LED、録画、エコポイント。2009年冬の薄型テレビ事情

-各社の特徴あるラインナップが揃う



 年末商戦を迎え、各社の薄型テレビ新製品が出揃った。例年各社が最新製品を投入する商戦期だが、今年は、ソニーやパナソニックが主力製品を春夏から据え置きするなど、「新製品のインパクト」という点でやや物足りなさもある。

 エコポイント制度のスタートにより、台数ベースでは好調が伝えられており、JEITAの10月までの2009年累計出荷台数は、前年比で132.8%増の969万9,000台と、市場の拡大は続いている。一方、2011年7月の地上アナログ停波まであと600日を切り、価格の安い製品を求める消費者が増えたことや、景気の落ち込みにより高額商品に消費者の興味が薄れているなどの理由から、高付加価値な製品よりは値ごろ感のある製品に人気が出ているようだ。

 そうした状況下においても、LEDバックライトや録画対応、ネットワークの活用といった機能の強化は続いている。加えて、使いやすさの改善などで、各社がそれぞれの特徴を出したテレビラインナップを構築している。今回は中、上位機種の技術動向を中心に2009年の冬商戦モデルの特徴や傾向をまとめた。

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■ 年末から2010年にかけての一大潮流「LED」

 今後、大きなトレンドになりそうなのがLEDバックライト搭載の液晶テレビだ。照明分野では、白熱電球と比べた際の環境負荷の低さや、長寿命、省エネというイメージから注目を集めているが、液晶テレビでもLEDがキーワードになりそうだ。

 実は2008年の年末モデルでも、ソニーの「BRAVIA XR1シリーズ」、シャープの「AQUOS XS1シリーズ」でLEDバックライトの採用例があった。しかし、これらは各社のフラッグシップモデルの“高付加価値機能”として提案されていたものだ。

 一方、2009年モデルでは、LEDバックライト搭載テレビを普及価格帯に落とし、積極的に展開するメーカーが増えている。シャープの「AQUOS LX1」シリーズや、東芝の「REGZA ZX9000シリーズ」などがその例だ。

AQUOS LX1の60型「LC-60LX1」REGZA ZX9000シリーズ

 普及価格帯に入ってきた大きな理由は、量産効果の高い白色のLEDをバックライト光源に利用していることが挙げられる。

 液晶テレビのLEDバックライトでは、白色タイプとレッド/グリーン/ブルーの3色LEDを利用するRGBタイプがある。RGBのほうが色域が広く、色再現性に優れるとされていたが、LED寿命の均一性や制御の複雑さなどの課題もあり、コスト高の要因となっていた。白色はこうした問題が無く、コスト的にも有利なため、今後普及価格帯にLEDバックライト搭載製品が増えていく上で、主流になると予想される。

 照明分野などでも近年注目を集めるLEDには、通常のCCFLバックライトと異なり水銀を含まないという環境負荷の少なさなどから、「エコ」が重視される最近のトレンドにマッチしているという点も特徴だ。また、均一な発光特性やバックライト制御を活かした残像低減やコントラスト向上など、画質においても進化の余地がある新しいデバイスとして期待される。

 なお、液晶テレビのバックライトは、その配置位置によって、「直下型」と「エッジライト」の2種類が存在する。

 直下型は、液晶パネル裏面にバックライトを敷くようにして配置し、バックライトの光を照射する。一方のエッジライトはバックライトをユニット化して、画面の上下などに配置。そこからの光を導光板、反射板、拡散板などを利用して液晶パネル全体に照射するものだ。

 直下型がテレビにおいては一般的。だが、ソニーのBRAVIA ZX5シリーズのように“薄型”を特徴とする製品においてはエッジライトが積極的に採用されている。今期やこれから、台数ベースでも大きな伸長が見込まれるのが、AQUOS LX1やREGZA ZX9000のような白色LED/直下型の製品だ。

「AQUOS LX1」シリーズに白色LEDバックライトを採用

 今期、最もLEDバックライト搭載テレビに力を入れているのはシャープだ。自社でLEDを開発製造し、家庭用照明分野にも参入。攻勢をかけていることから「LED」のブランディングに積極的だ。

 白色LEDを搭載した「AQUOS LX1」は、「LED AQUOS」とLEDを前面に出したブランディングを取り、本木雅弘を起用したテレビCMでもなどでも「LED」を強力にアピールしている。

 また、40型の「LC-40LX1」で実売25万円程度と、フラッグシップモデルでLEDを採用している他社製品と比べかなり手頃で、「戦略的」な価格設定を行なっている。「液晶=AQUOS」を強力に推進していた時のように、今期のシャープは「LEDのシャープ」を訴求している。

40型の「LC-40LX1」は、実売25万円前後と手ごろな価格設定に「AQUOS LX1」シリーズに白色LEDバックライトを採用

 もちろん環境性能だけでなく、LED搭載においてAQUOS LX1で強くアピールしている点が画質。LEDの搭載とともにプッシュしているのが「UV2A」と呼ぶ新液晶パネル。液晶画素内のリブ/スリットを大幅に削減し、開口率を20%向上させたことで、液晶テレビで最も電力を使うバックライトの消費電力を抑えられ、光漏れの少なさからコントラストも大幅に向上できたという。こうして、LED+液晶パネルの総合力で勝負に出た戦略製品が「LED AQUOS」ことAQUOS LX1シリーズといえる。

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 東芝REGZAの主力製品では、ZX9000シリーズでLEDバックライトを採用している。AQUOS LX1との違いとして、それぞれのLEDをエリアごとに発光制御する「部分駆動」技術により、コントラストを高めることができる点。

 ZX9000のコントラスト比は5,000:1でダイナミックコントラストは200万:1。エリア分割の数は「100前後」で、LEDの数は非公開としている。前シリーズのZX8000からLED+部分駆動を採用していたが、新LSIの採用や処理方法の改善により、よりきめ細かな階調表現やコントラスト向上を図ったという。液晶テレビの今後の画質向上を担う、最も注目の技術が「LED+部分駆動」といえる。

 ただし、部分駆動にも弊害が無いわけではない。特定箇所のLED発光が確認できてしまう”ハロー効果”と呼ばれる課題もある。これは、例えば真っ黒な画面上に[HDMI1]などの入力確認表示を出した時などに、その表示の裏がぼんやりと周囲から浮いて白く発光してみえてしまうものだ。全体の絵を見たときに大きな弊害になることはあまりないが、部分駆動の導入により、LSIなどの部品増や制御の複雑化など、コストアップ要因にもなる。シャープは、AQUOS LX1で部分駆動を導入しなかった理由について、UV2Aパネルの採用により大幅なコントラスト向上が図れたほか、“手ごろな価格での提供”を目標にしたため、と説明している。このあたりはメーカーの思想やキーデバイスの強さなどにより、判断が分かれている部分といえるだろう。

55ZX9000新開発のバックライト制御LSIを搭載

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CELL REGZA「55X1」

 ハロー効果を回避するためには、単純にエリアの分割数を増やす必要がある。REGZA ZX9000シリーズでも約100のエリアに分けて制御しているが、エリアが増えれば増えるほど、制御もパーツ数も増え、より複雑となり、コストも増えてしまう。

 とはいえ、コントラスト表現を飛躍的に高めるという点で、このLED+部分駆動という技術は今後も画質向上において大きなトレンドになっていくだろう。例えばCELLレグザこと「55X1」では、エリア分割数を512(ZX9000は約100エリア)まで増やし、さらに細かな局所的な制御を行なうことで、コントラストの向上とともに、ハロー効果の抑制に取り組んでいる。これらと、Cellの演算能力を活かした制御システムの採用により、業界最高というピーク輝度1,250cd/m2、ダイナミックコントラスト500万:1を実現している。


512分割のLEDアレイを搭載するCellを使って、LEDアレイ以上の細かなバックライト制御が可能となっている

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IFA 2009のSamsungブース。“LED TV”を積極的に訴求

 海外に目を向けてみると、LEDバックライト搭載テレビは必ずしも日本メーカーが先行しているわけではない。製品発売においては、日本メーカーのほうが先行したものの、欧米では2009年に入ってからSamsungがLEDバックライト搭載の液晶テレビを「LED TV」とブランディングし攻勢をかけ、シェアを拡大したという経緯がある。つまり、先進的なテレビ= LED TVというブランディングがヒットし、先進国においては一つトレンドとなっている。

 こうした状況を受けて、ソニーの経営方針説明会でも「LED搭載液晶テレビ」に積極的に取り組む方針が示されるなど、シャープや東芝以外でも、手ごろな価格帯におけるLEDバックライト採用は増えていくだろう。

薄さを活かした「BRAVIA ZX5」の設置イメージ。LEDの採用により薄型化している

 LEDバックライト自体は、PC向けの液晶ディスプレイやノートパソコン、ポータブル機器自体でも採用例が多く、大型テレビにおいても、直下型ではなく、ソニーのBRAVIA ZX5のように、エッジライトLEDを使った薄型化など、新しい製品展開に向けた基幹技術として利用する例も見られる。

 いずれにしろ、「LED」が今後のテレビ進化において、重要なキーワードになっていくのは間違いないだろう。

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■ エコポイント

 こうした付加価値追求方面というだけでなく、今シーズン重要視されている点が「エコポイント」だ。

省エネ統一ラベル

 製品の省エネ性能を示す「統一省エネラベル」で星印4つ以上を取得している「地上デジタル放送対応テレビ」において、最高で36,000点もの還元を行なうという制度で、政府の景気対策、ならびに地デジの普及加速を狙ったものだ。エコポイントは、金券や各種ポイントなどと交換できることから、実質値引きといえる。

 5月15日~2010年3月末までの製品購入に対して付与されるエコポイントだが、制度の大枠が固まった6月以降のJEITA統計を見てみると、販売台数は前年比で約130%~160%台で推移しており、120%台前半の4~5月と比べるとかなり伸長していることが確認できる。


 「テレビにおける省エネ化」は数年前から業界のトレンドではあったものの、エコポイント導入を契機に、その流れが加速。すでに、現在販売中の大手メーカー製テレビは、ほとんどエコポイント対象となっている。例外を挙げると2008年発売のソニー「BRAVIA XRシリーズ」や、シャープの「AQUOS XS1シリーズ」程度。高付加価値モデルとして発売され、大規模CPUを搭載したCELLレグザ「55X1」ですら、エコポイントの対象なのだ。

テレビサイズエコポイント数(点)
46型以上36,000
40、42型23,000
37型17,000
32、26型12,000
26型未満7,000

 そのため、製品選択時に“制度の対象か否か”を悩むことは、あまりなさそうだ。ただし、サイズごとにポイントの付与率が異なっているのでここには注意したい。現在、例えば37型では17,000ポイントだが、40型では23,000ポイントになる。ポイント差が6,000で、価格差が37型と40型であまり大きくない場合は、37型を買うよりも40型を買う方がお得、というケースもあるだろう。

 できるだけ大画面テレビが欲しいという人にとっては、積極的に大型を選ぶインセンティブにもなるので、サイズによる還元率の違いにも着目し、テレビ選びに活かしたい。

 なお、エコポイントを申請した後、各商品が実際に届くのは約1~2カ月後と告知されている。家電量販店のポイントサービスのように、購入後すぐに他の商品購入に活かせるというわけではないので、注意したい。

 また、2010年4月以降のエコポイントの動向については流動的。とはいえ、とにかく2010年3月まで制度が継続することは決まっているので、これを活用しない手はないだろう。

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■ 各社の違いが見えてきたテレビの録画機能

 録画機能は「トレンド」というよりは、すでに薄型テレビの1ジャンルとして確立したといえる。BCNの10月調査では18.1%が録画対応で、特に30型以上の製品については構成比が高い。

日立Wooo「P50-XP035」

 Blu-rayレコーダなどの専用の録画機でも、HDMI CEC機能を使って、テレビのリモコンで簡単に録画予約などの機能は充実している。しかし、やはりテレビに内蔵することで、よりシンプルなタイムシフト利用ができるという点で人気を集めているようだ。

 特に力を入れているメーカーは、日立と東芝、シャープなどだ。日立のWooo 035、Wooo UT880シリーズは、HDDを内蔵するほか、全モデルでiVDRスロットを装備している。内蔵HDDへの録画だけでなく、iVDRを使って録画時間を拡張したり、家族でiVDRカートリッジごとに使い分けるという応用も可能となる。

 また、内蔵トランスコーダを使って、デジタル放送番組をMPEG-4 AVC/H.264に圧縮。長時間録画が可能な「TSXモード」も全モデルで備えている。こうした点もWoooならではの特徴といえる。


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REGZA 46ZX9000。4台のUSB HDDを接続できる

 一方で、東芝は新9000シリーズの19モデル中、16モデルを「録画対応」とした。HDD内蔵モデルはZX9000とH9000の合計5モデルだが、Z9000やスタンダードモデルのR9000でも、別売のUSB HDDを追加することで録画対応となる。

 USB HDDは1TBでも1万円強で販売されているので、テレビ+1万円程度で、簡単に録画対応にできるという点が大きな特徴といえる。WoooのようにAVCへの変換/長時間記録は備えていないが、ZX/Z9000シリーズは4台までのHDDや8台までのLAN HDDを登録可能で、HDD容量の拡張性という点では、申し分ない。


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LC-46DX2

 シャープは、HDDではなくBlu-ray Discへの録画を訴求。昨年から展開しているAQUOS DXシリーズはラインナップや機能の拡充を続けている。2009年度の上期にはAQUOSシリーズの20%を超える構成比を占めるなど、AQUOSの中核を担うモデルに成長した。

 25/50GBのBD-R/REが記録メディアになる点では、HDDに容量の面では及ばない。しかし、トランスコーダを内蔵し、最高で7倍の長時間録画ができることもあり、ドラマやスポーツのタイムシフトに使う分には十分な容量があるともいえる。また、家族でメディアを使い分けでき、録画ディスクをほかのBDプレーヤーで簡単に再生できるという“わかりやすさ”も特徴といえる。

 DX2では、新しいUIのモーションメニューによる操作性の向上や、AQUOSブルーレイとの連携強化なども図っている。また、録画機能と並んで重要なのが、BDプレーヤー内蔵テレビとして使えること。レンタルも増えているBDビデオを、面倒な接続や設定なしに楽しめるという点も、BD内蔵の大きなメリットといえる。

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 そして、今シーズンはついに三菱からBD/HDDハイブリッドレコーダを搭載した「REAL BHRシリーズ」まで登場した。BDレコーダの「REAL DVR-BZ130」相当の機能を、そのままテレビに内蔵するという、強力な録画環境だが、リモコンやUIの工夫で「AV機器の設置や操作が苦手な人」に利用可能にした点が特徴といえる。

 タイムシフト録画はHDDに、アーカイブにはBDを活用し、編集などの主要機能もBDレコーダを踏襲。BD/DVDプレーヤーとして活用できる、ユニークな製品だ。

REAL BHR「LCD-37BHR300」本体下部にBDレコーダを内蔵する

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三洋のiVDRレコーダ「repoch」(IVR-S100M)マクセルの500GB iVDRカートリッジ「M-VDRS500G.C」

 録画環境は各メーカーで充実しているが、注目したいのが録画後の番組の活用。“録画したテレビ”だけでなく、家庭内の様々な機器で録画番組を共有できる機能が増えているのだ。

 HDD内蔵テレビにおいては、基本的に録画番組は「録画した機器でのみ」しか再生できない。例えばREGZAの内蔵/USB HDDで録画した場合は、録画したREGZAと紐づけられ、万が一REGZAが故障した場合は録画番組は見られなくなってしまう。

 一方、Blu-ray Discにおいては、日本で販売されている主要なBDプレーヤーであれば、録画したディスクはほぼ全ての機器で再生できる。こうした再生互換性については、それぞれの方式で違いが出る。

 HDDを活用しながらも、iVDRはこの点において優れており、例えば内蔵HDDからiVDRにムーブした番組は、ほかのiVDR再生機器でも再生できる。またiVDRについては、Woooだけでなく、マクセル三洋からもiVDRレコーダーが発売。iVDRプレーヤーもアイ・オーから発売され、にわかに周辺機器市場が盛り上がりを見せている。比較的安価な機器の追加で、家庭内のさまざまな場所で録画番組を見られるような環境が作れるようになった点は大きな進歩だ。

 また、HDD内蔵テレビやUSB HDDへの録画においても、「録画した機器以外で再生できない」問題の回避策に取り組んでいる製品もある。例えば、REGZA ZX/Z9000シリーズでは、録画番組をDTCP-IPサーバーにダビングする機能を備えており、対応のVARDIAやLAN HDDにダビングすれば、録画したテレビだけでなく、様々な機器から再生可能になる。

録画メディアiVDRUSB HDD
LAN HDD
Blu-ray Disc
製品例Wooo 035REGZA ZなどAQUOS DX2
追加コストやや高価安価安価
容量
250~500GB


数100GB~数TB


25/50GB
他機器での再生
(iVDR再生機器)
×
(一部機器で
DTCP-IP
ダビング対応)

(BDプレーヤー)

 パナソニックも録画対応のVIERA Rシリーズをラインナップ。ブルーレイDIGAとのVIERA Link連携も強化しているほか、VIERAに録画した番組を、ネットワーク経由でダビングする機能も搭載している。ソニーも、録画機能を備えたテレビは発売していないものの、500GB HDD内蔵レコーダの「BRX-A500」をBRAVIAとの同時購入で29,800円でセット販売しているほか、BDレコーダとのセット販売強化などを図っている。

VIERA R「TH-P50R1」はHDDを内蔵BRAVIAの背面に設置可能な500GB HDDレコーダ「BRX-A500」

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ソニーはBDレコーダと組み合わせた「ソニールームリンク」(DTCP-IP/DLNA再生)を訴求

 また、録画に関連することとして、テレビにおけるDLNA/DTCP-IP再生機能の追加が挙げられる。パソコンやネットワークにある程度詳しい人にとっては、なじみのあるDLNA/DTCP-IPだが、これまではサーバー/クライアントともに対応機器が少なかった。しかし、9月にPlayStation 3がソフトウェアアップデートによりDTCP-IPクライアント機能を追加。テレビでも、ソニーのBRAVIAや日立のWoooは、今シーズンの全モデルでDTCP-IP/DLNA対応するなど、着々と対応機器が増えているのだ。

 ソニーは、今シーズンの全BRAVIAでDTCP-IP/DLNAを使った「ソニールームリンク」に対応。1台の対応レコーダをサーバーとし、HDMIで直接接続したリビングのテレビからの操作だけでなく、別室の2台目のテレビからレコーダの録画番組をネットワーク経由で録画予約したり、ネットワーク経由で録画番組を見る、といった提案を行なっている。

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WoooシリーズではPC上のコンテンツ再生や、別のAVネットワーク対応Woooへのストリーミング配信が可能

 日立のWooo 035シリーズでは、DTCP-IP/DLNAのクライアント機能だけでなく、サーバー機能も備えておりHDD/iVDRに記録した番組/コンテンツのサーバーとしても利用できる。つまりPS3やDTCP/DLNA対応テレビなどから、Woooの録画番組をネットワーク経由で再生することも可能となっている。

 東芝もREGZA Z9000シリーズでDTCP-IP/DLNAのクライアント機能を搭載。パナソニックもVIERA Z/Vシリーズがクライアント対応するなど着々と対応機器が増えている。シャープは、AQUOS DX2やDS6、LXなどでDLNA対応しているが、写真と音楽のみの対応となっている。しかし、ネットワークを使った録画番組の視聴ソリューションとして、DLNA/DTCP-IPサーバーに対応したレコーダも増えており、この流れで多くの機器が対応してくるのは間違なさそうだ。

 ただし、現時点では各社自社製品での接続互換は確認しているものの、他社製品との連携を謳っているわけではない。このあたりは注意したいところだ。

 


■ 採用メーカーが増えた自動画質調整機能

 LEDや部分駆動といったトピック以外にも、PDPなどでデバイスレベルの進化は続いている。4倍速/240Hz駆動を訴求するソニーなど、各社が力を入れる領域も微妙に異なっている。

 そんな中で、多くのメーカーが力を入れて取り組んでいるのが、画質自動調整機能だ。今シーズンは輝度だけでなく色温度センサーも内蔵し、より積極的で正確な画質調整を試みる機種が増えてきた。

AQUOS DX2の自動画質/音質選択モード「ぴったりセレクト」

 シャープが、AQUOS DX2シリーズから搭載した「ぴったりセレクト」は、本体前面下部に備えた明るさセンサーで、部屋の明るさと色温度を自動検出するとともに、視聴中の番組の種類や時間、映像シーンをリアルタイムに分析し、最適な画質/音質に調整するというものだ。テレビ放送だけでなく、BDディスクや外部入力映像に対しても、最適な画質に調整してくれる。ぴったりセレクトでは、画質だけでなく音声も自動調整している。

 日立は、「インテリジェント・オート高画質」という名称で展開。室内の明るさや表示映像に応じて最適な画質に調整する。前面のセンサーにより、室内の明るさや照明の色を判別。さらに、番組のジャンルや各種情報を独自のアルゴリズムで解析し、輝度や色温度、コントラストなどを自動制御。環境にあわせた最適な画質に調整するという。

「インテリジェント・オート高画質」を使って「エコ表示」もインテリジェント・オート高画質の概要
色温度も検出する「おまかせドンピシャ高画質3」

 東芝は、全モデルで「おまかせドンピシャ高画質」を搭載。上位シリーズは、部屋の明かりや時間、視聴中の番組に合わせて、自動で画質調整する「おまかせドンピシャ高画質3」を採用し、明るさや映像の種類解析に加え、色温度センサーにより、日中の日差しや室内照明の種類による部屋の白の温かみ、蛍光灯照明、電球照明などの光を分析。テレビの映像を自動調整する。なお、H/Rシリーズなどは、色温度センサーのない、「おまかせドンピシャ高画質2」となる。

 テレビを視聴環境やコンテンツにあわせて、画質調整を行なうというのは、AV機器に通じた人でもなかなか難しく面倒なこと。せっかくテレビの画質が向上しているのだから、そのポテンシャルを、誰がどんな時に見ても引き出してくれる仕組みが導入されるのは望ましい動きといえるだろう。今後も対応メーカーの増加や、さらなる機能の成熟に期待したい。

 


■ 自分にあったテレビ選びを

 現在37型~40型前半の中級機が10万~20万円台で購入できるほか、16~30型などの中小型製品も値下がりしている。メーカーとしては、こうした価格下落は厳しいはずだが、エコポイント制度もあり、これから購入する人にとっては歓迎すべき状況といえる。

 また、LEDや録画対応などの進歩だけでなく、2010年にはソニー、パナソニックが3D対応を目指しており、その基幹技術としてソニーは240Hz駆動を、パナソニックも自社のプラズマパネルの開発を進めており、まだまだテレビの進化は続きそうだ。

 リビングやベッドルームといった設置環境や家族構成、使い方によって、求めるテレビの姿は変わってくるが、低価格化が進んだことで、新しい需要を狙った提案も増えている点も注目したい。例えば、ソニーがDLNAとレコーダ、セカンドテレビの組み合わせを訴求するのも、そうしたライフスタイル提案の一環といえるだろう。

 例年、価格下落や機能強化が続く中、「買い時」を見極めるのは難しいが、各社のカタログや機能とともに、必要な機能や利用方法をしっかりシミュレーションしてから、テレビ選びに取り組みたい。


(2009年 12月 8日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]