8万円)から完成度が高く、2026年2月に第2弾IEM「Jupiter」(実売約1.5万円)をリリース。価格を抑えつつも、10mm径のチタニウムプレーテッドダイナミックドライバーを採用し、スマホと接続しやすいUSB-C接続にも対応した人気モデルに。第3弾「Neptune」(51,500円)は、迫力たっぷりの低音と、音場の広さに驚かされた。そして第4弾が「Uranus」となる。

実は、Melody Wingsはブランドとしては新しいのだが、音響構造の設計で10年以上の経験を持ち、音響や材料特性にも精通したエンジニアが製品を手掛けている。それゆえ、完成度が高い。その一方で、新進気鋭のブランドとして新しい技術も貪欲に取り入れており、“革新”と“成熟”が同居しているのが強みだ。

「Uranus」

Uranusとは、どんなイヤフォンか

「Uranus」

ユニット構成は1BA + 1DD + 1BC + 1PZT。骨伝導、ダイナミック、バランスド・アーマチュア、圧電(ピエゾドライバー)という、方式の異なる4つのユニットを採用。4ウェイクロスオーバーも搭載している。

各帯域と、それを担当するドライバーは以下の通りだ。

  • 【超低域:10mmの骨伝導ユニット】
    満ちた広い低域の土台をつくり、音場のスケールを広げ、低域に温かな厚みを与えながら、ブーミーさや膨らみすぎを避ける
  • 【中低域:10mmベリリウムコート・ダイナミックドライバー】
    磁気回路にN52マグネットを使い、デュアルキャビティ構造を採用。自然でリラックスした基礎の質感をつくる
  • 【中高域:BA(バランスド・アーマチュア)】
    ボーカルの密度と明瞭な定位を担い、歌声の息づかいと感情の細部を再現
  • 【超高域:圧電(ピエゾドライバー)】
    通常のドライバーでは届きにくい超高域を伸ばし、倍音と空気感を引き出しながら、高域のきつさを抑え、鋭さや刺さりを防ぐ

ユニット構成から感じるのは、骨伝導やピエゾドライバーも搭載しながら、29,990円という価格を実現しているコストパフォーマンスの良さだ。

一方で、方式が異なるユニットを組み合わせると、帯域によって当然ながら音色などが違うという問題が起こる。それらの音を違和感なく繋げ、なじませるハードルが高くなるわけで、逆に言えば、ブランドの技術力が試される部分だ。これは後ほど、試聴でチェックしよう。

インピーダンスは32Ω@1kHz、感度は103dB/mW@1kHz、周波数特性は20Hz~20kHzだ。

ケーブルは着脱可能で、付属のケーブルは4芯OCCに、銀メッキを施したもの。「OCCで芯のある温かい音を支え、低域の量感とボーカルの密度を維持。銀メッキは信号損失を抑え、倍音の細部を引き出す」という狙いだそうだ。

付属のケーブルは4芯OCCに、銀メッキを施したもの

入力プラグは交換式で、4.4mmバランス、3.5mmシングルエンドに加え、USB-Cプラグも付属する。スマホとも手軽に接続できるので、イヤフォンの活用頻度が増える嬉しい仕様だ。

入力プラグは交換式

シェルには、HeyGearsの3Dプリンターで作られており、非常に美しい。環境配慮型のレジンを使用し、肌にも配慮した。

フェイスプレートはロイヤルブルーとシアンで描かれており、モデル名Uranus(天王星)をイメージさせるデザイン。ゴールドの粉が散りばめられており、「ダイヤモンドに反射するかすかな星明かり」を、白いテクスチャーは「Uranus内部に永遠に降り続くダイヤモンドの雨」を表している。

イヤーピースは2種類付属しており、それぞれがバランス型、ボーカル型と分類されている。バランス型は、その名の通り幅広い音楽ジャンルに対応するもの、ボーカル型はボーカルを近くに感じられるイヤーピースになっている。

バランス型イヤーピース
ボーカル型イヤーピース
付属品一覧

安月名莉子さんとコラボ

実はこのUranusは、アーティストの安月名莉子さんとコラボしたモデルでもある。

安月名莉子さん

安月名さんは、シンガーソングライターとしてTVアニメ『やがて君になる』のOPテーマ「君にふれて」でデビュー。『Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow』の挿入歌「Memories」の歌唱にも抜擢。以降も『ブギーポップは笑わない』『彼方のアストラ』『慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』『蜘蛛ですが、なにか?』『メイドインアビス』などのアニメで、テーマソングを歌唱。

2023年3月に、10曲以上のタイアップ曲が収録された1st album「BLUE MOON」をリリース。近年は「DAISY」「シルバーフラワールド」「Horizon」など、自身で作詞作曲した楽曲を立て続けにリリース。2025年には石原夏織の「ムーンランナー」を楽曲提供し、作曲家としてもデビュー。2026年3月には、自身で作詞・作曲した楽曲のみを収録した2nd album「Emoria」をリリースしている。

安月名さんは、Uranusの音作りにも参加。「私が理想とするイヤホンは、全体の音が滑らかでまろやか。厚みのある豊かな低音、明瞭で表情豊かなボーカル、そして長時間聴いても耳が疲れない快適さを備えたもの」とのことで、Melody Wingsの音響エンジニアと彼女が対話と試聴を重ねて、Uranusが完成したそうだ。

なお、イヤフォンのフェースプレートには、左に安月名莉子(AR)のロゴ、右にMWブランドロゴがデザインされている。また、購入者特典として、Uranus用に収録した「UnheardVoice」のWAVファイルをダウンロードできるQRカードも付属するので、彼女のファンにも注目のイヤフォンとなっている。

左に安月名莉子(AR)のロゴが入っている

音を聴いてみる

DAPのAstell&Kern「SP3000」とUranusを、4.4mmバランスケーブルで接続。イヤーピースはバランス型を装着し、音を聴いてみよう。

「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生すると、量感たっぷりのウッドベースが出現い、「ズシン」と深く沈む低音がパワフルで驚く。それでいて、ボワボワ膨らまず、弦がブルブルと震える細かな様子がわかるキレもある。この沈み込みの深さは10mmの骨伝導ユニット、そしてキレのある低域の解像力は10mmベリリウムコート・ダイナミックドライバーによるものだろう。迫力とキレ味が同居した、良い組み合わせだ。

低域が、かなりリッチな音なのだが、右に出現するピアノの中高域は埋もれず、クリアに聴き取れる。この中高域はBAが担当しているが、BAらしい透明感、歯切れの良さといった特徴が、低域に負けずにしっかり聴き取れる。

続いてダイアナ・クラールのボーカルが中央から聴こえるが、この声が実に生々しく、艶っぽくて良い。

歌い出す直前に「スッ」と息を吸い込むかすかな音や、途中で「フッ」と鼻から抜ける吐息がリアルで、ドキドキする。特筆すべきは、こうした細かな音を描写する解像度がありながらも、音の輪郭を強調したようなキツイ音にはなっておらず、人の声の温かさ、体温を感じるような、聴いていてホッとできる音になっている事だ。

そのため、最初は「おお、細かな音が聴き取れる」という姿勢で聴いているのだが、しばらく聴いていると、声の心地良さ、気持ちよさにうっとり目を閉じて、「まぁ、細かい話は抜きに、ゆっくり聴こう」という気持ちになる。音楽に身を任せる心地良さに包まれ、自然と“癒されるモード”に入っていくようなイヤフォンだ。

「手嶌葵/明日への手紙」も絶品だ。

ボーカルやピアノの響きが広がっていく空間は広大。その中央に出現する手嶌葵のボーカルは、神秘的でありつつ艶っぽく、歌声がストレートに心に響いてくる。聴きながら、感想をメモっているのだが、試聴を忘れてキーボードを叩く指が止まりがちになる。

音の傾向としては「女性ボーカルの声を、美しく再生してくれる“美音系イヤフォン”」になるだろう。だが、Uranusが面白いのは、それだけではない事。決して、高域の頭をまるめて、フォーカスの甘い音にするのではなく、超高域のピエゾドライバーを活かし、微細な音をハッとさせる高解像度で描く一面もある。

それでいて、決してエッジを強調したような、シャープでキツイ音にはなっていない。高解像度でありつつ、人の声の生っぽさはしっかりと維持する。このチューニングは絶妙であり、さすがミュージシャンの意見を取り入れた完成度だ。

安月名さんのデビューシングル「君にふれて」も聴いてみたが、まさにUranusとベストマッチ。冒頭のギターが解像度高く描写され、瞬時に心をつかまれ、続くボーカルが柔らか響き、聴いていてとにかく気持ちが良い。それでいて、ブレスを細かく描写する繊細さもある。

3Dゲーム『メイドインアビス 闇を目指した連星』エンディングテーマの「灯火」を聴くと、Uranusの音場の広さが活きる。まるで、アビスの広大な地下空間に、灯火の光が柔らかく広がるように、広大な音場にボーカルなどの音が広がっていく様子が神秘的だ。

サビのあとにチェロの低音が入ってくるが、ふくよかで量感タップリな音で、楽曲に荘厳さを添えている。

前述の通り、購入者特典として、Uranus用に新たに収録された安月名さんの楽曲「UnheardVoice」のWAVファイル(48kHz/24bit)をダウンロードできるQRカードも付属する。こちらも聴いてみた。

アコースティックギター + 安月名さんのボーカルというシンプルかつアコースティックな構成なのだが、だからこそUranusとの相性はバツグン。ギターの弦の金属質な細かい音を描写しながら、ギターの筐体で反響した豊かな木の響きが広大な空間に広がっていく。安月名さんのボーカルとリスナーの距離は近く、声の表情が良く伝わってくる。自分の目の前で、特別なコンサートを開いてもらっているようなリッチな気分が味わえた。

このように、低音の再生能力も高いので、決して“女性ボーカルだけのイヤフォン”ではない。例えば、「米津玄師/KICK BACK」のように、中低域がパワフルなロックも気持ちよく聴かせてくれる。エレキベースやドラムが「ズゴーン」強烈に響き、鋭いコーラスや、切り裂くようなエレキギターが襲いかかってくる。

この楽曲は、高域の描写がキツいイヤフォンで聴くと、耳が痛くなるのだが、Uranusで聴くと、パワフルで高解像度なのに、顔をしかめるようなキツさがない。叫ぶようなボーカルにも、激しいだけではない優しさが垣間見える。質感描写が巧みなイヤフォンだ。

ちなみに、装着するイヤーピースをボーカル型に変えると、ライブ会場の席を、ちょっと前に移動させたように、メインとなるボーカルの音像がより近く感じられる音になる。ボーカルの感情表現を、より聴き取りたい時に選ぶと良いだろう。

USB-Cプラグでスマホと接続

入力プラグをUSB-Cに変更し、スマホと接続して聴いてみたが、こちらも侮れない音だ。

さすがにSP3000のような圧倒的な駆動力は無いが、骨伝導とダイナミックドライバーの低音はしっかりと沈み、中高域の純度も高く、高精細なUranusの魅力はしっかりと味わえる。まだ本格的なDAPは持っていないので、とりあえずスマホで使ってみたいという人も満足できるはずだ。

いろいろな曲を聴いたが、やはりボーカルもので、アコースティックな楽器を使った曲との愛称がバツグン。例えば「ジャック・ジョンソン/ベター・トゥゲザー」を聴いていると、アコギの歯切れの良さ、ウッドベースの肉厚さ、ボーカルの温かさという三拍子揃ったサウンドが気持ちよすぎて、脳みそを天空に連れていかれるような気分になる。

Uranusは、緊張が解けた仕事帰りの電車の中や、休日の移動中などに聴きたいイヤフォンだ。ヘッドフォンも含め、昨今のポータブルオーディオは、どちらかというと“解像度追求タイプ”が多いが、そういった音に疲れた人や、音楽の心地良さに改めて浸りたい人に、福音と呼べるイヤフォンになるだろう。

山崎健太郎