ニュース
PCスピーカーの“枠”を超える音質を体験、クリプトン・KSシリーズの読者試聴会
(2015/6/8 00:00)
ピュアオーディオの技術を取り入れ、いわゆる“PCスピーカー”とは一線を画すサウンドを実現しているクリプトンのKSシリーズ。ベーシックな「KS-1HQM」(直販47,500円)、ハイレゾ対応を強化した「KS-3HQM」(直販85,000円)、そしてPCスピーカーの枠を超える超弩級「KS-7HQM」(直販250,000円/通称ハイレゾセブン)の3機種をラインナップしており、いずれも音で勝負のオーディオメーカーらしい“尖った”製品になっている。
これら3機種は、これまでレビュー記事でその音質の高さを紹介してきたが、残念な点があった。それは、低価格な「KS-1HQM」の販売は直販サイトのみ。上位2機種は、それに加えて一部のオーディオショップや家電量販店で取り扱われているものの、普通のピュアオーディオ用スピーカーのように気軽に試聴しにくいという点だ。
そこでAV Watchとクリプトンが協力、KSシリーズに興味のある読者を編集部に招いて、これら3機種の試聴会を6月6日に開催した。
PCやポータブルプレーヤーに加え、TV/BDプレーヤーとも連携
KSシリーズ3機種に共通するのは、PCとUSBで直接接続できるスピーカーという事。KS-1HQMは96kHz/24bitまで、KS-3HQMとKS-7HQMは192kHz/24bitまでに対応している。
それに加え、全モデル光デジタル入力、ステレオミニのアナログ入力も装備。ポータブルプレーヤーとアナログ接続して室内再生に使ったり、テレビと光デジタルで接続し、テレビスピーカーの代わりにKSシリーズから迫力のある音を出して、映画や音楽番組を楽しむ事ができる。
さらにKS-7HQMは、アクティブスピーカーとしてHDMI入出力も備えているのがユニーク。Blu-rayレコーダとテレビのHDMIの間に挟むように接続でき、Blu-rayに収録されている192kHz/24bitなどのハイレゾデータを再生する事もできる。
まずPCとUSB接続したKS-1HQMを使い、「宇多田ヒカル/First Love」(96kHz/24bit)などを再生。音質の高さを紹介すると共に、KSシリーズの豊富な接続機能の一例として、ユニバーサルプレーヤーとテレビとも接続。Blu-rayの映画「エネミー・ライン」から戦闘機と地対空ミサイルの白熱の追尾劇を再生する。
KS-1HQMは、筐体の中央部がアルミ、左右の側板はモールド樹脂で作られており、側板が適度に振動する事で小型ながら豊かな低音再生を可能にしている。映画でも、戦闘機のエンジン音や爆発音で、量感の豊かな低音が体験できたほか、フルレンジユニットの1基の小型スピーカーだけあり、三次元的に追尾してくるミサイルの音像の移動感もリアルに聴きとることができた。
ユニットは、KS-1HQMとKS-3HQMが6.35cmのフルレンジ。いずれもデンマークのティンファニー(旧ピアレス社)製。KS-7HQMは、30mm径のリングダイアフラム型ツイータと、84mm径ウーファの2ウェイ構成で、高域は60kHzまで伸びている。
アンプ部にも工夫がある。KS-1HQMは25W×2chのフルデジタルアンプ、KS-3HQMはDDCを用いて、デジタルデータをアナログ変換せず、デジタルデータのまま増幅。ユニットの直前までアナログ変換しない事で、音の鮮度を維持している。
さらにKS-7HQMでは、DDCにFPGA(ファームウェアを読み込ませることで回路構成を自由に 変えることができる汎用性の高いLSI)を組みわせている。デジタルアンプの肝となるのはノイズシェーパーだが、デジタル信号処理は複雑な演算が必要になるため、ラウンディング・エラーや大入力信号のオーバーフローエラーが課題となる。これを改善するため、ノイズシェーパーの最適値を導き、独自のエラー補正アルゴリズムを適用したFPGAを使っているわけだ。
また、KS-7HQMは2ウェイなので、FPGAでデジタルクロスオーバーネットワークを構築。ツータとウーファ向けに、個別のデジタルアンプで増幅するバイアンプ駆動を採用。低域と高域間の干渉も防ぎつつ、パッシブネットワークのコンデンサやコイル抵抗による音質劣化も回避している。
さらに、FPGAではアルゴリズムなど、新機能をUSB経由でアップデートできる事も特徴として説明された。
アクセサリメーカーならではの“マニアックさ”
前述の内容はスピーカー自体の特徴だが、KSシリーズにはそれ以外にユニークなポイントがある。クリプトンは元々、インシュレータや電源ボックスなど、ピュアオーディオ用のアクセサリメーカーであり、ピュア用のパッシブスピーカーも多く手がけているが、それらで培ったアクセサリなどのノウハウを、PCスピーカーのKSシリーズにも投入している事だ。
KS-1HQM/3HQMには、持ち上げると驚くほど重く、中で小さな無数の鉄球が動いているのがわかるオーディオボードと、その上に設置する3点支持のインシュレータを同梱。
KS-7HQMには木製のスピーカーベースが付属しており、そのベースに、ネオフェードカーボンマトリックス3層材のインシュレータが埋め込まれている。ネオフェードという特殊素材をカーボンでサンドイッチしたもので、振動を熱に変えて素早く減衰できるのが特徴だ。
クリプトンによれば、一般的なピュアオーディオと異なり、PC用スピーカーがしっかりとしたスピーカースタンドに置かれず、鳴きの大きい机や、剛性の足りない台などに置かれる事が多い事から、「どのような環境でも、良い音を気軽に楽しんでいただくためにこれらのアクセサリを同梱している」という。他にも、ACアダプタのケーブルに、クリプトンで単品発売されている極太の高純度OFC採用電源ケーブル「PC-5」を使うなど、細かな部分にまでマニアックなこだわりが貫かれている事を紹介した。
KS-1からのステップアップや、サブシステム用として検討する人も
イベントでは、「ノラ・ジョーンズ/Don't Know Why」を使い、CDからリッピングした44.1kHz/16bitの音源と、192kHz/24bitハイレゾ音源の聴き比べも実施。再生にはKS-3HQMを使用。前述の通りDDCを搭載し、剛性の高いオールアルミ筐体を採用する事で、KS-1HQMよりも高解像度な再生ができ、ハイレゾの情報量の多さがより聴き取りやすい事をデモ。
さらにワイドレンジかつ、広大な音場再生も可能なKS-7HQMに切り替え、ヴィヴァルディの四季 春 第1楽章を再生。オーケストラの広がりと、その中の楽器の定位の明瞭さを体験。最後に「スティービーワンダー/Sir Duke」の、低域のキレの良さ、低域と高域の繋がり・まとまりの良さもアピールした。
解説後のフリータイムでは、会場側面に多数用意されたKSシリーズを、読者が自由に試聴。USBメモリで持参した楽曲をPC経由で聴き比べる人や、いつもヘッドフォンを聴いている愛用のハイレゾポータブルプレーヤーとKSシリーズをアナログ接続し、スピーカーのニアフィールド再生でどのように聴こえるか体験する人、テレビと組み合わせたシステムでBlu-rayオーディオの音を体験する人など、それぞれのスタイルで音質を確かめていた。
中には、既にKS-1HQMを使っていて、上位モデルのサウンドを確かめたいという読者や、単品コンポのメインシステムとは別に、気軽に使えるサブシステムとしてKS-3HQMとKS-7HQMのどちらを選ぼうか迷っているという読者も。クリプトンの開発者に細かな質問を投げかけるなど、関心の高さをうかがわせた。